やっとここまで

今回は、上高地までK藤さん、F田さんが同行されるということでワッキーを含め4名で出発した。雨模様だったので、悪天の場合の行動予定を確かめ合い、帰りに上高地でちゃんと落ち合えるように相談した。
　涸沢まで向かう途中で少雨、たまに強い雨、たまに晴れ間とめまぐるしく変わる天気に雨具を着たり、脱いだりと忙しかった。
風がなかったので傘が重宝した。
　K藤さんは当初の予定の奥穂高山荘のテント場をやめて涸沢泊まり、F田さんは予定通り北穂高小屋まで足を伸ばされた。
　５・６のコルまでのルートの下見をした後、涸沢名物のおでんと生ビールで乾杯しながらゆっくりとした時を過ごした。
　　翌日の天気はよくなるという予想を聞いて希望を持ったが、夕方から夜のはじめはけっこうな雨が降った。
　　寒いかもしれないと、夏用シュラフ、インナーシュラフ、シュラフカバーを持ってきたが、汗ばむくらいだった。
　　いよいよ前穂高・北尾根に登るという期待と不安で寝苦しい夜をすごした。

　天気は上々

午前３時起床の予定が寝過ごして３時３０分になっていた。雨は夜半からやんで、曇りだが雲は高く、ところどころ青空の見える天気だった。
　４時４０分にテント場発。昨日下見をしているので、迷うことなく５・６のコルを目指す。我々のすぐ先に２人組のパーティ、ずっと先には１０数人のパーティがいて、後にも４人組のパーティが続いていた。
　　しっかりした道がついているが、なかなかしんどい登りの末、５・６のコルには５時５５分到着。
　　１０数人のパーティはなぜかハーネスを着け、ロープまで結んでいる。
　　私たちは、ヘルメットだけをかぶり、さっさと出発した。前の４人パーティが遅いので、先をゆずっていただいた。
　　なんとなく、５峰に到着すると、４峰がりっぱな姿を現した。
　　４峰はルートファインディングが難しいと聞いていた。涸沢側から奥又白側へ回り込む地点の矢印に沿って、左に回り込んだ。踏み跡が途切れたところで、上の岩を目指して登るということだったが、踏み跡はとぎれず続いているので、そのまま従った。ややガレているところを乗越すと稜線上に出た。踏み跡が頂上まで続いていた。正規のルートではないかもしれないが、ヴァリエーションというのは、そういうものだ。自分で判断して、登れそうならそれでいいと思う。
　　３・４のコルへは歩いて降りられる。コルには２人パーティと４人組（２パーティ）が先着していて、我々は３番目だ。 　

　１時間２５分待たされる

先頭パーティはなぜだか５ｍほど登った取り付きで、ロープを結んだりしている。しかもダブルロープだ。なかなか登り出す順番がこない。コルは風通しがいいのだ。その風も秋の風で冷たい。手がかじかんでくるのを、息をハーハーして暖め、待った。待った。待った。やっと我々の番がきて、登りだした。 　　

　登攀開始

１ピッチ目は、大岩の左から回り込んでいく。ロープが岩の間に挟まりそうになるので、少し登ったところで、ロープを岩の上に回した。左が切れた高度感のあるところを、クラックの足場を拾って登っていく。結構緊張した。テラスには先行パーティが居たので、その手前の岩にスリングを回し支点としてワッキーをビレーし、迎えた。 　　

　２Ｐ目はトンネル

テラスからリッジ状の尾根を登り、幅の広いチムニーに入っていく。チムニーの中はまるでトンネルだ。なかなかおもしろい風景なので写真を撮った。トンネルを抜けると右に９０度くらいに曲がってもろいルンゼ状を登るようなので、トンネルを抜けたところでピッチを切った。

　３，４Ｐ目

もろいルンゼ状のところを抜けると左上にビレー点があり、その右によくWEBページでみる快適なディエードルがあった。そのビレー点まで登り、ピッチを切った。
　４ピッチ目はディエードルを登り、テラスに出た。そこで、肩がらみビレー。

　５Ｐ目

稜線から少し登り、正面は登らずに左に回り込む。すこしいやらしかったので、カムでランニングをとった。この回り込むところがリュックが岩に支えて登りづらかった。
右に回り込んだところは広い稜線。いよいよ最後の登攀ルートが見えた。

　６Ｐ目

稜線のリッジ状のところから出発する。先行パーティは上の岩峰の右を巻いて上に出たようだったが、私は、岩峰まで直登した。しかし、３級下くらいのグレードだった。岩にスリングを回し、支点としてワッキーを迎えた。
　これで、実質上の登攀は終了。
　ロープをザックにしまい、２峰までは歩いて行った。２峰からの下りで、先行パーティは懸垂の用意で手間取っていたようなので、右から巻き気味にクライムダウンをしたが、岩がもろく、すこしスリルがあった。コルにでて、ルートを眺めると懸垂ルートのすぐ右に快適にクライムダウンできるルートがあった。　

　いざ涸沢へ

そのまま歩いて、前穂高頂上へ。登ってきた人に記念撮影をしてもらい、奥穂へ向かった。暖かいうちに涸沢に降りて、ビールが飲めそうだったので、先を急いだ。奥穂は人だかりで大変だった。ヘルメットをかぶった団体がいて、バンザイをしていたので、西穂から縦走してきたのかも。
　奥穂山荘への下りも渋滞ぎみなので、岩場を少しショートカットした。ザイテングラードを涸沢に下り、例によって涸沢ヒュッテの名物おでんと生ビールでカンパイした。
　夜に起き出すと、中秋の名月が凛として輝き涸沢を照らしていた。涸沢にはじめて訪れた日から、この日までの様々な山にまつわるエピソードが思い出され、静かなすてきな夜だった。

　パノラマコースを上高地へ

翌日も快晴で、涸沢のモルゲンロートに歓声を上げ、パノラマコースを上高地に向かった。屏風の耳、頭ともに行ったことがなかったので、立ち寄った。耳までは一般道だが、頭へは少し藪を漕ぎ、急な踏み跡をたどらなければならない。
　しかし、屏風の頭の展望は抜群だった。涸沢カール、槍沢カールの両方が見られるのはここしかないのではないだろうか。
　奥又白への道を分ける付近はお花畑が広がっていた。山行の余韻を楽しみながら上高地への道をのんびり歩いた。

５・６のコルの混雑

４峰

３峰の登攀ルート

２Ｐ目のチムニーへ

チムニー内部

最後のピッチ

懸垂点を前穂高側から見る

涸沢のモルゲンロート

屏風の頭から槍ヶ岳を望む