Flower Report


{9月の花} お月見の花
(2007年9月21日奈良新聞より転載)

 暑かった今年の夏もようやく終わりを告げ、花屋さんには秋の草花がお目見えしてきました。そこで今月の花は秋の草花を使ったお月見の花です。

 お月見とは旧暦の815日に月を鑑賞する行事のことで、その日の月を中秋の名月ともいい、今年は925日にあたります。昔ながらの縁台にススキとお団子をお供えしたのどかな風景が目に浮かびます。今回はそんな懐かしい情景を思い浮かべながら花を飾ってみましょう。 

器は手編みのかごを用いて自然の印象を出します。かごの中にスポンジをセットした小さな器を入れて花を挿します。今回はニューサイランという丈夫な葉でかごを編んでみました。比較的簡単に作れますのでニューサイランが手に入った場合はチャレンジしてみてください。ニューサイランは80センチメートルから1メートルの長さがあります。それを68本用意し、すべてを縦の繊維に沿って手で4等分に裂きます(図1)。このとき中心に近く特に繊維の丈夫な部分を1本〜2本選び、最後に縛るための紐として残しておきます。裂いたものを使って格子状になるように中心から縦、横交互に編んでいきます(図2)。すべて編み込んだら四方の端を2つずつ手で束ね、最後に1つに合わせてその部分を残しておいた紐で縛って完成です(図3)。今回は緑に白の縞の入ったニューサイランを用いています。葉の裏側を見せるように仕上げて竹のような和風の風合いを出しました。逆に表を見せるように仕上げると南国風のかごになりますので花もそれに合わせて生けるとまた違った雰囲気が楽しめます。

 山里の花を摘んできたかのようにかごの中に花を生けていきます。ススキを伸びやかに使い、風を感じさせるように少し傾けて生けます。ススキの葉は水が落ちやすいので葉の表面にハンドクリームなどを塗っておくと少し長持ちします。赤いケイトウと青紫のリンドウを低く生け中心をまとめます。コスモス、モレモコウは風を受けて揺れるように伸びやかに生けましょう。あまりたくさん花を入れすぎると全体的に重くなり、風情がなくなります。かごが見える空間、風が通る空間を考えて生けてみましょう。

ススキは日本原産のイネ科の植物で尾花ともいい、秋の七草の1つです。秋の七草は、薄(ススキ)、桔梗(キキョウ)、女郎花(オミナエシ)、葛(クズ)、藤袴(フジバカマ)、撫子(ナデシコ)、萩(ハギ)です。(万葉集では桔梗のかわりに朝顔です。)

どれも秋の風情あふれる情緒豊かな花です。いくつか取り入れて、お部屋に飾り初秋の香りを楽しみましょう。


{使用花材}ススキ(鷹の羽ススキ)、コスモス(ピンク)、ケイトウ(赤)、リンドウ(青紫)、ワレモコウ、ニューサイラン

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