Top>一般ログ>01.時間とは何か |
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「博士博士、時間って何ですか?」 「例によって突然だね。何でまた急に?しかも時間については以前話した気がするけど」 「あははー、実はアクセス解析覗いてたら、不思議な事に、Reportの『時間とは何か』というコンテンツに人気が集中してたんですよー」 「それはあれだ、哲学的な好奇心で検索する人の多さと、ログを漁る人は手始めに一番最初のテーマからみようとするという二つの理由が原因となっているんだろうきっと」 「ですよね、でも見返すとちょっと解かりづらいなぁって最近思ったんですよ」 「まぁ…そもそもが昔の事で、書いた動機も半分以上が冗談だからね」 「そうそう。でも意外に見られている以上、今のままじゃあ拙いのでちょっと手を加えようかなと思ってたわけです」 「なるほどねぇ。それじゃあメタな話はさておいて、時間とは何かについて改めて話していこうか」 「わっかりましたー」 「そうだね、まず、時間っていうと君は何だと思う?」 「時の流れのことじゃないですか?」 「それじゃあそのまますぎる。時という単語は時間という概念を文字に書き落としたものでしかない。結局時間について何も説明できてないよ」 「あ、そうか。でもそれ以外に、説明できないんですけど…。じゃあ、カレンダーとかで数える事のできるもの?」 「カレンダーは、時間を数えている物差しの一つだね。でも時間のことを、カレンダーで数える事ができるものと説明するのは本末転倒だよ。『米』を『軽量カップですくえるもの』と説明するくらい変だ」 「うーん、やっぱり解かりません」 「そもそも時間は二つに分けられる」 「二つ…はっ!もしかして時と間ですか」 「それは文字を二つに分けただけだろ!!」 「いってみただけです。二つとは、一体何と何でしょう」 「考えればすぐにわかる。それは物理的な時間と体感的な時間だ!!」 「物理的な時間!?物理的な時間、物理的な時間…そっか、時間には質量があったんですね!!」 「その通り!物理的な時間というのは光速度で移動するのだ!!」 「おお!」 「例えば太陽から地球に光が届くまでの時間を計測するとどれくらいか解かるかな?」 「えっと、確か何分かかかるんですよね」 「そう。太陽から地球に光が届くまでの時間、それは実に8分20秒だ。これは光の速さと同じだ」 「ほんとだ!!」 「ところで最新の研究でわかったことなのだが、重力も光の速さで進むらしいのだ。そこから考えるに世の中の基本原則と呼ばれるものはすべて光の速度で進むと考えても良いだろう」 「なるほど、解かりやすいですね」 「うむ!厳密にいうと、時間とは『物質が移動できる可能性』と言い換えることができる」 「物質が移動できる可能性?」 「そう。あらゆる物質を構成する、原子やら電子やら光子やらが移動できる可能性、と言い換えても良い。光が移動できる量を最大と考えて、全ての物質に均等に与えられた『移動できる可能性』だ」 「ややこしいですねー」 「なぁに簡単だよ。あくまで感覚的につかめればよい。僕が欠伸をするのと、僕が欠伸をしないのと、かかる時間は同じだろう?」 「あぁ、そうか、移動しなくてもいいんですね。筋肉とか」 「そう。そして僕が欠伸をする間、世界の全ての物質は移動し続けるか、移動しつづけないかのいずれかなのだ」 「もしかして物理的な時間っていうのはすっごく概念的なものですか?」 「そりゃそうだ。リンゴだって概念的なものだろう。赤い丸い甘酸っぱいそこそこ重い。何がリンゴの決定因かといえば、それはリンゴの概念だ」 「そういえばそうですね。…つまり、時間っていうのは、ナチュラルに動き続ける世界を、感覚的に捉えたもの、というのが正解でしょうか」 「まさにその通り!!だから時間を停めることは不可能だというのは解かるだろう?『想像で止める』ことはできるけどね」 「空想のお話ですね。時間よ停まれ〜みたいな」 「そうそう。ここのところを勘違いすると、ゼノンのパラドックスにはまることになる」 「ゼノン?何ですそれ」 「アキレスと亀って言う話だよ。アキレスというのはギリシャ神話の英雄ですごく足の速い人なんだけど、走って追いかけても前方にいる亀に絶対に追いつけない、っていう話」 「どうしてですかー。追いつけるんじゃないですか?亀なんて私でも追い越せますよ」 「考えてごらん。アキレスが亀の元いた位置に辿り着くころには、亀は少しは進んでるよね?」 「進んでますね」 「じゃあその進んだ亀のところに、アキレスが辿り着く頃にはどうだろう。やっぱり亀は進んでるんじゃない?」 「進んでますね、そりゃ」 「その進んだ所にアキレスが辿り着く頃には、亀はまた進んでる。無限に続けても、アキレスは亀に追いつけないんだ」 「あ!ほんとだ。どうしてですか!?」 「さっき説明したじゃないか。アキレスが亀の元いた場所に追いつくまでの時間は、やればやるほど縮まっている。最初は5秒かかって追いついたとしても、次に追いつくまでは0.01秒だ。その次に追いつくまでの時間は0.00002秒」 「いわれてみればそうですね」 「そうそう。0.00002秒なんて時間しか許されなけりゃ、そりゃあアキレスも追いつけないよ。それを繰り返して時間を縮めていけば、究極的にはさっきいったのと同じで、アキレスが追いつきそうになったら『頭の中で時間を停める』ってことなって結局追いつけないに決まってる」 「マラソンランナーがゴールのテープに近付けば近付くほどどんどんスローモーションになっていく編集みたいなもんですね」 「そうそう。想像では止まっていても、運動エネルギーをもった実際の物質はナチュラルに動いているんだよ。その事実は不変で、それが時間だっていうことだね。時間は常に流れているんだ。そして、それは当然場所によっても違うし、動いている物質によっても違う」 「なるほど。解かりました!……は。でもおかしいですよ」 「何がかな」 「たしか聞いたところによると、時間っていうのは『物質の速さ』によって進みかたが違うんですよ?ウラシマ効果、でしたっけ。光の速さに近付けば近付くほど、その物質の時間の進み具合は遅くなる、らしいんです」 「おお、良く知ってるね。その通りだ。それは地球上でも実験できる。究極的に精密な時計を二つ用意して時間を合わせるだろう?そのあと片方をエベレスト山頂、もう一つをマリアナ海溝の底に設置して比較すると、徐々に時間にずれが出てくるんだ。これは自転の早さが、中心付近と外周付近では違う事に起因する」 「そうなんですか……すごい。誰がそんな実験をしたんですか」 「さて!さっきもいったとおり時間というのは『物質が移動できる可能性』だ」 「あ、誤魔化しましたね」 「コホン。では頭の中にこれからいうことを思い浮かべてくれたまえ。まずここに二人の人間がいるとする」 「はい」 「二人の間は340メートル離れている。片方がもう片方に話し掛けた場合、かかる時間は何秒?」 「音の速さは、たしか秒速340mでしたよね。だからかかる時間は、一秒です」 「その通り。ではここでリカ君、君に質問しよう。この二人は実は宇宙船に乗っていたのだが、この宇宙船は真空中を光の速さで進んでいたのだ。厳密にいえば秒速29万9725kmで進んでいた事になるね。このときの、進行方向に向かう音の速さはどれくらいだろう。単純計算でいいので考えてみて」 「えっとえっと、秒速29万9725km+340mってことは、合計秒速29万9725.340kmですか?」 「はずれ。この世界では光の速さを超えることはできないので、合計も秒速299725kmだ」 「そんなヘンテコな!!」 「ヘンテコでも何でも、そうなっているのだから仕方無い。ようするに、時間が『物質の移動できる可能性』だとした場合、『光速度の中でさらに何かが動』かないといけなくなるんだから、その中において『物質の移動できる可能性』は自然に増えてるんだ。これはわかるかな」 「うう、確かにそうかもしれないですが」 「たとえ同じ物質でも、光の速さに近い速さで動いているものと、それより遅いものとは『動ける可能性』が違う。つまり時間の流れが違うわけさ」 「何か解かったような。解からないような」 「解かっても解からなくても良いよ。現実的に生きていく上で、物理的な時間など何の意味もない。大切なのは体感する時間だよ」 「そういえばさっきもそんなこといってましたっけ」 「そうそう。考えたら簡単にわかると思うけど、10歳の人間と20歳の人間では一秒に対する感覚が違う」 「え!?そうなんですか?そういえば、年をとるごとに時間が過ぎるのが早いっていいますけど」 「そりゃそうだ。だって10歳の人間にとっての1秒と20歳の人間にとっての1秒は、人生に締める割合が倍も違う。感覚的に違って当然さ」 「解かりました!…ん?ちょっと待ってくださいよ。てことは、生後1秒の赤ちゃんにとっての1秒は私にとっての20年に相当するんですか?」 「その通り!だから何と生後1.5秒の赤ちゃんは君よりも長い人生を生きていることになるのだ!!」 「そうだったんですか、どおりで!!ってそんなわけないじゃないですか!!!」 「くっ、ばれたか」 「ばれたも枯れたもありません!」 「ようするに、体感時間っていうのは思考密度の差だよ」 「思考密度の差?」 「うん。大人になれば、新しく体験することも少ないだろう?だから特定の反応に対するリアクションが固定されている。電車に乗れば本を読む、寝る、みたいにね。つまり、それに対して考える時間がなくなっている」 「うーん、他にも朝起きてトイレ行って手を洗って顔を洗って歯を磨いて…ってすることは固定されてますね」 「そうそう。そうやって思考しない時間っていうのは『得たものがない』ぼんやりとした時間だ。でも若ければ若いほど、そういうことは少ない。電車に乗るという単純な行動だけでも、外をみたり、吊り革にぶら下がったり、踊ったり回ったりしている」 「い、いわれてみれば…」 「つまり、充実しているわけだ。これは解かるかな?」 「解かります。でも、充実している時って、時間が過ぎるの早くありません?」 「そうだよ。『今が楽しいと時間が過ぎるのは早い』んだ。だから逆に君が頻繁に体験してる迷子だって、そのあいだは時間を長く感じるだろう?」 「あん…私が方向音痴だってことばれてますか」 「そういう設定だからね。でも学校の通学路に対しては、時間が長いとも短いとも思わないはず」 「そうですね。でもでも、子供のほうがそういう楽しさが多いんだから、年をとって時間が過ぎるのが早くなった、というのは変ですよ?」 「その通り。だから大切なのは『思い出した時の密度の差』なのだ。子供時代が楽しければ楽しいだけ、振り返ったときに時間が長かった気がする」 「そういうものですか…」 「そうそう。ブランクが増えれば増えるだけ、子供時代と比較して何もやってない、できてないと思ってしまう。だから、時間が過ぎるのが早くなったと思うわけさ。何もしてないわりに、時間ばかり過ぎるわけだからね」 「確かに…」 「他にも体感時間を長くする要因として、その刺激が嫌なものであること、その刺激がいつまで続くか解らないことなどがあげられる。…つまるところ体感時間を延ばすのに一番簡単な方法は、君みたいに一生迷子になりつづければよいのだ!!!」 「解かりました!迷子になれば良いんですね!!」 「頑張ってくれたまえ!昔の哲学者だって人生の迷子だったのだから!!!」 |
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