3チャンネルか、4チャンネルか、5チャンネルか?

そして何も聞こえなくなった

2007/04/29

クラシックファンの方から、「2 チャンネルステレオとマルチチャンネルは、どちらが良い悪いでなく、別物である」と言う発言をよく聞きます。これはそれぞれの良さがある、という見解を言 外に含んでいると思われますが、実際クラシックの演奏会に行けば、ステレオの演奏会、マルチチャンネルの演奏会という区別はないのです。あるのは演奏者と 舞台とホールと観客だけです。それを部屋に持ち込んで、できるだけ本物らしく再生するには、どうすればよいかという問題です・・・

(追記1) SACDは分解能は良いが、音が広がりすぎるし、音の厚みが不足するので、CDを好んで聴いている、という意見をよくみかけます。またSACDは、細かい 音がたくさん聴こえているけれど、それが仇になってか、クッキリした力強い感じが後退するように聴こえます。CD層は細かい音は聴こえない代わりに、小音 量でも、エネルギーのある音に聴こえます。小音量で聴くSACDは頼りないものです。しかし音量を上げていったら、 関係は逆転し、情報量の多いSACDのほうが迫力を増して聴こえると思います。そのためには部屋の広さと、音量を上げられる環境と、高品位の再生装置が3 つとも必須です。音量を上げた状態でマルチチャンネル再生に切り替えると、(良いセッティングが必要ですが)音が充満し、クラシック再生であれば部屋全体 がコンサートホールになります。

(追記2)2chステレオのほう が、音色の濃さ・厚さでサラウンドを上回る、という意見がありますが、音色の濃さ・厚さを売り物にしている録音は、古い物(1950-1970年代のアナ ログ録音)が多いので、その時代にはマルチチャンネル音源は存在しないので(ペンタトーンのRQRシリーズという例外はありますが)、そもそも比較は無理 です。最新の録音(クラシックの場合)はステレオでもマルチチャンネルでも、CDでもSACDでも、高解像度、ワイドレンジの方向です。こういう傾向を良 しとしない方がおられて、時代物の録音を好み、復刻CD,復刻SACD,アナログ・ディスクをステレオ装置で聴かれますが、このホームページの行き方とは正反対です。私のような者から言わせると、古い録音はジャズでもクラシックでも、名録音と言われるものでも、ダイナミック・レンジも周波数レンジも狭く、音は濃く、雰囲気は良いのですが、コンサートホールで聴くような広がり・臨場感が出ないのです。

(追記3)音場を追求するクラシッ ク系と違って、ポピュラー系の音楽の生演奏はPA装置を通して聴きます。録音も、ヘッドホンを付けた各プレイヤーが互いに顔が見える程度に仕切ったブース に入って録音し、後でミキシングするのが普通なので、立体感といっても所詮人工的なものに過ぎない、マルチチャンネル音源にこだわらなくてもよい、という 意見もあります。私ももっともな意見だと思います(しかし”チェスキー”や”リン”のような一部レーベルの最新ジャズ・マルチチャンネルSACDを聞くと、ステレオでは感じられないその「自然さ」に驚きます)。

「3チャンネル」とは、左右フロント、センターチャンネルで構成したシステムをいいます。

「4チャンネル」とは、センターチャンネルをなくしてしまい、左右サラウンドチャンネルを付け加えたシステムをいいます。

「5チャンネル」とは、左右フロント、センター、左右サラウンドすべて備えたシステムをいいます。 


1. 3チャンネル

2chステレオとの違いはセンターチャンネ ルがあることだけです。5ch音源に入っているリアチャンネルの音は捨てます。サラウンドチャンネルがないので奥行き感は2chステレオと同じ程度です。 しかしセンターチャンネルのおかげで、左右の音がなめらかにつながり、しかもスピーカの数が1本多いので迫力もすごく増えます。

言い換えると、左右のスピーカ間隔を2ch ステレオと比べて広げることができます。横長の部屋で、左右のフロントスピーカの間隔を広めに設定して、センタースピーカ(*)と合わせて3つのスピーカ で聴けば見事な横のつながり感と大迫力が得られて実に気持ちがいいのです。また、左右のスピーカだけではシャープな音像が得られないならば、小型センター スピーカの追加によって音像の定位を良くし、音像サイズを小さくできます (定位がよくなる(**))。 このような3ch特有のメリットが、2chで苦労するよりも簡単に得られます(***)。

(*)SACDマルチチャンネルを聴くな ら、センタースピーカはフロントスピーカと完全に同一の物が必要、と言う人がいますが、これはセンターの音質を落としてはいけないという点で真実です。確 かに、センターの音質を落としたら違和感が出るので、センター用アンプ、センター用スピーカともに、(フロントとまったく同一でなくても良いけれど)音質 がフロントに迫るものを使います。この点でリア用のアンプ、スピーカよりも要求が厳しいです。実際、センタースピーカとリアスピーカを中級AVアンプのパワー部で駆動し、フロントスピーカを外付けのパワーアンプで駆動すると、センターの音質低下が起こり得ます。AVアンプにパワーアンプを外付けするなら、ほんとうは3ch以上のパワーアンプを使うのが好ましいです。

(**)定位の苦手なトールボーイ型スピーカのセンターに小さな良質なブックシェルフ型スピーカをもってくれば、簡単に定位感を補うことができます。

(***)3チャンネルにするデメリットもあります。(1)上に述べたようにセンターの音質が悪いと、左右フロントの足を引っ張るので、センターは無いほ うがましです。(2)別のページの「センタースピーカーのセッティング」にも書きましたが、フロントスピーカと横に並べて一直線上に置いた場合、センタースピーカの存在そのものが音場を乱すことがありま す。特に大型のセンタースピーカです。左右のスピーカの真ん中に大きなオーディオラックがあるのと同じです。

2. 4チャンネル

サラウンドチャンネルが存在します。このため、2チャンネルに比べて臨場感が上がります。つまり、フロントスピーカの手前に奥行きのあるステージができあがります(*)。 この感じは、2〜3チャンネルが横に広がる『絵』であるのに対して、4チャンネルは『立体的な彫刻』になります。音質そのものは2チャンネルに比べて向上も低下もしませんが、音像が奥行き方向に分離する結果として、透明度が上がり耳に優しく聞こえます(**)。 これも4チャンネルの大きな利点だと思います。

4チャンネルの欠点もあります。サラウンド の音量が強すぎると、部屋中に音がこもり、風呂屋さんで聴くような音になります。AVアンプの自動調整を信用し過ぎると、このようなことになることがあり ます。勇気を出してサラウンドの音量を手動で下げると解決します。しかしサラウンドの音量を下げるくらいなら、フロント2チャンネルで、部屋の状態を良く していけば、十分な臨場感が得られるのではないか、という意見もあります。私ももっともな意見だと思います。



<図1>2チャンネルの音像

     






<図2>4チャンネルの音像

               
           




              


(*)録音の良い音源なら2chでも奥行き・広がりはある程度ありますが、4chの音像はもっと奥行き・広がりがあります。かないまるホームページのサラウンド勉強会に詳しい解説が載っています。

(**)音像が重ならないで分離される結果、オーケストラが全強奏するときでも、2chで聴く ときと比べて混濁感(耳に響くザクザクした、疲れる音)が減ります。これは人間の両耳が遠い音と近い音を聴きわける能力を持っているからです。なので、体をスッと通り抜けていくような、透明な音になります。 本当に良い装置・部屋なら、ステレオ再生ではパワー感が出て、リア用のアンプを追加してマルチ再生するとパワー感はそのままで、透明感が加わります。


なお、4チャンネルシステムでは、5chディスクに入っているセンターチャンネルの信号は、左右フロントに振り分ける(ダウンミックスする)ことが出来ます(*)。 ところが私の持っているSACDプレーヤのようにディジタルダウンミックス方式であれば、センターの信号が混ざることにより、左右フロント信号の純度が低下します(**)。 このフロントの音質の低下は、マルチチャンネルの場合、リアとの位相関係までおかしくしてしまいます。先日、自分の5チャンネルシステムで、うっかりNo-Centerに 設定したまま聴きましたが、AVアンプの 5/7chステレオモードのような感じになって、いつものような彫りの深い音場感が得られないのです。おかしいなと思えば、センターの音が左右に流れ込ん でいました。マルチチャンネル再生は、音の純度、位相を確保しなければ音場感に影響するので要注意、です。

そこでダウンミックス方式にする場合、アナログダウンミックスにするか、それができない場合はセンターの信号を振り分けないで捨てることもできます(***)。ただ、一律に捨てるのがよいとも言えないのです (****)

(*)この方式を「ファントム」といいます。

(**)アナログダウンミックスであれば、ディジタルダウンミッ クスよりも音質の低下が少ないようです。しかし、音質の低下はゼロにはならないと思います。

(***)具体的には、「センターあり」の設定にして、センター に何もつながない。

(****)セ ンターが無音またはアンビエント成分しか入っていないマルチチャンネルディスクはいくらでもあり、センター信号を捨てても大した影響はありません。ただ、 センターchに左右と同等の情報を入れている録音(1950年代のリビングステレオのような)は、センター信号を捨てる訳にはいきません。この場合は、左 右フロントに振り分けざるを得ないのですが、上に述べたように音質低下のリスクがあります。→ こういうことを考え出すと、やっぱり5chのシステムにしたくなります。4chシステムで行くなら、なるべくセンターchに音の入っていない(あるいはセンターにアンビエント成分しか入っていない)ディスクをリファレンスにしてください。最新録音には4chユーザを考慮してか、こういう4ch,5chディスクはたくさん出ています(レーベルの方針、プロデューサ、エンジニアによる)。

3. 5チャンネル

3チャンネルの良さと、4チャンネルの良さとを併せ持っています。つまり、フロントスピーカの間隔を広げ、真ん中を定位させるとともに、部屋全体を取り囲む臨場感が得られるのです。


【最後にまとめ】

オーディオをやっている方がマルチチャンネルオーディオを始める場合、表題のように3チャンネルか、4チャンネルか、5チャンネルか迷うと思いますが、まとめると次のようになります。

(1) 3chをうまく配置すれば、前方左から右までつながりの良い音像配置(つまり定位感)が得られる。左右のフロントスピーカの間隔を広めに設定しても、音が 中抜けしない。2chオーディオの特徴である「直接音の切れ味」を、そのまま横にスケールアップして、大迫力で味わうことができる。このようなメリットは、2chではどうしても得られない。ただし、ITU-R勧告のようにセンタースピーカを両フロントスピーカと同心円に置けることが好ましい。

(2) 4chにすれば、臨場感が出て、部屋の前後方向に広がる音像(ステージを見渡す感じ)が得られる。しかし 下手をすると風呂に入っているようなサウンドになる。2chでも、部屋や装置を頑張ってチューニングするとこのようなステージを見渡せる感覚に近づけることができるかもしれない。

(3)結局、3チャンネルか4チャンネルかどちらか1つを選べ、と言われたら私は3チャンネルを選びます。




マルチチャンネルオーディオシステム・アンプ構成例に移る

サラウンドスピーカ、センタースピーカの選び方 我が家のシステム−メインシステムに移る 我が家のシステム−サブシステムに移る アイソレーション・トランスに 移る

テクニック集に移る

お気に入りMulti-chディスクに移る

直接メールをお送り下さるときは、こちらにお願いします。

作者へのメール