201.「オセロー」

主なキャスト:吉田鋼太郎・蒼井優・高橋洋・馬渕英俚可・山口馬木也・壌晴彦・鈴木豊・妹尾正文・坪井理奈
作:W.シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出:蜷川幸雄 舞台監督:白石英輔・八須賀俊恵
公演記録:2007.11.16〜18@シアター・ドラマシティ(大阪)
あらすじ>>16世紀、ヴェニス。ムーア人の将軍がいた。彼の名前はオセロー。元々は傭兵として故郷モーリタニアからヴェニスに渡り、戦績をあげ、将軍の地位に登りつめた。
旗手イアゴーは上官・オセローを憎んでいる。副官に自分ではなくキャシオーを選んだことが気に入らない上に、元老院議員ブラバンショーの娘デスデモーナの心をとらえ、結婚までしてしまったこともおもしろくない。友人でデズデモーナに片恋をしているロダリーゴーをたきつけ、オセロー失墜計画を開始する。
娘の結婚を知らされ怒ったブラバンショーは、元老院議員の会議室にやってくる。そこではオセローが国の最高機関である公爵と元老院議員たちからキプロス島派遣という重要任務を受けていた。
デスデモーナも現れて、オセローとデズデモーナが愛し合うようになったわけが語られた。

キプロス島にやってきたオセローは、島を狙うトルコ軍をあっという間に殲滅した。
夫と共にいたいとはるばる海を越え戦地まで着いてきた妻デズデモーナと勝利を喜び合うオセロー。傍らに、忠実な部下として立つイアゴーだったが、心の中では黒い作戦を着々と思いめぐらしていた。
イアゴーは、デズデモーナと彼女の従者となった妻エミリアに、明るく開放的に接するキャシオーを憎悪の瞳でみつめながら、キャシオーの性質を利用しようと考える。まずは、酒に弱いキャシオーに酒を呑ませ、トラブルを起こさせる。

イアゴーは、オセローに副官から降ろされ傷心のキャシオーに、心優しきデズデモーナからとりなしてもらうようアドバイスする。
それから巧みな話術で、デズデモーナとキャシオーの関係をほのめかし、オセローの嫉妬心を煽っていく。
さらに、もうひとつの罠を仕掛ける。エミリアを使って、オセローのデズデモーナへの最初のプレゼントであるハンカチを入手、そのハンカチをキャシオーに拾わせたのだ。
そして、大事なハンカチがキャシオーの手にあると報告し……。

イアゴーは、キャシオーが妻のハンカチを持っていたという決定的瞬間をオセローに見せることに成功する。
オセローの怒りは沸騰点にまで達する勢いだ。
そこへ、本国より公爵の書状をもったロドヴィーコーがやってきた。公爵の意向を読んだオセローは更に逆上する。
人が変わったように感情的になったオセローの姿は、ロドヴィーコーを失望させる。
デズデモーナも、愛する夫の態度の急変に、哀しみを募らせていた。

イアゴーは計画の仕上げにとりかかる。
ロダリーゴーを使ってキャシオーを殺そうとするが、彼の完全犯罪もほころびが生じ始めていた……。
一方、オセローはある決意を胸に夫婦の寝室を訪れた。ベッドにはデズデモーナが眠っている。
オセローは彼女にキスをした。
「もう一度、これが最後だ」

蜷川シェイクスピア作品もこれで18作品目だそうで。でも「オセロー」はあたしも観るのは初めてやも。その昔蜷川演出、松本幸四郎さん主演舞台のテレビ中継はビデオに録ってたのがあるんだけど(最近DVDに焼き直しますた)結局見直さなかったりしてるし(おい)それも確か4時間ぐらいあったっけ?(おぶおぶ)すっかりそんなこと忘れてますた。(爆)でもとりあえず昼公演で取っててよかったー。(おい)夜に4時間だったらお家帰れないとこだったよ…。(黙)チケットはJCBのカード会員先行でとっとと千秋楽押さえたのはよかったんですけど席が21列 36番とあんまりよくはない…。ま、先行始まってたの知らなかったもんねー。(遠い目)開始してから1週間ぐらいしてから押さえたから悪くても仕方ないんだけど…。これだったらドラマシティかキョードー大阪の先行使った方がいい席だったやも。(どよん)そっちは確実に取れたかどうか分かんないけどね。(苦笑)前半はちょっとばかし説明台詞が多くて睡魔に飲み込まれそうになったんですが(爆)かろうじて耐えながら4時間堪能して来ますた。でも4時間ってのがほとんど気にならなかったやも。後半はどんどん展開が早まってくっつか畳み掛けるやうに進んで行くので飽きなかったし。つか何だろなー。騙す側に回ってるイアゴー(高橋洋さんの役どころ)の紡ぐ言葉は「正直者イアゴー」の言として全て簡単に受け入れられていく。一方のデズデモーナ(蒼井優ちゃんの役どころ)の紡ぐ言葉は全て真実なのにも関わらず真剣になればなるほど虚しく響きまるでその全てがウソのやうに聞こえてしまう。オセロー(吉田鋼太郎さんの役どころ)はデズデモーナを盲目的に愛していたし娘のように可愛がり慈しみいつ何時も側から離したくないってまでのラヴラヴっぷりだったのにも関わらずその愛する妻の言葉が何一つ信じられなくなっていく。これって女の言葉が軽んじられてるってことではないのかしらん?後半エミリア(馬渕英俚可ちゃんの役どころ)がデズデモーナを慰める時に「女とは…」みたいなことを語る長台詞があるんだけどこれが根幹にあるんじゃないのかなー、と。女は政治に口を出すべきじゃないんだってことなのかも。確かにデズデモーナは素直だし正直者だし優しくてオセローだけじゃなくてその部下のことも気遣い頼まれたことは嫌だと言わずに引き受けるしそのために全力を尽くそうと努力するタイプだ。でもデズデモーナがキャシオーのことを気遣えば気遣うほどそれは自分の立場を悪い方へ導いて行く。デズデモーナにしてみればオセローもキャシオーも2人とものことを思っての行動なのにそれがそういう風には思ってもらえない。デズデモーナにしてみれば新婚だし愛する夫が戦場に赴くとなれば一緒に着いて行って見届けたいっつか万が一夫が死ぬようなことがあっても離れた土地で報告だけ受けて帰って来ない夫を嘆き悲しむよりも一緒に現場(え?)に行った方が生きるも死ぬも一緒の土地で味わえるわけだし喜びも悲しみも一緒に受け止めたいみたいな気持ちで出向いたんだろうと思う。ただ単純に離れたくない、ただそれだけだったんだろうけど言い方は悪いけど女は仕事の場に着いて行くべきじゃない、家で大人しく夫が帰って来るのを待ってた方がよかったのかもしれない。ま、そんなこと言ったらドラマにもならないんだけど…。(苦笑)でも己の立場を弁えるってことも大切。従順な妻なら妻らしく仕事のことには一切口出ししないってのも必要だったのかもしれない。イアゴーは忠実な部下だと思われてるし何せ男だから政治的なこともプライベートなことも口出しされても素直に受け取られやすかったりしたのかも。男だ女だとかって言われるのは嫌だけどこの時代にしてみればそういうのも少なからずあったのかもしれないなー、と。でもあのエミリアが語る長台詞のシーンは思わずアドリブなのかと思っちゃうぐらい勢いがあったよ。(は?)話の流れっつか盛り上がり方としていささか唐突な印象があったからそう思ったってだけなのかもしれないけどホントに馬渕節っつかあの「女でいること」への感情の吐露っつか告白みたいなとこは何かに憑り付かれたかのやうな勢いとテンションで壮絶な感じがしたもん。あの瞬間エミリアなのか馬渕英俚可本人としての感情なのかって感じでこの人は凄いなと思ったもん。全ての公演の大楽しか観てないから他の日がどんなテンションで演じられてたのか分からないし最終日だからここまで乗ってたってのもちょっと悲しい話なので他の日も完成度が高かったと思いたいんですがホントあの日のエミリアは凄いと思ったよ。デズデモーナはほんつ可愛かったー。華奢で抱き締めたら壊れそうな儚げな感じがよろしい。(は?)今後機会があったら「ハムレット」(観劇日記No.21参照)のオフィーリア役なんかやったら似合うかもしんない。(え?)デズデモーナはオセローになじられてもなじられても自分の身には全く覚えのないことだし清廉潔白なわけだし「何故こんなにも怒られるのか分からない…」って嘆き悲しんでさめざめと泣くんだけどただ泣き崩れてしおれるだけの弱い女の子じゃないとこがいい。なのでオフィーリアみたく精神的に追い込まれるとこまではいかないんだけど柳の歌のシーンはちょっとそれに近いかなー?自分でももうオセローに殺されてしまうだろうことは予測しててでも何故殺されるのかも分からないけどでもきっとそんなに長くは生きられないって分かっててっていうあのシーンは確かに涙を誘いますよねー。あたしの周りもすすり泣きの嵐でしたことよ。あたしはそんなに泣くとこまではいかなかったですけど(爆)優ちゃんが本気で泣いててものすんごい可哀想にはなりましたねい。オセローも目を覚ませよ、と。

でも嫉妬っつかオセローは妄想にがんじがらめになっちゃっててそこから逃れられないんですよね。自分では不倫の現場を見てもいないし証拠だって自分から確めてみたわけじゃないし全部部下の口から吹き込まれたことなのに何故か全部信じてしまう。たぶん自分で全部を確めるのが怖かったんじゃないのかなー、と。妻の口から本当にあったこととして語られてしまったら、自分の思い描いてることが全部真実だと知ってしまったらそっちの方が恐ろしかったんじゃないか、と。部下の口からあったこととして語られた方がまだマシだったのかも。でもちょっとしたことで妄想ってどんどん膨らんでっちゃうもんだからねぇ…。(苦笑)オセローにしてみれば自分は黒人だっていうコンプレックス?みたいなのがあったみたいだし本当にデズデモーナは自分のことを心底好いていてくれるのだろうか?自分みたいに黒人でしかも親ほども年の離れた夫を生涯愛し続けてくれるのだろうか?みたいな自信のなさみたいなものがどうしてもぬぐい切れなかったのかも。デズデモーナは本当にまっすぐオセローしか見ていないのにオセローはもう1人のデズデモーナを勝手に自分の中に作り上げてしまっていたのかも。それはデズデモーナのお父さんから結婚する時に「こいつは父親を欺いた。だからお前のこともいつか欺くであろう」って一言が気になってたからだってのがこの物語のポイントみたいになってるけどそれも確かにあったかもしれないけどそれを過剰に反応し過ぎたのかもしれない。キャシオー(山口馬木也さんの役どころ)は白人だし部下の中では一番の有望株だし副官(今は降ろされてるけど…)だし顔だってかっこいいししかも若いしモテまくりだしこんな人がすぐ側にいたら気が気じゃないってのも分かる。そこに公爵からキャシオーを将軍として島に残してオセローは今すぐヴェニスに帰って来いみたいな命令が下されたもんだから余計火に油を注いだようなもんだったのかも。戦績を残して手柄を上げたのはオセローあってことなのに自分の副官であるキャシオーの方が公爵の覚えがよくて結局オセローは捨てコマみたく扱われてたわけだから。危険なとこばっかり派遣されて手柄を上げても誰か違う人のモノになってしまう現実。それもこれも自分が黒人だからだっていうコンプレックスから来てるし実際社会的にもそういう立場だったのかもしれない。差別的意図があってのことかどうかは分からないけどデズデモーナの父親だって高貴な位にあるし話も面白いってのでオセローを家に頻繁に招いてはいたけど娘と結婚するとなると話は別だったし。ま、父親なんてどんだけ顔がかっこよくて年も若くて性格もよくて非の打ち所がない(実際そういう人がいるかどうかは別にして。苦笑)男が娘の結婚相手として来たとしても素直には受け入れられないし誰でも嫌なものなのかもしれないけど…。(爆)キャシオーとロダリーゴー(鈴木豊さんの役どころ)はほんつ損な役回りですよね…。(黙)自分たちにはそんなつもりはちっともないのにイアゴーにいいように利用されてるだけだし。しかもそのことに全然気が付いてないってとこがちょっぴりお目出度い人物なのかも。(おい)でイアゴーですよ。ホントもう悪巧みの帝王っすよね。そもそもイアゴーがオセローをどうしてこんなにまでも憎んでるのか?ってのがいまいちよく分からないんですけど…。(爆)確かに前半語られる中でどうやら自分の妻エミリアを無理くり愛人みたくオセローが扱ってるらしいっつか不義密通を働いてるらしいみたいなことはイアゴーが言うんだけどそれが本当にあったことなのかどうかが分からないみたいだし。これもイアゴーの思い込みにすぎないのかも。だとしたらイアゴーとオセローは似た者同士?(え?)どちらも自分の妻のことを信じられないでいるって言うんだから。イアゴーの方が頭もいいみたいだし腕も立つんだろうけどそれでも副官になれないのは自分の出が低いせいなのかもしれなくてそれがまた嫉妬に拍車をかけてるのかも。オセローなんか黒人なのに将軍にまで登り詰めてるってのに自分は白人ってだけでも扱いがよくなってしかるべきなのにこんな地位にしかつけないみたいな焦りとかさ。似た者同士ってのが余計に嫉妬に狂わせてるのかもしれないね。いつかそこから追い落としてやるみたいなさ。そういう暗い情熱に突き動かされてるイアゴーなわけですがほんつもう喋り口調とかもいつもの高橋さんからとは遠いぐらい鬱っぽかったしやーな感じなんだけどこれがまた嫌悪感ばりばりになるまではいかないんですよねぇ…。悲しい人だなとは思うけど憎み切れない。誰がやってても「こいつだけは赦せない!」って思えるぐらいのイアゴーがホントは理想なのかもしれないけどどうも高橋さん贔屓でいけません。(苦笑)自分では危険な場所には一切行かないしトラップをいくつも仕掛けてるだけなんだけどそれがことごとくオセローにはヒットしてくんですよねー。(苦笑)でもそんなにエミリアと上手く行ってなさそうでもなかったし愛されてたとは思うんだけど信じられなかったのかねぇ…?きっと自分のことすらも信じられなかったんじゃないかな?この悪い衝動に突き動かされてる自分を完全に信じ込めればホントの意味での大悪になれたのかもしれないけどそれも出来なかった。どこかで冷静に見てる自分がいたのかもしれない。だから最後オセローの前に引きずり出されてみんなから責められる時「何も言うことはありません」ってただじーっと虚ろな目をしてまっすぐ瞬きもせずに見つめ続けるイアゴーはどこかもう死んでしまった人みたいだったし。どこかで間違ったんだよね?こんなはずじゃなかったんだよね?でもホントいつも思うけどシェイクスピアの書く作品って男ってどこまでもバカっつか女の人の方が何十倍も賢いみたいに描かれてますよねー。よっぽどシェイクスピアの周りって素晴らしい女性が周りにたくさんいたんでしょうねぇ。男ってこんなにもつまらないって思わせてしまうような女性が。カテコは大楽なのに蜷川さん登場はなかったですが(ま、「カリギュラ」真っ最中だし…)最後3人(吉田さん、優ちゃん、高橋さん)で讃え合ってて鋼太郎さんが優ちゃんに振ろうとしたら優ちゃんが無理です、無理ですーみたいにして鋼太郎さんにスポット当てるやうなジェスチャーしたりしてて普通に可愛かったれす。次シェイクスピア作品シリーズで言うと「リア王」ですか。こっちもそんなに席はよくないけどもうげっと出来ちゃってるんで楽しみでつ。