不帰1峰登攀

山頂
不帰1峰
分類
積雪期アルパイン
日程
2008年5月2日〜5日
概要
八方スキー場〜BC(標高2420m)〜不帰沢1峰取付〜1峰尾根〜1峰頂上
〜唐松岳〜BC
コースタイム
5/2(金):京都21:15〜八方スキー場ゴンドラ前2:30
5/3(土) :八方山荘8:40〜BC(標高2420m)11:40
5/4(日):BC3:00〜流星観察〜夜明け4:50〜唐松沢5:25〜尾根取り付き5:45〜主稜7:20
     〜断壁取り付き9:10〜2062mピーク〜1峰ピーク14:40〜唐松岳18:25〜BC19:10
5/5(月):BC9:15〜リフト9:45〜駐車場10:15〜みみずくの湯・昼食〜帰京

 登攀ルートは未定のまま

春山合宿をどこにするかという話の中で、不帰東面が浮上した。チャレンジアルパインクライミング・北アルプス編を読むと、私の実力ではなんとか3峰のB尾根かC尾根くらいしかないかなと思っていたので、ネットなどで資料を探し読んでいた。
  計画書でも登攀ルートは未定で、行って見てから決めようということになった。
  5/2(金)京都を午後9時15分に出発。名神、中央道を乗り継いで豊科ICを降り、白馬方面へ向かう。八方スキー場のゴンドラ横の駐車場に着いたのは、午前2時半ごろ。3人はセレナの後部座席で、残り2人はテントで仮眠した。セレナでの仮眠は快適だった。
  5/3(土)7時ごろから起きだして、ゆっくりと朝食を食べたりして用意。ゴンドラとリフト2本を乗り継いで、八方山荘に8時30分ごろ着いた。それにしても、この5月に春スキーを楽しんでいる人の多さにびっくりした。
 雪が所々にある夏道を登っていく。登り始めは青空も見えていたが、ガスが出てきて唐松岳の頂上付近は見えなくなることもあった。日差しのないほうが、暑くなくて快適だった。
  さて、多くの登山者に混じって八方尾根を登り、丸山ケルン付近で不帰岳が見えてきた。右から小さいピークの1峰、台形状で下部に大きな3角岩壁を控えた2峰、3つの尾根を平行して伸ばしている3峰である。1峰はピークこそ小さいものの、右手に伸びている尾根は長大だった。3峰の尾根はどれも小ぶりである。

 1峰を登ることに決定

   

BCをどこに置くかは、登るルートに拠る。3峰を登るのであれば、唐松山荘付近がいい。もし、1峰を登るのであれば、北に伸びる支稜付近がよい。リーダーのT嶋さんを中心にみんなで相談。みんなの希望で1峰を登ることにした。
  支稜との出合から少し登った広い尾根の南側に這松と地面が出て、離れ小島のようになっている場所があった。11時40分には、そこにBC(標高2420m)を張った。
 登山道からも適度に離れ、たくさんの登山客の喧騒に煩わされることもない。快適なBCだった。天気も回復して、快晴。五竜岳や鹿島槍もきれいに見えた。なにもすることがなく、私はさっそく持ってきたウィスキーで雪のオンザロックを作り、「えび満月」やサラミをつまみにA木さんと楽しんだ。南に五竜岳、鹿島槍ヶ岳を見ながら春山のゆったりした時間を過ごし極楽のようだった。この日は、夕食に豚丼を食べ、早めに就寝した。

 長い1日のはじまり

午前1時30分起床。真っ暗闇の中3時出発。唐松沢に下りる支稜が見つからない。しかたないので、這松の中に横になり少し明るくなるのを待つ。1峰支尾根の途中にヘッドランプの明かりが見えた。そこでビバークしているパーティがいるのだろう。昨日のうちに下見をしておけばよかったと思うものの後の祭り。少し明るくなりあたりの様子がわかってきた。もう少し東側に行ったところから尾根が延びており、それが目指す2361mのピークから北北東に伸びている尾根であった。かすかにトレースもあり、ところどころに現れるブッシュを掻き分け、どんどん下った。1700m付近からは右手の谷筋を下った。このあたりは、まわりを雪稜に囲まれ、開放感もあり気持ちのいいところだった。
  唐松沢を渡り不帰沢に入り、1峰尾根の北側から取り付いた。ブッシュが濃く、木登りがメインのルートだった。ところどころに出てくる雪のブロックをなるべくつなぎながら、省エネを図るが、なかなか思うようにはいかない。木の上に乗ったり、草つきにアイゼンを蹴りこみ、ピッケルのピックを刺したりしながら、ひたすら高度を稼いだ。
   

 断壁からの核心部へ

   

雪稜に出てしばらく行くと断壁に突き当たった。9時10分。正面凹角にクラックが走っており、上部がハングで押さえられている。ハング下にハーケンがあり残置スリングがぶらさがっているが、そこまでピンはない。アブミを使って登ることも可能かもしれないが、5人が抜けるには時間がかかるだろうということで、O村さんリードで左に回りこみ凹状を登った。
   上部に抜けザイルをフィックス。後続はプルージック登攀することにした。私は、タイブロックで登ったが、プルージックを上げていく手間がなく快適だった。
  2ピッチ目は、またもO村さんリードで、岩から雪壁。
  3ピッチ目はA木さんリードで這松帯を登った。
  4ピッチ目は、もろそうな立った岩をT嶋さんリードで登った。私が途中まで登ったところで、下から落石の声。私が落としたのかとびっくりしたが、O村さんが登ろうとしたら岩がはがれ、O村さんも落ちたらしい。しばらく様子を聞いていたが、大丈夫そうなのでそのままT嶋さんのところまでのぼり、さらに凹状の草付、雪壁を登り稜線上に出た。後はなだらかな雪稜が続いている様子だったので、小休止。核心部を抜けたのが12時20分だった。

 クレバスに落ちる!?

そこに唐松沢側の支稜からトレースが合流していた。これが、早朝に見たヘッドランプのパーティのものだろう。
  先行パーティのトレースをたどっていくと、ちょっとしたピークへの上りがあった。クレバスの上に雪が乗っており、トレースはその上をたどっていた。大丈夫だろうと足を置いたとたん、雪がくずれ、私は尻餅をついた。
  足元をのぞくと前方に岩があり、真下は5mほど下に雪面が見えている。右手のピッケルはしっかりと刺さっているので、とりあえずは大丈夫だが、どうして上に上がったものかと思案した。O村さんがピッケルを左手に貸してくれたので、それを支えになんとか稜線上にまたがるようにはいあがった。
  その間、他のメンバー3人は私に気づかず、唐松沢をすべるスキーヤーが同会のKさんではないかと、声を上げ、手を振ったりしていた。

 1峰ピークに到着

雪が不安定なので、ロープを出すことを提案して、A木さんがそのピークを登った。
  さらに少し稜線を進むと、頂上直下のブッシュ壁に突き当たった。A木さんリードで2ピッチを登り、1峰頂上に立った。14時40分だった。次々と登ってくるメンバーと握手を交わし、登頂をよろこびあった。

 縦走路も油断できない

しかし、唐松岳までには、不帰2峰、3峰が待っている。2峰への登りはきつそうだ。
  夏道を行くが、2峰への登りの上部で左斜面をトラバースするようにトレースがついていた。白馬主稜から縦走してきたという単独行の人は、正面のガレ場を登っていったが、悪そうなので、(実はそちらが正解だった。廣川健太郎さんもWebの記録に「頂上についたらガレ場に道がありがっかり」と書かれていた。記録は後で読んだほうがよくわかる。)雪の斜面を斜上気味にトラバースし、岩場を回りこんだ。
  ところが、そこからは雪のブロックが崩壊していてとても簡単には進めない。T嶋さんリードで雪と岩のコンタクトラインを大股開きで数歩登って、岩に乗り移って突破した。私はといえば、I野さんのアドバイスに従い、両手をガバにかけ、ザイルを引っ張ってもらって助けられながら、ボルダームーブで、なんとか切り抜けた。
  最後まで楽しませてくれるじゃないの。

  

 ビールを調達

3峰はどうなることかと思っていたら、道は3峰を大きく迂回して続いていた。疲れた身にはありがたかった。
  唐松岳頂上には18時25分に到着。O村さんと唐松山荘でビールを調達して、19時10分にBCに着いた。
  その夜はA木さん特製のマーボナス。野菜たっぷりでおいしくいただいた。ウィスキーも入り、今日の山行を振り返りながら楽しく食事タイムを過ごした。

 1日早めて下山

5/5(月)天気がよければ、3峰でも登りに行こうかということだったが、天気も悪そうなので、A木さんにあわせ、下山することにした。
  「みみずくの湯」に入り、その夜に食べるはずだったカレーを昼食として公園で食べた。
  帰りは雨模様の中、車をとばした。やや渋滞気味だったが、京都には午後8時すぎに到着した。

 感想

今回は、ブッシュ壁、雪壁、岩壁と変化に富むルートを完登できてよかった。
  リーダーはじめ他のメンバーには感謝したい。
  事前準備も含め、自分としては一生懸命取り組んだ山行だったので、充実感で一杯である。半ばビバークも覚悟していただけに、その日のうちに帰還できたスピードにも満足できた。
  気のおけないメンバーと山行を共にする楽しさを存分に味わった4日間だった。

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BCでのんびり過ごす

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夜明けを迎える

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1峰尾根取り付きへ

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1峰尾根

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ヤブ尾根を登る

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断壁

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凹状の岩場を登る

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雪稜を登る

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手前のクレバスに尻餅

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1峰頂上

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登ってきた尾根を振り返る

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2峰上部のトラバース