Top一般ログ>05.ロボット大作戦
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Title: 05.ロボット大作戦
Genre: 今日の一言->Report
Date: 2002/10/30
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「あ、博士何をしているんですか?」

「む!?ちょうど良い所に来た、見てくれリカくん!大発明だぞ!!見よ!!これぞ人類初の2足歩行型ロボット『エレクトラ』だ!!最高時速5センチメートルという脅威の性能を誇り、なんとジャイロスタビライザーを使わずに自動でバランスを取るという恐るべき頭脳を有しているのだ!!」

「へー?2足歩行ですか?でも似たようなのはすでにASIM○とか先行者が開発されてますよね」

「何?何だそれは」

「・・・?さぁ。H○NDAと中国が作ったロボらしいですけど、私も詳しくは知りません」

「むぅ。知らない間に世界はそこまで進んでいたか」

「博士は世情に疎いですからねー」

「放っとけ。しかし、それじゃあ人類初は名乗れんな」

「遅すぎますよ、時期が。時速5センチメートルも相当遅いと思いますよ。別の意味で脅威です。ところでどうしてエレクトラなんですか?」

「うん?あぁ。深い意味は無い。その辺りにロボット犬が転がっていると思うんだが、異常に僕を嫌うからエディプスと名付けたんだよ。エレクトラはまぁその連想だ」

「ふぅん。性能はともかく随分造型に凝ってますね? 動くフィギュアにしちゃったりして」

「馬鹿な」

「でもこれって歩くことしかできないんですか?」

「そんなことはないよ。頭もそこそこ良い。ところでリカくんはコーラを飲みたくは無いか?」

「あ、ちょうど喉が渇いていたんですよ。頂きます」

「ふふふ、エレクトラは移動に時間はかかるものの、そういう手伝い的な機能も有しているのだ。見よ!!・・・エレクトラ、コーラはあるかい?」

「ありますよ」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・博士」




「・・・・・・・・・・・・・・・・・うむ、少々言語中枢に問題があるようだな」

「いや、そういう問題じゃなくて・・・」

「みなまでいうな。哀しいから。それにしても、うーん、もう少し改良してみるか。質問に答えるだけじゃ意味が無いもんな。・・・目標は人間と間違うようなロボット。こんなところで頓挫するわけにはいかん」

「おー、すごい上段に構えましたね。・・・あれ、そういえば、前から思ってたんですけど、人とロボットの違いって何ですか?」

「人為的かそうでないかの違いだろ。えーと、放熱材はどこだったかな」

「えー!?でもそれじゃあハサミはロボットなんですか?」

「ハサミは道具さ。ちなみに道具っていうのは、その人間には出来ない事を補助するためのものの事だよ。金槌や車椅子、場合によっては人間自体も道具と呼ぶだろう?」

「それじゃあロボットって何なんですよ?」

「ロボットは生物にも出来る事を代わりにしたり、出来る能力を強化したものだね。火星探険ロボや、機械製造ロボ、愛玩動物ロボ。巨大ロボもそうだな。そういえば人間をロボットと呼ぶこともあるよね」

「ふーん、・・・微妙な定義ですよね」

「そうだよ。微妙なんだ。雑誌を見ているとロボットは今後どうなるか、ということについて議論する人がいるんだけど、発言者の中には、稀にロボット観が他の人と違う人がいるから困ったものだよね。ロボットは道具なのだから、いずれは完璧に使いこなせなくてはいけない、とかね。この人は間違っちゃいないけど、側面しか指摘していないから片手落ちだ。こういう意見って意味無いよね?」

「ええ。側面しか指摘していない意見、そうねー。醤油は飲みすぎると毒だから飲むな、っていってるみたいなんですね」

「わ、わかりにくい例えだね。むしろ、時計は時間を測るものだから、時間を測ることのみを追求すべきだ、っていってるみたい、という例えの方がわかりやすいよ」

「あ、そうか。そうですよね。時計にコンパスがついていないと道に迷いますもんね」

「それはリカくんだけ」

「あー酷い。・・・それじゃあね、博士。遥かな未来、例えば細胞レベルの小ささの部品でロボットができて、人間並みの意思と、身体を手に入れたら、それは人間と呼ぶべきですか?」

「ロボットはロボット。人間は人間。名称が変わる必要も意味も無いと思うよ」

「えーっ!?どうしてです?器も中身も一緒なんですよ?便利じゃないですか」

「歴史が違うじゃないか」

「でも、それくらい未来になって、ロボットの子と人間の子が一緒に勉強するときとか差別になりませんか?」

「差別というのはまた別の問題だよ。大切なのは区別さ。例えば犬が進化して人間そっくりになったとしよう。リカくんはこいつを人間と呼ぶべきだと思うのかい?」

「えぇ・・・!?うーん、呼びません。犬さんにも誇りがあるだろうし」

「だろう?ちょっと話が飛ぶけど、世の中には、名前が大切な視点と、中身が大切な視点が存在する。何かわかる?」

「わかりません」

「だろうね。名前が大切、というのは文化的な視点だよ。夜、という言葉をとっても、日本語のよる、英語のナイト、仏語のミニュイなど、さまざまな呼び方があるよね。ようするに人間の精神活動を重視した視点ということだ。他にもちょっと違うけど、作家の名前なんかもそうだよ」

「作家、ですか?」

「そう、作家。作家の多くはペンネームを使うけど、作品に対して必要なのは、このペンネームなんだ。中身、つまり本人が必要なんじゃない」

「え、だって、本人がいないと、次の作品が書けませんよ」

「それはどうかな?本人と全く同じ作風を持つ偽者が、本人と同じくらいの品質の作品を、本人のペンネームを使って発表したらどうなると思う?」

「読者はそのペンネームを持つ人の作品だと思い込みます・・・。でも、本人が文句をいったらどうなんです?」

「死んでいれば文句のいいようが無い」

「・・・そっか。だから本人は必要ないんですね。合作とかの場合を考えると、ますます名前は重要ってことか。Aさんの作品と、AさんBさん合作の作品は、作者の『中身』はそこそこ一緒ですけど『名前』は違いますもんね。名前を統一して同じ人の作品だといったらAさんもBさんも困る、というか怒るでしょうね」

「そういうこと。人間の精神活動を重視する文化的な視点が、名前を重視する視点だ。妖怪、伝統、語学、文学、社会、歴史、宗教学、とかだね。わかりやすくまとめると、発生した事実は同じでも、解釈の違いを問題にする視点、ってことかな。すると、中身を重視する視点っていうのは何だと思う?」

「逆に・・・、発生した事実のみを見つめる、物理学的な視点・・・ですか?」

「そうだね。これは科学とか、よけいな先入観を排した客観的な視点だ。発生した現象自体を扱うんだから、名前なんてどうでもいいよね」

「ええ。つまり、この視点の場合、名前はただの記号なんですね」

「わかったみたいだね。法律や数学、自然科学なんかこの部類だ。それじゃあさっきの話にもどそう。君は、辿ってきた歴史の違うロボットを、人間と呼ぶのはアリか、と質問したけど、これはアリかな?」

「なし、だと思います。ロボットが人間と同じ感性、意思をもつのであれば、接し方は完全に同格であるべきですけれど、その名にまつわる歴史が違う以上、呼び方を変えるべきではないんですね?少なくとも、かえるのであれば、過去にそういう名があったことを残しておいた上で新しい名称を考えれば良いということでしょうか」

「そういうこと。これは現在の差別表現にも適用される考えかただと思う。差別的な表現で傷つく人がいる以上、その表現を変えるのは仕方の無いことだけど、せめて名前の存在くらいは記録しておかないとね。それでも傷付く、っていう人がいるなら無くなってしまうのもしかたのないことだけれど」

「なるほど、難しい問題ですねぇ。重要度が学問に傾くか、心を持つものに傾くか、ですか」

「当然、心を持つものに重点を置くべきだけどね。あ」

「あ、煙吐いて壊れましたね」




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