Flower Report


{10月の花}秋風に揺れる花
(2008年10月23日 奈良新聞より転載)

 朝夕とすっかり秋らしさを感じるようになりました。ふと足元を見ると小さな草花もまた秋の風に揺れています。暑い夏を乗り越えて生育する秋の草花は夏の華々しい雰囲気とは違ってどこか楚々として気持ちをやわらげてくれる不思議な魅力があります。今回は庭にある身近な花材も使って秋の風を表現してみたいと思います。

 秋になると庭先にエノコログサがゆらゆらと風に揺れています。ネコジャラシとも言われており、穂はきれいな明るい黄緑色でふわふわとした触感が楽しい花材です。また春に咲いていたシランの花は実になっています。季節の移り変わりを表現するのにこういった実を用いるのも一つの方法です。その他の花材として黄花コスモス、カワラナデシコ、ワレモコウ、ヤブラン、羽毛ケイトウなど秋の花々を取り合わせてみました。

 今回は全体的に作品を小さめに仕上げてみましょう。器は横長の陶器を使っていますがもとはケーキが入っていた器です。最近はこういった器もおしゃれなものが多く気に入ったものをとっておくと後でまた楽しめますね。器全面に吸水性スポンジを器の高さより少し低くなるようにセットします。

 花を生けていきましょう。穏やかな秋風に草花が揺れているような印象になるように、花はお互いの茎が交差するように入れていきます。まず高い位置での交差を作り全体が半円に広がるようにさまざまな位置で交差が見えるように入れていきます。交差と言っても視覚上の交差で実際に茎がぶつからないように注意します。花の種類は多いのですが本数はそれぞれ一〜四本と少ないのがこの作品の特徴です。花の向きや茎のカーブをよく見て入れていきましょう。花達が風に揺れて対話しているようなそんな感じを味わいながら生けてみると楽しいと思います。

 この作品は幅二十五センチ、高さ二十センチととても小さな仕上がりですので、花はすべて小振りのものを使っています。花屋さんで買ってきた花の脇枝には小さなつぼみを付けた動きのおもしろいものがあります。上手に活用し、庭の小さな草花と取り合わせると趣のある作品になります。
 小さなかわいいアレンジメントですので飾る場所を選ばず、どこにでも置くことができます。小さいながらも存在感のある花を飾って花のある暮らしを楽しみましょう。

(使用花材)エノコログサ、シラン(実)、黄花コスモス、カワラナデシコ、ワレモコウ、ヤブラン、羽毛ケイトウ

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