積雪期鋸岳縦走

山頂
鋸岳
分類
積雪期アルパイン
日程
2008年2月8日〜11日
概要
戸台〜角兵衛沢のコル〜第1高点〜第3高点〜第2高点〜中川乗越〜熊穴沢下降〜戸台
コースタイム
1日目:09:30 駐車場 10:20 第二堰堤 11:30 角兵衛沢出合着 11:50 同発 13:30 看板「大岩小屋へ」 15:15 大岩下ノ岩小屋
2日目:06:30 出発 08:40 角兵衛沢のコル着 09:05 同発 09:40 鋸岳(第一高点) 09:55 小ギャップ 10:45 鹿窓 11:20 中岳(第三高点) 11:30 大ギャップ 12:45 第二高点着 13:05 同発 13:25 中ノ川乗越
3日目:07:05 出発 09:20 熊ノ穴沢出合着 09:35 同発 09:45 角兵衛沢出合 11:55 駐車場 

 いよいよ鋸岳縦走へ

10月にH内さんと鋸岳縦走へ行こうと話をしていたが、結局積雪のため中止した。中途半端な積雪はやっかいと判断したためだ。今回は正真正銘厳冬期の縦走である。さて、不安と期待を持って2月の連休を迎えた。
 恵那峡SAくらいまでは、行くつもりが、途中の渋滞のせいもあって12時を過ぎても名古屋に行き着けず、睡魔のために御在所SAで車中泊となった。翌日は、4時30分には出発したが、予定では、戸台を7時20分発のつもりが結局9時30分出発となってしまった。    

 樹林帯の登りが核心か

角兵衛沢出合を11時50分に出発し、先行者のトレースにしたがって、沢筋から樹林帯を登って行ったが、これがなかなかのくせ者で、夏道に沿っているのだが急傾斜の雪道に足を滑らしたり、枝にザックを引っかけたりして、かなり消耗してしまった。途中からアイゼンを着けて登ることにした。昼ごろから雪が降り出し、暗い雰囲気の中を黙々と大岩を目指して登ったが、なかなかたどり着けない。そうこうするうちに脚に違和感を感じ、つりそうになった。お言葉に甘えて、S木さんに私が持っていたザイルを持ってもらった。ああ、情けない。
 やがて雪の降り続く樹林の間から大きな岩壁が見えてきて、その岩壁沿いに右側に岩小屋に向かうトレースが続いていた。
 大岩の岩小屋には15時15分に到着。角兵衛沢のコルまで上がっておかないと、明日1日で甲斐駒ケ岳の6合目石室までは届かないと言われているので、なんとか登りたかったが、この天気と体調ではここまでが限界だった。

 脚がつった

岩小屋にはすでにツェルトが1張り、さらに奥には4人用のテントが張られていた。そのテントの横にわれわれのテントを張った。テントの中で炊事の用意などをしている間に、大腿の内側の筋肉がつった。しかも両足だったので、悲惨だった。痛みに耐えながらなんとか食事(フッチー特製の生卵から作る親子丼)をしたが、もしこの状態が一晩眠った後にも続くようなら、明日は登れないかもしれないと真剣に考えた。フッチーとS木さんには、本当に申し訳ないと思った。   

 第1高点へ

翌朝、脚に違和感はあるものの何とか歩けそうだった。4時起床、6時30分に出発した。樹林帯はすでに抜け、沢筋の雪面を登る。雪が積もって夏道より歩きやすいとは言え、雪の下にはガレがあり、岩がアイゼンに引っかかったり滑ったり、歩きやすいとは言いがたかった。しかし、4人と3人のパーティが先行していてトレースがあるのでありがたかった。
 コルには8時43分に到着。2パーティが登攀の準備をしていた。われわれもハーネスを着け登攀を開始。左側の尾根の右端に夏道がついており、そこを登ったが、足を踏み外したら下まで落ちるところで、緊張した。第1高点には、9時40分着。一時は晴れていた天気も再度ガスが出てきて展望はなかった。

 小ギャップの懸垂

写真をとって早速小ギャップを目指した。雪庇が左に張り出した尾根を進み、左に少し折り返したところに下降点があった。
 先行パーティが降りる間、休憩して降りたあとのルートを観察していた。アイゼンをはいて重荷を背負っての懸垂は初めてである。手袋をしてのロープのセットに(私だけが)てこずった。

 鹿窓〜第3高点へ

降りてからは正面の草付ミックスの壁を登り、尾根を右に進み、岩峰の左の急な雪の斜面を下り気味にトラバース後、再度登ると鹿窓だった。はじめて見るが、なかなか面白いオブジェである。10時45分。張ってあるロープをまたぎ、そのまま尾根を登ると第3高点だった。

 大ギャップの懸垂

尾根を降りてバンドに出ると、下方に大ギャップの懸垂をする先行パーティが見えた。潅木を支点にして懸垂している。その支点までの下降もいやらしいという記録もみたが、今回の雪の状態ではそれほど悪いとも思えなかった。
 支点からギャップのコルまでは、50mロープでだいぶあまっていたので、20mくらいかもしれない。途中の岩棚にも懸垂用の支点があった。岩がもろく、落石をしないように気をつけて降りた。フィックスロープも岩壁の左側にさがっていたが、ここを逆に登るのはだいぶ怖そうだった。

 第2高点へ

大ギャップのコルからは、戸台川側へルンゼを降りるが、ここも急斜面にふわふわの雪が付いていていやらしい感じだった。左の岩壁沿いに降りて、左側の尾根に取り付き雪稜を登ると、第2高点だった。この頃には、天気も回復し、八ヶ岳、北岳、仙丈ヶ岳、甲斐駒ケ岳など360度の展望が楽しめた。12時43分。

 中川乗越へ

しばらく休憩した後、中川乗越に向かった。尾根を少し進み、さらに左に急斜面を下降。コルから右に沢状の雪面を下った。本来は快適な下降であるはずが、脚の疲れがでているので、なかなかはかどらなかった。
 中川乗越には13時30分に到着。さて・・・。

 6合目石室はあきらめた

先行パーティはこれから先に進むつもりだろうか? 正面の岩峰を登るルートは?などと考えながら、中川乗越に降りていたのだが、ルート取りに悩んでいるようだった。ガイドブックによると正面左の樹林帯の中の雪壁を登るようなのだが、なかなかきつそうである。すこし右に回りこんでルンゼを詰めるのもありそうだが、傾斜も急で先が見えない。
 石室まで3時間〜4時間として無理をすれば行けない時間ではないが、体力的にもきついし(ひょっとしたら、私だけかも?)、われわれは中川乗越に泊まることにした。岩壁横の自然の防風壁の中にテントを張った。
 夕食までの空いた時間はビーコン探査と弱層検査の練習をして過ごした。
 夕食は、S木さん特製のカレーだった。具沢山のおいしいカレーで満腹になった。風もなく静かな、しかし寒い夜を過ごした。

 熊穴沢を下降

翌日は少し寝過ごし4時40分起床になった。外を見ると、快晴。仙丈ヶ岳が朝日をあびてきれいだ。用意をして7時10分に出発した。熊穴沢には、前日のパーティが残してくれたトレースがついていた。どうやらどのパーティも先には進まず下山したようだった。出会いには9時20分に到着。まるで5月のような暖かな陽だまりの中、駐車場までの長い道のりを歩いた。途中で、鹿猟の残骸を見たりして、駐車場には11時55分に到着。
 帰途、サクラホテルの温泉とランチのセット(1300円)でソースカツ丼と温泉を楽しんだ。

 感想

今回の山行は、とにかく体力(脚力)の不足を感じた。普段トレーニングをしているにもかかわらず、このテイタラクは自分としては恥ずかしい。それでも縦走できたのは、フッチーとS木さんのおかげである。
 5月の白馬主稜、鹿島槍・東尾根を経験していたが、5月のしまった雪と冬のふわふわ雪とでは体力の消耗度がかなりちがうこと、また技術的にも、冬のほうが難しくなることを実感した。
 いつもハイドレーションシステムで水分補給をしながら歩いている私にとって、今回は歩行中に水分が取れないので、疲れがたまりぎみになった。それが、脚のつる一因になったとも考えられる。
 今回の反省を踏まえ、今後さらに合理的トレーニングを積んで、どんどん冬のバリエーションにチャレンジしていきたい。

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樹林帯の登り

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やっと大岩が見えた

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早朝の出発

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コルまでの登り

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中央アルプスを望む

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第1高点への登り

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小ギャップでの懸垂

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懸垂後のルート

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鹿窓

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大ギャップの懸垂

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大ギャップからのルンゼの下り

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第2高点から第1高点を望む

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甲斐駒が岳を望む

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中川乗越への下り

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早朝の仙丈ヶ岳

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仙丈ヶ岳をバックに記念撮影