剱・北方稜線

山頂
剱岳
分類
無雪期縦走
日程
2011年8月13日〜16日
概要
室堂〜剱沢〜池ノ平〜小窓〜北方稜線〜剱岳〜剱沢〜室堂
コースタイム
2011年8/13(土):立山駅7:30バス−室堂8:40〜剱沢キャンプ場12:10(泊)
8/14(日):剱沢5:10〜7:20真砂沢ロッジ7:40〜8:40二股〜10:35仙人池ヒュッテ分岐〜10:50仙人池〜11:50池ノ平小屋(泊)
8/15(月):4:50池ノ平小屋〜5:55小窓雪渓〜6:30小窓〜7:20第1の雪渓高巻き〜7:50第2の雪渓トラバース〜8:20小窓の王〜8:40三ノ窓8:55〜9:35池ノ谷乗越〜10:05スラブ岩のトラバース〜10:35長次郎のコル〜11:00剱山頂〜14:10剱沢キャンプ場
8/16(火):5:10剱沢キャンプ場〜7:40室堂
   

 機会がめぐってきた

剱北方稜線は槍ヶ岳の北鎌尾根と並んで、バリエーション入門ルートとして人気がある。
 今年7月号の山と渓谷、8月号の岳人と続けて北方稜線のガイドが載っていた。
 私も、頭の片隅にはあったが、いままでなかなか行く機会がなかった。
 そんな中、まだ肩の脱臼の後遺症が残っていて、本格的なバリエーションはちょっと無理なので、会のメンバー3人と北方稜線に行くことになった。
  以前、山の友人から聞いたところでは、夏はガラガラなだけで、そんなに面白くないということだったが、さてどうなんだろうか。  

 朝はゆっくり

 1日目:金曜日の午後9時に京都駅を出て、立山駅駐車場には翌午前2時半ごろ到着。まだ駐車場には余裕があった。 端に車を停め、その横でテントを張って仮眠。ゆっくり寝て、駅に行ったときには室堂直行バスの切符は売り切れで、ケーブルカーと高原バスを乗り継ぐことになった。7時30発のケーブルに乗り、美女平乗り換え、室堂には8時40分着。往復料金が4190円プラス荷物券300円(片道)だった。  

 雷鳥沢からの登りは渋滞

室堂からみくりが池のほとりを通り、雷鳥沢キャンプ場を過ぎて、剱御前小屋への登りにかかった。やはりお盆ということもあって人が多い。どんどん追い抜くが、途中からは道が狭く渋滞になり休み休み剱御前小屋に着いた。
 どんよりした天気で剱本峰はガスで見えない。下ってすぐに今日の泊まり場、剱沢についた。夏の剱沢は久しぶりである。雪渓の冷気が下がってくるためか、寒かった。
 今晩の夕食は私特製牛丼。インターネットでレシピをさがし、赤ワインやその他いろいろな具材を隠し味に使った絶品!?である。1日目ということで重量を気にせずタップリ持ってきた。小屋まですこし距離があるので、ビールを買う気にもならず、持ってきたウィスキーでチビチビやっていた。
 夕方になり、ガスもとれて剱本峰が顔を出した。光線のぐあいを見て何枚も写真を撮った。夜には星も出て、翌日の好天が期待できた。    

 暑さにまいる

2日目:さて、今日は池ノ平小屋までの下りがメインの一日である。私は剱沢より下部は初めてだった。
 剱沢に降りるとすぐに雪渓が出てきたので、アイゼン、ピッケルを用意する。
 平蔵谷出合付近の源次郎尾根の取り付きを確認しようと思っていたが、しっかり踏み跡がついていて2パーティーほどが取り付いていた。源次郎尾根は取り付きまで短いので、八ツ峰などに比べるとだいぶ楽そうだ。
 さらに下ると長次郎谷だ。上から人が降りてくる。うちの会員のS、I、K、Tさんじゃないか。いやそんなはずはない。などと言い合っていると、まさにS、I、K、Tさんだった。予定を変更して剱沢経由で帰ることにしたそうだ。まさか会えると思っていなかっただけにうれしかった。しばらく談笑した後分かれる。
 空は真っ青、樹木は緑、雪渓は白と色の対比が美しい。しかし、標高をどんどん下げているだけに暑さが堪える。
  真砂沢ロッジにはクライマーのテントが10張り弱、張りっぱなしになっていた。
 これまでは、雪渓を下ってきたが、これから道は、沢沿いに高巻いたりしながら二股まで続いていた。二股の吊り橋を渡り、いよいよ池の平までの登りになった。2時間ほどの登りだったが、炎天下の中の登りはきつかった。ただ、八ツ峰のすばらしいながめが気持ちを支えてくれた。また、「小屋でビール!」をスローガンにがんばった。  

 仙人池に寄り道

仙人池ヒュッテと池ノ平小屋との分岐に到着。すぐそこに仙人池が見えていたので、よく写真でみる逆さ剱を見たくて、ザックをデポして空身で出かけた。紅葉の頃は人で一杯らしいが、夏の今はひっそりしていた。池に映る逆さ剱(厳密には八ツ峰)の写真を撮り、分岐までもどり池の平小屋をめざした。小屋までは30分ほどだった。さっそくビール500mLを買い(650円)カンパイ!
 我々が着いたころは、テント場には2張りのテントがあるだけだったが、続々と登山者が到着し、夕方にはテントも10張りを越えていた。
  3時頃から夕立があったので、食事はテント内になった。その雨も夕方には上がった。事前の天気予報は曇りだったが、明日の好天が期待できそうだった。  

 いよいよ北方稜線へ

3日目:いよいよ北方稜線に出発の日になった。3時起床。まだ薄暗い4時50分に出発した。
 鉱山道を行くとすぐに池ノ平山への道を分ける。左手に小窓雪渓を見ながら急勾配の斜面をトラバースしながら降りていく。すると小窓雪渓の向こう岸に大滝が見えた。雪渓を下ってくるときはいいランドマークになるだろう。
  道はザレている箇所もあり、慎重な行動が要求された。小窓雪渓には、よくWebページで見た岩壁の写真のところで降りるが、今年は残雪が多いようだった。アイゼン、ピッケルで小窓雪渓を登りだす。右側は落石が多そうだったので、中央にルートをとった。もう少し時期が遅ければスノーブリッジの薄い所になるだけに要注意だ。
 小窓の直下まで雪渓が続いていた。小窓で小休止。小窓の向こう側は西仙人谷がするどく切れ落ちていた。ここまで1時間40分なので良いペースだ。    

 小窓から小窓の王のコルまで

小窓からは稜線づたいに踏み跡が続いていたが、やがてそれは左のルンゼを登り、ひとつ左の尾根を登り返すようだった。
 尾根を登ると、広い岩場と草付きの斜面になりそこを踏み跡を拾って登っていく。
 すると、やせた雪渓に出会った。事前にその雪渓は上を高巻けると聞いていたので(聞いていなくても明かだったが)簡単に高巻いて通過した。
  そこから30分ほどで次の雪渓に到着した。アイゼンをふたたび装着し、ピッケルも持った。ルートは雪渓をトラバース気味に下るようになっている。向こう岸が50cmほど開いているので、注意して進んだが、観察すると庇状にはなっていなくて、厚い雪層だったので安心して岸に渡った。
  ぐるっと尾根を回り込むと小窓の王が迫力ある姿で迫ってきた。
 そこからは草付きの岩場を登って行くが、偽の踏み跡にだまされ、すこし右側に登ってしまった。正しいルートをさがすと、灌木帯に踏み跡があった。そのルートは左側の灌木帯の中を登っていくものだった。その踏み跡を登ると、すぐに小窓の王のコルに到着した。
  小窓の王の迫力ある岩壁や三ノ窓の右手向こうには荒れた池ノ谷ガリーが広がり、その景色に圧倒された。
 

 三ノ窓まで

コルからは小窓の王の岩壁に沿って左手に下っていくのだが、出だしがガレていて悪かった。通称「発射台」と呼ばれるフィックスロープがたれているあたりからは、足下もしっかりしていた。
 三ノ窓に着くと、単独の方がすでに到着していて、少し言葉を交わした。この方とはこの後剱山頂までご一緒することになった。
  三ノ窓からはチンネ左稜線をのぼるクライマーが3パーティー見え、コールも聞こえた。来年か再来年には私も登りたいものだ。
 

 池ノ谷ガリーから長次郎のコルまで

池ノ谷ガリー途中では、休憩は御法度なのでゆっくり休憩した後出発。
 たしかにガレていて落石に注意は必要だが、踏み跡も比較的しっかりしていて、小窓の王からの下りよりはましな感じだった。
 40分で池ノ谷乗越に到着。よく写真で見るスラブ状の岩壁が待っていたが、傾斜はそれほどなく、用意した補助ロープでの確保も必要を感じなかった。全員思い思いにルートをとり、稜線上へ。
 そこからは源次郎尾根の第2峰から懸垂している登山者も見えた。岩間の広場を過ぎると、長次郎谷側のザレを行くことになるが、ところどころルートがわかりにくいところもあり、修正しながら進む。
 すると写真でよく見るスラブ壁の中の岩棚をトラバースする箇所が見えた。写真で見るよりこじんまりとしており、迫力はそれほどない。お助けヒモがガリーのこちら側と向こう側にたれていた。単独行の男性が行くのを後で見ていたら、踏み場になる足下の岩が動くのにびっくり。そっと慎重にその岩を踏み、トラバースした。私の後から来たKさんは上に上がりすぎ、苦労していたので、足場を指示し、ことなきを得た。
 さらに、そこから岩場をトラバースして長次郎ノ頭を巻くことになるが、岩棚を進んでいくと、前方でチンネを登ったというクライマーが懸垂の用意をしていた。支点がありそれを使って、「私がロープの用意をするので、それを使って皆さんも懸垂してください。」と言ってくださったが、事前にしたルート研究を思い出し、確か、ここはさらに巻くルートがあってそのまま長次郎のコルに出られるはずと一段上に上がってトラバースすると、少し岩が張り出していていやらしかったがなんとかルンゼに降り立つことができ、そのまますぐ長次郎のコルに到達することができた。事前研究のたまものである。
 

 登頂

この間のほんの20分あまりの間に、ガスが本峰を包んでしまった。その本峰へは踏み跡をたどり、左から巻くように登っていく。途中には雪渓もあった。山頂には20分で到着。池ノ平小屋を出発してから6時間10分である。まあまあのタイムか。
 祠前で全員で記念写真を撮ってもらった。しかし、ガスの中で展望がまったくなかったのは残念。私たちが休憩している間にも、山ガールを含めて登山者が数名上がってきていた。
 

 下りも長い

20分ばかり休憩した後、下山にかかった。鎖場やはしごなど岩場自体は北方稜線よりもむずかしいルートでなかなか体力と時間を消費した。剱沢小屋手前で雨がぽつりぽつり落ちてきたので、私とHさんは先にテント場でテント張り、KさんとHさんには、ビールの調達を頼んで先を急いだ。
 テントを張っている間はちょうど雨も小休止だったが、張り終わって中に入っているとザーと大粒の雨が降り出した。KさんとHさんはこの雨の中、ビール500mL2本とコカコーラ2本を運びあげてくれた。感謝!
  

 下山日

 朝には雨は止んでいた。いつものように3時半起床。5時10分に出発したおかげで、室堂8時発のバスに乗り、立山駅には9時10分に着けた。
 装備を整理したりした後、亀谷温泉に向かい、駐車場でテントを張って乾かしている間に入浴。お盆の最終日だが、とくに渋滞にもあわず、京都には午後4時頃に着くことができた。

IMGP7591.jpg(23615 byte)

雷鳥沢のキャンプ場

IMGP7625.jpg(19386 byte)

剱沢キャンプ場からの剱岳

IMGP7642.jpg(17049 byte)

早朝の剱岳

IMGP7654.jpg(24354 byte)

剱沢雪渓

IMGP7659.jpg(18079 byte)

源次郎尾根の取り付き

IMGP7661.jpg(25913 byte)

長次郎谷(右は八ツ峰)

IMGP7666.jpg(25262 byte)

真砂沢ロッジ

IMGP7673.jpg(29098 byte)

二股への登山道

IMGP7676.jpg(30318 byte)

二股の吊り橋

IMGP7677.jpg(30993 byte)

三ノ窓雪渓

IMGP7693.jpg(27563 byte)

裏八ツ峰

IMGP7707.jpg(22698 byte)

仙人池からの裏剱

IMGP7710.jpg(25835 byte)

池ノ平小屋を望む

IMGP7713.jpg(19183 byte)

池ノ平小屋のテント場でくつろぐ

IMGP7726.jpg(21589 byte)

小窓雪渓の大滝をのぞむ

IMGP7736.jpg(29605 byte)

小窓雪渓をこれから登る

IMGP7740.jpg(25242 byte)

小窓雪渓

IMGP7747.jpg(15683 byte)

西仙人谷

IMGP7749.jpg(30043 byte)

小窓から稜線を登る

IMGP7759.jpg(28189 byte)

踏み跡に沿って

IMGP7766.jpg(31919 byte)

ひとつめの雪渓を高巻く

IMGP7774.jpg(25149 byte)

ふたつめの雪渓をトラバース

IMGP7779.jpg(16131 byte)

小窓の王

IMGP7781.jpg(29897 byte)

池ノ谷ガリーを望む

IMGP7785.jpg(23154 byte)

小窓の王のコルからの下り

IMGP7787.jpg(34756 byte)

小窓の王からの下り(全貌)

IMGP7790.jpg(17757 byte)

三ノ窓からチンネ左稜線を登るクライマーを見る

IMGP7796.jpg(35265 byte)

池ノ谷ガリー

IMGP7800.jpg(29819 byte)

池ノ谷乗越から岩壁を登る

IMGP7803.jpg(21758 byte)

長次郎谷の熊ノ岩幕営地

IMGP7802.jpg(20714 byte)

源次郎尾根2峰からの懸垂地点を望む

IMGP7808.jpg(27955 byte)

有名なトラバース地点

IMGP7810.jpg(33046 byte)

スラブ岩をトラバース

IMGP7816.jpg(25940 byte)

長次郎の頭を巻く

IMGP7815.jpg(32914 byte)

長次郎の頭を巻く2

IMGP7823.jpg(18128 byte)

剱岳山頂

IMGP7827.jpg(25943 byte)

カニの横ばい

IMGP7831.jpg(23427 byte)

一般道もきつい

IMGP7834.jpg(33763 byte)

一般道もきつい2