白馬朝日の縦走
海の日の連休は、白馬方面へ行くことにした。今まで行こうと思いながらなかなか機会のなかった白馬岳から雪倉、朝日岳の縦走である。
蓮華温泉からだと周遊コースがとれる。2泊3日のコースである。
車中は蒸し暑い
さて、メンバーはY浅さん、T中さんと私。京都駅に21時に集合して出発。
先の北岳の経験からアプローチでいかに睡眠時間を確保するかが肝要であると思っていた。特に夏は暑さのために寝苦しい。
今回は車の後部座席を寝台モードにして、走りながら睡眠を確保する作戦をとった。幸い3人とも運転ができるので3人中二人は眠れるという算段だった。
ところが、T中さんは長時間の運転をものともせず、私が寝ている間に休憩予定地の有磯海SAを越えて、
糸魚川ICの近くまで行ってしまったので、しかたなく、国道号脇の平岩Pに車を停めて、2時間の車中泊と相成った。
関西ほどではないが、夜は、やはり蒸し暑く寝苦しかった。
想定外
早朝に出発。蓮華温泉への林道の入り口はそこからすぐだった。
途中、自然災害のため林道が通行止めという看板が立っていたが、まさか蓮華温泉までの林道で通行止めなどないだろうと、タカをくくっていた。
ところが白池の駐車場には車が10数台停まっており、正面の林道は通行止めの看板と鎖が張ってあるではないか。
ここから蓮華温泉まで歩くとなると3時間よけいにかかる。帰り2時間半としても京都に帰るのは相当遅くなる。
どうしようかと3人で相談したが、Y浅さんは行く気満々である。他にも歩き出す登山者がいたり、自転車で出発する人もいた。
それじゃあ、行きましょかと重い気持ちで用意して歩き出した。ビワ平では、これから登る山なみを望むことができたが、頂上付近は雲に覆われて見えなかった。
蓮華温泉から白馬大池
結局、蓮華温泉まで3時間かかって到着。水場があるので、水を補給して白馬大池への登山道を歩き出したが、T中さんの体調が思わしくない。
普段は体力のある人が、はじめの30分で息は上がり、汗をいっぱいかいている。林道歩きで熱中症ぎみになっているのかもしれないと、しばらく休み、
とりあえずあと30分登って降りるかどうか決めようと再度歩き出した。意識してゆっくりしたペースを維持して登った。
無事歩き通すことができて白馬大池に到着した。
3度目であるが、お花畑とハイマツ、雪渓、山上の池の雰囲気には感動した。すでに小屋前には多数のテントが張られている。その間に我々もテントを張る。
あとは、まったりとした午後を過ごすだけだ。小屋裏の大きな岩の上で昼寝をしたり、写真を撮りに散策したり、ゆったりとした時を過ごした。
夜には、満月があたりを照らし、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
朝日岳への縦走
3時起床。4時半出発。今日は、朝日岳までの縦走だ。今回の山行の核心ともいえる。
早朝からたくさんの登山者が白馬岳をめざして登って行く。天気は快晴。風はさわやか。雄大な景色とこの風に山をはじめた頃の初心を思い出した。
このような自然の中で活動することの喜びを「生きていることの本質的な喜び」と感じたのだ。
小蓮華山を越え、三国境までは思ったより遠かった。歩きながら、本日のルートを確認する。ところどころ雪渓をトラバースするところがあるようだが、
赤いラインも見えるし、歩いている人も少なくなさそうだ。
三国境からの下りはザレていて滑りやすい。心持ち踏み固められ度合いがいままでの道とは異なるような気がした。
1時間30分ほど歩いて、雪倉岳避難小屋に着いた。小屋前には12、3人の大パーティが休憩していた。小屋の中にはトイレもあった。
ただ、中は真っ暗なのでヘッドランプ必携というのはT中さんの話。
ここから見る雪倉岳は大きく、急登に気合を入れる。
それほどのこともなく、40分で頂上へ。黒い石の雪倉岳の標識があった。前方には、赤男山がするどい山容を示していて、
トラバースする道でよかったとほっとさせる。
しかし、これもクセモノで、道はどんどんと下る。下り切ったところが水場になっているが、細い流れで十分とは言えない。
我々は、もう少し先の地図で常水とかかれたところを目指した。こちらは、豊かな水量だった。
ハイドレーションに補給して、タオルを濡らし、頭に巻く。
一息ついたらふたたび小さなアップダウンを繰り返すトラバース道を行く。すると前方に赤いテープが横に張られていた。
標識がたっており、「トラバース道は残雪が多く、危険なので通行止め。立ち入らないでください。」という看板だった。
こういう時のために12本爪アイゼンとピッケル、補助ロープを持って来たのにと思ったが、
遭難対策協議会のいうことのなのでおとなしくきいておこう。
なるほど一般道では、どんな装備の人でも一応通行できるような状態でないと危険が伴うだろう。
自己責任のバリエーションルートではないのだ。
ということで、朝日岳へは直登ルートを登ることになった。コースタイムは1時間45分。地道にゆっくり登って、
1時間で山頂に着いた。あたりはガスに包まれ展望はよくない。また明朝くるので、それに期待して、朝日小屋に下る。約45分。
我々はテント泊だが、朝日小屋は小屋の人の心配りが随所に感じられる小屋だった。また、
小屋のロケーションもよく、高山植物の中に立っているようなものだった。
朝食と夕食メニューの写真が受付の鴨居に飾られていて、おいしそうだった。
高山植物の絵のバンダナがすてきだったので、おもわず買ってしまった。
アサヒビール500mlが700円だった。
白馬大池では800円だったのは、どういうわけだ。
日が陰っているので少し寒かったが、ビールは外せない。
午後4時には夕食を食べ、6時に就寝したが、昨夜よく眠ったせいか寝つきは よくなかった
淡い期待も裏切られ
同じく3時起床。4時30分出発。朝日岳への1時間の登り。
昨日はガスのため展望はよくなかったが、今朝はすっきりと晴れて白馬岳や清水岳方面もよく見えた。1時間で頂上に到着。北側の妙高山・火打山もよく見えた。
これからは蓮華温泉への長い下りだ。千代の吹上はまさに風が吹き抜けて気持ちのいいところだった。
すぐに大きな雪渓が現れる。下りぎみのトラバースである。慎重に歩く。その後も何箇所か雪渓が現れる。着脱容易な簡易アイゼンくらいは持参した方がよさそうだ。
道は湿原の中を縫うようについている。水芭蕉の群落も見られ、まるで桃源郷の中をさまよっているような感じだ。
昨日縦走して来た雪倉岳の雪渓豊かな稜線をながめながらの逍遥は気持ちいいものだった。
やがて尾根道になり、前方が開けるとザレ場の下りになる。花園三角点のあたりも湿原になっていて高山植物の花園になっていた。
白高地沢に向かって1時間あまりの急な下りをこなすと、いよいよ渡渉点である。
河原で3人の登山者が我々を見て、
「上流にある橋が流されてないので、渡れない。下流で渡れるところを探す。」とおっしゃっていたが、上流に様子を見に行った。
登山道わきに取り外された金属製の橋の部品が置かれていた。たしかに大きな岩の上に設置された鉄製の桁に橋はなかったが、
これは流されたというより、さきほどの部品が取り外されたと考えたほうがいいだろう。
飛び石伝いに渡れそうなので、上流で徒渉できるところを探して渡り、ふと下流を見ると、300mほど下流になんと立派な橋がかかっているではないか。
再度渡り直すのも面倒なので、Y浅さん、T中さんにも渡ってもらった。登山道は沢沿いに下っている。
後から考えると下流に新しい丈夫な橋ができたため、冬季にいちいち取り外していた旧の橋は使用されなくなったということだろう。
下流の橋に導くような表示がどこかにあり、我々はそれを見落としたのだろうか。まあ、とにかく沢を渡ることができた。
ここから樹林帯の長い登りがふたたび続くことになる。かなり疲れた頃に兵馬平に到着した。蓮華温泉
まで60分との道標があり、少しは元気が出る。
このあたりや少し先のあやめ平は湿原になっていた。道はゆるい登りである。やっとの思いで蓮華温泉には12時着。
ひょっとしたら宿泊客を迎えに行くついでに車に乗せてもらえるかもしれないという我々の淡い期待もみごとに裏切られ、白池まで2時間30分の林道歩きとなった。