240.「SISTERS」
主なキャスト:松たか子・鈴木杏・田中哲司・中村まこと・梅沢昌代・吉田鋼太郎 作・演出:長塚圭史 舞台監督:菅野将機 公演記録:2008.8.20〜24@シアター・ドラマシティ(大阪) |
(長塚)圭史くん英国留学前作品としてはこれが最後ってことで出来れば阿佐スパ(阿佐ヶ谷スパイダース)本公演が観たかったところなんですが「失われた時間を求めて」は東京公演のみだったしどうしっても遠征出来る余裕がなくて泣く泣く見送ったんですよねぇ…。(黙)でもキャストは豪華だし国試直前だとしてもこれは見逃せないでしょ??ってことで必死でげっとしたんですけどなにげに売れ行き絶好調とは行かなかった感じ??(おぶおぶ)公演直前まで当日券とかも出てたみたいだしね。(苦笑)あたしはとりあえずぴあ先行で取ったので13列 8番で。でも仕事終わってから行ったので結構ギリギリで無事間に合ったし通路側端っこの席だったから誰にも迷惑掛からなくてよかったんだけどお隣さんが圭史くんヒゲ(顎ヒゲ)な男の人だったので「すわっ?!圭史くんがっ??!!」と思ってたら普通に違う人だった…。(当たり前)でももしかしたらちょっと探せば後ろの方の席には座ってたかもしんない…。いやー…それにしてもこれは「LAST
SHOW」(観劇日記No.110参照)よりある意味怖かったかと。(滅)「LAST
SHOW」もものすんごく怖くて(ホラーとかそういう意味の怖さではなく精神的に追い込まれる感じに怖かったのだった…)しかも最前列で観てたのでそれはそれは風間(杜夫)さんの暴力とかが半分涙目で観てしまうぐらいにぷるっぷるに震えるほどだったんですけど最後の最後に(市川)しんぺーさんで救われたっつかあれは反則技だな(苦笑)と思ったりもしたんですけど今回はそんなファンタジーチックではなくホントにあり得るリアルさで迫って来てこれは今この瞬間にもどこかで起きてる事実なのかもしれないと思うとますます怖くなる怖さっつか。古びたホテルでどうやらその一室で人が死んだらしい…ってのはままありがちなことで(え?)その死臭と言うか「臭いが取れないのよっ!」つって全然部屋も汚れちゃいないのに死に物狂いで柱なんかを雑巾でごしごし拭きまくってる稔子さん(梅沢昌代さんの役どころ)からして馨(松たか子さんの役どころ)をして「きちがいだわ!」って言わしめてしまうぐらいにどこか壊れてるんだけどそれだけではまだ何とも思わないですよね。だってホテルって客商売でしょ?結局誰かがその部屋で死ぬようなことがあったとしても死んですぐはまぁ噂にもなるし話題に上ってる間は人に貸したりすることも出来ないけどある程度落ち着いたらそこもずーっと封印し続けるわけにもいかないしそれはいつかは黙って人に貸し出されてそこに泊まる人も出て来るわけですよねぇ?あたしはそういうのは全然感じない人だし見えない人でもあるのでそこで何かが起きただろう部屋だったとしてもたぶん分からないと思うんですよね。ま、元々旅行先では寝られなくてつらつらと考えなくてもいいことを考え始めたりホテルってなーんか部屋の至るところに鏡がある感じっつかそれに目が悪いもんで夜とかトイレでも行きますか?ってなったら自分が写ってるのにそれにびっくりして叫び出しそうになったりするので何かよくないことが起きたかどうかに関係なくあんまり心地いいと思ったことがないのでそういうのは知ったからどうとかいう問題じゃない(あたしにとってはね)と思うんですけども。あぁでも知ってるのと知らないのとでは見える景色が違って来るってのは確かにあるかもしれない。美鳥(鈴木杏ちゃんの役どころ)は馨に「ここで操子さんが首をつって死んだのよ?」って言い出しておきながら「ウソよ、ウソ。ねぇ、それで何か変わった?聞く前と後で何か違うところはあった?」とさも馨を試したみたいな態度を取るけれどホントはそこで確かに操子さんって人が首をつったのであり「あったことをなかったことのように言うのは難しいのよ?」って馨が諭すように馨もそのニュアンスでどこか本当のことだってのを嗅ぎ取ってたのかもしれない。でもそのホテルに泊まってた誰かって言うのではなくて謂わばそのホテルにとっては身内(そのホテルの料理を担当してた人でオーナー?の奥さんだった人)が死んだ部屋ってのはまた全然違うのかもしれないけど…。それにしても松たか子嬢のどことなく不穏な空気を纏った人の雰囲気ってのは絶妙だったと思う。最初はどことなく「どこから来たか分からないあたしみたいなのと結婚させてしまってごめんなさい」なんて言うもんだから自分の過去を全然持ってない人っつか記憶喪失か何かで心許無い感じと言うか抱え切れない不安をいっぱい持っててパニックになってる人なのかなー?と思ってたんですけど全然違ったし。そりゃそんな過去は忘れてしまいたいだろうし忘れた振りをしてでもなかったことにしたかっただろうと思う。実際自分はそういう目に合ったことがないのだし「可哀想に…」ってどんだけ言ったところで当事者の気持ちなんて分からないのだし「可哀想」って思われること自体が惨めっつかますますそういうのがその人自身を追い込む結果になるのだろうから軽々しく「早く忘れた方がいいよ?」みたいな慰めにもなるのかどうか分からないようなことは言わない方がいいのかもしれないけれど。でもやっぱり分からないですよね…。あたしはそんな風に好きな人から暴力を振るわれるようなことがあったら絶対やり返すと思うしそれは最初に一発がつんっ!と殴られた時に「…あれっ??」と思ってぼぉーっとしててはいけなくて即「何やってくれとんのじゃ、ぼけぇっ!」(普段はそんなこと言わないですけどぶち切れるととんでもない言葉を繰り出すので最近ママリンに「サラリーマンNEO」のOL夜叉のことを「これ、あんたみたいだよねー」とか言われるようになっちまったい…。黙)とやられたらやり返す、刺されたら刺し返す(え?)ぐらいの勢いでなくちゃダメだよっ!と常々考えてるあたしですが力ずくで来られたらやり返すってのはなかなか無理なことなのかもしれない。それでも逃げればいいのに…と思うんだけどそういう気力すら沸かなくなるみたいにも言うし本当にそれに巻き込まれなくちゃ対処出来ないことってのもたくさんあると思う。馨にとっては虐待でも美鳥にとっては愛情だったやうに。 でもそれは本当に愛情だったのか?とも思う。近親相姦は確かに倫理的には大きな問題を孕んでるし奥さんってのは他人同士だけど娘ってのは半分血が混ざってるわけだから全くの他人ってわけじゃないし。それでもこの礼二(吉田鋼太郎さんの役どころ)が苦しい言い訳で繰り出すように「男と女として出会ってしまったのだから仕方がない」みたいな関係として成立することもなくはないのだろうと思う。出会ったこと自体が悲劇だった、と。そう言えば美鳥と礼二は登場のシーンで美鳥が部屋を出て行く時に礼二にキスをしていて「この2人は親子だってのに随分と距離が近いんだなー…」と思ったんだけど一般的には20歳も過ぎた娘が父親と一緒にお風呂に入るとかはあり得ないと思ってるけど実際そういう人もいたりするし全然性的な意味ではなく普通に親子としてやって行けてる人もいるわけだからそんな具合なのかな?と思ってたんだけど…。(黙)でも父親が母親に向ける暴力を嫌悪感として見ていてもそれは同じ嫌悪感でも「どうして母親はそんな風に怯えたような目で父親のことを見るのだろう?こんなに愛されてると言うのに…」っていう嫌悪感であって「同じ女でもあたしは違う」っていう一種の優越感みたいな感情があったりしてものすんごい複雑なんだよね…。あたしは…父親をこんな風に好きにはなれないと思う。暴力ではないけど飲み過ぎれば何に対してもくどくど文句言いまくりなとことかそれがどんどんエスカレートして来て大きな声でばんばん喋ったりするとことかは絶対に嫌いだし。嫌いって言うのではないか。ただ認められないってことなのだけど…。礼二は美鳥のことを「理想の娘」だと言う。でもそれだからと言ってそういう人にありがちな「成長などしないでずっとこのままでいて欲しい」みたいな幼児性愛者みたいなとこはない感じもするし…。娘が成長して行くことをよしとしないっていうスタンスではなくてただ「ずっと側にいて欲しい」と願ってる。でも反対に「もっと街へ出て行け!」とも言ったりするんだよね。それって自分みたいな男は美鳥にとってどこか相応しくない、ちゃんと娘にとってそれなりの男性が見つかればいいのにって言う意味なのか?美鳥は馨に話す前に稔子にも自分が妊娠していること、そしてその相手は父親であり稔子にとっては実の兄だってことをバラしてるけどそれはたぶん随分とニュアンスが違ったのではないか?美鳥は稔子のことを少なくともこころよくは思ってないみたいだし。それは多分に稔子の夫であり美鳥にとっては叔父にあたる優治(中村まことさんの役どころ)が関係を強要して来たからってのがあると思うし半分憎しみみたいなものもあっただろう。たぶん自分の妊娠のことだけじゃない。稔子にとっての夫との関係も洗いざらい喋ったか何かしたのだろう。そうでないとあんなに衝撃的な自殺はしないだろう。部屋中に洗剤をぶちまけて首をつるなんて真似は…。美鳥はどこかそれをいい気味だと思って眺めていたのかもしれない。これでちょっとは叔父も懲りるだろう、と。自分と父親との関係はそんな生臭いモノではない、純粋に愛情に裏付けられての行為なのであって叔父とする行為とは全然別物なのだと言うことを稔子の死をもって証明して見せたのだ。誰にも手出しはさせない、と。それでも不安で仕方がなかったのだ。誰にも言えない関係。自分以外の誰かからもそれは崇高なモノなのだと言われたい。認めて欲しい。でも馨は否定する。「そんな関係、間違ってる。あなたもあたしの妹のようにいつかきっと追い詰められて死を選ぶようになる」と。馨のそれは愛情じゃなかったのかもしれない。歪んだ愛。ただ満足するためだけの性。服従を誓って自分をぎりぎりのところまで追い込んで自分が外に出ないように、自分というものを押し込めて押し殺して生きてるのに死んでるように生きて。それでも馨は父親に愛されてると信じたかったのかもしれない。妹に対してすまないと思いながら妹さえいなくなれば自分のところに戻って来てくれるだろう父親を必死で求めていたのかも。馨の父親も馨の妹が死んだ後その後を追うようにして死んでしまったのか?それは語られることはないけれど。美鳥は稔子に対してただ1つ認められるべき点があるとしたらそれは自殺という自分の権利を行使したことだと言う。生ってのは毎日選び取って行くことなのだ、と。それはそうなのかもしれない。毎日生きていられるのはそこにある死を選ばないで済んでるからだけなのかもしれない。死ぬことよりも生きてる方が何百倍、何千倍も大変なことなのかもしれない。死んでしまった方がマシってことは確かにあってそれを死なずに済んでるのは我慢して押し込めてでも生にしがみついているからなのかもしれない。馨はどうだろう?馨にとって信助(田中哲司さんの役どころ)は世間に対して大手を振って「この人を愛している」と公言出来る関係であって安心出来る関係なのだろう。でも自分の過去を知ればきっと信助は自分のことを蔑み嫌悪感も露わに蔑視して離れて行ってしまうだろうことが不安で仕方がない。自分にとって誰かを満足させてあげられるものがあるのだとしたらそれは自分の体を通してのモノであると考えてもしょうがないのかもしれない。それだから新婚旅行で怖いぐらいにそれをしまくったのだろうと思う。でも美鳥と出会ってしまって馨の中から過去がどんどんどんどん溢れ出て来てしまって止め処がなくて壊れて行く自分を止められない。最初信助が持って来た荷物の中の新しいシャツも全部臭いを嗅いで「…洗濯よ、洗濯」っつって洗い直してたとこなんかただ単純に潔癖症っつか神経的に手を洗っても洗ってもまたすぐに洗う人みたいな感じなのかと思ったけどそれだけじゃなかったんだね。馨は信助にいつか救われる日が来るだろうか?あんなになっても馨に「家に帰ろう?」って言ってくれる信助だから。「出されたモノは最後まで食べるって決めたんだ」その言葉が本当に最後まで守られればいいのにと願わずにはおれない。でも最後の水の中に浮かぶ曼儒紗華はキレイで仕方がなかった。本当に弔い花だなーって感じがして。あたしは赤よりも白の曼儒紗華の方が好きなんだけどあの場合は赤の方が栄えるしな。水子ってとこにも関係があったんだろうか?そんなとこにまで思いを馳せてしまうそんな強烈な華。ここまで書くのに随分とブランクが空いてしまいますた。(苦笑)本当にパンフで(中村)まことさんもおっさってたやうに「なんでこんなテーマが出て来るんだろ?」ってのはありますよねー。でもそれをあたしは嫌いじゃないんですよね。(え?)それだから帰国後の圭史くんってのにますます興味が沸きそうな。(おい)英国のどんよりした曇った天気にすっかり当てられて帰って来てほしいものでつ。(えー?!) |