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「ねぇ博士。子供の頃から不思議だったんですけど、鏡って前後左右は反転するのに、どうして上下だけ反転しないんですか?」 「いわれてみれば、不思議だな。鏡は前後だけを反転しているはずなのにね。まぁようするにこれは定義の問題だ」 「定義?」 「そう。例えばね、リカ君にとって上下の定義は何?」 「上下ですか?うーん、頭のあるほうかな?あ、逆立ちしたら違うか。そっか、重力の中心に近いほうが下で、遠い方が上なんですね。主観的には頭が上ですけど」 「そうだね。じゃあ、前後の定義は?」 「そうですねぇ。これは顔の、というか、胸とかお腹とかのある方向が前、その反対が後ろだと思います」 「そうそう。もっとまとめていうと、目の位置か、初期設定の進行方向だ。蟹とかはちょっと特別だけどね。じゃあさ。左右の定義はいえるかな?」 「左右ですか?簡単じゃないですか、えーっと右手のある方が、じゃなくって、えーっと、えーっと、・・・あれ?」 「ふふふ、わかるかな?」 「右手っていう言葉は、左右が決まっているから決まるんですよね?」 「その通り。右手が左にあれば左手だ」 「うーん。こっちの手のある方が右で、こっちの手のある方が左。こっちの目のあるほうが右で、こっちの目のあるほうが左。・・・あ、そうか、わかった!わかりましたよ!」 「いってごらん」 「上下を決めて、前後も決めて、右側にあるのが右、左側にあるのが左ですね!!」 「そうだ。よくわかったね。左右は前後と上下を決定しないと決定できないんだ。おめでとう」 「ん?何がおめでとうなんですか?」 「今さっき、鏡の不思議が解けたじゃないか」 「え?どうしてです?上下前後左右の定義をしただけなんですけど」 「鏡はやっぱり上下だけを入れ替えないんじゃなくて、前後だけを入れ替えているんだってことさ」 「どういうことですか?よく意味がわからないんですけれど」 「鏡は前後が反転するっていうのは解かる?」 「左右じゃなくてですか?」 「うん。鏡っていうのは、そもそも鏡を中心に前後のみを入れ替えているんだよ。鏡っていう境界線に近いものは、近く、遠いものは遠いっていう風にね。当たり前だけど、頭上に鏡を持ってくれば鏡に近いほうが、鏡の中で、君に近付くだろう?」 「解かりました。で、それが何なんです?」 「じゃあ、いいかい?左右っていうのは、前後と上下を定義しないと決められないって言うのは、さっき解っただろう?だから前後が入れ替わる鏡では、一緒に左右まで反転してしまうんだ。基準の1つが入れ替わるわけだからね。これは上下だけを入れ替える鏡を例にとってもわかる。天井に鏡を張っても左右が入れ替わるだろう?」 「あ、本当ですね。そうか、すると、前後と上下を同時に入れ替える鏡では左右の反転がないんですね」 「正解。丸く凹んだ鏡で実験してみれば、すぐにわかると思うよ。そうだな、ボールでも似たような体験はできる。前後の特徴が無いボールは、基本的に人から見えるほうを前、って規定されやすいからね。ボールを真ん中において人間を2人立たせた後、『左はどっち』って聞いたらお互い違うほうをさすんだ。まぁこの例はボールには前後の定義が無いっていうことを利用したもので、前後の定義を入れ替える鏡とはちょっと違うんだけどね」 「へー、面白いですねぇ。・・・でもどうして、よりによって左右だけ定義が曖昧なんでしょうか?」 「それはね、生物には左右の区別が無いからだよ。左右対称だからだ。同じような物を区別するには、結局は周りにあるものを基準に持ってくるしかないんだよね。だから、もしも月が2つあったとしたら、月自身を区別するんじゃなくて、周りにある相対的な位置からそれを区別する事になったはずだよ」 「月が2つなんて素敵な表現ですね。あ、じゃあ左右が明らかに違ったら左右の定義は明らかになるんですか?」 「そうだね。右手だけがハサミの怪人は少なくとも、鏡に映った自分を見て『あ、左右が入れ替わってる』なんて思うことは無いはずだ。余談だけど、前後の区別が無くて、右手でご飯を食べて、左手で排泄する生物にとって、結局は右手が前で、左手が後ろってことになるんだ。面白いだろう?結局は前後も上下も左右もただの言葉っていう器で、大切なのは概念だってことさ」 「わかりましたぁ。それにしても左右という概念の区別は、生き物が左右対称だから生まれただなんて、なんだか不思議ですね。また博士の詭弁に乗せられているんじゃないかしら?」 「さァて。それはどうなんだろうねぇ」 |
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