剱岳・八ツ峰登攀

山頂
剱岳
分類
積雪期アルパイン
日程
2009年5月3日
概要
剱沢テント場〜長次郎谷出合〜12のコル〜八ツ峰の頭〜池の谷乗越〜長次郎谷下降〜剱沢テント場
コースタイム
5/1(金)京都23:00〜立山駅 翌5:00
5/2(土)立山駅8:40バス〜室堂9:45_9:55_10:10〜剣御前小屋12:15〜剱沢テント場13:10
5/3(日)3:30テント場発〜長次郎谷出合4:40〜23のコル7:20〜4峰8:05〜56のコル10:00〜7峰10:50
    8峰11:40〜八ツ峰の頭14:15〜池の谷乗越14:50〜長次郎谷出合16:10〜テント場17:30

 憧れの剱へ

2009年の5月連休は、I野さん企画の剱に決まった。
1、八ツ峰登攀〜本峰〜平蔵谷下降と
2、八ツ峰6峰Cフェース登攀
の2プランを5/3〜6の連休にやってしまおうというわけである。
  5/1(金)23時にS木さん、さらにI野さんをピックアップして京都を出発した。連休前だが、時間が遅いせいかそれほどの混雑でもない。呉羽PでT橋さんらと落ち合い、立山の駐車場へ。午前4時30分に着いた。少しではあるが6時まで仮眠し、バスターミナルへ。さすが、連休とあって観光客や登山客でごった返していた。幸いにも関西岩峰会の人が我々の分まで切符を買ってくれることになり、8時40分の室堂行きバスに乗ることができた。室堂には、9時45分着。10時10分に歩き始めた。扇沢から入るT田さんは混雑のため1時間強遅れるということだったので、先に剱沢のテント場に行くことにした。

 剱沢のテント場は花盛り

天気は快晴、雪がまぶしい。思いのほか山スキーの人が多かった。剱御前小屋への登りは雪崩を避けるため雷鳥沢の左の尾根を登るようになっている。標識の赤い旗竿がずっと立てられていた。
  剱御前の小屋まで途中一回休憩で、12時15分に到着。やっと剱岳が姿を現した。強い風に吹かれながら初めて見る雪の剱岳に見とれていた。剱沢のテント場まではほんの30分程度。13時10分にはテント場に着いた。
  2,3人用テントと4,5人用テントの二張りを設営するため、スノーソー、スコップで雪を掘り起こし、南側に雪のブロックを積んだ。
  テント近くには雷鳥の夫婦が来て、カエルのような鳴き声で鳴いていた。雄大な剱岳を見ながら、午後のひとときを過ごした。
  3時頃T田さんが到着して、すぐに夕食の用意をした。屋外でジンギスカンと野菜、キノコの炒め物、それにビールという豪勢な夕食だった。明日は午前1時30分起床、3時30分出発の予定である。

 12のコルへのルンゼを詰める

さて、5月3日。いよいよ八ツ峰登攀の当日である。予定通り3時30分に出発。剱沢を下って行く。雪面はクラストしているが、ときどきそのクラスト面を踏み抜くこともあった。沢の右岸をトラバース気味に行くので歩きにくかった。長次郎谷出合には4時40分に到着。ハーネスを着け、ヘルメットをかぶって長次郎谷を登り出した。
  12のコルへのルンゼまで約40分の登りということだったが、対岸の岩小屋も雪に隠れていてわからず、たぶんそうだろうということで5時30分、標高2230m付近から右手のルンゼに取り付いた。ルンゼは雪がよく締まっていた。アイゼンの爪が入る程度でステップが切れるほどではなかった。
  下から眺めると30分くらいで登り切れるような感じだったが、登るにつれてさらに上にもルンゼが続いていることがわかりがっかりした。ふくらはぎがかなり疲れた。傾斜が結構きついので、リーダーが安全のためロープを出すように指示したが、右手斜面の傾斜のきつい側にしかフィックスのための支点をとることができなかったため、1Pだけロープを使ったが、2P目のロープは結局使わず、ノーロープで左のルンゼ中央を登ることにした。
  ルンゼは上部で2つに分かれていて、中央に二峰と思われるピークがあった。先に登ったパーティを見ていると、そのピークの下部の雪面をトラバースして左のコルに抜けていたので、わざわざそのコル(12のコル)に登らず、直接左のコル(23のコル)に登ることにした。
  背後に源次郎尾根の大きな1峰、2峰を望みながらの登攀だった。
  23のコル到着は7時20分。なかなかしんどい登りだった。

 雪稜を越えて56のコルへ

3峰には7時30分に到着。そこからの下りは約20mの懸垂で、先行パーティがいたので少し待った。コルに降り立ったのは7時50分だった。4峰には8時5分に到着。ここも三ノ窓側に懸垂だ。先行パーティは、ロープを2本繋いで懸垂したが、1本で大丈夫ということがわかって我々は1本で行った。コルに降り立ったのは8時35分だった。5峰は雪稜を登った先にある顕著なピナクルにある支点を利用して、長次郎谷側に2ピッチの懸垂だ。 ガイドでは、40m、20mという記述があったが、1回目の懸垂は20mで支点のある狭いバンドに着地。全員がそろうまでしばし待った。次の懸垂は40mで高度感があった。着地点からトラバースして56のコルに達した。10時だった。支点はいずれも掘り出されていて、新しいスリングとカラビナが付いていて安心して懸垂することができた。 

 上半部へ

さっそく6峰の登りへ。振り返ると5峰が迫力ある姿でそびえていた。6峰は急な雪壁の登り。トレースがあったので不安はなかったが、もしなければロープで確保して登らないと怖そうだった。
  10時50分に6峰のピーク。少し下がったところに懸垂支点があったので、安全のため、そこまでスリングをたらした。ふたたび三ノ窓側に懸垂。
  7峰には10時50分に到着した。7峰からは三の窓側に懸垂。11時50分に全員降り立った。
  8峰の登りもいやらしそうで、先行パーティはロープを出していた。11時40分には先頭のT田さんとI野さんは78のコルに着いたのだが、先行パーティを待って、11時55分ごろ登り出しとなった。雪がぐずついて、いやらしく、支点も中間のブッシュで2箇所ほどとれるだけの登攀になった。終了点付近も支点がなく、スノーバー2本を支点とした。
  登り終わってからもトサカ状のナイフリッジが続いており、2P目のロープはT田さんをスタンディングアックスビレーで確保して不安定極まりない下りをコルまで進んでもらった。後続もロープを伝って慎重に下った。14時には最後のS木さんも確保されて降りた。結局待ち時間も含めて8峰の処理に2時間20分かかったことになる。
 八峰の頭までは、短い登りで、14時15分に到着。ここから池の谷乗越には懸垂で下降した。乗越には14時50分に到着した。。 

 本峰はあきらめる

 さて、これから本峰に向かうかどうか相談した。ビバークの用意はしているが、天気予報は下り坂だった。雪が降るかもしれないという予報の中、ビバークはみんな気が進まなかった。本峰まで1時間30分かかったとして4時30分。そこから平蔵谷乗越までのルートは初めてなので、難度、所要時間も読めなかった。後日源次郎尾根を登攀した後に下ったら30分ほどだったので、5時には乗越に着けたとは思う。そこからは平蔵谷を下降して、再度テント場まで登り返すのは技術的にはなんの問題もないので、結果論としては、遅くとも午後8時には帰ることができたかもしれない。しかし、その現場での判断としては、安全策をとったことは適切だったろう。
  帰ると決まれば、後は長次郎谷をひたすら下るだけだ。16時10分には出合に着いた。しかし、それからの登り返しがつらく、テントに着いたのは17時30分だった。
  夕食はS木さん特製のカレーだった。暖かいテントでおいしいご飯、お酒を楽しめてビバークしなくてよかったなあとみんなでしみじみ語りあった。
  そしてその時、本峰を踏めなかった悔しさに、Cフェースはやめて是非源次郎尾根を登って、本峰を踏もうとみんなの意見がまとまった。

よも山亭ホームへ

雪の大谷


いざ剱沢へ出発


雷鳥沢のテント場を望む


剱岳と剱沢テント場


12のコルへルンゼを詰める


ルンゼの登り


4峰への雪稜


4峰からの懸垂下降


5峰からの懸垂支点


6峰を望む


6峰への雪壁を登る


8峰へのルート


8峰への登り


8峰トサカ状雪稜からの下り


八ツ峰の頭へ


池ノ谷乗越


長次郎谷の下り