錫杖岳1ルンゼ登攀

山頂
錫杖岳
分類
無雪期アルパイン
日程
2008年6月6日〜7日
概要
槍見〜錫杖沢〜左方カンテ取り付き〜1ルンゼ取り付き〜登攀〜懸垂下降〜1ルンゼ取り付き〜錫杖沢〜槍見
コースタイム
6/6(金):自宅20:40発〜槍見駐車場26:00
6/7(土):槍見7:00発〜1ルンゼ登攀開始9:40〜終了点14:50〜懸垂下降〜取り付き16:40〜下山

 錫杖岳前衛壁登攀のチャンス

梅雨の合間、6月8日(金)20時40分に自宅を出発、N村さんをピックアップして、京奈和自動車道〜京滋バイパス〜名神〜東海北陸自動車道を乗り継いで、高山ICで降り、新穂高温泉へ向かった。槍見の駐車場には午前2時到着、車中で仮眠した。T橋さん一行が7時ごろ到着。ギアの打ち合わせ等をした後、錫杖沢に向けて出発した。しばらく行くと、クリヤ谷沿いの道から迫力のある錫杖岳を望むことができた。
 錫杖沢の出会いから5分ほどの沢沿いの台地にテントを張った。ほかにも2つのテントがすでに近くの適地に張られていた。、シュラフなどを残置、ギアを身に着けて沢沿いのアプローチ道を左方カンテ取り付きをめざして登った。予想以上に時間がかかった。取り付きに到着するとすでに他のパーティが登り始めており、もう1パーティが順番待ちをしていた。私とO村さんは、1ルンゼを登るために右方の踏み跡をたどったが、斜上バンドであることが判明して、すこしもどり下っていく踏み跡を降りていった。

 いよいよ登攀開始

  1ルンゼの取り付きには、ちょうど新潟から来たパーティが取り付いているところだった。先にもう1パーティがいるそうなので、われわれが3番目というこということだ。渋滞しなければいいがと思いながら、待っていた。
 今回は、トポを見て4級−〜4級+の奇数ピッチを私が登り、5級A1を含む偶数ピッチをO村さんに登ってもらうことにした。全8ピッチの本格的なマルチピッチははじめてである。さて、ちゃんと登れるだろうか。不安はあったが、なんとかなるだろうと楽観的に考えていた。
  さて、1P目。出だしで残置がなく、少しいやらしいところがあったので、ナッツでランナーをとり、クリア。後は順調に登り、ビレー点に到着。前にパーティがいるのでわかりやすかった。2P目は、出だしが細かく難しそうだった(5級)。O村さんはなんなくこなし、岩陰に消えた。私はフォローで登ったが出だしの細かいフェースはきびしかった。それを越えると後は易しかった。
   3P目はV字岩壁の基部までやさしいのぼりだった。4P目はO村さんリードで、V字の左のルンゼを登る。5P目は私が右の凹角沿いに登り、正面岩のクラックにナッツでプロテクションを取り、ぬれた岩を左にトラバースしてテラスに出た。このトラバースはいやらしかった。   

 核心の6P目

さて、核心の6P目である。先のパーティは正面のぬれた凹角から左のスラブ壁にルートを求めていたようだが、残置が1本しかなかったようである。私たちは、左の垂直のクラックが走るフェースをハングまで登り、そのハングを左に抜けるルートを選択した。
 O村さんがリードで登ったが、いままでと違ってだいぶ苦労しているようだった。「フリーでは無理でした。A0にしま〜す。」というコールが聞こえ、姿が見えた。ハング下の潅木でランニングを取られたが、短かったのでロープが屈曲して流れが極端に悪くなった。そこで、左に抜けたすぐのところで、プロテクションをとった後、ロアーダウンでそのランニングをはずした。それで、だいぶロープの流れはよくなった。再び登りかえし、しばらくしてコールが聞こえた。

 ギリギリなんとか登れた

さて、私がフォローで登る番だ。いきなりの垂壁を力で乗り越し、さて問題のクラックが走る壁に対面すると少しかぶっている。よくこんなところを登ったものだと思わず感心。「いやいや感心している場合ではない。私も登らないといけない。」と気持ちを引き締め、ヌンチャクをつかみ体を引き上げたが、足がない。そこでアブミで登ることにした。このアブミはアルミプレートと6mmスリングで今回のために自作したものである。2回の掛け換えで、なんとかかぶっている壁を抜けた。
  後は、フィフィをヌンチャクにかけながらのA0で登った。ハングを左に抜けたところでやっと一息つき、フェースをレイバックでのぼり、ビレー点に着いた。次に登れといわれても登れるかどうかわからないくらいのレベルだった。私の限界グレードだろう。

 終了点に到着

 少し休憩し、気持ちを落ち着かせた。7P目はルンゼ通しは、簡単で面白そうではないので、残置支点のある右のカンテ寄りに登った。8P目はチムニーの枯滝を乗越し、少し登ると終了点だった。ここから烏帽子岩を越えて行くのもあるが、今回は 5回の懸垂下降で取り付きにもどった。

 油断大敵!ヒヤリハット

 最終の懸垂でロープを抜いたところ、上から落ちるロープを避けようと左前に少し動いた時、右肩に衝撃が走った。ロープに混じって白い物体が落ちてきたように一瞬見えたのだが、こぶし大の石だったようだ。ギアラックの肩当の上からだったので、何事もなかったが、そんなところに立っていたことが失態である。最後まで気を抜いてはいけない。
     

 感想

今回の山行は、初めての本格的マルチピッチの登攀ということで、正直不安があった。しかし、どうせ登るのなら、なんとかつるべ登攀をしたいと思って、トポとにらめっこし研究した。アブミも自作した。フィフィも用意した。
  実際は、核心ピッチをのぞいては余裕を持って登ることができた。これも最近フリークライミングをしていたからだと思う。これで、少しはアルパインクライミングに自信を持つことができた。
  私をこの山行に誘ってくれたメンバーの皆さん、そしてパートナーを務めて下さったO村さんには、いろいろためになるアドバイスをいただいた。感謝したい。

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錫杖沢をたどる

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1P目を登る先行パーティ

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2P目出だしのフェース

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V字岩壁下部へ

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核心部を行く先行パーティ

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8P目

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終了点から下をのぞく