滝谷・第4尾根登攀

山頂
北穂高
分類
無雪期アルパイン
日程
2008年8月9日
概要
北穂南稜テント場〜C沢左俣下降〜スノーコル〜第4尾根登攀
コースタイム
8/9(土):テント場5:20発〜北穂小屋5:40〜松なみ岩6:00〜二俣9:00〜スノーコル9:20〜2P目終了11:30〜雨降り出す11:35(停滞)〜3P目12:27〜5P目14:00〜6P目14:35〜ピナクル到着15:30〜懸垂後小休憩16:41〜登攀終了18:03〜縦走路18:28〜テント場19:10

 C沢左俣下降

昨日の中央稜に気をよくして、今日は第4尾根に向かうことにした。C沢左俣の下降が核心とも言われる。不安を持ちながらも、なんとかなるさという楽天的な気持ちで臨んだ。松なみ岩を回り込んでP1の手前をC沢に下降して行く。予想通り浮石だらけだ。お互いの落石に当たらないよう間隔を狭めたり、離したりしながら下った。懸垂支点などもあったが、クライムダウンで対処できた。

 雪渓の処理

  下り始めて50分くらいしたところから雪渓が現れた。雪が残っていても二俣付近くらいだろうと思っていたのにやっかいなことである。3人とも念のためバイルを持ってきたので、なんとか歩いて下れないこともないが、滑り出して止める自信はない。止まらなければ、100m以上滑落して岩に激突だろう。そこで、ザイルを出すことにした。私は軽アイゼンを持ってきたので、他の二人よりは安心である。雪渓の端にバイルで支点を作り、ザイルを固定。二人がプルージックで下降した後、私が降りるという案を出した。しかし、プルージックより懸垂のほうが安定するということがわかったので、二人は懸垂の要領で下の岩場のところまで降りた。その際、S木さんは、途中にバイルで中間支点を作ってくれた。最後に私が軽アイゼンを効かすために横向きになって降りた。
 さらに、その地点からすぐ下の岩にハーケンが打ってあり、残置スリングがあった。それを支点にしてさらに懸垂で50mほど降り、その後は雪渓横のガレ場を下った。結構時間がかり、二俣に着いたのは9時になっていた。
 そこからは、念のためザイルで確保したが、やさしい雪渓のトラバースでスノーコルへの踏み跡に至った。
 スノーコルは花が咲き、いままでとは打って変わって、のどかな場所だった。  

 ルートがわかりづらい

  コルから易しい(とはいっても部分的には確保しながら)登りで、取り付きに着いた。易しい1P目と2P目をリードさせてもらうことにしたが、1P目は草付き混じりの傾斜のゆるいフェースで、支点もすくなく適当に登ったが浮石が多く神経を使った。最後だけ少し壁になっていていやらしい部分があり、そこはA0で抜けた。ビレーポイントをどこにするか迷ったが、次の登攀に備え、右よりの場所で、カム2つとナッツで支点を作った。
 2P目は快適な登りだった。   

 雨で停滞

  2P目が終わった頃から雨ポツポツ降り出した。雷も鳴っている。こんな中で3P目の登攀は嫌なので、停滞することにした。この時に今回の山行のミスが露呈する。ツェルトはもちろん必携なのだが、打ち合わせの行き違いにより、誰も持参してこなかったのだ。それに替わるものとしてそれぞれシュラフカバーを持ってきたのだが、まさか雨よけにはしたくない。80リットルザック用のザックカバーを広げて雨宿りしたが、窮屈であった。幸いにも一時雨で30分くらいで小雨になったのでよかったが、心すべきであろう   

 3P目

 雨が止んで、岩も乾いてきたので、S木さんリードで3P目「磨かれたカンテ」に取り付く。フォローで登ったが、これが怖かった。岩にはコケが生えていて、これが雨で非常に滑りやすくなっていた。スメアが効かないのである。A0をしながらなんとか、登った。

 5P目

 やさしいリッジを歩き、5P目の「傾斜の強いカンテ」(3級)の取り付きに来た。とても、3級には見えない。4級+くらいはありそうだ。3P目もそうだったが、このルートの3級は4級くらいある。S木さんリードで登ったが、見た目ほど難しくなかった。3P目のほうがいやらしかった。

 6P目

 S木さんリード。「ピナクルの肩へもろい凹角を登る」(3級+)だが、ピナクルの右に出るか左に出るか、下からはわかりにくい。S木さんは右に出てビレー支点をハーケンを打ち足して作製し、フォローをビレーした。

 7P目トラブル

 ピナクルの右側の狭い場所がビレーポイントである。側面にはなんのためか残置スリングがぶら下がっていた。ここから左側に1ピッチ登り(3級+)懸垂なのだが、その途中でトラブル発生。F上さんがリードで登っている最中に、ロープがこんがらがって出せなくなったのだ、一度私のロープをほどき、もう一度ロープを束ねなおした。約10分間ほどかかったのではないだろうか。その間リードのF上さんには、岩の途中で待ってもらい申し訳なかった。ロープが出せるようになってすぐ16時に、F上さんは終了点に着いた。
 フォローで登ったが、最後が垂直に近いクラックになっていていやらしかった。

 懸垂下降

 ツルムの左肩からツルムのコルまで20mの下降である。懸垂点はいくつかあるが、一段下がったところからがいいようだ。一部垂壁もあるが、ねている壁がほとんどなので、ロープを整理しながら降りる必要がある。ツルムのコルで小休止。

 8P目

 16時40分、F上さんリードで登り始めたが、雷もふたたび鳴り始めた。「リッジの左側のフェースからチムニー」(4級)である。快適で楽しい登りだった。

 9P目

 F上さんリードで、「傾斜の強いDカンテ、かぶり気味の2つのカンテを越す」(4級A0、5.10a)である。難しそうで、ロープがなかなか伸びない。しかし、しばらくして「ビレー解除!」のコール。登ってみると、すこしハングになったカンテがあったが、フォローの強みで思い切ってフリーで抜けた。S木さんも登ってきて、18時5分登攀終了。終了してすぐに雨が降ってきた。もう少し登攀が遅くなっていたら、難儀なことになっていた。
 縦走路には、18時28分着。ここからテント場までが遠かったが、途中雨が止み、きれいな夕焼けを見せてもらったりして、幸せな気分だった。テント場には19時10分到着。約14時間行動だった。

 感想&反省

 今回は、はじめての滝谷で思いがけず、代表的な2つのルートを自分たちの力で登ることができた。リードはわずかしかできなかったが、充実感でいっぱいである。
 第1の核心は北穂南稜までのアプローチだった。アルパインクライミングにはボッカ力も必要なことを実感した。
 第2の核心は、やはりC沢左俣の下降であろう。浮石の多い、しかも雪渓の残るいやらしい沢の下降には、総合的な山の経験が必要だった。その点、今回のメンバーはオールラウンドに山を楽しんでいるメンバーだったので、安心して下降することができた。
 いろいろな状況に自分たちで考え対処していく楽しさを味わえた山行でもあった。
 このように楽しく充実した登攀ができたのも、メンバーのおかげである。感謝したい。
 反省点としては、
1、登攀スピードが遅かったこと。3人パーティとは言え、標準タイムの2倍かかっているのは、遅すぎる。これは、たぶんにルートファインディング 、ランニングのとり方、ビレー支点作製に時間がかかったためだと思う。これは、スピードを意識しながら実践経験を積んで行くことで解決できると思う。要は経験不足だったということだ。
2、文中でも述べたが、打ち合わせのミスでツェルトを持参しなかったことだ。計画書に矛盾したところがあったなら、ちゃんと確認をすべきであった。

IMGP1350.jpg(27981 byte)

朝日の中の前穂北尾根

IMGP1359.jpg(40065 byte)

C沢左俣の雪渓を下る

IMGP1370.jpg(49780 byte)

ホッとするスノーコル

IMGP1380.jpg(44589 byte)

3P目みがかれたカンテ

IMGP1387.jpg(48494 byte)

5P目傾斜の強いカンテ

IMGP1396.jpg(45729 byte)

6P目ピナクルの肩へ

IMGP1415.jpg(45538 byte)

8P目フェースからチムニー

IMGP1425.jpg(10365 byte)

ごほうびの夕焼け

IMGP1427.jpg(28660 byte)

やったぜ