権現岳・東稜登攀

山頂
権現岳
分類
積雪期アルパイン
日程
2009年4月4日〜5日
概要
美しの森〜出合小屋〜権現沢左股〜権現東稜〜バットレス〜一般道出合(泊)〜ツルネ〜ツルネ東稜〜出合小屋〜美しの森
コースタイム
4/3(金)京都駅22:00〜小淵沢道の駅27:00
4/4(土)美しの森駐車場発7:50〜出合小屋9:40_9:55〜ゴルジュ10:30〜稜線への取り付き10:55〜稜線上11:15_11:40〜バットレス基部雪壁13:00〜バットレス第1ピッチ登り出し15:00〜第2ピッチ開始16:20〜終了点17:20〜一般道出合17:40(テント泊)
4/5(日)テント場発8:16〜ツルネ9:21〜出合小屋11:30〜美しの森駐車場13:15

 剱・八峰に向けてトレーニング

今年の5月の連休は会のメンバーと剱・八峰をめざしている。そのためのトレーニングとして、八ヶ岳・権現岳東稜に行くことにした。
 3月に他のメンバーが行った記録を読むにつれ、私がはたして登れるものか不安だった。なにせ、八ヶ岳東面の卒業ルートだというのだから。
 しかし、強力な他のメンバーを信頼して参加することにした。

 権現沢左股

4/3(金)22時に京都駅でS木さんを拾い、途中I野さんをピックアップ、さらにT橋さんを自宅でピックアップし、京都東ICに向かう。深夜では高速道路料金値下げの影響もあまり見られず、快調に行程がはかどった。小淵沢ICで降りて、小淵沢道の駅に3時着。車中で仮眠する。6時起床で、共同装備を分け、7時出発。美しの森駐車場には7時30分着。身支度をして、7時50分に川俣林道を歩き始めた。林道の所々には雪が残っていた。はじめの堰堤は、9時ごろ通過。谷筋に入ると積雪も多くなった。おおむね1mくらいだろうか。出合小屋には、9時40分着。55分出発。すぐに赤岳沢出合。左の地獄谷に入る。しばらく進むと上の権現沢との出合に着いた。他のパーティがいたので聞くと、旭東稜に向かうとのこと。権現沢の左股に入るとすぐにゴルジュだ。なかなかの迫力だった。夏はどのようになるのだろうか。

 いよいよバットレス

ゴルジュを抜けて、右の尾根の浅いルンゼを詰めて尾根に上がるとガイドブックには書いているが、そのまま25分ほど沢をつめたところの標高2120m付近右側のルンゼを尾根に上がった。20分ほどで尾根に上がることができた。
 そこからアイゼンをつけて、バットレスに向かった。30分ほど登ると前方に黒いバットレスが見えてきた。前面は切り立っていてとても登れそうもない。
 細い雪のリッジを越えて、バットレス基部へは、急な雪壁を登る。ロープをつけてS木さんが取り付いた。これを1P目としておこう。上のほうは傾斜が急でいやらしそうな感じだった。樹木でロープをフィックスした後、私はタイブロックで登った。ロープをフィックスしたあたりは地面も凍っており足場も不安定なところだった。そこからバットレスを見ると、一段上がったところがバンドになっているように見えた。右のほうにそのバンドに上がる踏み跡らしきものが見えたが、I野さんは、左から強引に突破していった(2P目)。同じくロープフィックスの後、つぎつぎにバンドに上がり、左にトラバースした。カンテにビレー点があった。

 バットレス核心へ

ここからが本格的なバットレスの登攀になる。またまたS木さんリードで登る(3P目)。カンテを直上した後、少し左手にトラバースぎみに登っていった。なかなか苦労しているようだった。この頃から雪が降り出して、風も強くなってきた。ようやくコールがあり、T橋さんがフォローで、I野さんがロープマンで、最後に私がフォローで登った。左にトラバース気味に行くところは、ホールドも細かく、また雪がそのホールドも隠していて、手で雪を払いのけながらの登攀になった。指は冷たくてジンジン痛み、まるで冬のようだった(アウターの下はアンダー手袋だけだったので)。A0もしながら、なんとかビレー点直下にたどり着けたときは、ほっとした。
 4P目もS木さんリード。はじめは易しそうな階段状だが、左に回り込むあたりはどうなのだろうかと思って先行者の登りを見ていた。待っている間にも雪で靴が埋まっていく。風が冷たかった。やっと最後に登る番がきた。実際登ってみると、回りこんでリッジ上に登ってしまえば、後は易しかった。S木さんが潅木でビレーしているところに到着した。続けて私がT橋さんが張ったロープにタイブロックをかけて、結んでいたロープをバックロープとして引いて登った。10mほどで、T橋さんが待つ終了点に到着した(5P目)。時刻は17時40分。

 

 トラブル発生

時刻も時刻なのでT橋さんと二人で、今夜の泊まり場を探しに雪稜を登って行こうとしたところ下からコールがあった。S木さんがザックを落としてしまったとのこと。もう遅いので、明日早朝に探しに行くということだった。とにかく、今日の泊まり場を探さなくてはならない。4,5人用テントを張れるスペースが必要だ。雪稜を登って行くと、一般道との出合に着いた。そこはなだらかな小ピークで風は強いが、なんとかテントを張れるスペースはある。さっそくスコップで整地し、テントを張った。
 S木さんのザックの中には、共同装備として、アルファ米1袋、棒ラーメン1袋、ガスカートリッジ1、ガスヘッド1、トランシーバー1が入っていた。夕食のカレーのペミカン、ルー、アルファ米1袋、わかめスープ4袋、朝食の棒ラーメン1袋は他のメンバーが持っていたので、とりあえず、量は少ないが夕食と朝食はだいじょうぶだ。ガスカートリッジとヘッドも1つずつあるので、なんとか調理もできた。持参したウィスキーとつまみがおいしかった。
 S木さんには、4人の間に入ってもらって、貼るカイロ1つ、ザック2つの下敷き、レスキューシート1枚とツェルト2つで夜を切り抜けてもらうことになった。夜は風が強くテントをはためかせ、なかなか熟睡とはいかなかったが、体を休めることはできた。

 

 ザックは見つからず

 さて翌朝、4時起床でI野さんとS木さんはザックを落とした地点まで偵察。天気は回復して晴天だ。雲海がきれいだった。周囲360度の展望を楽しめた。私とT橋さんはテントキーパーとなった。水を作ったり、テルモス用の紅茶を作ったりしながら、ふたりの帰りを待った。
 二人が帰ってきたのは8時前。残念ながらザックは見つからなかった。テントを撤収してツルネに向かう。前方の旭岳が立派だ。稜線は右側に雪庇も張り出していたので、注意して進む。
 ツルネ東稜にはいると、トレースはしっかり付いていたが、一歩歩くたびにアイゼンにダンゴ雪が付く。頻繁にピッケルでたたき落とすのがめんどくさかった。途中でアイゼンを脱いでからは、すべって転びながらも、行程ははかどったが、ところどころ雪の下が完全に凍っているところもあり、なかなか苦労させられた。それでも出合小屋には2時間程度で着いた。
 あとは、しっかりしたトレースをたどり、駐車場まで長い林道を歩いた。  小淵沢道の駅すぐ横の「スパティオ小淵沢」で汗を流し、小黒川PAのソースカツ丼を食べて、帰京した。帰りの高速道路は、料金値下げの影響で渋滞もあり、自宅には22時ごろ到着した。

出合小屋への道


ゴルジュを行く


バットレス基部への尾根


バットレス全体が見えた


バットレス基部へ傾斜のある雪壁を登る


雪壁上部凍っていた


バンドに上がる


3P目核心を登る


4P目の登りだし


待機中に足下を撮る


4P目をフォローで登る


4P目の終了点(灌木でビレー)


テント場にやっと着いた


翌朝の赤岳と阿弥陀岳


テント場からの権現岳


テント場を出発前に記念写真


はしごでの下り


旭岳への稜線


ツルネからバットレスを振り返る


ツルネ東稜を下る