まほろばのせおりつひめ

追悼：ご主人へ

●姫大神社●
奈良県天理市森本町

祭神
瀬織津姫命

身近にあるセオリツヒメ祭祀社のご紹介と共に、追悼の意を持ってこのページを残します。

神道者以外の歴史研究者やスピリチュアル系の研究者で、セオリツヒメの名を知る人は多いでしょう。大祓詞（おおはらえのことば）に修祓神として記述される祓戸四柱大神の筆頭となる姫神です。

では、神道者以外の一般の方はいつからその名をご存じでしょうか？

この姫神の名を一般に広めたのが、故風琳堂ご主人のご研究によるものでした。いや、それ以前にもこの姫神を専門にご研究されている方はいらっしゃいましたが（わが悠遠の瀬織津比咩：内海邦彦著 1986年）、広めたという意味ではやはりご主人が重要な存在だったことでしょう。

●高生神社●
奈良県高市郡高取町大字清水谷

祭神
高皇産霊神（中央）　倭大物主櫛甕玉命（向左神木）　瀬織津姫命（向右）

●香和津神社●
奈良県五条市大深町

祭神
瀬織津比咩命

●祓戸社●
往馬大社境内社奈良県生駒市壱分町

祭神
瀬織津比売神

●祓戸社●
御霊神社境内社（奈良市）奈良県奈良市薬師堂町

祭神
祓戸四柱大神
市杵島比売神

●祓戸社●
崇道天皇社境内社奈良県奈良市西紀寺町

祭神
瀬織都姫神　速開都姫神　気吹戸主神　速佐須良姫神

ネット上の友人から、ご主人の訃報をお聞きしたのが2014年8月の終わりでした。ご主人の私生活などは私が知る由も無い遠い方でしたが、下記の各掲示板やmixiなどでお話をさせていただいたこともあり、私が「ご主人」と呼ぶのもその時期からの呼び方です。そんなこともあって訃報は非常に残念に思いました。

ご主人のブログは2012年1月28日で更新が止まっており、どうやら長らく臥せっていらっしゃったご様子。ご主人の事跡やお考えは次のご著書やリンク先で知ることができます。

　【著書：エミシの国の女神】
　【Web：東北伝説】
　【Blog：月の抒情、瀧の激情】

日付に注意すれば「エミシの国の女神」初版は2000年10月出版であり、「東北伝説」・「囲炉裏夜話」稼働は2000年12月からです。“セオリツヒメの名を知ったのはこの十数年”という方が多いのではないでしょうか？　それはご主人のご研究の２次・３次情報の可能性はありませんか？

ご主人のご研究以前には先述のように「わが悠久の瀬織津比咩」がありますが、一般的なセオリツヒメの名は祓戸四柱大神の筆頭として知られていました。それは大祓詞や祓戸神社の祭神としての修祓神であり、神社における“主”の神としての扱いではなく、その多くが“従”の神としてのみ知られていたとのことです。

ご主人はその根源に“主”の神の属性、原初的な水の女神としてのセオリツヒメ像を見いだされ、その研究を世に出されてきました。セオリツヒメの名を世に広めた功績は偉大であり、第一人者の名はご主人にこそ与えられるものと思います。

●祓戸神社●
大神神社境内社奈良県桜井市大字三輪

祭神
瀬織津姫神　速秋津姫神　気吹戸主神　速佐須良姫神

●祓戸神社●
玉列神社境内社奈良県桜井市大字慈恩寺

祭神
瀬織津姫命外三柱

●祓戸社●
飛鳥坐神社境内社奈良県高市郡明日香村飛鳥

祭神
瀬織津比咩神　速開津比咩神　気吹戸主神　速佐須良比咩神

●祓戸神社●
墨坂神社境内社奈良県宇陀市榛原区荻原

祭神
瀬織津姫神　速開都姫神　気吹戸主神　速佐須良姫神

昨今、セオリツヒメの名はネットを中心に様々に広がっています。もちろんどのように広げようがどの方向に持っていこうが自由であるのは当然のことです。が、“隠されてきた水の女神”というイメージに魅せられる人が多いのか・・・　多くの人が、ご主人がお敷きになられたレールの上を、あるいは後退しながら、またあるいは脱線しながら進んでいるように見受けられます。

それらに対しご主人は、“自身の研究するセオリツヒメとは違うセオリツヒメ像”という意味のご発言をなされていたかと記憶しています。ご主人のご研究には「復活した」・「降臨した」などの言葉はほとんど無かったように思います。

ご主人のご発言はその研究姿勢によるところが多いのでしょう。例えば「○○姫はセオリツヒメだ」などの発言を“根拠無く”述べることを厳に慎まれていました。資料・史料に基づくことを厳しく是とされる研究姿勢で、他の友人からお聞した話では「祭祀過程を無視したセオリツヒメ研究はあり得ない」とのことでした。私的には肝に銘じるべき言葉と感じます。ご主人こそが本筋を進まれていたのでしょう。