多発性骨髄腫 Multiple Myeloma(MM)
研究ノート


■1. 概要(Introduction)

 多発性骨髄腫(マルチプル・ミエローマ)は、Bリンパ球系の最終分化細胞である形質細胞(プラズマセル)が、単クローン性で腫瘍性に増殖している造血器腫瘍の一つである。骨髄に局在しながらも各所の骨髄内に多発するために多発性骨髄腫と命名されている。

 形質細胞は、白血球の一種であるBリンパ球から分化・成熟した細胞で、身体に侵入したウイルスや細菌などの外来異物を排除する作用をもつタンパク質(抗体免疫グロブリン)を産生する細胞である。この形質細胞が腫瘍(がん)化する疾患を一般的に形質細胞性腫瘍と言い、形質細胞の単クローン性(腫瘍性)増殖と、その産物としての単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)増加によって特徴づけられる。

 骨髄腫細胞は、骨髄形質細胞が単クローン性に増殖したものとされてきたしかし、最近骨髄腫患者の末梢血中に骨髄腫前駆細胞が存在することが示唆されており、またこの骨髄腫前駆細胞が骨髄腫の進展にも深く関与している可能性が示唆されている。骨髄腫前駆細胞を検出する方法としては、抗イデオタイプ抗体による免疫学的方法、フローサイトメトリー法をもちいてDNA量を調べる方法、細胞表面形質を調べる方法、免疫グロブリン再構成を調べる方法、免疫グロブリン重鎖遺伝子のCDR3を用いた解析法などがある。これらの結果、現在ではB細胞やpre-B細胞が骨髄腫クローンに属していることが報告されている。

 がん化した形質細胞が限局した腫瘍(腫瘤)をつくった場合には、形質細胞腫と呼び、骨にできる孤立性形質細胞腫と、骨以外の部位にできる髄外性形質細胞腫の2つに分けられる。

 症状の特徴は、骨髄に骨髄腫細胞が蓄積し、造血機能や骨・臓器などへ影響を及ぼすことに起因している。

  臨床病期U〜V期の症例では通常治療が行われ、治療開始後は平均生存期間は約3年、10年以上の生存率は約3〜5%前後と報告されることが多く、長期予後が難しい疾患であるのが現状である。 M蛋白量の早期増加や,貧血,骨破壊,腎障害の進行,β2ミクログロブリンの高値,高カルシウム血症などを呈する症例は、予後不良である。

単クローン性高ガンマグロブリン血症には下記の疾患があり、骨髄腫は、その中の代表的疾患である。

  1) 意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)

  2) 多発性骨髄腫(MM)、無痛性骨髄腫(IM)、くすぶり型骨髄腫(SM)

  3) 高マクログロブリン血症 (ワルデンストローム病)

  4) 重鎖病

  5) クロー・フカセ症候群 (高月病, 骨硬化性骨髄腫, POEMS*)

*P(多発性神経傷害), O(臓器巨大症), E(内分泌傷害), M(M蛋白), S(皮膚変化) 


多発性骨髄腫(MM; multiple myeloma)、形質細胞疾患(PCD; plasma cell dyscrasia)、形質細胞性腫瘍(plasma cell malignancies)、形質細胞腫(plasmacytoma)、孤立性形質細胞腫(solitary plasmacytoma)、前駆細胞(precursor cell)、イデオタイプ(idiotype)、フローサイトメトリー法(flowcytometry)、CDR3complementarity determining region-3)単クローン性高ガンマグロブリン血症(monoclonal gammopathy)、意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS: Monoclonal gammopathy of undetermined significance)、無痛性骨髄腫(Indolent myeloma)、くすぶり型骨髄腫(Smoldering myeloma)、高マクログロブリン血症(Macroglobulinemia)、ワルデンストローム病(Waldenstrom disease)、重鎖病(Heavy chain disease)、クロー・フカセ症候群(Crow-Fukase syndrome)、高月病(Takatsuki disease)、骨硬化性骨髄腫(osteosclerotic myeloma)、多発性神経傷害(polyneuropathy)、臓器巨大症(organomgaly)、内分泌傷害(endocrinopathy)、皮膚変化(skin changes)