オーディオ装置についての考え方


zenkeiオーディオ装置は、音 楽を再生して初めてその価値がある物です。音楽はそれぞれ好みが分かれますが、いずれにしても、元の音が分からないものにいか に感激しようが、それは自己満足以外の何物でもありません。
当然音楽を再生し、本人が満足すればそれ以上の装置や部屋は必要ないのであり、客観性さえ求めなければ、それはその人にとり最上のオーディオ・システムで す。

音楽は文字どおり音を楽しむも のですから、音で あったり、音では困りま す、ましてや音になって は、オーディオ装置の存在価値はありません。

音と言えば、いちばん我々になじみ深いのは、人間の声であり、それらがハーモニーとなった合唱曲は、それ自体がシステムの確認には最適ではないでしょうか。
人間の声でも一人のもの「ソロ」は、加工されているものが 大半で比較の対象にはなりません。 時にアナウンスの声や、朗読にハッとさせられるように、加工のない音の自然さは魅力ですが、音楽(ハーモニーのある)以外はオーディオ・システムの客観的 なテストには不向きです。

また録音は実践したものにしか分からない要素が多 く、しかも昔のテープレコーダーを使用するアナログ録音 は、録音者の経験とセンスが 非常に表れるもので、現在のデジタル録音とは格段の差があります。アナログ録音は水道の蛇口からの水を、一升瓶で受けるようなもので、デジタル録音はそれ をバケツで受けるようなものです。おまけにデジタル録音には誤り補正という受け皿まであり、飛び散った飛沫さえ拾う事ができます。

注意していただきたいのですが、アナログ録音はデ ジタル録音に劣ると、誤解していただいては困ります。ア ナログ録音は非常に難しいと云う事です。ア ナログ録音はアナログで残しましょう。デ ジタル録音はデジタル信号で残すことです。

私の録音歴と言ってもしれていますが、38・2トラから初めて、PCM-F1とβテープによるものを経て、DATレコーダーで終わっています。最近の固体録音機に よるものも試しましたが、音楽ファイルで残すつもりはありません。
プ ロの録音技術者ではありませんので、海外の有名なプロの演奏者を音楽ホールで録音しても、あくまで記録用・確認用で商業ベースのものではありません。した がって目立つ所にマイクを置いたり、多チャンネルはできませんので、たかが知れてますし、取り直しのきかない一発勝負ばかりですので、細部にこだわれる市 販の音楽ソフトとはものが違います。それでもマスターを持てる喜びは、体験した者にしか分からないでしょう。その点音楽コンクールに出すテープを頼まれる 時の録音は、マイクのテストやオーディオのテストには最適でした。
素人の私にでも、依頼者からは楽譜やプログラムを渡されますので、プ ロの録音技師は各種の知識と経験が要求されるのは想像するに余りあります。

 
市販の音楽ソフトに はいろいろな種類が発売されました。蝋管か ら始まり、78回転のSP45回転のEP33⅓回転のLP4トラ・オープン・テープ2トラ・オープン・テープ4トラ・カセット・テープ、CDCDシングル、DAT、DCC、SACDDVDオーディオと各種発売され、普及した物もあれば、 まったく普及しなかった物もあり、我々の知らない物も多くありましたし、これからも各種発売されることでしょう。
しかし今後も確実に利用され、記録物(レコード)と して扱われるものは、
LPレコード(他の回転数も含む)とCDSACDも含む)以外にはないのではないでしょうか?
中でも時代を共有し、共に過ごしてきた記録物としての
LPには、限りなき愛着もあり全盛を誇ったオーディオ遺産でもあります。

アナログ技術は、CDの普及とともに停滞し、今後より手軽な圧縮技術の 方向に行くと思われますので、さらなる進歩も望めません。しかも長いスパンで考えますと、デジタルに直してないアナログ、分けても形状保存のLPレコードは、長期保存に最も適した素材と 言えます。我々はデジタルは理解できても、アナログしか認識できない動物ですから。
以降ハードとソフトの両面を体験した者として、フォノ・カートリッジを中心に、アナログ・オーディオについて私見を述べさしていただきたいと思います。

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その前に現有の装置 に簡単にふれたいと思います。私はモノーラルは当然1つ のスピーカーでならすもの、という主義で2 チャンネルは2つ3チャン ネルは3つと云うように、記録物の編 集者の仕様に沿って、再生者は用意するのを原則としています。ただし5.1チャンネルの.1や後方・補助チャンネルやサラウンドについては配 慮しません。あくまで前方のチャンネルを、必要数用意するということです。

そして振動変換系と増幅系に分けて考えれば、当然 振動変換系わけてもスピーカーそしてマイク、フォノ・カートリッジというものが重要です。

スピーカーはいくつも並べることが出来ません し、とっかえひっかえというのも無理です。そうすると個性の強いもの、色づけされたものは避けるべきで、そうすると日本製か、素直と評判の海外もので、応答の早いもの限られてきます。能率の悪さ はアンプで補えますが、鈍感さは他で補うことは不可能です。しかも高品位を求めるとダイヤトーン・DS-10000以外選択の余地は当時ありませんでした。それ以降DS-20000等発売されましたのでよりベターかも知れません が、今のところ程度の良いものが入手できそうで、余裕があれば考える余地もあるかと思いますが、現実的ではありません。真ん中のモノ用は困りました。古い ソースからSACDの中央にも対応するものですから、新鮮で古色かつ 定位の良い点音源という不可能な要求で、最終的にジムランLE8Tにリボン・ツィーターの追加でごまかしています が、本来ならDS-10000を2台分解して、中央に横置き出来るようなものを 製作するべきですが、今となっては不可能な話です。

DS-10000は最初洋室にあるときは、専用台を使用していたの ですが、現在の和室8畳強に押し込められてから、低音が伸びず仕方なく、35Hzクロスでフォステックス・15インチウーハー・2 チャンネルの補強を追加しました。真空管のOTLアンプと組み合わせていますが、インピーダンスが 上手くいくのか相性は良いようです。
DS-10000は古典真空管300Bのシングル、定電源310Aのドライブという回路。LE8T6B4-Gのプッシュ・アンプを使用しています。アンプはスピーカーに合わせ、用意するもので 素人が容易に侵入できる唯一ものです。アンプぐらいはオーディオ・ファンなら自作しましょう。コツは素材の良いものが入手できたときは単純な回路で、素材 がもう一つと云う時は複雑な回路・部品でごまかすことです。最終的にはこれはと思えるメーカー完成品(私の場合A4)と比較の上決めることです。

プリ・アンプ、イコライザー・アンプは自作も可能 ですが、見栄えもあり自己満足に終わることが多いので、メー カー完成品を優先に、適当なものがない時は、仕方がないので自作するしか方法がありません。現用のAccuphaseのプリアンプは、何よりリモコンが使用できるのが 最高にうれしい一品です。

入力ソースは、市販の物のほか、試作品・サンプル/テスト盤・白盤や、自前録音の物も使用しますの で、いろいろな機器を用意していますが、大半はLPレコードとCD(SACD含む)です。LPレコードは約3,000枚・CD(SACD)1,000枚、LDDVDの音楽映像物約200枚が中心に使用しています。

レコード・プレーヤは後述しますが、CDプレーヤは、国産・外国製品含め何種類か使用しま したが、レコード・プレーヤの様な、格段の変化が認められなく、DSP方式のクレルCD-DSPを残しすべて処分しました。クレルは受付けないCDも多くあるのですが、それらはSACDプレーヤや、CDレコーダーで再生することで不自由は感じません。

それよりSACDプレーヤに、2チャンネル出力ノミの機械は存在価値があるの でしょうか?私には無意味な機械に 思えます。高級機に2チャンネル出力ノミの物が大半で、多チャンネルが 無いのはオーディオ産業衰退」の象徴です。

 
レ コード再生とレコード・プレーヤについて

いよいよ主題に入ってきました、レコード・プレー ヤは大きく分けて、フォノ・モーターま たはターンテーブルとも言いますと、ピックアップ及びケースから成ります。そしてピックアップは、トーン・アームフォノ・カートリッジから成ります。

それぞれ古今東西いろいろな物が開発使用されてき ましたが、何か長所のある物しか現在まで使用されることはないと思います。

フォノ・モーターは、駆動方式より、大きく分けてダイレクト・ドライブリム・ドライブ(アイドラー・ドライブとも云 う)そして、ベルト・ドライブ(糸 ドライブも含む)に分かれます。

ダイレクト・ドライブが後発のように思う方もい らっしゃいますが、SP時代のモーターは形は違えダイレクト・ドライブが 大半でした。そのようにどれが良くて、どれが悪いではな く好みにより他の物と組み 合わせることにより、希望の 音質が得られるようにするのが本筋ではないでしょうか。

リム・ドライブはターンテーブルの内か外を、ゴム の車(アイドラー)で回す駆動方法で、モーターシャフトに取り付けた、段差のあるプーリーで多数の回転数を容易に得ることができる特色が あり、モーターの振動を取り除くのが難しいが、駆動力の あるモーターしか使えませんので、力 強い音質が得られると好む方もあります。いずれにしてもこの方式と、SME等ナイフエッジのアームと組み合わせるのは、好み とは言え無知以外の何物でもないと思います。

ベルト・ドライブは、駆動モーターの回転をテープ 状や糸でターンテーブルに伝えるもので、フライホイル効 果を利用して、良い結果を得ようとする物ですが、市販品のように簡単に運べる位のプラッターの重さでは、充分なフライホイル効 果は得られず、各種の方法でごまかしているのが実情です。充分な効果を得るには最 低でもプラッターに、10kg以上必要で軸受にも対応が必要です。良くでき た物は、回転を感じさせない安定感のある音質が 得られます。

ダイレクト・ドライブは、モーターとターンテーブ ルの軸を直結するもので、駆動モーターの高速を、当時最新のサーボ・コントロール制御技術で低速にするものです。それだけに各社の技術力がそのまま性能に直結します。個 人的にはBSLモーターが単純明快で好ましく思います。また大量に作ってこそ性能もコストも合致するもの ですので、今後良好な物が作れそうにないのも困りものです。この方式は、ま ずまずの価格で、最良の性能・静寂が得られるのは、何にもまして魅力でした。一般的にDCモーターの方が駆動力があり、AC モーターの方に安定性で優位と言えると思いますが、個々の好みで選ばれるのが良いでしょう。

 次にトーンアームは大きく分けて、スタチィック・バランス型とダイナミック・バランス型に分かれます。オー ディオ用途では、ほとんどがスタチィック・バランスで、水平が取れない時や、移動が伴う用途にはダイナミック・バランスが使われます。
形状からは、リニアトラッキング・アームや、パイプ・アーム、
J字型、S字型等。軸受構造より、ナイフエッジ、シンバルサ ポート、オイルダンプ、一点支持他が、それぞれ種々の組み合わせや、電子制御で特徴のある製品が発売されていました。

またアームはカートリッジとともに使用する物です から、カートリッジに合わせるべきで、 アームが優秀だけでは無意味です。
すべてはカートリッジに依存すると言っても過言ではないでしょう。それだけに
SMEよ り始まった、ユニバーサル型のシェルを使うカートリッジの取り換えは、大きく両者の結合に功績があったと思います。また依存度が高いだけに、カートリッジ の設計時念頭にあったアームは適しているともいえます。少なくとも同時代にあったものの方が、良いと言えるかもしれません。しかし時代の変化は、それをも 上回るのが世の常ともいえます。

 そしてメイン主題「フォノ・カートリッジ」となりました。

カートリッジは 別項のように多種が存在すると思います。しかしそれ以外にもあっても不思議でなく、中にはユニークで素晴らしいものもあったかもしれませんし、抱腹絶倒の 物も有ったかもしれませんが、現在は速度比例型と言う、フレミングの法則に基づいた電磁誘導を利用したもので、分けてもムービングコイル型一色と言っても 過言ではありません。では何故そうなったか、一つにはアンプの進歩もあったでしょうが、それは極端に需要が少なくなり、少量生産それも手作 りで対応できるぐらいの物で、高価な金型も要求しない物と云うと、必然的にムービングコイル型か、精度のいらない普及型ムービングマグネット型に集約され るようです。

逆にいえば、他の物は大量に作らなければ採算が取れない、何らかの 使いにくさがある、大きな欠点がある等、それなりの理由はあるのですが、個人的には経済的理由だけのように思えます。他の部位も同様で、それなりの重量の ベルト・ドライブで、直線型のスタチィック・アームで、カートリッジ直付け型が、最も採算が良いようです。

カートリッジはそれ迄全盛期に生産された過去の物も数多いのですが、入手でき たものをこれから各種類について、個人的見解を述べますが、短時間であっても実際にすべて使用し、比較したうえでの感想になります。

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