2005/01/20
1.細胞の基本構造 、 2.細胞内外の輸送 、 3.細胞呼吸 、 4.細胞内シグナル伝達 、 5.細胞の接着と接着分子
- 核(nucleus)
- 2枚の膜(外膜と内膜)からなる核膜(nuclear membrane)によって、細胞質から隔てられている。核膜には核孔(nuclear pore)と呼ばれる多数の小孔があり、物質が出入りしている。核内には、DNA(deoxyribonucleic acid)からなる染色体をもち、その遺伝子情報に従ってmRNA(ribonucleic acid)が合成される。核小体(nucleolus)は、タンパク質とRNAからなる小球体でリボソームを生産しており、細胞分裂期には消滅する。
- ミトコンドリア(mitochondria)
- ソーセージ形をした小器官であり、外膜,内膜,実質性内腔に分けられる。ミトコンドリア内ではクエン酸回路,電子伝達系,酸化的リン酸化が機能し、ATPを産生する。心筋,横紋筋,腎近位尿細管細胞,視細胞,胃腺部の傍細胞などに多い。
- 小胞体(endoplasmic reticulum:ER)
- 管状構造を持ち、細胞内外の物質の輸送や情報伝達の機能を持つ。リボソームの有無により2種類に分類される。
- @粗面小胞体(rough ER)は、その表面にリボソームを持ち、蛋白合成を行う。腺細胞,分泌細胞,形質細胞,神経細胞などで発達している。
- A滑面小胞体(smooth ER)は、グリコーゲン,ステロイドホルモン,コレステロールなどの合成を行う。骨格筋や心筋では筋小胞体と呼ばれ、Ca2+を貯蔵し,細胞内Ca2+濃度の調節を行う。
- ゴルジ体(Golgi body)
- 扁平な胞状膜構造を持ち、核近くにある。分泌蛋白の濃縮、分泌顆粒の生成にたずさわり、分泌細胞,神経細胞で発達している。
- リボソーム(ribosome)
- rRNAと複数のタンパク質からなる粒子で、mRNA(伝令RNA)から,タンパク質の合成を行う。タンパク質合成中のものはmRNAと結合したポリソーム(polysome)又はポリリボソーム(polyribosome)と呼ばれる。小胞体と結合した膜結合型と遊離型がある。
- リソソーム(lysosome)
- 多種類の加水分解酵素を含む顆粒であり、これらの酵素により細胞内に取り込んだ物質や老廃物の分解処理を行う。白血球,腎尿細管,破骨細胞,甲状腺細胞などで発達している。食胞(phagosome)と融合してファゴリソソームとなる。
- ペルオキシソーム(peroxisome)
- 膜に包まれた小型の袋。内部に酸化酵素を持ち、有害な物質を無害化する。脂肪酸分子の分解やアルコール解毒(肝臓細胞)
- 細胞質ゾル(cytosol)
- 解糖系の酵素、脂肪酸の合成に関する酵素など多くの可溶性酵素が含まれる。
- 細胞骨格
- 繊維状の構造体で、運動、形態維持および分裂、細胞内輸送や情報伝達などに関与している。主要成分は、ミクロフィラメント(microfilament)、微小管(microtubule)、中間径フィラメント(intermadiate filament)である。
- ミクロフィラメント(microfilament)
- 主成分は収縮蛋白であるアクチン(actin)である。細胞膜近くにある微小線維は細胞形態の維持(張力の発生,膜の運動)に関与する。収縮運動にはATPのエネルギーを必要とする。神経細胞軸索内のものはニューロフィラメント(neurofilament)と呼ばれ、軸索輸送に関与する。
- 微小管(microtubule)
- チューブリン(α-tubulin,β-tubulin)と呼ばれる球状蛋白質が結合(ダイマー)し、これが縮合して輪をつくり,さらに積み重なり管となったものである。ダイマーの微小管への集合と解体は活発に行われている。細胞内の物質の移動,軸索輸送,線毛運動などを担う。
- 中間径フィラメント(intermadiate filament)
- 中くらいの太さのロープ状の繊維
- 中心体
- 中心付近にあり、細胞運動の統御を行う。細胞分裂のときは2つに分かれて核の分裂を助ける。
- 小胞
- 膜で包まれた袋で、細胞質で作られ、細胞内で作られた物質の貯蔵と運搬に使われる。
- 液胞
- 膜で包まれた袋で、小胞体とゴルジ体によって作られ、合成されたタンパク質を細胞表面に運んで分泌したり、貯蔵したりする。
細胞膜(cell membrane)は、形質膜(plasmal membrane)とも呼ばれ、半透膜の性質を持った,厚さ7.5nmの膜である。その構造は脂質二重層で、リン脂質の球部は、親水性であり細胞の内外に面し、疎水性部は、膜内部に位置している。この脂質二重層は、水やイオンは通さないが、O2やCO2は自由に通過する。
細胞膜の構成成分は、脂質と蛋白質である。脂質の主な成分は、リン脂質(phospholipids)とコレステロールである。リン脂質には、グリセロリン脂質(ホスファチジルコリン,ホスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルセリンなど)とスフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリンなど)の2種類がある。蛋白質は、構造蛋白,ポンプ,イオンチャネル,酵素,受容体などであり、これらは細胞膜に散在し、貫通型、埋込型、付着型がある。

体重の約60%は水である。その他は蛋白質が約18%,脂肪が15%,糖類が7%を占めている。細胞内液は体重の40%,細胞外液は20%で、そのうち血液量は8%(血漿量は5%)である。
細胞内液と細胞外液の組成は、《表1》に示すように大きく異なる。
水は細胞膜を通過しにくいが、毎秒その細胞の大きさにほぼ等しい量の水の出入りがある。陰イオンは水と同様に細胞内外を拡散する。細胞膜にはイオンポンプがあり、Na+は細胞外にくみ出され、K+は細胞内に取り込まれる。
| 組成 | Na+ | K+ | Ca2+ | Mg2+ | Cl- | HCO3- | 蛋白質 |
| 細胞内液 | 10 | 159 | 1 | 40 | 3 | 7 | (45〜75) |
| 細胞外液 | 142 | 4 | 5 | 2 | 103 | 28 | (2〜20) |
体液を区分する隔壁を通って溶質分子および水を移動させる力には、拡散,濾過,浸透,担体輸送がある。
- @拡散(diffusion)
- 物質粒子が熱運動によって広がってゆく現象.高濃度の領域から低濃度の領域に広がる.その程度は濃度勾配(濃度差,電気的勾配)による.イオンであれば電荷の影響を受ける.
- A濾過(filtration)
- 孔を持つ膜で区分された2つの液相間の静水力学的圧力の差により液体が移動する現象.その程度は圧勾配と膜の透過性,膜の面積によって決まる.
- B浸透(osmosis)
- 溶質を通さない膜を,溶媒分子(水)が溶質濃度の低いほうから高いほうへ移動する現象.
- C担体輸送
- 特定の物質と結合して膜を通過させる担体(carrier)によって運ばれる.エネルギーを必要とせずに濃度の高いほうから低いほうへ運ばれる場合は、促進拡散(facilitation diffusion)と呼ばれ、能動輸送(active transport)とはエネルギーを消費して行われる輸送をいう。
- Dエクソサイトーシス(exocytosis)
- 小胞の膜が細胞膜と融合し,融合部分に孔があき,小胞内容が外に放出される.エネルギーとCa2+が必要である.膜に障害は起こらない.
- Eエンドサイトーシス(endocytosis)
- エクソサイトーシスの逆の働きである.特定の物質(インスリン,神経成長因子,表皮生成因子など)は,細胞膜の受容体に結合することにより取り込まれる(受容体介在性エンドサイトーシス ).
- @Na+―K+ポンプ
- 能動輸送(active transport)の一種であり,Na+,K+-ATPaseを担体としている.1ATPの分解により3つのNa+を細胞外にくみ出し,細胞外のK+を2つ取り込む.Na+―K+ポンプは、ウアバインによって抑制される.
- ANa+―Ca2+交換輸送
- 細胞外の3つのNa+を細胞内に取り込み,細胞内の1つのCa2+を放出する.
- B糖―Na共輸送
- 1グルコースが1つのNa+とともに細胞内に取り込まれる.
AとBはいずれもNaの細胞内外の濃度勾配による輸送であり,細胞内に取り込まれたNa+は,Na+―K+ポンプによる能動輸送により細胞外にくみ出される。担体には,複数の物質の結合によって行われる共輸送体(symptor)と,単体だけを運ぶ単輸送体がある
| Na+−K+ ATPase | 細胞膜の内外のNa,Kの交換輸送 |
| Ca2+ ATPase | 筋小胞体のCa2+貯蔵 |
| H+−K+ ATPase | 胃酸の分泌 |
| H+ ATPase | H+輸送 |
| グルコース担体 | 糖輸送(赤血球膜) |
| Na−糖共輸送担体 | 糖輸送(小腸,腎) |
| アミノ酸輸送担体 | アミノ酸輸送 |
| Na+チャネル | Na+電流(神経,筋) |
細胞質ゾル内の解糖によってブドウ糖から生じたビルピン酸(三炭素化合物)は二酸化炭素が除去されアセチルCoA(二炭素化合物、CoAは助酵素)となってミトコンドリアに入る。アセチルCoAは、マトリックス内でクエン酸回路(TCA回路)により水と二酸化炭素に分解される。その際生じる水素イオンは、電子伝達系により膜間膜にくみ出される。水素イオンが、クリステ内側につきでているATP合成酵素系(F1F0複合体)を経て、マトリックスに流入する際にATPが合成される。水素イオン濃度差のエネルギーがATPの化学エネルギーに変換されるためで、マトリックスに戻った水素イオンは酸素と結合して水になる。


細胞は、外界からの多種多様な刺激のシグナルに選択的に応答している。選択的応答が可能なのはシグナルに対して特異性を有する受容体が関与しているからである。細胞が細胞外のシグナルに応答するしくみは、標的細胞表面に存在する受容体タンパクを介するものが大部分であるが、この他にNO などのようにシグナル分子が細胞膜を通過し、直接細胞内タンパク質の活性を制御するものや、ステロイドホルモンのようにシグナル分子が細胞膜を通過し細胞内に局在する受容体と結合し、複合体が特定のDNA 塩基配列と結合し一次応答遺伝子を活性化するものがある。
細胞表面受容体が関与するものでは、外界シグナルが細胞膜に存在する受容機構により受容され、細胞膜を横切り細胞内に伝達され細胞膜の内側あるいは細胞質内にある特異的効果を示す分子群にシグナルが段階的に伝達され応答反応が現れる。また、一部のシグナルでは核にまで伝達され、特定の遺伝子の発現を引き起こすことによって刺激応答反応が成立する。
細胞内シグナル伝達の経路は、固有のタンパク質の連続したものであり、各タンパク質は、下流の段階のタンパク質に作用して分子の立体配位を変化させ活性型とすることによって作用している。下流にシグナル伝達後は不活型に戻る。一般にシグナルタンパク質の立体配位の変化は、リン酸の添加または除去によっている。そのためシグナル伝達経路には、プロテイン・キナーゼ(タンパク質リン酸化酵素)とプロテイン・ホスファターゼ(タンパク質脱リン酸酵素)が存在している。
細胞表面受容体タンパク質には、1 )シグナルとなる神経伝達物質が興奮性細胞のイオンチャンネルと結合することによってイオンチャンネルを開閉するイオンチャンネル連結型、2 )シグナル分子の配位子が結合しGTP 結合タンパク質を活性化しシグナル伝達が開始されるGタンパク連結型、及び3 )受容体関連酵素を直接活性化する酵素連結型とがある。
Gタンパク連結型受容体は、刺激(細胞外シグナル物質)のリガンド(配位子)がレセプター(受容体)に結合することによってGタンパク質を活性型にし、エフェクターを活性化しシグナルを伝達するものである。Gタンパク連結型においては、細胞内仲介物質または二次メッセンジャーの濃度を変化させる過程を活性化させる。細胞内仲介物質の代表的なものは、環状AMP (cAMP )とカルシウムイオンである。促進性Gタンパク質(Gs)はアデニールシクラーゼを活性化し、ATPから細胞内cAMPを産生させる。抑制性Gタンパク質(Gi)を介してアデニールシクラーゼ活性を抑制し、cAMP 産生を減少させる。cAMP は主として、cAMP 依存性プロテインキナーゼ(A キナーゼ, PKA )を活性化し、ホルモンや神経伝達物質の作用の発現に介在している。cAMP は、ソマトスタチンの場合にはこのホルモンをコードする遺伝子の転写を促進する。
この他、ある種のGタンパク連結型受容体は、ホスホリパーゼC-β(PLC-β)を活性化し、イノシトールリン脂質のシグナル伝達経路を活性化する。イノシトールリン脂質は、細胞膜に存在するホスファチジル・イノシトール・リン酸(PIP)とホスファチジル・イノシトール・ビス・リン酸(PIP2)である。Gタンパクの活性化に次いで活性化するホスホリバーゼC(PLC)によってPIP2 は分解し、イノシトール・トリス・リン酸(IP3)とジアシル・グリセロール(DAG)を生成する。
IP3は、小胞体膜のIP3依存性チャネルに結合し、小胞体からカルシウムイオンを放出させる。細胞質内に流入したカルシウムイオンは、細胞内のメッセンジャーとして機能する。カルシウムイオンはカルシウムイオン結合タンパク質(カルモジュリンなど)と結合し、立体配位を変化させ活性化する。このカルシウムイオン結合タンパク複合体は、標的タンパク質と結合すると立体配位の変化を起こし、酵素活性や膜輸送を調節する。
IP3 の分解で生成したDAG もシグナル伝達で2つの重要な役割をもっている。その1 つは分解してアラキドン酸を遊離する。アラキドン酸は、プロスタグランジン(PGE2)などエイコサノイドの合成の出発物質となる。エイコサノイドは、パラ分泌及び自己分泌で分泌され、細胞外シグナル物質となる。他の一つは、DAG はプロテインキナーゼC(PKC)を活性化する。DAGの生産に伴い、細胞質中に存在するPKCは細胞膜へ移動して活性化される。これらカルシウムイオンを介する経路と、PKC を介した経路との相互的な働きが、細胞の増殖や分化などの広範でしかも基本的な細胞機能の制御に深く関わっている。さらに、PKC をはじめとする脂質性シグナル伝達分子が核内に存在、またはシグナル伝達の時に核内へ移行することが知られているが、このような脂質性シグナル伝達分子の核内における代謝は、遺伝子の転写調節に直接関与している可能性が強いため、細胞機能を正常に維持するためにもPKCは重要な役割を担っていると考えられている。
PKCは、セリン/スレオニン・リン酸化酵素の一種であり、細胞膜を構成するリン脂質の一つ、セリンリン脂質とDAGおよびカルシウムイオンによって活性化される。しかしその後の研究によって、これらセリンリン脂質、DAG、カルシウムイオンで活性化されるPKC(cPKCs: PKC−α,−βI,−βII,‐γ)以外に、現在ではカルシウムイオンに依存しないnPKCs(nPKCS,δ,ε,η,θ)、カルシウムイオンおよびDAG の両方に依存しないaPKC などのisoform が存在することが明らかとなり分類されている。つまりPKCファミリーを形成し、それぞれのPKCで細胞分布や活性制御機構、基質特異性などが微妙に異なっているなど、分子多様性が明らかにされつつある。
Gタンパク連結型受容体を経由するシグナル伝達は、ホルモンや神経伝達物質、局所的仲介物質などのシグナルに対する細胞応答に関与している。
酵素活性連結型受容体には、5 種類ある。主なものは(1)受容体チロシンキナーゼ、(2)チロシンキナーゼ会合型受容体、(3)受容体セリン/トレオニンキナーゼ、(4)チロシンホスファターゼ受容体、(5)受容体グアニルシクラーゼである。
上皮成長因子(EGF)、インスリン、神経成長因子などでは受容体タンパク質がチロシンキナーゼであり、これら細胞外シグナル物質の配位子が結合することによって受容体の酵素活性が活性化する。これによってエフェクターを活性化しシグナルを伝える。受容体チロシンキナーゼ(RTKs)によりシグナル伝達である。受容体チロシンキナーゼにより活性化された細胞内シグナル伝達カスケードではRas タンパク質が分子スイッチとして働いている。RasがGTPと結合すると活性化する。活性化Rasはシグナルを下流に伝えた後にGTPをGDPに分解し自ら不活化する。下流の反応はセリン/トレオニンリン酸化の連鎖反応でセレン/トレオニンキナーゼファミリーを形成している。このファミリーをマイトジエン(分裂促進物質)活性化プロテインキナーゼ(MAP キナーゼ)、または細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)という。
MAP キナーゼ・キナーゼ・キナーゼ(MAPKKK)は、活性化Ras と結合し活性化し、順次MAP キナーゼ・キナーゼ(MAPKK)、MAP キナーゼ(MAPK)と下流の反応を活性化する。活性化MAP キナーゼは、遺伝子調節タンパク質などをリン酸化し、更に下流にシグナルを伝える。MAP キナーゼは、活性化すると細胞質から核へ移行しElk-1などの転写因子をリン酸化する。即時型初期遺伝子のfos調節領域の血清応答領域に結合し、fos遺伝子の転写を開始させる。
受容体チロシンキナーゼ(RTKs)は、細胞表面に存在し外界からの刺激物質と相互作用し、細胞増殖、分化、運動、生存などの過程を制御している。インスリン、EGF 、線維芽細胞増殖因子(FGF)などの増殖因子やインターフェロン(INFs)、インターロイキン(ILs)などのサイトカインの作用は、RTKs によるシグナル伝達である。
MAP キナーゼカスケードは、真核細胞の酵母からヒトの細胞まで広く存在している。哺乳類細胞では4 種のMAP キナーゼ、すなわち増殖因子応答性のMAPK, ERK5, サイトカイン, ストレス, 応答性のSAPK/JNK, P38 があり、細胞外シグナル物質だけでなく浸透圧、熱ショック、紫外線、酸化的ストレスなど物理的刺激の応答においてもMAP キナーゼの活性化が介在し、外界刺激の核への伝達と遺伝子発現に機能している 。
この他、細胞間接着装置、細胞表面に存在する細胞接着因子もシグナル伝達に関与している。細胞接着因子の一つインテグリンは、細胞膜を貫通し細胞内骨格と結合している。機械的構造の維持に役立っているほかシグナル伝達機能を果たしている。インテグリンは、細胞外基質と結合すると細胞内チロシンキナーゼFAKのリン酸化が誘導され、Ras-MAP キナーゼへとMAP カスケードを活性化しシグナルを核に伝達する。また、インテグリンからのシグナルは、直接Raf を活性化する経路、RTK活性化経路などが提唱されている。細胞骨格系のタンパク質が集結されストレスファイバーが形成される。インテグリン・シグナルは、MAP キナーゼカスケード活性化、PI3 キナーゼやPKC などセリン/トレオニンキナーゼ活性化、細胞骨格の再構築などRTK シグナルと共通した作用を有している 。インテグリンは、増殖因子のシグナル伝達を高める作用がある。
ホルモンや神経伝達物質など、情報のメッセンジャーをリガンド(ligand)という。リガンドの受容体(receptor)は、細胞膜や細胞核内にある.一般に受容体は、リガンドが過剰にあると減少し(down regulation)、不足すると増加する(up regulation)。受容体は、核内受容体と細胞膜上受容体(Gタンパク質共役系受容体とキナーゼ系受容体)に分けられる。
核内受容体は、リガンド結合領域とDNA結合領域をもつ。核内受容体と結合する脂溶性(ステロイドホルモン等)のリガンドには、エストロジェン、プロゲストロン、レチノイド(レチノール酸)、ビタミンD3などがある。これらのリガンドは核内受容体と結合して,多くの場合ダイマー(2量体)としてDNAに結合し、転写因子として働く。
細胞膜上受容体は、Gタンパク質共役系受容体とキナーゼ系受容体に分けられる。
Gタンパク質共役系受容体は、イオンチャンネル内蔵型受容体も含めて、細胞内にセカンドメッセンジャー(cAMP,DG,IP3,Ca+など)を送り出す。セカンドメッセンジャーは、キナーゼ系を活性化して細胞内にシグナルを伝達する。キナーゼ系受容体は、増殖因子、サイトカイン、抗原、抗体など大部分がチロシン・キナーゼ系で、セリン/スレオニン・キナーゼ系にはTGFβ受容体がある。キナーゼ系受容体は、ホモダイマーやヘテロダイマーを構成し、細胞膜内にキナーゼ活性化領域を持つ。
受容体結合前は、αβγのヘテロ三量体よりなるGタンパク質のαサブユニットはGDPと結合し、受容体と離れている。1次伝達物質が受容体に結合すると、受容体はGタンパク質のGDPをGTPに交換し活性化する。GTPが結合したGタンパク質のαサブユニットは、βγから離れ細胞膜に沿って拡散し、エフェクターと結合するとそれを活性化する(スイッチON)。数秒後にαユニットは自身でGTPをGDPに分解し不活性化し(スイッチOFF)、再びβγ複合体と結合する。エフェクターとしては、アデニル酸シクラーゼ、cGMT、ホスホジェステラーゼ、ホスホリパーゼC、イオンチャンネルなどがある。
アデニル酸シクラーゼは、ATPから2次メッセンジャーのcAMPを生成し,cAMPはAキナーゼ(プロテインキナーゼA)を活性化する。ホスホリパーゼC(PLC)は、PIP2を加水分解し,IP3とDGを生成する。IP3は小胞体のIP3受容体に結合し、小胞体からCa2+を放出させる。Ca2+は単独あるいはカルモジュリンを介して機能性蛋白質を活性化する.一方,DGは、細胞膜に結合しているプロテインキナーゼA(PKC)を活性化する。
| 刺激 | 標的細胞 | Gタンパク質 | エフェクター | 作用 |
| エピネフリン グルカゴン |
肝臓細胞 | Gs | アデニル酸シクラーゼ | グリコーゲン分解 |
| エピネフリン グルカゴン |
脂肪細胞 | Gs | アデニル酸シクラーゼ | 脂肪分解 |
| 黄体形成ホルモン | 卵巣細胞 | Gs | アデニル酸シクラーゼ | エストロゲンとプロゲステロンの合成 |
| 抗利尿ホルモン | 腎臓細胞 | Gs | アデニル酸シクラーゼ | 水再吸収 |
| アセチルコリン | 心臓筋肉細胞 | Gi | カリウムチャンネル | 拍動数減、駆出力の減弱 |
| エンケファリン エンドルフィン オピオイド |
脳神経 | Gi/Go | カルシウム・カリウムチャンネル アデニル酸シクラーゼ |
神経の電気的活動の変化 |
| アンジオテンジン | 血管平滑筋細胞 | Gq | ホスホリパーゼC(PLC) | 平滑筋の収縮、血圧上昇 |
| 匂い | 鼻神経上皮細胞 | Golf | アデニル酸シクラーゼ | 匂いの検知 |
| 光 | 網膜の桿体、錐体組織 | Gt | cGMP、ホスホジェステラーゼ | 光の認識 |
| フェロモン | バン酵母 | GPA1 | 未同定 | 細胞の結合 |
GTP/GDPによる活性化機構と脂質による装飾を受けて標的タンパク質に作用する、低分子量のGタンパク質(Smg)である。Ras、Rho、Rab、Arf、Ranの5つのファミリーに分類される。
| Ras | 細胞増殖 |
| Rho | アクチン細胞骨格系の再編成、Rho,Rac,Cdc42 |
| Rab | 細胞内小胞輸送 |
| Arf | 細胞内小胞輸送 |
| Ran | タンパク質核輸送 |
Smgの活性化機構
GDP結合型からGTP結合型への変換(活性化)は、GDP/GTP交換反応促進タンパク質(GET)とGDP/GTP交換反応抑制タンパク質(GDI)により調整され、GTP結合型からGDP結合型への変換(不活性化)は、GTPase活性促進タンパク質(GAP)により制御される。Rasファミリー
リガンドが受容体に結合すると、RasのGEPであるmSosがGrb2アダプタータンパク質を介して受容体に結合し、RasのGDP/GTP交換を促進して活性化する。mSosと同じRasを基質とするGEPのmCdc25は、Ca2+濃度上昇に伴いカルモジュリンと結合したCa2+により活性化される。また、リンパ球ではCキナーゼもRasを活性化する。SmgGDSというGEPは、GTP結合型Rasを細胞膜から解離させる。
活性化H-Rasは、C-Raf1と結合して活性化する。活性化Ki-Rasは、SmgGDSにより細胞膜から解離しB-Rafと結合して活性化する。C-Raf1やB-Rafは、MAPカスケードを通して遺伝子発現を制御している。Rhoファミリー
Rhoは、形態や凝集、運動、膜のラッフリング(波打ち現象)、平滑筋収縮、細胞質分裂などのアクチン細胞骨格系の再編成に関与している。Racは、白血球やマクロファージではアクチン、NADPHオキシターゼによるスーパーオキシド産生、繊維芽細胞では細胞膜のラッフリングやラメリポディア(葉状仮足)の形成に関与している。Cdc42は、フィロポディア(糸状仮足)の形成に関与している。Rabファミリー
細胞内小胞輸送は、1つの膜系から(1)芽が出て、他の膜系に(2)運ばれ、(3)ドッキングして、(3)融合することで、それぞれの段階をRabが制御している。
| 受容体 | 細胞外 | 細胞内 |
| PDGF(血小板由来増殖因子) | 免疫グロブリン様ループ構造 | チロシンキナーゼドメインのボックス構造が2個 |
| FGF(繊維芽細胞増殖因子) | 免疫グロブリン様ループ構造 | チロシンキナーゼドメインのボックス構造が2個 |
| EGF(表皮細胞増殖因子) | システイン残基が多くあるボックス構造が2個 | チロシンキナーゼドメインのボックス構造が1個 |
| HGF(肝細胞増殖因子) | システイン残基が多くあるボックス構造が1個のβ鎖と細胞外部分のみのα鎖 | チロシンキナーゼドメインのボックス構造が1個 |
| インスリン | β基と細胞外部分のみでシステイン残基が多くあるボックス構造のα鎖 | チロシンキナーゼドメインのボックス構造が1個、α鎖とβ基が各2個のヘテロ4量体構造 |
増殖因子が受容体に結合すると、受容体の2量体が形成されるのに伴って、チロシンキナーゼが活性化され、相互に自己リン酸化領域のチロシン残基をリン酸化する。チロシン・キナーゼ・ドメイン外でリン酸化されたチロシン残基を含む配列には、SH2(Src相同2)ドメインあるいはPI(リン酸化チロシン相互作用)ドメインを有する分子が結合し、多くの分子がチロシン・リン酸化される。
これらの伝達分子(下表)には、酵素活性を有する分子(PLC-γ、RasGAP、PI3K85K、SHPTP、Src)と酵素活性を持たないアダプター分子(Grb2、Shc)がある。これらは基本的に受容体の異なるペプチドドメインに結合するがHGF受容体のように共通のドメインに結合する場合もある。
インスリン受容体の場合は、他と異なりチロシン・リン酸化された受容体にPIドメインを介してIRS-1(インスリン受容体基質1)というアダプタータンパク質が結合しチロシン・リン酸化される。IRS-1のリン酸化チロシンを含む配列にSH2ドメインを持つPI3K、Grb2、SHPTPなどが結合する。
| 伝達タンパク質 | 構造 |
| Src | =|SH3|SH2|キナーゼ|= |
| PLC-γ | =|PH|=|SH2|=|SH2|=|SH3|=|PLC|= |
| RasGAP | =|SH2|SH3|SH2|=|PH|=|GAP|= |
| PI3K85k | =|SH3|==|SH2|==|SH2|= |
| SHPTP2 | =|SH2|=|SH2|=|PTPase|(P)= |
| Grb2 | =|SH3|SH2|SH3|= |
| Shc | =|PI|==(P)=|SH2|= |
| IRS-1 | =|PH|=|PI|=(P)(P)(P)(P)(P)(P)(P)= |
| Sos | ==|PH|==|GNE|==== |
| Akt | =|PH|=|キナーゼ|= |
| Stat-91 | =======|SH3|SH2|= |
PLC-γ:フォスフォリパーゼC-γ、RasGAP:RasGTP分解酵素活性化タンパク質、PI3K85k:フォスファチジールイノシトール三リン酸キナーゼ85kサブユニット、SHPTP2:チロシンフォスファターゼ2、Sos:(son of sevenless)
- SH2ドメイン(Src相同2)
- 約100アミノ酸残基からなり、Src分子のあるドメインに相同性の高いドメインで、リン酸化チロシン残基(pTyr)を含む5〜10のアミノ酸残基からなるペプチド配列を認識して結合する。
- SH3ドメイン(Src相同3)
- 約60アミノ酸残基からなり、プロリン残基に富んだ10残基程度からなるペプチド配列を認識して結合する。
- PHドメイン(プレクストリン相同)
- 約100アミノ酸残基からなり、タンパク質以外にもPIP2と結合する。
- PIドメイン(リン酸化チロシン相互作用)
- 約200アミノ酸残基からなり、リン酸化チロシン残基(pTyr)を含むペプチド配列を認識して結合する。
Ras経路(MAPキナーゼ系)
受容体とGrb2がSH2ドメインを介して結合、Grb2はSH3ドメインを介してRasに特異的なグアニンヌクレオチド変換因子のSosのC末端のプロリンに富んだドメインに結合する。Grb-Sos複合体のSosにより、細胞膜に結合した状態で存在する不活性なGDP結合型RasがGTP結合型活性型に変換される。Grb2は直接受容体に結合する以外にアダプター分子(ShcやSHPTP2)を介して結合する場合がある。Sosにより活性化されたRas-GTPは、Rafの活性化→MAPKKの活性化→MAPKの活性化→標的タンパク質のリン酸化を行う。RasGTP分解酵素活性化タンパク質(RasGAP)は、Rasの機能を抑制する。PLC-γ経路(Cキナーゼ系)
PLC-γはSH2ドメインを介して受容体に結合すると、チロシンリン酸化され活性化して、PIP2をIP3とDGに分解する。IP3はCa2+を動員し、DGはCキナーゼを活性化する。PI3K経路(S6キナーゼ系)
PI3Kは85kサブユニットのSH2ドメインを介して受容体に結合する。触媒サブユニットのPI3K(110k)はPI→PI3P、PI4P→PI3,4P2、PI4,5P2→PI3,4,5P3を生成する。これらのリン酸化された脂質を介してAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)が活性化される。AktによりS6リボソームタンパク質キナーゼ(p70s6k)が活性化され、細胞周期に必要なタンパク質の翻訳を特異的に高める。Srcファミリー経路
SH2ドメインを介して受容体に結合し、チロシンキナーゼを活性化する。例えば、AFAP-110タンパク質がチロシンリン酸化され、SrcとAFAP-110とアクチンが結合し細胞骨格に影響する。また、Srcファミリータンパク質は、myc遺伝子の発現を誘導する。Jak/Stat経路
サイトカインの経路で、増殖因子(特にEGF,PDGF)でも活性化される。
サイトカイン受容体は、I型、II型、TNF受容体、TGF受容体などのファミリーに分けられる。
I型受容体の細胞外にはフィブロネクチンる。もうひとつにはIII型ドメイン様の繰り返し構造がある。そのひとつには4箇所のシステイン残基があTrp-Ser-X-Trp-SerブロネクチンIII型配列がある。
II型受容体は、インターフェロン受容体グループで、構造的にはI型と同じフィドメイン様構造だが受容体ファミリーのシステイン残基配置が異なる。I型、II型の細胞内にはBox1というJak結合領域がある。
TNF受容体の細胞外には多くの保存されたドメインをもつ、システイン残基を含む繰り返し構造からなり、細胞内には細胞死の誘導に必要なデスのもある。
TGF受容体ファミリーの細胞内にはセリンキナーゼドメインがある。I型受容体は、サブユニット構造により3つのサブファミリーに分けられる。
IL-3,GM-CSF,IL-5のサブファミリーは、それぞれに特異的なα鎖とこのサブファミリーに共通なβ鎖からなる。α鎖がリガンド結合能をもち、β鎖がシグナル伝達能をもつが、キナーゼ等の酵素活性はない。
IL-6,LIF,OSM,CNTF,IL-11のサブファミリーは、gp130サブユニットを共有する。さらにLIF,OSM,CNTFではgp130とLIF結合サブユニットの両方を共有する。シグナル伝達ではgp130のホモダイマー又はgp130とLIFのヘテロダイマーの形成が必要である。
IL-2,IL-4,IL-7,IL-9,IL-15のサブファミリーは、IL-2γ鎖を共有しIL-2とIL-15ではIL-2β鎖とγ鎖の両方を共有する。α鎖がリガンド結合能をもち、β,γ鎖がシグナル伝達能をもつ
各々のサイトカインにはたいてい1つの受容体しなく、比較的特異的な造血因子としてEPO(赤芽球),TPO(巨核球),IL-5(好酸球),G-CSF(好中球),M-CSF(マクロファージ)がある。
アデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase)は、ATPから2次メッセンジャーのcAMPを生成し,cAMPはAキナーゼ(プロテインキナーゼA、cAMP依存性タンパク質リン酸化酵素)を活性化する。活性化AキナーゼはATPを消費し,機能性蛋白質をリン酸化させ,その生理作用を発現させる.cAMPはホスホジエステラーゼで分解される。
ホスホリパーゼC(PLC)は細胞膜に存在するPIP2を加水分解し,IP3とDGを生成する.IP3は細胞質内を拡散し,小胞体のIP3受容体に結合し,小胞体からCa2+を放出させる.Ca2+は単独あるいはカルモジュリンを介して機能性蛋白質を活性化する.IP3はイノシトールへ分解され,再合成に利用される。一方,DGは、細胞膜に結合しているPKCを活性化する。PKCは、細胞膜に移動し、機能性蛋白質のセリン/スレオニン・リン酸化を行ったあと、タンパク質分解酵素(カルパインなど)により分解(ダウンレギュレーション)される。機能性蛋白質としてはMARCKS等がある。
- ・ホスホリパーゼ(PL)
- ホスホリパーゼは、A1,A2,C,Dの4種類があり、それぞれリン脂質を分解する位置が異なる。
[イノシトール]-D-[リン酸]-C-[グリセロール]=A1,A2=[脂肪酸]
脂質二重膜には、イノシトール以外に、セリン、コリンもある。- ・PLC
- β1〜4、γ1,2、δ1〜4の3つのファミリーがある。PLCβ1はGqαサブユニット、PLCβ2,3はGi、Goのβγサブユニットに結合する。PLCγはSH2ドメインをもつキナーゼ系受容体に結合する。PLCδは核内でのPIP2→IP3,DG産生を行う。
- ・プロテインキナーゼC
- PKCは、現在11の分子種からなるファミリーで、3つのグループに分かれる。「典型的Cキナーゼ群cPKC」(α、β1、β2、γ)はカルシュームとリン脂質(PS)の存在下でDGにより活性化される。「新規Cキナーゼ群nPKC」(δ、ε、η、θ、μ)はカルシュームに依存しない。「非典型的Cキナーゼ群aPKC」(ζ、i/λ)はカルシューム、DGに依存しない。
- ・細胞内Ca2+の動き
- Ca2+は単独あるいはCa結合蛋白(トロポニンC,カルモジュリン)に結合して,その生理作用を発現する.細胞内の遊離Ca2+濃度は10-7Mであるが,Ca2+チャネルからの流入,またIP3やCa2+自身によるCa貯蔵部からの放出によりCa2+濃度は高まる.細胞内のCa2+は,能動的に小胞体へ取り込まれたり,細胞外へくみ出される.Na+―Ca2+交換輸送は,3個のNa+と1個のCa2+を細胞内外で交換する.この系はエネルギーを消費しないが,細胞内に流入したNa+をくみ出すためにATPが消費される.電位依存性Caチャネルは筋や神経にあり,レセプター作動性Caチャネルは平滑筋や小胞体にある。
PI3Kは、85kサブユニットのSH2ドメインを介して受容体に結合する。触媒サブユニットのPI3K(110k)はPI→PI3P、PI4P→PI3,4P2、PI4,5P2→PI3,4,5P3を生成する。これらのリン酸化された脂質を介してAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)が活性化される。AktによりS6リボソームタンパク質キナーゼが活性化され、細胞周期に必要なタンパク質の翻訳を特異的に高める。
MAPKK-K(Raf-1,Mos,B-Raf)により不活性のMAPKKのセリン残基がリン酸化され活性化される。活性型MAPKKは、不活性のMAPKのチロシン残基とスレオニン残基をリン酸化し、活性化する。活性型MAPKは標的タンパク質のリン酸化を行う。MAPKにはTEY配列(MAPK)、TGY配列(p38/MPK2)、TPY配列(SAPK/JNK)の3つのファミリーがある。SAPK活性はT細胞のCD28シグナルに関与している。標的タンパク質としては、Elk-1(SRFと複合体を作る増殖因子),NF-IL6(IL-6発現調整因子)のなどの核内の転写因子や核外のp90rsk(セリン/スレオニン・キナーゼ、核内の転写因子NFのリン酸化)、cPLA2(細胞質ホスホリパーゼA2、アラキドン酸生成(アラキドン酸カスケード))がある。MAPキナーゼの不活性化では、MKP-1(MAP kinase phosphatase-1、ヒトではCL100)による脱リン化が考えられる。また、cAMPを介したシグナル伝達系が古典的MAPキナーゼカスケードの活性調整を行っている。
IFN受容体の細胞内領域にはJakキナーゼが結合している。受容体にIFNが結合するとJakキナーゼが活性化し、転写因子(Stat)をチロシンリン酸化する。チロシンリン酸化されたStatはダイマーを形成して核に移行し、遺伝子の発現を特異的に制御する。IFN-α、βの場合は、Jak1とTyk2がStat1とStat2のヘテロダイマーにp48(48kダルトン)のサブユニットが会合して転写制御を行う。IFN-γの場合は、Jak1とJak2がStat1のホモダイマーが転写制御を行う。
JakにはJak1,2,3,Tyk2の4つがあり、Jak3はリンパ球系、造血系に特異的に発現し、IL-3,GM-CSFはJak2、IL-2,IL-4はJak1,3、IL-6は全てのJakに結合する。
StatにはStat1〜6があり、C末端側にチロシン残基、そのN末端側にSH2ドメインがある。IL-2はStat5、IL-4はStat6、IL-3,GM-CSFはStat5を主に活性化する。
サイトカインによるStat活性化の特異性は、受容体自身が関与する。チロシンリン酸化された受容体にStatがSH2ドメインを介して引き寄せられ、それをJakが認識してリン酸化により活性化する。
抗原提示細胞のMHCに提示された抗原をTCRが認識すると、TCR細胞内領域に結合するチロシンキナーゼZAP70やFynを活性化する。続いてリン酸化チロシンを介して2つの方向に情報が伝達される。1つは、ホスホリパーゼCγ(PLCγ)の活性化を介してPIP2→IP3,DGからCa2+濃度上昇とPKC活性化がもたらされる。もう1つは、アダプタータンパク質(Src+Grb2+Sos)を介してRasが活性化→MAPキナーゼ活性化される。Ca2+濃度上昇は、Ca2+依存性プロテインフォスファターゼであるカルシニューリン(calcineurin)を活性化し転写因子NF-ATを脱リン酸化する。脱リン酸化された細胞質型NF-ATは核に移行する。他方PKCの活性化又はMAPキナーゼ活性化により核型NF-ATであるAP-1が誘導され、核に移行した細胞質型NF-ATとAP-1は複合体を形成し、DNAの特定のモチーフに結合してその下流のIL-2遺伝子の転写を亢進させる。ところでT細胞活性化にはTCRを介する刺激のみでは不充分で、同時に抗原提示細胞のB7とT細胞上のCD28分子との結合による副刺激経路からの補助的な刺激が必要である。
NF-AT(nuclear factor of activated T cells)
活性化T細胞転写因子で細胞質型と核型があり両者が結合して転写活性を示す。核型NF-ATはAP-1(c-Jun/c-Fos複合体)と同じ。
細胞は、血液細胞などの一部を除いて、細胞外基質や隣接する細胞と接着して、色々な組織を形成している。接着分子は、細胞膜に存在する貫通型の糖タンパク質で、外側では細胞外基質の成分や隣接する細胞の接着分子と結合し、内部では色々なタンパク質因子を介して細胞骨格に連結している。接着対象の認識・選別、機械的接合、情報の授受などの機能を持つ。インテグリン・ファミリー、カドヘリン・ファミリー、セレクチン・ファミリー、免疫グルブリン・スーパーファミリーなどが主なグループで、他にCD44・ファミリー、ロイシンリッチリピート・ファミリーなどもある。
- インテグリン(integrin)
- α鎖とβ鎖の組合せでできたヘテロ二量体で多くの種類がある。細胞外基質に対する主要な受容体で、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンなどと結合し、細胞-基質間の接着や情報伝達に関与している。
- カドヘリン(cadherin)
- 一量体の膜タンパク質で、他の細胞のカドヘリンとの間で結合を作る。この接着にはCa2+を必要とする。10種類以上のタイプがあり、特定のタイプを発現している細胞同士が選択的に強く結合する。
- セレクチン(selectin)
- 特定の糖鎖を認識して結合する領域をもつ。主に白血球、リンパ球、血小板の機能に関与している。
- 免疫グロブリン・スーパーファミリー
- 細胞外部分に免疫グルブリン類似の構造をもつグループ。その一つに神経細胞接着因子(NCAM:neural cell adhesion molecule)があり、Ca2+を必要としない。
- デスモソーム(desmosome)やアドヘレンス(adherent junction)=接着接合などがある。細胞膜の接着因子が貫通型として存在し、外側では細胞外基質の構成成分や隣接細胞の接着分子と結合し、内部では色々なタンパク質因子を介してアクチンフィラメントや中間径フィラメントに連結し情報を受け取っている。
- デスモソーム(desmosome)
- 細胞と細胞を繋ぎとめる働きをしている。含まれる接着分子はカドヘリン類で、細胞結合部位では両側の細胞膜直下に、膜骨格や連結因子が作る。接着斑(macula adherense)ともいう.隣接する細胞膜が厚くなっており,それぞれの細胞の内側にはアクチンが付着している.細胞間隙は約20nmであり,糖蛋白が含まれている.
- ヘミデスモソーム(hemidesmosome)
- 細胞を基底膜に付着させている構造物で,接着分子はインテグリン類である。デスモソームと同様の形態であるが,基底膜側には特別な構造物はない。
- 接着結合
- 細胞-細胞間(カドヘリン類)、細胞-細胞外基質間(インテグリン類)をアクチンフィラメントに固定するほか、外からの情報をアクチンフィラメントに伝え、細胞の運動機能にも関与する。
タイト結合と呼ばれ、腎尿細管や小腸粘膜上皮細胞の頭部よりの縁にある.この結合部分には細胞間の間隙がなく,細胞外液も含まれない。
隣接する細胞壁の間隙は約2nmであり,ここに多数のコネキシン(パイプ様の構造をしたチャネル,蛋白質)がある.コネキシンを通じてイオンや低分子物質が移動する.細胞内Ca2+やH+の増加によりコネクソンは閉じる.心筋や平滑筋の細胞間では電気的シナプスとして働き,活動電位の伝播に役立っている.
- モル(mol)
- :物質の量を表し,グラム分子量の単位で記す.
1mol=6×1023分子- モル濃度(mol/l)
- :溶液1l中の溶質をモル数で表した濃度.
- 当量(equivalent;Eq)
- :イオンのモル数をイオンの原子価で割った値.電気的にみたモルに相当する量である.通常はmEqを用いる.
Na+ 1Eq=23g/1=23g 、Ca2+ 1Eq=40g/2=20g- オスモル(osmole)
- :1モルの理想溶液と等しい浸透圧を示す濃度を1オスモルという.通常はm0smを用いる.血漿中の陽イオンと陰イオンの濃度の和から血漿浸透圧は300mOsm/lと算出されるが,実際の血漿浸透圧は290mOsm/lである.この差は,血漿が理想溶液ではなく,イオン相互干渉により自由に動ける粒子の数が減少することによる.
- pH(ペーハー)
- :−log[H+]、pH=7が中性
細胞(cell)、核(nucleus)、核膜(nuclear membrane)、核孔(nuclear pore)、核小体(nucleolus)、ミトコンドリア(mitochondria)、小胞体(endoplasmic reticulum:ER)、粗面小胞体(rough ER)、滑面小胞体(smooth ER)、真核生物(eukaryotes)、原核生物(prokaryotes)、細胞小器官(organelle)、ゴルジ体(Golgi body)、リボソーム(ribosome)、ポリソーム(polysome)、ポリリボソーム(polyribosome)、リソソーム(lysosome)、食胞(phagosome)、ペルオキシソーム(peroxisome)、ミクロフィラメント(microfilament)、ニューロフィラメント(neurofilament)、微小管(microtubule)、チューブリン(tubulin)、中間径フィラメント(intermadiate filament)、細胞膜(cell membrane)、形質膜(plasmal membrane)、リン脂質(phospholipids)、拡散(diffusion)、濾過(filtration)、浸透(osmosis)、担体(carrier)、促進拡散(facilitation diffusion)、能動輸送(active transport)、エクソサイトーシス(exocytosis)、エンドサイトーシス(endocytosis)、共輸送体(symptor)、シグナル伝達(signal transduction)、リガンド(ligand)、受容体(receptor)、カルシニューリン(calcineurin)、生殖細胞(germ cell)、体細胞(somatic cell)、染色体(chromosome)、酵素(enzyme)、基質(substrate)、複製(replication)、翻訳(translation)
AC:アデニル酸シクラーゼ(adenylate
cyclase)
cAMP:サイクリック・アデノシン・3’,5’一リン酸(cyclic
adenosine 3',5'-monophosihate)
Cdc:細胞分裂サイクル(cell division
cycle)
Cdk:サイクリン依存性タンパク質キナーゼ(Cyclin-dependent
kinase)
cGMT:サイクリックグアノシン一リン酸(cyclic
guanosin 3',5'-monophosihate)
CNTF:繊毛性神経栄養因子(ciliary neurotrophic
facter)
cPLA2:細胞質フォスフォリパーゼA2(cell
phospholipase A2)
CSF:コロニー刺激因子(colony
stimulating facter)
DG,DAG:ジアシル・グリセロール(diacylglycerol)
DNA:デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic
acid)
EDRF:内皮由来弛緩因子(endthelium
derived relaxing factor)
EGF:表皮細胞増殖因子(epidermal growth
facter)
EPO:エリスロポエチン(erythyopoietin)
ERK:細胞外シグナル制御キナーゼ(extracellular
signal-regulated kinase)
FGF:繊維芽細胞増殖因子(fibroblast
growth facter)
GAP:GTP分解酵素活性化タンパク質(GTPase
activating protein)
GDI:GDP/GTP交換反応抑制タンパク質(GDP/GTP
dissociation inhibitor)
GDP:グアノシン二リン酸(guanosine
diphosphase)
GDS:GDP/GTP交換反応促進タンパク質(GDP
dissociation stimulator)
GEP:GDP/GTP交換反応促進タンパク質(GDP/GTP
exchange protein)
Grb2:成長因子受容体結合タンパク質
GTP:グアノシン三リン酸(guanosine
5'-triphosphase)
GTPase:グアノシン三リン酸分解酵素(guanosine
triphosphatase)
HGF:肝細胞増殖因子(hepatocyte growth
facter)
IFN:インターフェロン(interferon)
IGF:インスリン様増殖因子(insulin-like
growth factor)
IL:インターロイキン(interleukin)
IP3:イノシトール1,4,5三(トリ)リン酸(inositol
1,4,5-triphosphate)
IP(3)K
:ホスファチジルイノシトール3
−ヒドロオキシンキナーゼ
IRS-1:インスリン受容体基質1(insulin
reseptor substrate1)
Jak:ジーナス・キナーゼ(janus kinase)
JNK:Jun-N 末端キナーゼ
LIF:白血病細胞阻止因子(leukemia
inhibitory facter)
lysoPA:リゾフォスファジン酸
MAPK:増殖因子(マイトジェン)活性化タンパク質キナーゼ(mitogen-activated
protein kinase)
MAPKK:MAPキナーゼキナーゼ(MAP kinase
kinase)=MEK
MARCKS:ミリスチン化されたアラニンが多いCキナーゼ基質(myristinated
alanine-rich C kinase substrate)
MEK:MAP キナーゼ−ERKキナーゼ
MKP-1:MAPキナーゼフォスファターゼ1(MAP
kinase phosphatase 1)
NMDA:N-メチル-D-アスパラギン酸(N-methyl-D-aspartic
acid)
mRNA:伝令RNA(messenger ribonucleic acid)
OSM:(oncostrainM)
PAF:血小板活性化因子
PC:コリンリン脂質(phospatidylcholine)
PDGF:血小板由来増殖因子(platelet-derived
growth facter)
PI:イノシトールリン脂質(phospatidylinositol)
PIP:ホスファチジルイノシトール4リン酸PI4P(phospatidylinositol
4-phosphate)
PIP2:ホスファチジルイノシトール4,5二(ビス)リン酸PI4,5P2(phospatidylinositol
4,5-diphosphate)
PIP3:ホスファチジルイノシトール3,4,5三リン酸PI3,4,5P2(phospatidylinositol
3,4,5-triphosphate)
PKA:タンパク質リン酸化酵素A[プロテイン・キナーゼA]
PKC:タンパク質リン酸化酵素C[プロテイン・キナーゼC](protein
kinase C)
PLC:ホスホリパーゼC(phospholipase C)
PS:セリンリン脂質(phospatidylserine)
Ras :ras 遺伝子産物
SAPK:ストレス活性化タンパクキナーゼ
SCF:幹細胞因子(stem cell facter)
SEK:SAPK /ERK キナーゼ
SH2:Src相同2ドメイン(Src homology2
domain)
SHPTP:SHドメインを持つチロシンフォスファターゼ(SH-protein
tyrosine phosphatase)
Sos:son of sevenless
Smg:低分子量タンパク質(smoll
G-protein)
SRF:(serum responce facter)
Stat:(signal transducer and activater of
transcription)
TGF:トランスフォーミング増殖因子(transforming
growth factor)
TNF:腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)