マルチチャンネルオーディオシステム・アンプ構成例

そして何も聞こえなくなった

2006/11/23〜

<目次>

  1.AVアンプを使ったマルチチャンネルオーディオシステム

  2.AVアンプとプリメインアンプを使ったマルチチャンネルオーディオシステム

  3. プリメインアンプ複数台を使ったマルチチャンネルオーディオシステム

1.AVアンプを使ったマルチチャンネルオーディオシステム

AVアンプを使うシステムは最も手軽なもので、安価なAVアンプは初心者に薦められます。しかし、本格的にピュアオーディオを楽しもうとすれば、ある程度のグレードを持ったAVアンプを使ったほうが良いでしょう。その「グレード」の意味はAVアンプの機能ではありません。AVアンプの機能は日進月歩で、最近はHDMI1.3に対応したものまで出ていますが、私のいうAVアンプのグレードは、ずばり、ピュアダイレクト・モードのときの音質のことです。

デノンのAVC-3890(定価15万円)とAVC-A11SR(定価28万円)を所有していますが、音質には開きがあります。音のボヤケ・にじみがないこと、音が空間に漂う感じ、スピーカを駆動する力強さ、どれをとってもAVC-A11SRが一枚上手です。シャーシの構造を見ると、AVC-A11SRはデュアルレイアウトで、真ん中に巨大なトロイダルトランスがあり、アンプの奥行き分ある放熱器が左右に付いていて、高級オーディオアンプで見掛けるような構造です。AVC-3890は、EIトランスが左にあり、右側に横一列の小さな放熱器が付いているだけです・・・

もちろんアンプの内部構造だけで出てくる音が決まるわけではなく、AVアンプの音質を聴き分けるには店で試聴するのが一番ですが、その試聴前の判断の目安として、電源トランス、電解コンデンサ、シャーシの構造など、アンプの基礎的な部分にメーカーがどの程度力を入れているのかを調べておくことは重要です。ヤマハのDSP-AX2700の開発ストーリー<前編>や、かないまる氏のTA−DA5500勉強会の<強靭なメタルアシストFBシャーシ>は、AVアンプの音質の向上のためどのような構造にすればよいか議論されており、参考になります。

プレーヤとAVアンプとの接続は、アナログケーブル、デノンリンク(プレーヤとAVアンプともにデノン製で、デノンリンクに対応している場合)、iLINKプレーヤとAVアンプともに対応している場合、またはHDMI(DSD信号ストリーム伝送可能なもの。これもプレーヤとAVアンプともに対応している場合)になります。

HDMIは最近のAVアンプには皆付いているのですが、DSD信号ストリーム伝送可能なものは限定されますので買う前に調査が必要です。DSD信号ストリーム出力可能なDVDプレーヤも限られていますが、パイオニアから安価で優れた機種(DV-610AV, 800AV)が出ています。ソニーからもCD-XA5400ESが出ています。


オーラ・デザインから出ているピュアオーディオ感覚あふれるAVプリアンプVARIEも出ています。これはSACDプレーヤ又はDVDプレーヤとアナログマルチチャンネル接続して純粋なプリアンプとして使用できます。また同軸デジタル入力に対してドルビーなどのデコーダとしても使用できます(ただし次世代音声非対応)。

2.AVアンプとプリメインアンプとを使ったマルチチャンネルオーディオシステム

すでにAVアンプを持っているが、力感が足りない、音が立ち上がってこないという理由(*)で、スピーカの駆動をプリメインアンプまたはパワーアンプでさせたいという方は多いでしょう。この場合に有効な、AVアンプとプリメインアンプを混合したハイブリッドのマルチチャンネルオーディオシステムを紹介します。

(*)AVアンプは、同価格帯のプリメインアンプに比べて瞬時電流供給能力(駆動力)が低いことが多いのです。AVアンプはいろいろな機能が求められるので、電源部やパワーアンプ部にばかりコストをかけることが出来ないという事情があるでしょう。実際、フラグシップ級のAVアンプ(50万円くらい)でも、瞬時電流供給能力といったピュアオーディオアンプに求められる基本的な能力は、せいぜい10〜15万円程度のプリメインアンプの能力になると思います。

2-1. パワーダイレクト(EXT_PRE)スイッチのあるプリメインアンプのパワーアンプ部のみを使用する場合

オンキョー、デノン、ラックス、ヤマハなどの一部のプリメインアンプが該当します。アキュフェーズはすべてのプリメインアンプが該当します。海外製品でも該当するものがあります。

以下、フロントチャンネルだけプリメインアンプに接続する場合を述べますが、プリメインアンプを複数台用意し、全チャンネルをプリメインアンプに接続する場合にも簡単に拡張できます。

<図2−1>


AVアンプのプリアウト端子からプリメインアンプのパワーイン端子(*)に接続します。CDプレーヤを聴くときはパワーダイレクトスイッチをオフにし、マルチチャンネルCD/SACDプレーヤまたはユニバーサルプレーヤを聴く時はパワーダイレクトスイッチをオンにします。後者の場合ボリュームコントロールはAVアンプの1つで済みます。オンキョーの参考リンクです。→このようにプリメインアンプを追加する方法は、AVアンプの手に負えないような、振動系が重く強力な磁気回路を持ったスピーカを使っている場合に有効です。このようなスピーカはアンプの強力なドライブ能力を必要とするからです。

(*)プリメインアンプのパワーアンプ部にダイレクトにつながる端子。アキュフェーズではEXT-PRE入力端子ともいう。

この方法はプリメインアンプをパワーアンプとして使うので、いっそうのことプリメインアンプでなく本当のパワーアンプを買い足せばよいかも知れません。フロントchだけなら2chパワーアンプで良いのです。フロントchとセンターchだけを揃えるのなら3chパワーアンプが必要です。2〜5チャンネルのパワーアンプとしてリン(LINN)のMAJIKシリーズが有名です。

なお、プリ部・パワー部の分離は可能だがパワーダイレクトスイッチがなく、アンプの背面でジャンパー線又はスイッチで接続しているプリメインアンプ(ラックス、マランツなど)があります。このようなプリメインアンプでは、アンプの背面に廻ってジャンパー線を差し替えないといけないので面倒ですので、ラインセレクタを使用すれば、簡単に切り換えられます(ラインケーブルが余分に必要ですが)。

2-2.パワーイン端子のないプリメインアンプを使用する場合

プリメインアンプにパワーイン端子が付いていなくても、プリメインアンプのline-in(AUXでもよい)端子を利用すれば、2-1.と同じことができます。つまり、AVアンプのプリアウト端子からプリメインアンプline-in(AUX)端子に接続します。この方法は「HiVi」3月号(2007)の記事も参考にしています。

<図2−2>(フロントだけプリメインアンプを使った例)


このシステムは、AVアンプのフロントプリアウト端子からプリメインアンプに、フロント信号を入れています。音量は、ボリュームBを他のチャンネル(リア、センター)に合わせて固定して、ボリュームAで全体調整します。

この方法の問題点は、AVアンプとプリメインアンプとでボリュームコントロールを2回通すことにあります。1回通すよりも音質の劣化が若干増えると思われますので、実際にテストしました。その結果、ボリュームAを絞りすぎると音質が低下するようです。この理由はプリメインアンプに入る信号が小さくなりすぎてノイズ的に不利になるからだと思われます。そこで解決策は、リアch、センターchをトリム調整してできるだけ半固定音量を下げます(−10dB位)。フロントchのプリメインアンプのボリュームBもそれに合わせて音量を下げます。その上でボリュームAで(通常よりも大きめの位置で)全体調整します。これで実際音楽を聴くときにボリュームAが絞りすぎにならないようにすることが出来ます。このようなボリューム・マネジメントは結構重要なポイントです。

<図2−3>(4chシステムの例)

この図2−3のシステムは、センターchをAVアンプのマネージメントで左右フロントに振り分けて、リアと合わせて4chで構成しています。AVアンプにはスピーカをつなぎません(*)。


(*)だからAVプリアンプでも可能です。

音量はAVアンプまたはプリメインアンプのボリュームコントロールで調整します。2つの方法があります。

(1)ボリュームB1,B2を固定して、ボリュームAで調整する。

(2)FCBSのようにボリュームB1とB2が連動する場合、ボリュームAを固定して、ボリュームB1で調整する。

(1)の場合、ボリュームB1,B2を最大にするのでなく小さめに(12時くらいに)固定して、ボリュームAを普段より大きめの位置で調整できるようにします(HiVi3月号2007,p.62)。ボリュームB1,B2を小さいところで固定する理由は、上に述べたとおりです。

(2)の場合、ボリュームAを−10〜0dBくらいの大き目の位置に固定して、ボリュームB1で調整します(ボリュームAを絞りすぎないことが大事です)。

もしプリメインアンプが3台あれば、センターSPも3台目のプリメインアンプから取ることができます。このときのボリューム・マネジメントも上記に準じて行います。

3. プリメインアンプ複数台を使ったマルチチャンネルオーディオシステム

プリメインアンプのみを複数台(*)使って3.0ch〜5.1chのオーディオシステムが構築できます。ピュアオーディオにこだわる人には最適なシステムです。プリメインアンプがアナログ入力なので、プレーヤとの間はアナログ・ケーブル接続になります。

(*)プリメインアンプが2台なら3.0〜3.1〜4.0ch、3台なら4.1〜5.0〜5.1ch。

3-1. 音量の数値表示の出るプリメインアンプを使う場合

音量の数値(dB)表示の出るプリメインアンプ選びます。電子ボリュームを使っていて音量表示の出るプリメインアンプは、2006年あたりから、国産品・海外品を問わずリリースされています。ただ気を付けないといけないのは、音量の数値はdB表示でないといけません。ボリュームを回した角度に比例した数値を表示するだけのもの(例えばARCAM, CREEKなどのアンプ)は、次の3-2.の扱いになります。

<図3−1>

5.1chの例

プリメインアンプAでフロントchを望みの音量にしたとき、音量表示が例えば−28.5dBとなったとします。他のプリメインアンプB,Cの数値もこれと同じ値になるようにボリュームコントロールを調整します。そして、プレーヤからホワイトノイズを出して、全5.1chが最適なバランスになるように、プレーヤ、またはプリメインアンプの半固定音量を調整するのです。例えば、私の持っているマランツのプリメインアンプPM-11S1なら、リモコンを使えばチャンネルごとに半固定レベルトリム調整できます。つまり見かけの音量表示が−28.5dBであっても、チャンネルごとに 実際の音量をこれより0dBから−9dBの範囲で調整することができます。マルチチャンネルCD/SACDプレーヤやユニバーサルプレーヤでも各チャンネルの音量バランス調整が出来ます。これで、3台のプリメインアンプの数値が合った状態で、各チャンネルから最適な音量の音が出るようにバランス調整します。

このように一度調整したら、3つのボリュームコントロールの数値を合わせるだけで、正確・完璧なバランスが得られます。毎回耳で聞いてバランスをとらなくてもよいのです!

4.0chにする場合(*)は、プリメインアンプCとそれにつながるスピーカは勿論不要となり、回すボリュームコントロールの数はつとなります。

(*)センターの音を両フロントにダウンミックスして、4ch方式にするわけです。ダウンミックスはマルチチャンネルSACDプレーヤ又はDVDプレーヤのマネジメントで行います。両フロントスピーカのつながりさえ良ければセンタースピーカなしのハンディはほとんど感じません。

3-2. 音量の数値表示の出ないプリメインアンプを使う場合

この場合、ボリュームコントロールを合わせるときに基準となるものがありません。毎回毎回耳で合わせるのは大変です。そこで、各アンプのボリュームコントロールのつまみの周囲に目印(例えば−25,−30,−35といった数字)をしておき、同じ数字を指すようにしたときに各チャンネルで最適なバランスが得られるように半固定音量を調整します。この方法は「オーディオアクセサリ」第121号259−262頁「魅惑の音楽体験!ピュアマルチチャンネルの薦め」で貝山知弘先生が紹介されています。

ボリュームコントロールの周囲に目印を付けた例――狭い範囲に合わせるので誤差が出ますが、聴感上は問題ないはずです



このようにボリュームコントロールのつまみの周囲に細かいdB表示のついているアンプ(例えばラックスのアンプ)がありますが、この場合それが目印になるので、自分で目印を付ける必要がありません。


3-3.FCBSを使う場合

FCBS(Floating Control Bus System:フローティング・コントロール・バス・システム)とは、マランツの提案するシステムで、複数のプリメインアンプ間で入力切り換えや正確なボリュームコントロールなどの連動動作ができるシステムです。今のところFCBSが出来るプリメインアンプは、マランツのPM-11S1、PM-13S1、PM-15S1くらいしかありません。

これは「プリメインアンプ3台を使ったマルチチャンネルオーディオシステム」と同じ構成になりますが、各プリメインアンプを信号線でつなぎます。これでボリュームコントロールが連動します。従って、1つのボリュームを回すだけでよいのです。

<図3−2>



これはFCBSを説明する図で、左の写真はマスターのPM-15S1の音量表示パネルであり、ボリュームを回した結果「−36dB」を示しています。右の写真はスレーブのPM-15S1の音量表示パネルで、その表示はマスターに連動して自動的に「−36dB」に合わされます(LINE-1とあるのは入力セレクタ表示です)。

3-4.AVアンプのデジタル音声フォーマットデコーダ機能を追加する(究極形)

プリメインアンプはアナログ入力ですが、もしブルーレイ・ディスクなど最新のデジタル音声フォーマットをデジタルケーブルを通して再生したいという希望があるならば、このフォーマットに対応したプレーヤとAVアンプを用意し、そのAVアンプのプリアウトを各プリメインアンプにつなぐという方法があります。これは、「HiVi」3月号(2007)の記事を参考にしたものです。

次のような構成になります。同じ部屋の中でピュアオーディオマルチとホームシアターを高音質で両立させるなら、これが1つの究極形になると思います。私のメインシステムもこれを目指しています。

<図3−3>


AVアンプのプリアウト出力を各プリメインアンプのライン入力に入れます。つまり、AVアンプのプリアンプ部分のみを使用します。これでHDMI1.3に対応したAVアンプを持ってくれば、HDMIを通したBDやHD−DVDの音声が再生できます。このように最新のデジタルフォーマットの再生ができます。またもうお判りのように、ホームシアターとして使用するとき、「回すボリュームコントロール」の数が“1”になるのも助かります(つまり映画を観るときと2chオーディオを聴くときは“1”、マルチチャンネルオーディオを聴くときだけ“2”か“3”になるわけです)。

もしパワーイン端子のあるプリメインアンプを使用している場合、図3−3で、AVアンプの出力を各プリメインアンプのパワーイン端子に突っ込むことができます。

前の2.で述べたAVアンプとプリメインアンプとを併用したハイブリッドシステムは何となく抵抗がある、かといってAVアンプ単独でマルチチャンネルオーディオシステムを組むのは音質的に物足りない、という方は、この図3−3のシステムを目指されたらよいと思います。これが一番スッキリしています。音楽再生時のピュア度は100%あるし、新しい音声フォーマットに対応したければAVアンプ(高い物でなくてもよい)だけ買い換えれば良いのです。私もこの図3−3のシステムを目指そうと考えています。

4.マルチチャンネルプリアンプと、複数台のパワーアンプを使う場合

プリメインアンプでなく、マルチチャンネルプリアンプと複数台のパワーアンプを使ってセパレートのマルチチャンネルオーディオシステムを組むことも有効です。ボリュームも1つで済みます。マルチチャンネルプリアンプとして、アキュフェーズの評判の高いCX−260、AIRBOWのCU−80/Special、上に述べたオーラ・デザインのVARIEなどがあります。

最近(2008,Apr)、手頃な5ch・プリメインアンプD−9がDUSSUN(中国のアンプメーカー)から出ています。「DSP、サラウンドデコーダー等のデジタル信号のアナログ回路へのノイズの干渉を嫌って、あえてデジタル回路を装備しないオーソドックスなアナログアンプとして、クオリティーの高い物量が惜しみなく投入されています。」と説明文にあるように、プレーヤとアナログケーブルで接続するマルチチャンネルアンプです。A級動作するパワーアンプなど、ピュアオーディオ・アンプの設計思想が採り入れられているようです。

5. まとめ

システム例

回すボリュームコントロール数

AVアンプ

プリメインアンプを複数台

2〜3

FCBSを使う

プリメインアンプ(パワーイン端子使用)とAVアンプ

プリメインアンプ(パワーイン端子なし、または不使用)とAVアンプ

1〜3

マルチチャンネルプリアンプと複数のパワーアンプ

このようにプリメインアンプを2〜3台買うか、手持ちのAVアンプがあるならプリメインアンプ1〜2台の追加出費でマルチチャンネルオーディオシステムに移行できます。

プリメインアンプを3台も買うのならフラグシップ級のAVアンプ(50万円くらい)を買うのと変わらないではないか、それなら初めから「フラグシップ級のAVアンプ」を買えば? とも思いますが、優れたプリメインアンプで聴く音はチャンネル分離がよく、このため空間感も出やすいので、「フラグシップ級のAVアンプ」と比較しても優れていると思えます。


またプリメインアンプはさらに高級なもの(1台30万円以上のクラス)にグレードアップが可能であり、こうなると「フラグシップ級のAVアンプ」も及ばない高音質が手に入るという楽しみもあります(これがプリメインアンプでマルチチャンネルオーディオシステムを作る本当の理由であるかもしれません)。また4.のマルチチャンネルプリアンプと複数台のパワーアンプを使ってセパレートのマルチチャンネルオーディオシステムを組むのも、正攻法であり、魅力的な方法です。

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