多発性骨髄腫 Multiple Myeloma(MM)
研究ノート


■2. MM研究の歴史(History)

1844年:
Samuel Sollyが、軟化性骨症(mollities ossium)として最初のMM症例(Sarah Newbury)を報告。
Solly S: Remarks on the pathology of mollities ossium with cases. Med-chir Tr 27: 435-461,1844
1845年:
William Macintyre が Thomas Alexander McBean という患者を診断し、尿中に異常蛋白を発見。
1846年:
John Dalrymple が、剖検所見で骨病変部に特異的な細胞(形質細胞)の存在を発見。
Dalrymple J: On the microscopical character of mollities ossium. Dublin Quart J Med Sci 2: 85-95,1846
1848年:
Bence Jones が、Macintyreが発見した尿の異常現象の分析結果を発表。
Bence Jones H: On a new substance occurring in the urine of a patient with mollities ossium. Phil Trans Royal Soc (London) 1: 55-62,1848
1850年:
Macintyre が、尿の異常現象を含む詳細なデータを発表。
Macintyre W: Case of mollities and fragilitas ossium, accompanied with urine strongly charged with animal matter. Med Chir Soc Trans 33: 211-232,1850
1873年:
Rustizky が骨髄の多数の独立した腫瘤を見て「多発性骨髄腫」の病名を初めて使用した。
von Rustizky J: Multiples Myeloma. Deuts Ztschr Chir 3: 162-172,1873
1889年:
Otto Kahler がMMになった46歳の医者の詳細な臨床像を発表、“Kahler 病”とも呼ばれるようになった。
Kahler O: Zur Symptomatologie des multiplen myelomas: Beobachtung von Albumosurie. Prag Med Wchschr 14: 45,1889
1890年:
Ramon Y Cajal が形質細胞の顕微鏡像を発表。
1895年:
Marschalko が形質細胞を同定。
Marschalko T: Ueber die sogenannten Plasmazellen, ein Beitrag zur Kenntniss der Herkunft der entzundlichen Infiltrationszellen. Atch Dermatol 30: 241,1895
1898年:
Weber が骨髄がベンスジョーンズ・タンパクの産生場所であることを証明。
1900年:
Wright が骨髄腫細胞が形質細胞に由来することを発見。
Wright JH: A case of multiple myeloma. Johns Hop Hosp Rep 9: 359-366,1900
1903年:
Weber がX 線像に現われる骨髄腫の骨疾患(溶解性骨病変)に着目。
1909年:
Weber が骨髄の形質細胞が骨破壊を引き起こすことを示した。
1915年(大正4年):
瀬尾貞信の報告。
1916年(大正5年):
呉健、立花惣介の報告。
1917年:
Jacobson が循環血液中にベンスジョーンズ・タンパクを認めた。
1921年:
Walters がベンスジョーンズ・タンパクは血中に由来すると結論。
1922年:
Bayne-Jones & Wilson が2種類のベンスジョーンズ・タンパクを同定した。
1924年:
Svedberg による超遠心法の開発。
1928年:
Geschickter & Copekand がMM13例と1848年以降の412例の再調査を報告。
1929年:
Arinkin により骨髄穿刺が初めて用いられた。
Arinkin MI: Die intravitale Untersuchungsmethodik des Knochenmarks. Folia haematol 38: 233-241,1929
1931年:
Magnus-Levy がアミロイドーシスを報告。
1933年:
Wright がMMが骨髄の形質細胞から生まれることを特筆した。
1937年:
形質細胞よりグロブリンが産生されることが明らかになる。
1937年:
Tiselius による電気泳動法の開発。
Tiselius A: Electrophoresis of serum globulin. II.Electrophoretic analysis of normal and immune sera. Biochem J 31: 1464-1477,1937
1938年:
Rosenthal と Vogel が骨髄穿刺が有効なことを報告。
Rosenthal N, Vogel P: Value of the sternal puncture in the diagnosis of the multiple myeloma. Mt Sin J Med 4: 1001-1019,1938
1947年:
Snapper がスチルバミビン誘導体による疼痛緩和を報告(14/15例)、しかしその後の研究で効果は確認されていない。
Alwall がMM治療にウレタンを初めて使用した。
1950年:
Thorn らが副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の有効性を初めて報告した。
1953年:
Grabar & Williams による免疫電気泳動法の開発。単クローン性Mタンパクの同定が可能になった。
1956年:
Korngold とLipari は、ベンスジョーンズ・タンパクは、血清タンパクの異常と同様に、血清ガンマグロブリンと関係があることに着目。彼らにちなんで軽鎖の分類はカッパ(κ)型、ラムダ(λ)型と呼ばれるようになる。
1957年:
Longsworth らは、電気泳動法をMMに適用し"charch spire" ピークを記述。
1958年:
Blokhin らがファニル・アラニン・マスタードのd-/l-イソマーのラセミ体であるサルコリシン(sarcolysin)の治療効果(3/6例)を報告。
その後、l-イソマーに抗MM効果があることが分り、メルファラン(アルケラン)開発された。
1960年:
Edelman & Gally が免疫グロブリンの構造を解明。
1961年:
Waldenstrom は単クローン性と多クローン性免疫グロブリン血症の違いを重視し、IgM単クローン性タンパクとマクログロブリン血症を関連付け、骨髄腫の分類から除外する。
1962年:
Edelman & Galley がベンスジョーンズ蛋白の本態を発表。
Edelman GM, Galley JA: The nature of Bence-Jones proteins:chemical similarities to polypeptide chains of myeloma globulins and normal r-globulins. J Exp Med 116: 207-227,1962
1962年:
Bergsagel がメルファラン投与による成功例(14/24例)を初めて報告。
Bergsage DE, et al: Evaluation of new chemotheraprutic agents in the treatment of multiple myeloma. IV.L-phenylalanine mustard (NSC-8806). Cancer Chemother Rep 21: 87-99,1962
1964年:
Korst がシクロホスファミド(エンドキサン)による治療成功例を初めて報告。シクロホスファミドの治療効果はメルファランと同等であることが示された。
1965年:
Rowe & Fahey がIgD型骨髄腫を初めて報告。
Rowe DS, Fahey JL: A new class of human immunoglobulins. 1. A unique myloma protein. J Exp Med 121: 171-184,1965
1966年:
Holland らがウレタンとプラセボの無作為化対照試験(83例)を行い、プラセボ群が生存期間が良い(5か月対12か月)こと報告した。
1967年:
Johansson & Bennich がIgE型骨髄腫を初めて報告。
Johansson SOG, Bennich H: Immunological studies of an stypical (myeloma) immunoglobulin. Immunology 13: 381-394,1967
1969年:
Alexanian によるメルファランとプレドニゾロンの併用はメルファラン単剤より有効であることを報告。
Alexanian R, et al: Treatment for multiple myeloma. JAMA 208: 1680-1685,1969
1975年:
Durie / Salmon の病期分類が発表される。病期による化学療法のベネフィットが評価されるようになる(I,II,III,A またはB )。
Durie BGM, Salmon SE: A clinical staging system for multiple myeloma: Correlation of measured myeloma cell mass with presenting clinical features, response to treatment and survival. Cancer 36: 842-854,1975
1976年:
利根川博士らによる免疫グロブリンの遺伝子再編成機構の解明。
Hozumi N, Tonegawa S: Evidesnce for somatic rearrangement of immunoglobulin genes coding for variable and constant regions. Proc atl Acad Sci USA 73: 3628-3632,1976
1976年:
Alberts らがドキソルビシンの再発難治例に対する効果(10%)を報告。
1977年:
Alexanian らがビンクリスチン含有レジメンの有用性を報告。
1979年:
Mellstedt らがIFNの有用性を報告。
1976- 1992年:
M2プロトコール(VBMCP)、VMCP-VBAP、ABCM などの併用療法が検討される。
1979- 1980年:
ラベリングインデックス(増殖分画分析)が骨髄腫および関連する疾患の検査に導入される。
1982年:
Feter,Osserman により双生児間の移植が行われる
1983年:
McElwen らによるメルファラン大量療法の報告。
McElwen TJ, et al: High-dose intravenous melphalan for plasma-cell leukemia and myeloma. Lancet 2: 822-824,1983
1983年:
Battaille とDurie により血清β2 ミクログロブリン値が予後因子として用いられる。
1984年:
Barlogie とAlexanian がVAD 療法について発表。
1984- 1986年:
多くの研究者によって同種移植に関する研究発表が行われる。
1986- 1996年:
多くの臨床試験において自家の骨髄または造血幹細胞移植を伴う大量療法が検討される。一回移植と二回移植がそれぞれMcElwain とBarlogie によって導入される。
1992年:
Gregory らがCCT対MPの比較メタアナリシスを発表。生存期間は同等であることが示される。
1996年:
Attal により骨髄移植を伴う大量療法と標準化学療法を比較した最初で、現時点では唯一の無作為化試験のデータを発表。パミドロネート(アレディアT M)対プラセボの無作為化比較試験においてアレディアの投与は骨関連事象の発現の減少に寄与したことが示される。
1997年:
MM患者の骨髄中の樹状細胞にHHV-8が検出される。SV40 (癌)に特異的なRNA が血中で検出される。
1999年:
Barlogie らによる自家幹細胞移植の成績報告。
Barlogie B, et al: Total therapy with tandem transplants for newly diagnosed multiple myeloma. Blood 93: 55-65,1999
1999年:
Singhal らによるサリドマイドの有効性報告。
1999年:
ミニ移植の導入。フランスの一回と二回(自家)移植の検討。ホルミウム骨放射線治療薬が導入。
2000年:
サリドマイド類似体(商品名:Selcid、Imids)、長時間作用型のアドリアマイシン類似体(Doxil)、三酸化砒素(ATO)、血管新生阻害薬(VEGF チロシンキナーゼ阻害薬)、細胞接着阻害薬、Beta -alethin (Beta-LT)、プロテアソーム阻害薬(VELCADE)が導入。
2001年:
Gahrton らによる同種幹細胞移植の成績報告。
Gahrton G, et al: Progress in allogeneic bone marrow and peripheral blood stem cell transplantation for multiple myeloma; a comparison between transplants performed 1983-93 and 1994-98 at European Group for Blood and Marrow Transplantation centers. Br J haematol 113: 209-216,2001
2001年:
骨髄腫と関連疾病の新たな分類体系の提案。新たな予後因子、病期分類が発表。SWOGは血清β2 ミクログロブリンと血清アルブミン値を基に四群に分類。一方、IFMは血清β2 ミクログロブリンとFISH 法による13 番染色体の欠損の有無を基に三群に分類。
2002年:
サリドマイドとデキサメタゾンの併用において約70%の奏効率が報告。英国MRCがASHで自家移植の試験結果発表。
2003年:
VELCADEがFDAにより承認される。