綱越神社

奈良県桜井市三輪


大神神社境外摂社
祭 神

祓戸大神


   境内の案内板より

大神神社摂社 綱越神社(おんばらさん)
御祭神 祓戸大神
御例祭 七月三十一日

大神神社の参道入口に位置し「祓戸の大神」を祀る
延喜式内社であります
夏越の社とも言われ旧六月晦日の大祓「夏越祓」が厳粛に
行われる古社として広く世に知られ 社名の綱越は
夏越から転訛したといわれます
本社のもっとも大切な「卯の日」の神事つまり大神祭の奉仕に
先立ち その前日に神主以下奉仕員が三輪川での「垢離取り」の後
当社において祓の儀を受けて 初めて本社の神事に
携わることができました
現在は七月三十 三十一日の両日 御祓祭が盛大に執り行われ
特設の茅輪をくぐり無病息災を祈る人々で賑わいます

大神神社の境外摂社で、通称「おんぱらさん」と呼ばれます。国道169号線から大神神社に入る参道には高さ30mを越す大鳥居があり、そのすぐ南にこの神社が鎮座します。境内には小さいながら磐座も祭祀されています。大きな神社ではありませんが、延喜式神名帳に記載される由緒を誇ります。

実は大神神社境内には、参道沿いに「祓戸社」として当社祭神と関連する神を祭祀する神社があります。このことから分かるように、当社綱越神社はもともと大神神社から独立した神社であり、大神神社の境外摂社となったのは明治10年のことでした。



当社祭神「祓戸大神(はらえどのおおかみ)」とはただ1神のような書き方ですが、一般的に祓戸大神というときは、大祓詞(おおはらえのことば)により次の4神の総称とされています。「祓戸四柱神(はらえどよはしらのかみ)」も同じです。

【Link:Wikipedia 祓戸大神】

 瀬織津比賣:セオリツヒメ
 速開對蓙フ:ハヤアキツヒメ
 氣吹戸主:イブキドヌシ
 速佐須良比賣:ハヤサスラヒメ

当社の祭神については上記4神の総称であるという解説は残念ながらどこにもなされていません。ですが、祭神名が「祓戸大神」である限り上記4神の総称であると考えることは特に問題無いでしょう。
●境内の磐座●

大祓詞では上記4神を、もろもろの罪穢れを祓う神としています。が、4神の筆頭、セオリツヒメについては単なる祓いの神ではないようです。セオリツヒメはエミシの国の早池峰の峰に坐す姫神であり、原初の水の女神にして封じられた巨神でもあります。その背後には、隠された古代の歴史が横たわります。

【Link:風琳堂 エミシの国の女神】



日本書紀敏達天皇条に、蝦夷魁帥綾糟(エミシ ひとごのかみアヤカス)が三輪山の天皇霊に誓いを述べるという伝承が記述されています。綾糟の行為は、三輪山の神が天皇霊ではなくエミシの神に通じる神であるからこその行為であったという可能性も当然ながら成り立ちます。

【Link:『古代東北と王権―「日本書紀」の語る蝦夷―』:中路正恒著】

この綱越神社も、「エミシの国の女神」に通じる一つの道であったのではないかという気がします。





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