膝まであった。羊歯の茂みが次第に減り、それに変って枝が重なり合あったって抽象的な形を織りなす雑木林に
さしかかるころから、徐々に坂なのか、足に力が入り前のめりになり体力の消耗が激しさを増してきた。
月の光が林の中でズタズタにちぎれ、気ままに差し込み、道は羊歯の茂みの所よりはるかに高く、頂上付近に達した
所で左右に分かれていた。右側には草木が茂り、左側には何も無く、不気味な暗闇が続き危険を感じ、石川 晴夫は右側寄りに歩いていたが、気が付くと元に戻っていた。結果的に、一回りしただけの無駄な行動であった。
そこは、すり鉢のふちの部分のように円を描いているように思われた。途方に暮れボートする春夫は歩くことばかりに気を取られて、休息することを忘れたせいで疲労が一段と高まっていることを意識し、休息場所を探して腰をおろしたが、その瞬間体が宙に浮いた何の術なく、まっしぐらに墜落していった。彼は、心身のすべては無意識の世界へと奪われ、暗闇の中では一つの物体の存在しか価値をなさなかった。人生も、ここで一時的に寸断され、体は一定方向へ落下しながら、植物や鉱物など数十種類にのぼる物が彼の体をかすめていった。この出来事は数十秒間続いき、最後の物にぶち当り、そこで抵抗を受け止め落下音が静寂を破りその存在を告げた。それを聞きつけた者が彼の体を、その場から移動させて行った。
彼の体は所かまわずかすり傷と打撲で赤くはれ上ったまま生死をさ迷っていたが、彼を生へと引き戻す努力が外部から施されていた。だが、夜が深けるに従がって彼の呼吸は荒れ不規則に変り、口元が乾き唇は、白っぽく艶なくなり、皺が切れたように浮き上がり象の肌のようになって、唇から発する息は熱く周囲の空気を湿っぽいものにしていた。
体全体が暑く顔色は赤く腫れ上がり付き添っている者の気持を不安雰囲気にさせた。二人の娘が交代で熱い頭や顔に冷たい布をのせては、熱くなった布を冷たい布と取り替える原始的なことを繰り返だけで、効果的な治療の方法を持ち合わせいないまま、徹夜の看病に没頭していた。その場にいた老人がこの様子を見ながら考え込んでいたが、突然顔を突然上げると立ち上がり、戸口を開いた。その瞬間から、新鮮な空気がくすんだ部屋を一掃して朝を告げるとともに、室内を明るくした。それは、外気のせいではなく老人の行動が何か良い暗示を彼女達に無言な期待と希望を与えていた。
老人が歩みを進め辿り着いたのは、岩場の洞窟であった。そこに入ると周囲は薄暗く空気が一変して外気よりも一層寒く老人の全身を固くさせていった。老人は持参してきた松明を籠から取りだし懐から火道具と藁を出して火を付けた。老人の顔が黒い岩壁から浮き上がって周囲の物が数多く見え始めると、次の瞬間奥の方から、ざわめく一塊の音が迫ってきた。そのれは、岩を掻き崩すかのように響きわたり、洞窟の奥から接近し老人は、まるで洞窟の掟を破った罪人のようにその場に立ち竦んでいるとそこへ多くの蝙蝠の群れが出口に向かって移動するのに出合わせた。老人の火に驚き行動したのか、その状況が数分間続き、通り過ごすのを待ち、再び奥に向かった。そのあと道は、登り坂で曲がりくねり、しかも、一人がやっと通れる見通しの悪い道が続き、思うようには進め難く時が過ぎたが、突如状況し広い所に出た。
そこには、中央に滝の流れがあり、それを溜める大きな池があった。そのあと老人は、その滝の裏に入いっていた。すると、岩肌に果実か花か見分けのつかない物が、咲き乱れていた。老人はその中から、少し濃い色のものを選んだ。それは花ではなく無花果のような形をして中身が柔らか物であった。それを籠に取って入れる作業を済まし急ぎ足で、また来た道を戻っていった。
立ちもどった、 老人が入り口の戸が開く音で、看病に付き添っていた二人の娘が、外気とともに生き返ったような表情に変わった。
老人は、疲れも忘れ、持ち帰ったものを取り出だした。それは、無花果の実に似た形をした茸で
器に絞り、その汁を若者の口に流し込み始めた、
暫くは、その効果は症状には出ないままで、今まで通り同じ作業を続けていたが、暫くすると顔に赤みが出始め、確実に回復に向かう症状に変化していった。
翌日には、身体の自由は奪たままであるが、意識が戻り言葉は出る状態になっていた。
若者は、「ここはどこですか」と最初の言葉を発したが、傍にいる二人の娘からは、何の返答もしなかった。
その声を聞きつけた、老人が傍にきて、
「良かった、意識が戻られ安心しました」と返答した。
「頭がボートして何が何だか分かりません、私は、石川と言います」
「私は、谷崎です」と言葉を交換して、「ともかく、詳しいことは後で説明しますので、今はゆっくり休養して下さい」と言って、石川の肩をたたいた。
自己紹介を交わし、若者は二人の娘にもお礼の言葉いって、再び目を閉じて眠りについた。
それからの一週間は動くことは出来ず、食事は口移し下の排斥物の処理は、二人の娘の世話になったが、茸は大変な効果があり回復を早め、体の痛みも取れ始め食事は他の人の力を借りずに一人で出来るまでになった。
石川は、寝ている間に谷崎さんと二人の娘の会話が普通の親子とは違い、何か他人行儀なことを感じた。それに、二人の娘には、呼び名もないのに疑問を持っていた。
「もう少しすると外を歩けるようなりますね、もう暫くの辛抱です頑張ってください」言って、谷崎さんは、ほほ笑んだ。
「石川さんは、気にせず、ゆっくり休養して下さい」ここに慣れられたら、私たちの仕事も手伝も頂きますから。
そうこうしている間に、石川晴夫は、体の痛みが取れるとともに、記憶も戻ってきた。
薬売りをする石川は、富山から大阪や京都を回ってこの山中に入ったが、訪問先で時間がかかりすぎ次の宿泊先まで時間がかかることを気にして、山中に入り、近道をするために、道を見誤って迷い、暗闇で方向を見失ったのが原因であった。
石川は、歩けるようになったので、外へ出た。そこは、今まで見たこともない地形であった。周りが岩盤に囲まれていて、山がなく、住まいの前に川が流れて、その向こうに畑があった。そこで、谷崎や二人の娘が働く姿が見えた。一周り、この地を歩いて回ったが、岩盤の形状が真っ直ぐではなく上の方で曲がっていて、まるで壺の中に居るような地形になっていた。昼の時間が近なったので、住まいに帰ると食事の支度が出来上がっていた。
食事中、谷崎さんが
「どうでしたか、ここの地形、他にはないことをお分かりなったでしょう」
「本当に、私も初めて考えもしない珍しい地形なので」とため息混じりに答えた。
食事が終わったら、ある所にご案内しますと言われるまま、後をつていくと、さほど住まいから離れていない場所に案内された。そこは、枯草が積み上げられたところであった。
ここが、貴方が落下していた所です。ここの掟のようなものがあって、必ず枯草を積み上げておく習慣になっています。ここの規則のようなものですと言って、ほほ笑んだ。考えてみると、この枯草がなければ、落下した際のクッションがなく大きなダメイジを受けている。打撲痛ですまず骨折していた。ここには、落下したことを住まいに知らせる音の出る仕掛けになっているので、落下の発見が早く分かるようになっているのです。この掟が重要な要素が含まれている暗示を石川は受けた。
谷崎さんは、追い打ちをかけるように、
「ここの生活は、何事にも侵されず安全で、少し不自由なところもありますが、慣れてしまえば快適なところです」それに、
「畑と川があるので食料は充分確保出来ています」と不安を解消する言葉を添えた。
石川は、ただ、家に残した、母親のことが気がかりであった。最悪の場合は、兄が面倒見てくれるようになっているので、何とかなると気持ちを慰めた。谷崎がこれ程ここから、離れないことを強調しているのには、ここの掟だけではなく、脱出する可能性が無いということを知らしめるための言葉として受け止めなければならなかった。
数日たって、すっかり元気を取り戻したので、
谷崎さんに「何か、私がお手伝いしたい」と声をかけた。
「娘の手伝をして欲し」いと言われるまま、畑の草取りなど始めて数週間経過した頃に、男性二人は野良仕事と魚とりや焚火の材木などの力仕事をすることになり、以前は、上の娘が住まい中の掃除や料理や機織を行っていた仕事を二人の娘が行うようになり、二分担かされた。
谷崎は、この地は地上から落下してきた、植物の種で草木が豊かに生息していて、その中には、布に使用できる植物も含まれ、楮や藤や葛などを使って糸を作り、布作りが出来きる。私が地上で、機織機械関係技術に従事していたので、その時の技術を生かして、ここの地である材料を使い設備は整えました。以前は布不足で転落した人の着衣を利用していたことなど話してくれた。
このように、二分化によって、今までにはなかった敷物や壁飾りなどの美的な生活品に関係ない物まで作られ、豊かな衣食住の生活が営まれているようであった。 住まいでは話せないことは、この野良仕事の場で、谷崎から伝えられた。 ここの生活に石川は、馴染みそれ程の不安感もなくなり、安定期に入ってきた頃になって、大きな変化が始った。
それは最大掟の一つである子孫継続の問題である。谷崎は、このことを遠う回しに石川に告げていた。ここでは、今まで一人の女子しか生まず、もし男の子の場合は、殺された。男性は地上から落下してきた者が精子を提供して子孫を引き継ぐ掟になっていると谷崎さんが告げた。しかし、谷崎さん配偶者は、数年前に他界したが、その前までは同じことを繰り返してきたことなどを聞き、枯草はその為に貴重な場所となっていることなど中には、 すべての落下者が保護されることなく、選択されるのは、若者の男性で、それ以外は殺されると聞かされていた。
貴方は選ばれた人です。この問題の重要性を強調したかったのか会話に力がこもっていた。石川は、娘の年齢に適合するので生かされたと言った。
しかし、娘が二人で、どちらも適正出産年齢に達している。以前は一人しか生まないことになっていたが、二人となり、頭が痛いと谷崎が言う。これは、完全に、私が掟を破ったことで罪深く感じている。頭を下げた。
年の上下の順序から常識的に上の娘が子供を宿す事になるが、貴方の心情もあり、こちらと強制できないと悩んでいるとも言った。
石川は、どちらかと言うと、下の娘の方が気性的に合うが、それを言ってしまうと限られた家族の中で、トラブルが生ずることを考えると言い出さずにいた。
谷崎さんが、ある時、それはそうと、こんなことを聞くのは、失礼と思いますが言って、
石川さんは「女性の交わりの経験がお有りですか」と問われた。
「私は、素人女性は経験ありませんが、玄人女性とよく遊びました」
「それじゃ、問題ありませんね」とホットする表情をした。このことが、引き伸ばしの理由ではないかと心配していたのではないかと思った。
こんな対話を、野良仕事の場を使って行われていたが、石川としては、このことを今すぐに返答することを避けていた。
しかし、谷崎は、いろいろと準備があるので、決断して欲しいと石川に迫ってきた。小さな家族には心理的な幅が余りない、やはり、バランス的に配偶者は上の娘でなければと判断し、上の娘と返答してしまった。
谷崎は、「それでは、早速住まいの準備をしないと」言った。
今の住まいには、元は夫婦の部屋に二人の娘が住い、男性二人は一部屋ずつ使っている状態であるが、新婚住まいを、新たに作ることが、ここの習わしになっていると告げた。
「その建設を二人で行った上で、正式に、このことを上の娘に伝える」と言った。
翌日から、今の住まいから少し離れたところに、資材を運ぶ作業が始まった。あらかじめ材木は、別の場所に置かれていた。その材料を使って建設が始まった。
谷崎さんは、ここは仮住いになるので、食事をする所もなく、ただ、寝るだけの部屋が建設されることになっている。その為に規模が小さいので、早く出来上ると言った。その通り一週間もすると出来上がってしまった。
その後谷崎さんは、それに対して何の抵抗もなく上の娘は、この建物に引っ越してきた。このことは、予め掟については早くから、言い渡されているのかもしれない。石川も同じ行動をとった。
やがて、初夜が訪れ、二人は同じ布団の中で肌を合わせて、契り合う行動が、始まったが、上の娘は、ただ相手の指示に従うだけで、少し抵抗を感じた程度で何もなかったかのように治まった。
素人の女性との交りあうのが、初めての石川にとって、予想もいしない、まるで人形のように、感情を持たない、肉体に触れた感覚であった。
朝起きると娘は、食事の支度があるので、元の住まいに戻り、全員で食卓に着くといった、本来と変わらぬ生活が続いている間に娘は子供を孕み、二人は谷崎が寝泊まりしていた夫婦部屋に移り、女の子を出産した。以降は、子供と娘が床をともにして、バッタリ夫婦の契り合いが掟で中止されていった。若い石川には、それがストレスになっていった。
谷崎さんから、厳格な契りのあとの掟を聞かせられているにもかかわらず本能を抑え切れずいた石川は、それを、下の娘に傾け始めた。本来情をもつ石川の心がそうさせていった。下の娘も、姉に嫉妬心を常に抱きとともに石川に同情心が働き掟破りが始まった。
二人は住まいから離れた所で度々会い始めた。上の娘は、子供に関心を強く持ち、石川の行動には無関心で、妹との仲が深まっているのにも、かかわらず何の嫉妬も感じていなかった。それが幸いして石川は下の娘との関係が進んでいった。下の娘と石川は、ある夜に草むらのベットで契りあった。
ここまでくると、もう止まらない夜な夜な、この行動が重なっていく、お互いに、下の娘とはお互いに情を持っているのが仇となり、離れられなくなっていった。石川は、これが、本来の夫婦でないかと幸福感を肌身に感じていた。
しかし、この行動は、谷崎の知ることとなってしまった。いつものように作業の場で、相談が始まった。
「石川さん、このところ、下の娘と夜になると出かけているが、どんな積もりですか」
「申し訳ありません、私も男です。出産後上の娘と契り合いを絶たれてしまい、ストレスが溜り落ち着くことが出来なくなって、つい、下の娘さんを誘い始めてしまいました」
「そうですか」
「男というものは、始末がつきませんね、しかし、このまま行くと下の娘を殺さなければいけないことになります」
これを聞いて、石川はゾットした。ここでは、一人の女性を保つことが、掟となっていることの重点性を改めて知らされた。
「私も、本来は一人の娘の出産に止めおくところを、二人にしてしまったことで大罪おかしたことを後悔しています」と頭を下げた。
このことが有って、石川は下の娘と合わないことにした。でも、納得のいかない下の娘は、度々誘いをかけてくる。どうしても相談したいと言うので、会うことにした。それは、次の悩みと続くこととなった。下の娘も孕んだと言い出した。
このことを谷崎さんにも告げて、何か解決の方法がないかと返答待ちとなった。しかし、ただ時間が経過するたけのことで暗い沈黙が漂ったままになっていった。
谷崎は、このままでは、また同じことの繰り返しと考え、殺さないといけないと結論づけしていた。
ことは、下の娘も感じていたが、何か良い方法がないか考え始めた。ずっと昔に同じことが有ったことを祖母から母親が聞いていたのを思い出した。それは、石川を助けた茸が生えている洞窟の奥に、地上に通じる穴があるということであった。そこを抜けるのに一人では、到底無理な小さな穴と聞いていた。もう、猶予がない、ともかく、石川に相談して考えてもらうしかないと再び会う決断をして、重要な相談があるので、会ってほしいと声をかけた。
石川も、このままでは下の娘が、殺される責任は自分にある。何か助ける方法を考えなければと緊迫した日々を過ごしていた。
皆が深く眠り込んでいる時刻を選んで外に出て、このことを下の娘が石川に相談した。
「それは、良い、私もいろいろと考えたが、ここから脱出する方法が無いと以前に谷崎さんから聞かされていた」ことを思い出して、気持ちが沈んだままであったが、
娘は、「母親と一緒にいった洞窟の奥に小さな穴を通り抜ければ、外に出ることが出来るので、心配いらない」と告げた。
それには、まず、体のスリム化しないと洞窟の小さな穴を通過することが出来ないので、減食することと太い紐と松明の用意などの脱出計画を話し合った。
一方谷崎は、何となく二人が逃げだすことを察し始めた。これで、下の娘を殺す必要がない、いずれ、そのままにしておいて、威圧感だけを意識的に与えればよいと思いつつ、自分が二人の娘を作った罪の意識が心の奥に存在していて、みずから娘を殺す行為に耐えがたかった。それにしても、ここから脱出するにしてもかなり困難なので、いずれ、二人は、自ら命を絶つと考えていたからである。
もう一案として、二人の女性が、このまま、子供を孕まして、維持できないものかと考えもしていたが、後々に予想のつかぬトラブルの根源になることも恐れていた。
いよいよ二人は、行動するための条件が整ったので実行に移すことになり、早朝から出かけて行った。谷崎は知らぬ振りでこれを見送った。このことは、既に谷崎から上の娘にも伝えられていたが、娘は、子供に対する母性愛だけを持ち合わせているだけで何の関心も示さなかった。それに反して、下の娘は、新しい人生の始まりに心ウキウキ、足取りも軽くまだ知らぬ地上の生活に、夢を膨らませていた。だが、この計画はそう簡単にはいかないことが待ち受けているにもかかわらず、頭の中では成功させたかのような心情にあった。 洞窟に入ると相も変わらず、外部の者を拒む雰囲気を保たれ、男性の体力だけでも大変なのに、女性は耐えきれない難所が、あちらこちらに点在していた。初めての体験が、あざとなる繰り返しで、やっと、滝の広場まで到着したが、クタクタになった体力を回復させるために、石川は娘に暫く休息させることにした。二人は、そこで睡眠をとった後に、最後の難所に向かった。
滝の裏の岩場は、薄いピンク色の茸の花盛りで目を見張らせる美しさを惜しみながら急ぎ足で通過して、先に進む娘の前に小さな穴が見え始めた、
「ここよ、お母さん言っていた抜け穴」と歓声を、娘が上げた。
しかし、考えていたより小さい、果たして、ここに入れるのか思案させられたが、谷崎が、ここからは出られないと言い続けたことが、再び現実に近づいてきたとを肌身に感じて、石川は頭を固くした。
娘に、「あなたは、私より身体が細いので先に入って下さいと言って、それはそうと、お腹子供は大丈夫ですか」聞くと、
「ごめん、あれは嘘、こうでも言わないと二人で、ここを出て行くことが出来ないと思ったから」と悪気なく言った。
娘の身体はダイエット効果で細く穴にスンナリ入ったので。足に持ってきた布紐を結び付けして、後ろから足の裏を強く押すと前に進んでいった。石川の腕のとどくところまで進めると、急にその体が前に落ちていったのか、紐にひかれて、石川の体が引っ張られて体を穴の中へ入っていったが、途中でどうしても動かなくなってしまった。最後にこれがあると石川が、現実から逃れない後悔をここで深めたが、しかし、体がどうにも動かない、このまま餓死と目を閉じた瞬間、向こうから、「大丈夫、大丈夫と女性の声が聞てくる」
石川は、その声で目が覚めた。
そこには、知らない女性が立っていて、「良かった、気がつかれて」とほほ笑んでいだ。
私は、「今何処にいるのですか」と言と、
「あなたは、今病院で治療を受けています。一週間意識無く昏睡状態が続いていました」
「ヘえ」あれは何だったのか、洞窟の穴の中で動けなくなって、あのまま死んでしまつたと思っていた、あの記憶は、それにあの娘はどうなったのか、頭が混乱して、何が真実なのか分からなくなり、私は、何故ここに居るのかと」と聞くと、
看護婦が、「ここから離れた所の山から川に落下して、魚釣りしていた人が、あなたを発見、船で下流まで運んで救急車で、この病院に入院させた」と答えてくれた。
石川の意識が戻ったことを聞きつけて、担当医師がやってきて、
「本当に良かった。このまま意識が戻らないまま死亡してしまうのかと心配でした」と真剣な顔で言って、ほほ笑んだ。
兎も角、このことは親族に知らさないといけないので、連絡先を教えて欲しいと言われるままにメモ書きして手渡した。
おわり