フレット打ち直し
修理の依頼を受けて、フレットの打ち直し・指板の面だしを行いました。
これはその時の記録です。
(2010年6月実施)
このギターは、1986年製桜井ギター(Excellent))です。
プロの演奏家さんのものですので、すごく使い込まれています。

お預かりした時の弦高などを記録してから、弦を外しました。
指板は正確には測れませんでしたが、0.2mm位凹んでいます。フレットの減り方は、弦の真下が溝になって掘れている状況です。
フレットを抜きました。
私が入手しているフレットとはbarbの形状が違います。
河野ギター特製でしょうか。材料もやや硬いようです。
慎重にやりましたが数か所の溝に欠けができました。
こんなに緑青が出てきました。指からの汚れで錆びるのでしょうか。
汚れをふき取って、指板の平面性を調べました。
0−12フレットに直定規を当てると、5フレットあたりで0.2mm(正確ではありません)程度、0-19フレットでは最大0.5mm程度の隙間があります。一言でいえばいわゆる「順反り」ですが、12フレット以上でボディーが膨らんできているかもしれません
0フレットから19フレットに亘って平面になるように削ります。平カンナではちょっと難しそうだったので、台直しカンナを使ってみましたがうまく削れました。
凹みが取れたら後、サンドペーパーを使って直線(平面)だしを行いました。画像に見えるカンナ屑が削ったときに出た全てです。
溝の清掃を兼ねて、鋸(8寸目)を通しておきました。
それから、溝と指板の角を45度に面取りしておきます。
フレットを抜く時にできたチッピング(溝の欠け)は、無くなってしまいました。
フレットのbarbを削って、溝幅に対してきつくならない様に幅を調整しておきます。
フレットは元のものにクラウンの形状が近いものを選びました。LMIのものです。
タイトボンドを付けてフレットを木槌で打ち込みます。
このギターは15フレットまで、胴の中側に支え(フット部)があってここまでは木槌を使いました。これから上は、クランプを使って押し込むようにしました。
フレットの余分を切り取り、斜めに削ったのちバリを除きます。
演奏の際、指にひっかかるようなことなど無いように、丁寧に削っておきました。
そして、溝の底にできる隙間を埋めて、指板側面と面一に調整します。
フレットの高さを揃えるために、フレットの頭をダイヤモンド砥石で研磨します。ところどころフレットの頭が削られて平らになっています。
やすりを使ってフレットの頭の形状をかまぼこ型に整えます。
指板の側面にはフレット端を削るときに擦り傷が付きます。ペーパーで均してセラックを塗って色調を合わせておきました。
元の塗装はかなり厚いので、完全にフラットにするのはかなりの手間が要りそうです。全体の外観とのバランスを考えて、指板の側面のみの塗装をしました。
指板の研磨とオイルフィニッシュをして、フレットもきれいに磨きます。
スティールウールに油をつけて、指板を磨くと同時にフレットを磨きます。
その後にワックスを塗ってあります。
凹んでいた指板もまっ平らに、フレットもまっさらになりました。
指板のローポジションでの凹みが大きく、それを削ったのでナット側の弦高の変化が大きく出ます。
1フレットでの弦高を、ナットの溝を削って修理前の数値に合わせるとともに6本の弦高を揃えます。
測定値では、修理前より最大で0.3mm弦高が増えていました。

サドルは触らなかったのですが、12フレットでの弦高を確認しておきました。0.2mm低くなっています。テーパーゲージでの測定ですので精度としてはこんなものでしょう。
すべての弦を張りながら弦高を調整します。
最後に全体を清掃し、ワックスをかけておきました。

これで作業完了です。
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