あこがれの鹿島槍ヶ岳・東尾根登攀

山頂
鹿島槍ヶ岳
分類
積雪期アルパイン
日程
2007年5月3日〜4日
概要
大谷原〜鹿島槍・東尾根〜鹿島槍北峰・南峰〜大冷沢西沢下降〜大谷原
コースタイム

5/3(木)大谷原8:10〜一の沢の頭11:50〜二の沢の頭12:55(泊)
5/4(金)二の沢の頭5:30発〜第一岩峰取り付き7:10〜第二岩峰取り付き9:10〜鹿島槍ヶ岳・南峰12:20〜冷池山荘14:10〜大谷原16:50

白馬主稜の次は鹿島槍・東尾根

昨年の5月連休は、白馬の主稜を隊長、ヒッキー、ヒロティの3人でトレースした。最高の天気に恵まれ、ヴァリエーションルートの楽しさを満喫した。次の目標として定めたのが、鹿島槍ヶ岳・東尾根である。「日本のクラシックルート」によると、技術的には白馬・主稜よりワンランク上だそうだ。「東尾根は、北峰から大谷原に向かって南東に延びた、標高差1750mの長大な尾根である。ふたつの岩場をもつこの尾根は、鹿島槍ヶ岳の中級ルートとして多くの人々に登りつがれてきた。」とある。途中に幕営を含み、しかも二つの岩峰を登らなければならない。体力と技術の両方が必要なルートである。このために自分なりに1年間トレーニングを積んで、今回の山行に臨んだ。

大谷原へ

さて、いつものように、2日の夜に奈良を出発し、恵那峡SAで仮眠。豊科ICで降りて、オリンピック道路を爺ヶ岳スキー場を目指して、車を走らせた。信号も少なく非常に走りやすい道だ。スキー場を越えて、道がカーブするところで林道大谷原線に出会う。細い舗装された林道を少し行くと、車がたくさん停まっているところに着いた。それが、大谷原だった。立派なトイレもある。トイレの前に車を停め、出発準備。念のために持ってきたナッツ3種類とハーケン3枚は軽量化のため置いていくことにした。。

はじめはブッシュ漕ぎ

登山届をポストに入れ、8時10分に出発。林道を赤岩尾根取り付きの方に向かって歩き出した。20分ほどで、2番目の堰堤が現れ、林道の傍の木にたくさん赤布がぶら下がっていた。それが、東尾根への取り付き地点だ。土の道の急登である。踏み跡程度の道が続いている。道ばたにはカタクリの花がたくさん咲いていたが、ゆっくり見ている余裕はなかった。ブッシュを漕ぎ、木の根を登り、2時間半ほど苦闘した後、雪稜にでた時はホッとした。これから登る稜線や鹿島槍ヶ岳・南峰の立派な姿を望み気分も晴れやかになった。 。

快適な雪稜を行く

一の沢の頭には11時50分着。写真を撮ったりしてしばらく休憩。これから先、二の沢の頭までやせたリッジを行く。今日のテント場である二の沢の頭には12時55分に着いた。雪面を整地し、風よけのブロックを積み、アライの一人用テントを張った。一人用であるが、なんとか二人が寝ることは可能だ。風も出てきたので、テントに入って私の持ってきた泡盛を飲みながら、サラミやイカ天などを食べて時間を過ごす。夕食はレトルトカレーとわかめスープのみなので、つまみで栄養をとっておかなくてはいけない。 午後3時頃から雷がわずかに鳴り、霰が降ってきた。ラジオで天気予報を聞こうとするが、なかなかやっていなかった。午後5時頃には就寝した。

第1岩峰へ

翌朝3時40分に起きて、外に出てみると月と星が出ていた。天気は良さそうだ。棒ラーメンを食べ、テントを撤収し、5時30分に出発。第1岩峰に向かった。 第1岩峰では、ポッポ会のパーティが順番待ちをしていた。ちょうど雪のバンドが横に走っていたので、そこでピッケルでセルフビレイをとり、カッパの上着を着て待たせてもらった。ポッポ会のパーティのセカンドが登り始めたので、私がビレー態勢に入り、隊長さんがトップで登りだした。ほぼ50m一杯でビレーポイントに着き、次に私が登った。はじめ少し岩がでているが、あとは雪壁の登りで、取り立ててむずかしいところもなく、隊長さんの待つビレーポイントに着いた。そこから先は、私がそのままトップで2カ所ほどランニングビレーをとりながら雪壁を登った。ちょうど50mくらいで、雪が平らに整地されたところがあったので、そこでスタンディングアックスビレーをして、隊長さんに登ってきてもらった。背後に鹿島槍の南峰を望み、豪快な景色の中でのビレーは爽快であった。7時10分に取り付き地点に着き、順番待ちをして第1岩峰を抜けた時は、8時30分になっていた。 そこから急斜面をトラバースしながら登る途中で雷鳥2羽に出会った。背中から尾のあたりがすこし焦げ茶色になっているが、他は白い。少しうれしかった。。

第2岩峰へ

第2岩峰の取り付きには9時10分に到着。ポッポ会パーティはどのように登るのか、注視した。 上部チムニーの登りが難しそうで、時間がかかっていた。さて、私に登れるのだろうか。不安になった。ポッポ会のセカンドが登り始めたので、やはり私がビレーして隊長さんがトップで登りだした。先のパーティがランニングビレーをとっていたところをすっ飛ばしていく。しかし、さすがに核心部のチムニーの登りはむずかしいようで、何回かトライを繰り返して登りきり、さらにすこし登ってビレーポイントに着き、ビレー解除のコールがあった。私が登る番だ。はじめはやさしい。少しトラバースするところがいやらしく、ちょうどいいホールドになる岩はグラグラ動く、なんとかだましだましトラバースし、雪の詰まったルンゼを少し登り、問題のチムニーにさしかかった。隊長さんが登ったときに補助のスリングを私のためにつけておいてくれたが、それでもなかなか体を上げることは難しかった。ピッケルを残雪に打ち込み、右手で押さえ、左手の岩に幅5mmくらいのスタンスがあったので、それにアイゼンの前爪をのせ、体を持ち上げ、右足をなんとか右膝下の手のひらくらいのスタンスに置くことができた。さらに体を持ち上げ、左足をなんとか岩の上にかけることができて、チムニーを抜けることができた。息はゼエゼエ、しばらく息を整えてから、隊長さんの待つビレーポイントに向かった。。

すべる

そこからは急な雪壁が続いているが、特に問題はない。私がそのままトップで登ることにした。2,3歩登って、左足をスタンスに置いた時だった。スタンスがくずれ滑った。50cmほどだろうか、このまま落ちていくのだろうかとも思った。しかし、ビレーされているから大丈夫だとも思った。すべったのは一瞬の間だったと思うが、その間にこれだけのことが頭をめぐった。すぐ右足が雪をとらえ止った。隊長さんから「足をちゃんと蹴りこんでから立てよ。」いう声がかかった。右手に持ったピッケルはしっかりと雪面にささっていた。急な雪壁を登るときにも3点確保は大事だとつくづく思った。アイゼンを蹴りこんでスタンスをしっかりしてから立ち上がり、そのままのぼりつづけた。隊長さんをスィッティングビレーをして迎え、ザイルを仕舞った。結局、第2岩峰を抜けたのは10時20分になっていた。。

鹿島槍頂上へ

そこからは、快適な雪稜を延々登り、鹿島槍ヶ岳・北峰にたどり着いたが、木の杭があっただけなので、特に気にせず通り過ぎてしまった。道標が現れたので、???ここは、一般道?と思ったら、すでに吊り尾根に入っていた。南峰は悠々とそびえており、これから南峰を経て冷池山荘、赤岩尾根まではだいぶあるなあ、とため息の一つも出るような気分だった。 南峰には12時20分着。記念撮影をする。剱岳も見える。昨年登った白馬本峰も見える。周囲の展望を満喫した後、冷池山荘を目指して下る。東側に張り出した雪庇がみごとだ。冷池山荘には、14時10分到着。。

シリセードーで快適に下る

山荘から10分ほど登ったところで、赤岩尾根との分岐がある。夏道になっているトラバース道は雪崩の危険があるので十分注意するようにという看板があった。雪の状態から見て、雪崩も起きそうにないので、トレースのついたトラバース道を行き、赤岩尾根の主稜にたどり着いた。赤岩尾根をさらに10分ほど下ったところから、右手の大冷沢西沢を下るトレースがあったので、そこを下った。しかし、しばらくして尻餅をつき、そのまま意図せず、シリセードーになってしまった。快適に西沢を下り、15時55分には林道との出合に着き、後は林道を大谷原まで歩いた。大谷原16時50分着だった。 帰りは大町温泉郷の「薬師の湯」に入り、ガストで空腹を癒し、つまみとビールの買い出しをして小黒川PAで宴会後仮眠。翌朝奈良に向かった。連休の最中であったが、渋滞もなく9時過ぎに近鉄奈良駅前に着いた。