多発性骨髄腫 Multiple Myeloma(MM)

「血液」の基礎知識

2005/01/20

1.血液の構成 、 2.血液の生理学的性状 、 3.血漿蛋白質の分類と働き  、 4.血球の分化 、 5.赤血球 、 6.血小板 、 7.白血球 、 8.血液型 、 9.血液検査


1.血液の構成

 血液(blood)の量は、体重の8%で、そのうち45%は血球成分である。血液は、@有形成分である赤血球白血球血小板と、A血漿plasma)とに区分される。血漿からフィブリノーゲンを除いたものが血清serum)である。血漿は、血液の約55%を占める。血漿の91%は水分で、9%が固形成分、そのうち無機物質は約0.9%で、NaClが主であり、有機物質は7〜9%で、6.5〜8.0%の血漿タンパクがその大半である。全血中に占める赤血球の容積比をヘマトクリット(Ht)といい,♂45%,♀40%程度である.白血球と血小板の割合は0.5%にすぎない。血液は、血餅(clot)(血漿の固形成分と血球)と血清(血漿の液体成分)に分かれる(図1参照)。

図1.血液の構成

血液の量は?
血液重量 体重の8% 例) 60kg×0.08=4.8kg
全血比重 1.057 例) 4.8kg/1.057=4.54リットル

2.血液の生理学的性状

(1)比重

 全血の比重は、硫酸銅法で♂1.057(1.0551.06),♀1.053(1.0501.056)、血漿の比重は、1.027(1.0251.029)、血清の比重は、1.0241.028である。これらの比重は、蛋白質濃度,ヘマトクリット,ヘモグロビン含量が増加すると大となり、逆に貧血状態では小となる。

(2)粘度

血液の粘度(比粘度)は、ガラス管内を流れるときの管壁の間に生じる摩擦を、蒸留水と血液の比で表したものである。全血の粘度は、♂4.74,♀4.40、血漿粘度は1.722.03、血清粘度は1.702.00である。血液粘度は、@赤血球数の増加,A血漿蛋白質濃度の上昇,B血液水分量の減少時に高くなる。

(3)pH

血液は、栄養素の中間代謝物(乳酸など)によって酸性に傾きやすいが、血液ではpH7.307.50に保たれている。血液のpHが、生理的範囲を越えて低くなった病態をアシドーシスacidosis),逆に高くなった病態をアルカローシスalkalosis)という。
血液のpHの変動を抑える緩衝系には、@炭酸―重炭酸系,Aリン酸系,B血漿蛋白質系,Cヘモグロビン系がある。各緩衝系は、H+が増加した場合これを吸収するように反応し、結果的にH+濃度を高めない(pHを下げない)ように働く。

(4)浸透圧

 浸透圧とは、溶質の通過を制限する半透膜で隔てられた状態で、水分子が拡散しようとする圧力をいう。1モルの理想溶液の持つ浸透圧を1オスモル(Osm)といい、通常使われる単位はmOsmである。
 血漿浸透圧は、約
290mOsmで、その大部分が血漿中に溶解している電解質によって維持されている。血漿浸透圧と等しい溶液を等張性isotonic)といい、0.9%食塩水の浸透圧がこれに相当する(=生理的食塩水)。
 血漿蛋白質は、分子量が大きいため半透膜を通過できず、血漿浸透圧の一部を担っている。血漿蛋白質による浸透圧(水を血管内に保とうとする力)を膠質浸透圧といい、約
28mmHgである(組織の膠質浸透圧は23mmHg)。血漿蛋白質には、アルブミングロブリンがある。グロブリンよりもアルブミンの分子数がはるかに多いため、膠質浸透圧はアルブミンの濃度によって上下する。肝硬変の患者で浮腫が生じるのは、肝臓でのアルブミン産生が低下し、膠質浸透圧が低下するためである。

参考:輸液製剤の成分 (mEq/l)
輸液製剤 Na+  K+ Ca2+ Cl-
生理食塩水 154 - - 154
リンゲル液  147 4 4.5 155.5
1/2生理食塩水 77 - - 77

 

3.血漿蛋白質の分類と働き

 血漿中には6.58.0g/dlの血漿蛋白質plasma protein)が含まれている。血漿蛋白質は、細胞内に取り込まれ、アミノ酸にまで分解され、新たな蛋白質合成の素材として利用されていると考えられている。血漿を電気泳動にかけると、分子量の小さい順に、アルブミンα1-グロブリンα2-グロブリンβ-グロブリンφ-グロブリン(=フィブリノゲン),γ-グロブリンの分画に分けられる。
 アルブミン
albumin)は、血漿蛋白質の50%以上を占め、肝臓で生成され、膠質浸透圧を維持している。アルブミン量とグロブリン量の比(A/G比)は、1.42.4である。
 血漿蛋白質と結合した物質は、糸球体で濾過されず、血中に保持される。アルブミンは、アミノ酸,脂肪酸,Ca,ビリルビンなどと結合し、これらを運搬している。α1-グロブリン分画には、サイロキシン結合グロブリンが含まれ、α2-グロブリン分画には、ハプトグロビン(
haptoglobin),セルロプラスミンが含まれる。β-グロブリン分画には、トランスフェリン(transferrin),β-リポ蛋白質(lipoprotein)が含まれ、それぞれ鉄,脂質を運搬する。
 γ-グロブリン分画は、5種類の免疫グロブリン
immunoglobulinIg)を含む。Igは、リンパ球や形質細胞で作られる5種類の抗体のうちIgGが最も多く、IgMIgAの順に少なくなり、IgDIgEは微量である。抗体は、2本のH鎖heavy chain)と2本のL鎖light chain)からなる。H鎖は、抗原と結合するFab部分(antigen-binding fragment)と、細胞や補体と結合するFc部分(crystalline fragment)とを持つ。抗体は、体内に侵入した各種の抗原(細菌,ウイルスなど)に特異的に結合したり、補体を活性化したりして、生体の防衛に働く。

原発性マクログロブリン血症
 IgM産生細胞が腫瘍性に増殖した疾患であり、全身のリンパ節,肝臓,脾臓が腫大する。単クローン性のIgMの増加により血液粘度は高まり、心不全,脳循環障害,視力障害が起こる。

図2.蛋白電気泳動

 

4.血球の分化

全ての血球は、多能性血液幹細胞(造血幹細胞)より分化する。

図3.血球の分化

 

5.赤血球

(1)赤血球の構造

 赤血球red blood cell)は、直径7.2μm,厚さ2.0μmの円盤状の細胞である。中央部分はへこんでおり、内容量に対して表面積が大きいため、ガス拡散の効率がよい。
 赤血球は、核や細胞内小器官を持たないが、嫌気性解糖系を持ちATPが産生される。赤血球膜には、ATP分解酵素があり、ATPの分解エネルギーにより円盤状構造が維持されている。また、赤血球膜は、弾力性があり容易に変形するので、狭い毛細血管を通り抜けることができる。
 赤血球の成分の65%は水分であり、34%がヘモグロビンである。ヘモグロビンの作用により、赤血球は、肺から組織へ酸素を運び、組織から肺へ炭酸ガスを運搬している。

(2)ヘモグロビンの構造と機能

 ヘモグロビンhemoglobin:Hb)は、分子量65,000の蛋白質で、酸素の供給と炭酸ガスの回収に関与し、さらに血液の緩衝作用にも働いている。ヘモグロビンは、血色素とも呼ばれ、ヘモグロビンのために血液は赤く見える。
 ヘモグロビンは、4分子のヘムと2対のグロビンからなり、ヘムは、鉄原子とV型プロトポルフィリンからなる。鉄原子は、酸素分子と結合する。2価鉄のヘムを持つヘモグロビンを、デオキシヘモグロビン(還元ヘモグロビン)といい、これに酸素分子が結合したものが、オキシヘモグロビン(酸素ヘモグロビン,HbO2)である。鉄が3価であるもの(酸化されたもの)は、酸素結合能がなく、メトヘモグロビンと呼ばれる。赤血球中のメトヘモグロビン還元酵素により、3価の鉄は2価に還元され、再び酸素を結合できるようになる。

 参考:一酸化炭素は、ヘモグロビンと結合しやすい(その結合親和性は酸素よりもはるかに強い)。そのため、一酸化炭素中毒の際には容易に組織の酸素欠乏をきたす。

(3)赤血球の分化・成熟

 赤血球の産生は、5歳まではどの骨髄でも行われるが、成人では胸骨,肋骨,椎体などの赤色骨髄で行われている。赤血球の分化・成熟は、骨髄幹細胞→前赤芽球→好塩基性赤芽球→多染性赤芽球→好酸性赤芽球→網状赤血球の順に進む。多染性赤芽球までの芽球は、有糸分裂能を持つ。ヘモグロビンの合成は、好塩基性赤芽球から始まり、分化が進むにつれヘモグロビンを多く含むようになる。その後、核や細胞内小器官が消失し、成熟赤血球となる。
 赤血球の産生は、エリスロポイエチン
EPO:erythropoietin)により調節されている。エリスロポイエチンは、分子量約40,000の糖蛋白質で、腎臓(9割)、あるいは肝臓(1割)で産生・分泌される。血中半減期は5時間である。貧血時など低酸素状態では、分泌が亢進し、骨髄幹細胞を刺激して前赤芽球の合成を促進する。低酸素は、糸球体におけるプロスタグランディン生成を促進する。これによりアデニル酸シクラーゼが活性化され、エリスロポイエチンが分泌されると考えられている。

(4)溶血

 赤血球の寿命は、約120日であり、古い赤血球は、脾臓の赤色脾髄で捕らえられ破壊される。赤血球膜が破れ、内部のヘモグロビンが放出された状態を溶血hemolysis)という。先天性の赤血球膜の異常や免疫異常では病的な溶血が起こる。
 溶血により放出されたヘモグロビンは、血漿中のハプトグロビン
haptoglobin)と結合して細網内皮系に運ばれる。ここでヘモグロビンは,コールグロビンcholeglobin)→ベルドヘモグロビンverdohemoglobin)を経て、鉄とグロビンがはずれてビリベルジンbiliverdin)となる。ビリベルジンは、還元されて非抱合型ビリルビンとなり,アルブミンと結合し肝臓に運ばれる。非抱合型ビリルビンは、水に不溶性であり、尿中に排泄されない。一方、ハプトグロビンと結合しないヘモグロビンは、腎糸球体で濾過され尿中に排泄される。 ヘモグロビンから離れた鉄は、再びヘモグロビンの合成に利用される。

(5)ビリルビンの排泄経路

 非抱合型ビリルビンは、肝臓に運ばれ、肝細胞に取り込まれる。ここでグルクロン酸抱合を受けて水溶性の抱合型ビリルビンとなり、胆汁として十二指腸に排出される。腸管に放出されたビリルビンは、腸内細菌の作用でウロビリノーゲンウロビリンステルコビリン)となり、糞便中に排泄される。ウロビリノーゲンは、小腸で再吸収され、門脈を通って肝臓に戻り、ビリルビンとして再び放出される。これを腸肝循環enterohepatic circulation)という。一部のウロビリノーゲンは、腎臓から尿中に排泄される。

(6)鉄の体内動態

 全身の鉄(4g)の70%はヘモグロビン,3%はミオグロビン中に存在する。残りの約30%はフェリチンferritin)として、肝臓や脾臓に蓄えられている。食物中の鉄は、Fe3+(ferric state)であるが、強酸性の胃液により還元されてFe2+(ferrous state)となり、小腸上部で吸収される(1mg/日)。一方、糞便中や尿中に1日1mgが排泄され、出納バランスが保たれている。鉄は、細胞内ではアポフェリチンと結合しフェリチンとなっている。アポフェリチンが飽和すると、ヘモジデリンhemosiderin)として組織に沈着する。血漿中では鉄は、トランスフェリンtransferrin)と結合して運搬される。赤血球の崩壊により1日20〜25mgの鉄が放出されるが、これらは骨髄に運ばれヘモグロビンの合成に再利用される。

6.血小板

(1)血小板の構造

 血小板platelets)は、骨髄幹細胞(巨核球系幹細胞)から分化・成熟した骨髄巨核球megakaryocyte)の細胞質の一部が血中に遊離したものであり、核を持たない。流血中では円形であるが、活性化されると樹状突起を出す。血小板数は、15〜45万/mm3,寿命は約10日である。
 血小板の細胞質には、密顆粒(セロトニン,ADP,ATPを含む),α顆粒(トロンボスポンディン,血小板由来成長因子を含む),アクチン,ミオシンがある。細胞膜には、血小板第3因子といわれるリン脂質があり、血液凝固において重要な役割を果たす。血小板由来成長因子は、血管壁の損傷の修復を促進し,血管平滑筋細胞の増殖と遊走を促進する。

(2)アラキドン酸から生成される生理活性物質

 細胞膜中に存在するホスホリパーゼA2は、膜のリン脂質からアラキドン酸を細胞質中に遊離させる。アラキドン酸からは、シクロオキシゲナーゼによりPGG2を経て、プロスタグランディン,プロスタサイクリン,トロンボキサンが作られる。また、アラキドン酸からは、ロイコトリエンleukotriene),リポキシンが作られる。これらの生理活性物質は、さまざまな作用を持ち、局所ホルモンともいわれる。半減期は短い。トロンボキサンA2は、血小板で生成・放出され、血管収縮と血小板凝集を引き起こす。プロスタサイクリンは、血管内皮細胞,平滑筋細胞で生成され、血小板凝集を抑制し、血管拡張を引き起こす。ロイコトリエンは、気管支収縮,細動脈収縮,血管透過性亢進のほか、好中球や好酸球の遊走を引き起こす。

アスピリン
 少量のアスピリンは、血管壁のシクロオキシゲナーゼを抑制することなく血小板のシクロオキシゲナーゼを抑制し、トロンボキサンA2の生成を抑制する。
血栓予防薬として利用される。

(3)血小板血栓の形成機序

 血管が損傷を受けると、@血管収縮,A血小板血栓の形成,B血液凝固が起こり止血される。血管収縮は、疼痛や組織損傷による神経反射,損傷血管の直接的局所的な収縮,損傷組織から放出された液性因子,血小板から放出されたトロンボキサンA2などにより引き起こされる。
 血小板血栓は、日に何回となく生じている小血管の破綻を修復している。血小板は、通常は血管壁には付着しないが、露出したコラーゲン線維にはフォン・ウィルブランド因子
von Willebrand factor)を介して粘着する。露出したコラーゲンに血小板が粘着すると、血小板は活性化され多くの偽足を出して相互に結合し、収縮蛋白が収縮し、顆粒が放出される。
 血小板が活性化されると、血小板内のCa2+濃度は上昇し、アデノシン2リン酸(ADP)やセロトニンが放出される。ADPは、Ca2+濃度をさらに高める。また,ホスホリパーゼA2が活性化され、細胞膜からアラキドン酸が遊離され、トロンボキサンA2が生成・放出される。トロンボキサンA2は、Ca2+の流入を促進し、ホスファチジルイノシトールの分解,ジアシルグリセロールの産生を高める。ジアシルグリセロールもアラキドン酸を産生する。これらの結果、ADPとトロンボキサンA2により血小板の活性化は一層促進される。こうして凝集した血小板は、一過性の血栓を作り、血小板血栓と呼ばれる。さらに、血小板の細胞膜にはフィブリノゲンの受容体が形成され、フィブリノゲンを巻き込む。血管壁で生成されているプロスタサイクリンは、血小板の凝集を抑制するため、正常な血管内では血小板の粘着,凝集,血栓形成は起こらない。

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
 血小板の減少により点状出血,出血傾向をきたす疾患。血小板減少の機序は定かでないが、脾臓で作られた自己抗体が血小板に結合し、この複合体が脾臓のマクロファージに取り込まれ、血小板が破壊されるためと考えられている。脾臓摘出によりITPの6割が治癒する。

(4)血液凝固の機序

 血液凝固は、プロトロンビン賦活因子が形成され、プロトロンビン賦活因子がプロトロンビントロンビンに変換し、トロンビンがフィブリノゲンフィブリンに変換する一連の反応である。
 血液凝固系は、トロンビンの形成機序によって、内因系と外因系に区別される。
@外因系凝固は、組織液中のトロンボプラスチンによってZ因子が活性化されZaとなることから始まる。Zaは、血小板リン脂質,Ca2+の存在下に]因子を活性化する。]aは、血小板リン脂質,Ca2+,X因子の存在下にプロトロンビンをトロンビンに転化する。
トロンビンは、フィブリノゲンをフィブリンモノマーとフィブリノペプチドに分解する。フィブリンモノマーが重合してフィブリンとなる。また、トロンビンは、]V因子(フィブリン安定化因子)を活性化する。]Vaは、Ca2+存在下にフィブリン間に分子間架橋(共有結合)を形成し、フィブリンを安定化させる。
A内因系凝固は、]U因子(Hageman因子)が高分子キニノゲンと結合する反応に始まる。次いで]T因子,\因子が活性化される。活性化された\因子は、血小板リン脂質,Ca2+,[因子の存在下にX因子を活性化する。以後の反応は外因系と同じである。
外因系凝固は、10〜20秒で完了するが、内因系は、5〜15分を要する。

血友病
 先天的に第[因子あるいは第\因子が欠損する疾患。内因系凝固が障害されるため、出血傾向をきたす。

(5)フィブリン溶解現象と凝固阻止

 損傷血管の修復過程において不要になったフィブリンは、プラスミンによって溶解される。これをフィブリン溶解現象という(線維素溶解,略して線溶ともいう)。
 プラスミン
plasmin(=フィブリノリジンfibrinolysin)は、トロンビンと組織中のプラスミノゲン活性化物質によってプラスミノゲンから作られ、フィブリンおよびフィブリノゲンを溶解する。フィブリン分解産物(FDP)は、トロンビンの働きを抑制する。
 アンチトロンビンV(antithrombin V)は、凝固因子のセリン蛋白分解酵素に結合し、酵素活性を阻害する。ヘパリン
heparin)は、その結合を促進し、\,],]U因子を抑制する。ヘパリンは、肥満細胞から分泌され、血管内皮細胞表面に存在している。
トロンボモジュリン
thrombomodulin)は、大脳微小循環以外の血管内皮細胞で生成される。プラスミノゲン活性化物質の抑制物質を不活性化することにより、プラスミノゲンからのプラスミンの生成を促進する。

凝固阻止剤
 肝臓で生合成されるビタミンK依存性の凝固因子(プロトロンビン,Z,\,]因子)は、グルタミン酸基を持ち、血中ではカルボキシルグルタミン酸基に変換されている必要がある。ビタミンKは、この反応を触媒する。
ワーファリンジクマロールは、ビタミンKの作用を阻止するので、血栓症の治療薬として用いられる。なお、体外での凝固を防ぐためには、クエン酸塩,シュウ酸塩を用いて血中のCa2+を除けばよい。

7.白血球

(1) 白血球の分類と分化・成熟

 白血球(leukocyte)は、顆粒球(granulocyte)(細胞内顆粒の染色性により好中球neutrophil)、好酸球eosinophil)、好塩基球basophil )に分ける),リンパ球(lymphocyte),単球(monocyte)に分類される。このうち好中球が50%以上を占め、リンパ球が35%、単球が5%程度で、好酸球と好塩基球は少ない。白血球数は、コロニー刺激因子(colony stimulating factorCSF)により調節され、正常では、4,0009,000/mm3である。CSFは、単球,線維芽細胞,内皮細胞,Tリンパ球などで産生される。

@顆粒球は、骨髄幹細胞から分化し、骨髄芽球myeloblast→前骨髄球promyelocyte→骨髄球myelocyte→後骨髄球metacyte)となり、血中に放出される。血中において核の分葉が進み多形核となる。好中球は、毛細血管から組織へ漏出し、消化管内へ失われる。その平均半減期は6時間であり、毎日1011個以上の好中球が生産されている計算になる。
A単球も同じ骨髄幹細胞から分化し、単芽球→前単球を経て血中に放出され、24時間後には組織に移動しマクロファージmacrophage)となる。
Bリンパ球は、リンパ系幹細胞から分化する。大部分はリンパ節,胸腺,脾臓で作られ、リンパ管を流れ、静脈角から血液循環系へ入る。その寿命は、100〜300日と長い。

(2)顆粒球,単球(マクロファージ)の働き

 好中球の機能は、@アメーバ運動を行いながら移動する、A化学走性の性質により微生物に向かって遊走する、B微生物を能動的に取り込む(貪食する)、C貪食した微生物をH22,O2-により殺菌する、D異物を加水分解酵素により分解する。
 単球も貪食・殺菌能を持ち、マクロファージ(単球が組織に移動して成熟したもの)は大食細胞とも呼ばれ,さらに強力な貪食能を持つ。
 好酸球は、化学走性と貪食能を持つ。寄生虫症やアレルギー性疾患では好酸球が増加する。
 好塩基球は、ヒスタミン,セロトニン,ヘパリン,好中球化学遊走因子を含む顆粒を持ち、細胞膜にはIgE受容体がある。これにIgEと抗原が結合すると、脱顆粒現象が起こり生理活性物質が放出され、アナフィラキシー症状を引き起こす。

化学走性chemotaxis
化学物質に刺激された好中球などが血管外に遊走し、その化学物質の濃度の高い部位に集まる現象。細菌成分や補体C5a,ロイコトリエンなどの物質が化学走性を引き起こす。

(3)補体とオプソニン作用

 抗原抗体反応物に一定の順序で反応する蛋白質群を補体という。一連の反応(古典的経路:C1,C2,C4,C3,C5,C6,C7,C8,C9)の結果、生理活性をもたらす。B因子,D因子は、細菌膜の多糖類と反応し、C3を活性化させる(プロペルジン経路)。
 補体(C3b)や抗体が微生物などの異物に結合すると、この複合体は好中球や単球(マクロファージ)に捕らえられやすくなり、貪食作用が促進される、これをオプソニン作用といい、顆粒球がFcレセプターとC3bレセプターを持つことによる。

(4)リンパ球の分化

 リンパ球は、リンパ管や血管を通って体内を循環し、免疫現象で最も重要な役割を果たす。リンパ球は、骨髄のリンパ系幹細胞から2通りに分化する。@出生前後に胸腺で前処理を受けたものは、Tリンパ球となり、A肝臓や脾臓で前処理されたものはBリンパ球となり、それぞれリンパ節に定着する。

@Tリンパ球は、その機能により次のように区分される。

ヘルパーT細胞helper T cell):
抗原提示細胞に接触するとインターロイキン2(IL-2)を放出し、キラーT細胞やBリンパ球を活性化させる。
キラーT細胞killer T cell):
微生物や癌細胞などの非自己細胞を破壊する。
サプレッサーT細胞Suppressor T cell):
キラーT細胞に遅れて出現し、免疫反応を和らげ終了させる。

ABリンパ球は、形質細胞plasma cell)とメモリーB細胞memory B cell)に分化し、形質細胞は抗体を産生する。

BNK細胞natural Killer cell)やK細胞は、T細胞、B細胞の特徴的な表面形質を持たない大型顆粒球である。

NK細胞
キラーT細胞と異なり、抗原感作を受ける異なしにウィルス感染細胞や腫瘍細胞を障害する。
K細胞
IgG抗原の紹介した標的細胞を障害する。
 
CDcluster of differentiation) :分化抗原
白血球は、細胞表面に持つ抗原の種類によって分類されている。ヘルパーT細胞はCD4を持ち、末梢血リンパ球の60〜85%を占める。キラー、サプレッサーT細胞はCD8を持ち、末梢血リンパ球の20〜30%を占める。

(5)細胞性免疫と液性免疫

免疫には、細胞性免疫液性免疫がある。

@細胞性免疫
マクロファージは異物を貪食し、その抗原性物質を認識し、これをMHCという蛋白質とともに細胞表面に提示する。この細胞を抗原提示細胞という。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞に接触することにより活性化され、分裂増殖し、インターロイキンを放出する。メモリーT細胞は、長期間体内を循環し、次回の抗原侵入に対する反応を迅速に起こす。
A液性免疫
抗体すなわち免疫グロブリンによる免疫である。Bリンパ球は、抗原提示細胞の抗原とMHCに結合すると、ヘルパーT細胞(IL-2)の存在下に活性化され、IgM抗体を産生しながら形質細胞に分化する。形質細胞は、IgG抗体を産生する。一部のBリンパ球は、メモリーB細胞となり、次回の抗原侵入に備える。

 リンパ系幹細胞は、100万種類以上の異なったTリンパ球,Bリンパ球を産生する能力を持つ。また、形質細胞は、毎秒2,000個のIgG抗体を産生することができる。こうして免疫系は、無数の病原体に対処している。

MHC(major histocompatibility complex) 主要組織適合遺伝子複合体
ヒト第6染色体の短腕にある遺伝子から作られる糖蛋白であり、自己と非自己を判別する働きを持つ。MHCクラスTは、すべての有核細胞に含まれ、T8細胞の活性化に必須である。MHCクラスUは、マクロファージ,Bリンパ球,活性化T4細胞に認められ、T4細胞の活性化に必須である。
 
リンフォカイン(サイトカイン)
リンパ球が産生するホルモン様物質。IL-1は、T4細胞とB細胞を活性化させる。IL-2は、T4細胞で産生され、T8細胞やBリンパ球の合成と成熟を促進させる。

8.血液型

(1)ABO式血液型

A型  :赤血球膜にA凝集原を持ち,血清には抗B凝集素を持つ。
B型  :赤血球膜にB凝集原を持ち,血清には
抗A凝集素を持つ。
AB型 :赤血球膜にA凝集原とB凝集原を持ち,血清には凝集素を持たない。
O型  :赤血球膜に凝集原を持たず,血清には抗A凝集素と抗B凝集素を持つ。

 これらの凝集原agglutinogen)は、抗原であり、凝集素agglutinin)は、IgMに属する抗体である。型の異なる輸血を受けると、供血者の凝集原が受血者の凝集素と抗原抗体反応を起こす。すなわち、血球の凝集,溶血が起こり、ヘモグロビンが放出される。重症の場合は黄疸,腎不全をきたし死亡する。輸血の際には、供血者と受血者の血球,血清をそれぞれ分離し、交叉して混ぜ合わせ、凝集が起こらないかを調べる(交叉適合試験).

(2)Rh式血液型

 Rh因子(アカゲザルrhesus monkeyの研究で発見された因子)による血液型分類である。Rh因子のうち最も抗原性の強いD凝集原を持つ場合をRh陽性、持たない場合をRh陰性という。
 Rh陰性者がRh陽性の輸血を受けると、抗体(抗Rh凝集素)が生じる。これは長年にわたり保持されるので、再度Rh陽性の血液を受けると抗原抗体反応により重篤な溶血が起こる。
 Rh陰性の母親がRh陽性の胎児を妊娠した場合、分娩時に胎児のわずかな血液が母体に入り、母体に抗体(抗Rh凝集素)が生じる。これを血液型不適合妊娠といい、次回妊娠時に抗体は胎盤を通って胎児に移行し、胎児に溶血を起こす。初回の出産直後にRh免疫グロブリン(抗Rh抗体)を投与することにより、抗体産生を防ぐことができる。

9.血液検査

表2.血液構成検査
検査項目 単 位 男 性 女 性
赤血球数 (RBC) 10^4/μL 431〜565 378〜497
白血球数 (WBC) /μL 5,100±1,000 5,100±1,200
ヘモグロビン (Hb) g/dL 13.7〜17.4 11.3〜14.9
ヘマトクリット (Ht) 40.2〜51.5 33.6〜44.6
MCV fL 83〜101 79〜99
MCH pg 28.1〜34.5 26.3〜33.6
MCHC 31.8〜36.4 31.1〜36.2
血小板数 (PLT) ×10^4/μL 13.1〜36.5 12.5〜37.5

MCV:平均赤血球容積(Mean Corpuscular Volume) =赤血球容積(ヘマトクリット)/赤血球数
MCH:平均赤血球ヘモグロビン量(Mean Corpuscular Hemoglobin)
MCHC:平均赤血球ヘモグロビン濃度(Mean Corpuscular Hemoglobin Concentration) 

表3.白血球分画
分画 単位 男性 女性
好中球(桿状核Stb) 5.0±3.9 3.7±2.8
好中球(分葉核Seg) 52.0±7.9 3.7±2.8
好酸球(Eos) 0〜10±1.7 0〜5±1.1
好塩基球(Bas) 0〜5 ±0.6 0〜3 ±0
リンパ球(Lym) 35.3 ±8.5 31.7 ±7.2
単球(Mon) 5.3 ±2.6 5.2 ±3.5

StbSegは好中球を核の形状から分けたもので、桿状核球は stab cell の他に、band cell、neutorophil band form、neutorophilic band granulocyte等、分葉核球は、segmented form の他に、polymorphonuclear neutorophil、neutorophil segmented form、polymorphonuclear等と表されることもある。


[用語]

全体液(TBW:total body water)、細胞内液(ICF:intracellular fluid)、細胞外液(ECF:extercellular fluid)、間質液(ISF:interstitial fluid)、血漿(blood plasma)、血液(blood)、血球(blood cells)、血餅(clot)、血清(serum)、アルブミン(albumin)、ハプトグロビン(haptoglobin)、トランスフェリン(transferrin)、β-リポ蛋白質(lipoprotein)、免疫グロブリン(immunoglobulin)、H鎖(heavy chain)、L鎖(light chain)、Fab部分(antigen-binding fragment)、Fc部分(crystalline fragment)、ヘモグロビン(Hb:hemoglobin)、赤血球(red blood cell)、血小板(platelets)、巨核球(megakaryocyte)、白血球(leukocyte)、顆粒球(granulocyte)、好中球(neutrophil)、好酸球(eosinophil)、好塩基球(basophil )、単球(monocyte)、リンパ球(lymphocyte)、ヘルパーT細胞(helper T cell)、サプレッサーT細胞(Suppressor T cell)、キラーT細胞(killer T cell)、NK細胞(natural Killer cell)、形質細胞(plasma cell)、メモリーB細胞(memory B cell)、樹状細胞(dendritic cell) 、マクロファージ(macrophage)、多分化能幹細胞(pluripotent stem cell)、骨髄芽球(myeloblast)、前骨髄球(promyelocyte)、骨髄球(myelocyte)、後骨髄球(metacyte)、桿状核球(Stb:stab cell)、分葉核球(Seg:segmented form)、MHC(major histocompatibility complex) 、ヘマトクリット(Ht:hematocrit)、平均赤血球容積(MCV:Mean Corpuscular Volume) 、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH:Mean Corpuscular Hemoglobin)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC:Mean Corpuscular Hemoglobin Concentration)、