香和津神社

奈良県五条市大深町

祭 神

瀬織津比v命


当社社名は香和津神社と書いて「かわづじんじゃ」と読みます。以下、「奈良県史5神社」から抜粋引用します。

*******引用始め*******
大深小学校に近接、西北に面して鎮座、大正七年七月一日黒駒町の御霊神社へ合祀したが、今も旧社地に瀬織津比v命を祭神として祀っている。本殿は覆屋の中に春日造の板葺きの一間社である。本殿内部御神体奉安の箱に「和g宇智郡大深村香和津大明神之御宝剣」と墨書され、宝剣は長さ五三センチの環頭太刀で、「貞享三年戊辰正月吉祥日」等の銘がある。

奈良県史5神社 P471

*******引用終り*******

同書の別項を参照すれば、大正期に黒駒町の御霊神社に合祀されながらも旧社地にて祭祀の続けられた神社は、当社を含み計7社が知られているとのことです。



当社に隣接して西性寺があり、当社と共に大深小学校(現在は休校)の敷地内となります。かなり山深い場所であり、社前から北西に向けて平野部への展望が大きく開ける、それほどの高所に位置します。山深い当地に、山神ではなく水神であるセオリツヒメが祭祀されてきたのも不思議なことです。

当社から直線距離で3km(迂回ルートを通るためクルマ利用で所要50分)ほど離れて、奈良県五条市に隣接する和歌山県橋本市には 「河津神社」があります。両社が混同されることはまず考えられないものの、「香和:かわ」は「河」あるいは「川」を表すことが類推できます。社名からすれば、香和津神社は水神を祀る神社であることが読み取れます。

水神であるセオリツヒメは、一般的には別な神を詣でる者を祓い清める神として祀られます。つまり本殿の主祭神としてではなく、主祭神に従ずる修祓神(しゅうばつしん)として位置づけられます。

ですが、当社においては修祓神ではなく本殿の主祭神として祭祀されています。セオリツヒメを本殿の主祭神とするケースは少なく、当社は少ないケースの1社ということができます。



セオリツヒメという水神を修祓神ではなく主祭神として祭祀すること、その地が山深い場所であること、そこに何かの事情や理由があるのかもしれません。それを想像するのもまた楽しいものです。

それほど大きくないながら整った社殿が凛としてそこに建ちます。社殿は立派な覆屋に守られており、訪れたとき、近隣の人たちが毎日交代で手入れをされていると伺いました。土地の人たちによって大切に守られている様子で、これからも長く祭祀されていってほしいものです。





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