215.「リア王」
主なキャスト:平幹二朗・内山理名・とよた真帆・銀粉蝶・池内博之・山崎一・吉田鋼太郎・瑳川哲朗 作:W・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出:蜷川幸雄 舞台監督:八須賀俊恵 公演記録:2008.2.22〜24@シアター・ドラマシティ(大阪) |
あらすじ>>舞台は、古代ブリテン、宮殿の大広間。80歳を越え、老境に達した国王リアは、引退を宣言するため三人の娘を呼び集める。娘たちに等しく分与できるよう、王国の分割は準備されていたが、リアは財産を受け取る対価として、父への愛を言葉にしろと命じる。 長女ゴネリル、次女リーガンは美辞麗句で父を称えるが、日ごろ一番愛されていた末娘コーディリアだけは飾り立てた言葉を口にすることを頑なに拒んだ。沈黙こそが愛の証だと言うかのように。 娘の真情を察することのできないリアは激怒し、コーディリアを勘当。領土はすべて、ふたりの姉娘に分け与えてしまう。また王の乱心をいさめようとした忠臣ケント伯爵も国外追放を言い渡される。コーディリアの窮状を知ったふたりの求婚者の内、フランス王のみが彼女の真意を理解し、妃として自国に迎えることを宣言して宮殿を去る。 一方リアの臣下、グロスター伯爵の私生児であるエドマンドは、家督を継ぐために父グロスターと嫡男で兄のエドガーを反目させようと、ある計画を立てていた。 国務から退いたリアは、ゴネリルとその夫オールバニー公爵の宮殿に滞在している。姉妹の間を行き来し、それぞれの宮殿で世話になることがリアの望む老後の暮らしだった。だが取るものを取った娘たちにとって、100人もの騎士を従えた父の存在は迷惑でしかない。ゴネリルは、執事のオズワルドを始め家の使用人たちに、父親と取り巻きに対してぞんざいな態度を取るよう命ずる。一方、追放されたケントは主君を思うあまり、変装して再びリアの身近に仕えられるよう図る。リアが自ら招いた寄る辺ない身の上を道化が揶揄し、王自身も後悔し始めたそのとき、ゴネリルが現れ、父娘は激しく言い争う。「俺にはもうひとり娘がいる。」と声を荒げ、屋敷を立ち去るリア。ゴネリルは妹と結託するためオズワルドに手紙を託し、リアもまた様子を伺わせるためケントを先に送り込むのだった。 2日後。グロスターの城では、エドマンドの計略にはまったエドガーが出奔。またリーガン、コーンウォール公爵夫妻が、父と姉からの書状を手に、匿ってもらおうとグロスターを訪ねる。ふたりの使者ケントとオズワルドは城の外で刺傷騒ぎを起こし、悲鳴を聞いてかけつけた城の人々によってケントは足かせをはめられ、一夜戸外に放置される。翌日、王の使いに対する処遇を目にしたリアは激怒。加えて、リーガンとゴネリルのあまりの冷徹な態度に半狂乱となり、道化だけを伴って荒野へと向かう。 嵐となった荒野をさまよい、風雨と戦うリア。王の苦しみを和らげようと、傍らには道化がひとりつき添うばかり。そんなふたりをケントがみつけ出し、近くの小屋に案内する。そこは、人目をくらますため“乞食のトム”に扮したエドガーのねぐらだった。狂ったふりをするエドガーと正気をなくしたリアの会話が繰り広げられているところにグロスターが現れ、一行を自らの領地に匿う。同じころ彼の城内では、エドマンドがまたも奸計を巡らし、父はフランスのスパイだと言いふらす。密かにドーヴァーに上陸していたコーディリアの元へ、リアを逃亡させるグロスター。そのため、リーガンと夫のゴーンウォールに裏切り者の汚名を着せられ、目をえぐりとるという残酷な罰を下される。 エドガーは、血まみれで荒野をさまよう父グロスターと対面。身を偽ったまま、父が自らの死に場所にしようとしていたドーヴァーまでの案内を引き受ける。対してエドマンドは、さらなる自身の地位向上の手段としてゴネリルとリーガンを弄び、利用する策を仕掛けていた。父の自殺を阻止したエドガーは、ひたすら励まし続け、二人は狂気に取りつかれた主君とも再会する。父の窮状を救おうと兵を起こしたコーディリア率いるフランス軍に保護されたリアは、狂気のうちにもコーディリアと真の愛情を確めあうのだが……。 フランス軍とブリテン軍の戦いが始まった。戦闘のさなか、エドガーはエドマンドの姦計と姉娘たちの非道を暴くべく、オールバニーに働きかける。破綻し始める陰謀。だが戦いの結果は正義の有無とは関りなく勝敗を決し、すべての人物がそれぞれの結末に向かい、運命の怒涛に飲み込まれて行く。 |
シェイクスピア作品は結構観てる方ではあるんですけど「リア王」は初めて。ま、「天保十二年のシェイクスピア」(観劇日記No.25&118参照)で一番メインになってる話ではあるからいちお大まかなあらすじみたいなのは知ってはいるんだけど…。(苦笑)何て言うんですかねい?端的に言うと親の心子知らず、そして子の心親知らずってことになるんでしょうか?(おい)リア王としては年の離れた三女が可愛くて仕方がない。たぶん随分と自分が年を取ってから出来た女の子だし娘っつーよりもう孫娘の心境に近いのかもしれないけどとにかくかまってやりたいんだろね。上の姉娘たちは気も強いみたいだしその2人からも守ってやりたいっつかさ。だからどうしても三女に財産を多めに分配してやりたいと思ってるんだけどそこは公平に?父への愛情を上手く言葉に出来た者にたくさんの財産を分け与えるっつー方法を取っちゃう。それだから口下手な三女は「子が親を敬うのは当然のことであってそれ以上でも以下でもありません」とかってきっぱり言い切っちゃってそれじゃ自分に対する愛情の深さも何も分からないじゃないかーっ!って怒ったリア王(平幹二朗さんの役どころ)に突き放されちゃう。でも王様はそれでよかったのかしらん?確かに耳に心地よい言葉をくれれば何だか安心もするだろう。しかも自分の娘からその言葉が聞けるのならそれ以上の幸せはないのかもしれない。だけどお追従やらおべんちゃらはもう聞き飽きてるんじゃないの?それでほいほいと踊らされて苦渋を舐めたこととかはなかったのかしらん?それで何度か懲りてれば「そんな言葉は聞き飽きたっ!」つって三女の言葉を素直に受け入れられたのかもしれない。ウソ偽りのない心として。でもそうはいかなかった。王であり続けたせいで娘にまでおべんちゃらを強要するやうな親に成り下がってしまった。そんな言葉に愛情なんかこれっぽっちもない。下心がみえみえなんだってことに何で気がつかないのかなぁ?大体娘なんてもんはある程度の年になったら父親を嫌がる素振りっつかあんまり近寄って来なかったりするじゃないですか?あたしもパパリンとは当たらず触らずって感じですかねい?高校生の頃は結構よくお買い物とか一緒に行ってたりしたのでみんなに「よく父親と買い物とか行くよねぇー?!」って不思議がられたりしたんですけどそれはスポンサーだからだよ。(爆)「買ってあげるから」って言われてるのにゴネて機嫌悪くさせて買ってもらえないなんてことになったらたまりませんからねぇ…。(おい)多少恥ずかしかろうが嫌だろうが車で送り迎えしてくれてお金出して好きな服とか買って貰えてそれなりに美味しいモノ食べさせて貰えるんだったら我慢するってもんですよ。援助交際じゃねぇんだから。(当たり前)でも今はもう必要最小限の会話しかないやも…。だって特別共通の話題があるわけじゃなし。結構な年まで「どこに行くんだ?誰と行くんだ?何時に帰って来るんだ?(ま、何時に帰って来るのかは今でも聞かれるけど…。苦笑)」って聞かれて門限はきっちり決まってはいなかったけど遅くなったらやな顔するし怒るしうるさいし…で勘弁してくれよっ!って感じだったけどある時期を境にほとんど干渉しなくなったっつか。そりゃまぁ呆れ顔で「…またか」ぐらいは言うけどそれで「行くな」とかは言われなくなったかなー、と。ま、他のお家がどれぐらい関り合ってるかとかが分からないもんなんで過保護だって言われればそうなのかもしれないけど(とりあえずその日中にお家に帰らなくちゃってのはあるので(何となく。苦笑)その場合は車で迎えに来てくれるし大概の場合は最寄の駅まで車で送ってくれるし)挨拶とかはしなくなったかな。おばあちゃんにはぐちぐち言われることもあるけど…。(黙)でも面倒臭くはあるけど別にそれで嫌いなわけじゃないし。ただまぁ大好き!って手放しに言えるやうなのでもないけどさー。そういうビミョーな感じなんじゃねぇの?(え?)父親ってやつはさー。それなのに「お父様をこんなに愛しておりますわ」なんて言っちゃって何かいろんなとこが痒くなりそうだよ。(爆)言ってる自分がおかしくてたまんないって感じ?よくまぁぺらぺらと上手いこと喋れるなー、自分…って客観的に見ちゃいそうだよ。(苦笑)それだからコーディリア(内山理名さんの役どころ)の潔癖さ?ってのが際立つんだろうけどね。コーディリアにしてみれば姉2人のおべんちゃらに虫酸が走るっつかホントによくもまぁ…って呆れるっつか意味分かんないし!ぐらいの気持ちなんだろうと思うんですけど。コーディリアにしてみれば別に財産なんかいらないし今まで通りお父さんが側にいて普通に生活して行けるんだったらそれで構わなかったんだと思うし土地とか譲って貰ったところでどういう風に治めたらいいかとか分かんないし差し迫って結婚したいわけでもないし成り行き任せでいいぐらいの気持ちだったんじゃないのかなぁ?お姉さん2人みたくがっついてないよね。(おい)これじゃもう「犬神家の一族」だよ…。(爆)あ。犬神家は3人ともがっついてたのか…。(苦笑)お金持っててしかもそのせいで我侭ときたら扱いづらい父親ではあるよねぇ…。(黙)だってそれで何するわけじゃないじゃない?(え?)もう死ぬ間際で遺産相続とかだったら「もうちょっとの我慢だから」って思わないこともないんだろうけどまだまだ現役っぽいしさー。(爆)いつ死ぬかも分かんないのにお城に入り浸られてお付きの人たちもたくさんいてそれ養ってくだけで財産食い潰れちゃうYOっ!(おい)それだから放り出されちゃうんだよ…。自分だって「年取ったお父様が可哀想…」って思ってもらえるだけの目を娘にかけて来たのかっつの。ぞんざいに扱った分はぞんざいにしか扱われないんだよ。因果応報だよ。 で対照的な?グロスター(吉田鋼太郎さんの役どころ)とエドガー(高橋洋さんの役どころ)親子の関係ですか。こっちはエドマンド(池内博之さんの役どころ)にまんまと騙されて落ちぶれてくわけだけど。エドマンドにしてみれば生まれた時から愛人の息子ってので随分とやな思いばっかりして来たんだろうしそれは父親のせいってのも少なからずあるわけで父親に愛情をかけて育てて貰って有り難いって思う気持ちよりも馬鹿にされて蔑まれて来た恨みの方が強いんだろうね。自分が望んでそういう風に生まれて来たわけじゃないのに全部親のせいっつか。ただもう欲望の捌け口としてしか自分を捉えられない。その反対にエドガーは正妻の息子ってだけで出世も確約されてるし末は公爵の座を継ぐのが決まってる。謂わば望まれて生まれて来た子供だ。兄弟だから特別虐められたとか兄から直接馬鹿にされたとかはないのかもしれないけど「いい子ちゃんぶりやがって!」みたいな気持ちはあったのかもしれない。愛人の子供でも自分の方が年が上だったらまだマシだったのかもしれないけど所詮自分は下の存在でしかない。地位も年齢もどっちもだ。エドガーにしてみれば全然方向違いの嫉妬だしとんだとばっちりだしそんな風に思われたって迷惑だけどただもうすくすくと何の疑いもなく育ってる感じがエドマンドにしてみれば許せなかったんだろうね。それだからエドガーだけじゃなくてグロスターまで失墜させる。家のことなんか知ったことか!ってとこだよね。自分は自分でしかない、と。のし上がるためには利用出来るところは利用して当たり前。ま、それだけのことが出来るぐらい頭がよくてイケメンだったとこがどうにもねー。これでおっさんだとか超ブサイク(爆)とかだったら歴史も変わっただろうに…。(黙)にしてもエドマンドを取り合う女同士の戦いっつか夫婦の関係性とかも面白いよねー。(え?)ま、リーガン(とよた真帆さんの役どころ)の旦那は不可抗力で死んじゃったわけだからリーガンが旦那が邪魔になったから殺したとかじゃないしたまたまそれで未亡人になっちゃったってのがあるからエドマンドと仲良くなろうがどうしようが別にいいわけだけど。反対にゴネリル(銀粉蝶さんの役どころ)はまだ(おい)旦那もいるわけだしさーこれって完全に不倫じゃない?ま、ゴネリルにしてみれば役に立たない夫といるより権謀術数に長けてるエドマンドといる方がわくわくするっつか「あたしも随分と若返っちゃってー」みたいな気持ちになっちゃったりしてるのかもね。(え?)だってゴネリルの旦那は別に王の座を狙ってるわけじゃない。ゴネリルは女だから王様にはなれないけど王の妃にはなれるわけだ。だからどうしても旦那を王にしたいって思ってるのに全然その気にならないし。娘の父親ってことで敬って家臣みたく仕えてる。それがどうにも気に入らない。この人には王を殺しても自分が王の座に付くぐらいの勢いのある人の方がちょうどいい。(爆)たぶんゴネリルの旦那はゴネリルがリア王を放り出したことに対しても何も言わなかったんだろう。「妹のところへやるから」って言いくるめられたのかもしれないし実の父親と娘のことだから他人の自分は口出ししないでおこうと思ってたのかもしれないし。それに対してリーガンのところは夫婦共々やる気に溢れてるっつか。(え?)だってグロスターの目まで刳り貫くことないじゃない…。しかも自分のお城じゃないんでしょう?第三者的なグロスターのお城を借りて乗っ取っちゃってるだけでしょう?すんげぇ迷惑じゃん!何様って感じでしょう?そりゃグロスターの家臣に刺されるわ。当たり前だよ…。リーガンのところは旦那さえ死んでなければがっつり王位の座についただろうね。こう2人とも目標意識が高いって感じするもん。ま、そのためには手段とか選ばないってのもあるけどさ。(苦笑)自分たちでリア王を殺してしまったら後々ぐちゃぐちゃ言われたりして確実に王の座につけなくなったりするからじわじわと自分で勝手に死んでくれないかなー?ってな感じで外に放り出しちゃう。ある意味見殺し。その点に関してはゴネリルよりも残酷。だってゴネリルはまぁ一旦はリア王をもてなしてるわけだし。旦那ががっついてないからそういうとこ分け隔てなかったんだろうけどそれで散財までさせられてるわけだし言い分はある。でもリーガンは自分の家に招くことすらしてない。こういうのは後から生まれた方が得だよね。(おい)でも結局そんな2人も死んじゃって…。喧嘩になって毒を飲ませ合ったのか一方は自殺だったのかちょっとよく分かんなかったんですけど…。(苦笑)でグロスターは死ぬわ、エドマンドはエドガーに刺されて死ぬわ、コーディリアはエドマンドの策略にかかって死んじゃってせっかくのエドマンドの良心も間に合わなかったし、そのショックでリアも死んじゃうわって…最後たたみかけるやうに人死にまくりなんですけどぉー…。(爆)まぁでもリアは死んで幸せだったのかなー?ま、それまでの娘の仕打ちの数々は可哀想ではあるけどそれもある意味今まで大事に育ててこなかったことの報いだと思えば仕方のないことだしコーディリアと幸せに暮らしましたってのがよかっただろうけど見届けて後に何も残らないってのもそれはそれでよかったのかもしれないし。でもコーディリアの健気さよりもエドガーの健気さの方が目立ってた件。(おい)にしても落ちぶれる前の眼鏡は萌えだわ。(言ってろ)今回全体的に能舞台のやうな演出だったんですけど能の方は全然観たことがないんでどういう意味があるのかとかがいまいちよく分からなかったのが残念。(黙)にしてもやはし平幹二朗さんは勢いがありますよねー。全然他の人たちと迫力が違う。主役ってだけじゃない勢いがありましたねい。今回ぴあの先行で押さえたんだったかな。席は21列 30番だったんでちょっと遠かった…。(黙)しかも前に座ってるおばあさんがちょいちょい前に身乗り出して観てたせいでところどころ椅子蹴ってやろうかっつー衝動に駆られましたが。(爆)出来れば楽行きたかったけど「からっぽの湖」と日程かぶってたしねぇ…。とほ。次のシェイクスピアシリーズは何になるのかなぁ?次もぜひぜひ大阪公演入れてくだせぇ。(ぺこり) |