Top>一般ログ>10.モンティ・ホール問題 |
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「ねぇねぇ博士、冷蔵庫に入れてあったわたしのチーズケーキ知りませんか?」 「おや、丁度いいところに良く来た。リカ君。何だか久しぶりな気がするね」 「何故か久しぶりな気がしますね。で、何です?」 「うん、これを見てくれたまえ」 「何ですか? あ、箱が三つ置いてありますね。A、B、Cとか書いてありますけど」 「うむ。どれも白い箱だ。ところで君はモンティ・ホール問題というのを知っているかね」 「も……も?」 「桃じゃない。モンティ・ホール。一文字しかあっていないじゃないか」 「だって知らないですもん」 「まぁいい、良いか。この三つの白い箱の中に一つだけ、チーズケーキが入っているとしよう」 「あー! わたしのチーズケーキ」 「その通り。この中に、あっ、こら、触っちゃいかん!」 「だって! ちょ、もうちょっと」 「く、触っちゃいかん、落ち、落ち着いて聞きたまえ」 「うー。何ですかぁ」 「何でまだ手を伸ばしているんだ君は。良いかね。君はこの白い箱の中から1つだけ箱を選ぶことが出来る」 「……もしかして、正解したらチーズケーキが貰える、とか、そういう寸法ですか」 「その通りだ。さぁ、どれにする」 「えー……。何だか納得いかないなぁ」 「まぁまぁ。騙されたと思って選んでみたまえ」 「うーん……。じゃあAの箱で」 「そうか。Aの箱だな。間違いないな」 「はい」 「では、残るBとCの箱のうち……よっと。Cを捨てることにしよう」 「あ!」 「大丈夫、中はからっぽだ」 「あ、本当ですね」 「さて、残ったのは君が選んだAの箱と、Bの箱な訳だが」 「はぁ……。そうですね」 「もう一度君に、選びなおすチャンスを与えよう」 「え、ええ!?」 「つまり、残ったAの箱と、Bの箱のうち、どちらか好きなほうを選べるわけだ」 「もう一度ですか、何でわざわざ」 「まぁそこがモンティ・ホール問題の面白いところだな。さぁどうする」 「えー、でも、結局、Aの箱とBの箱のどちらが正解かわからないんですよね」 「そりゃそうだ」 「じゃあ、Aのままにしておきます。どうせどっちにしても確率は50%ですし」 「ふふふ」 「何ですか、その不敵な笑い」 「どうやら君もモンティ・ホール問題にはまってしまったようだね」 「え、どういうことですか」 「これは確率論の問題なのだが、実はAの箱にチーズケーキが入っている確率は1/3なんだ」 「へ?」 「だから、Aの箱にチーズケーキが入っている確率はBの箱にチーズケーキが入っている確率より少ないんだよ」 「え、あはは。まさかそんなぁ。ABCのどれかが正解からABのどちらかが正解、に問題が変わっただけじゃないですか。1/2に決まっていますよ」 「直感的な判断と、論理的な判断を誤る典型的な例だね。さぁ帰るか」 「あれ? えっと、その、解説はないんですか? 何だか納得できないです」 「うーむ」 「……」 「まず、ABCの箱のうち、Aにチーズケーキが入っている確率は1/3だな」 「はい」 「そして、BCのうち、入っていないほうの箱を捨てるとする。今回はCだったね」 「はい」 「もし最初に選んだAの箱が空っぽの箱だったとしたら、ここでBにチーズケーキが入っていることが確定する」 「そうですね。BかCのどちらかが当たりで、ハズレの方を捨てるんだからそりゃ確定しますね」 「じゃあ最初に選ぶAの箱が空っぽの箱である確率は?」 「2/3ですね」 「そのとおり。Aの箱が空っぽの確率が2/3で、Cの箱はもういないので、Bの箱が空っぽの確率は残り1/3となる。つまり、Aの箱が空っぽでない、チーズケーキが入っている確率は1/3だ」 「あれ?」 「解決!」 「あれーーーーー?」 「博士!」 「何だね」 「直感的に、納得できません! もっと解りやすくお願いします」 「やれやれ。じゃあ直感的に解るように説明しよう!」 「おお!」 「結局のところ、最初に選んだAの箱にチーズケーキが入っている確率は1/3。これは変わらないんだ」 「えーっと、そうですね。選んじゃってますもんね」 「うん。でも、選んでないほうの箱たちのうち、ハズレの箱が減っていくと、相対的に減らなかった箱にチーズケーキが入っている確率は高まっていくよね」 「そういえばそうですね。 あ、もしかして最初にAの箱を選んでいるのがポイントだったりします?」 「その通り! 最初に選んだ箱は、捨てられた箱による『あたり』の確率アップの恩恵を受けられないわけだ。さらに分かりやすい例を言うとすると、例えばこれが3個じゃなくて1000個の箱だとわかりやすい。最初に好きな箱を選んだ後、残りの999個の箱のうち僕がはずれの箱だけを998個捨てたとする。最初に選んだ箱と、残った箱、どちらを選んでも50%だと思えるかな?」 「確かに思えません。1000個から選んだ1つがあたっていることなんてそうそうないですよ」 「うむ。Aの箱にチーズケーキが入っている確率は1/3のままだが、Cの箱が減ることによって、Bの箱にチーズケーキが入っている確率は1/3増えて2/3になったともいえるね」 「ほんとだー!」 「ある確率に対してあるデータ……今回は箱の操作だったわけだが、そういうデータが得られた時に、その結果を反映した確率を事後確率という。勉強になったかね」 「はい、なりました!」 「よし! じゃあ帰ろうか」 「あの、博士」 「何だね」 「今見たらABCどの箱にもチーズケーキが入っていないんですけど」 「……」 「……」 「……」 |
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