多発性骨髄腫 Multiple Myeloma(MM)
研究ノート


■4. MMのバイオロジー

● 腫瘍起源

Bリンパ球の成熟過程

形質細胞の腫瘍化

● 遺伝子異常

遺伝子転座

核型不安定性

遺伝子異常を基にした分類

● 増殖機序

● 骨破壊機序

● サイトカインと細胞信号伝達系

● 接着分子


● 腫瘍起源

Bリンパ球の成熟過程

  1. 骨髄中の造血幹細胞より分化したBリンパ球系幹細胞が、Ig遺伝子の再構成つまりIgH遺伝子D,J領域が再構成を起こし、代替軽鎖(VpreBおよびλ5)の発現が認められるプロB細胞になる。
  2. IgH遺伝子のみ再構成 (VDJ)を完了し、細胞表面にIg重鎖と代替軽鎖の複合体であるプレB細胞受容体を発現するプレB細胞になる。
  3. Ig重鎖および軽鎖遺伝子両方とも再構成を完了し、Ig分子を細胞表面に発現しているB細胞になる。
  4. B細胞はリンパ節などの末梢リンパ組織に出て、対応する抗原に遭遇すると活性化され、胚中心B細胞(CD38+)となる。
  5. Ig遺伝子可変領域の変異により抗原親和性の高いIg分子を持つ胚中心B細胞が選択され、Ig重鎖遺伝子定常部のクラススイッチを起こした後、記憶B細胞形質細胞へと分化する。
  6. 形質細胞へと運命付けられた細胞は、リンパ組織に留まる短寿命形質細胞とリンパ組織を離れ末梢血を通り,骨髄へホーミングする長寿命形質細胞に分れる。長寿命形質細胞は前駆形質細胞(CD38++、VLA-5-、MPC-1-)になって骨髄にホーミングする。
  7. 前駆形質細胞の多くは、未熟型形質細胞(CD38+++、VLA-5-、MPC-1-)→中間型形質細胞(CD38+++、VLA-5-、MPC-1+)→成熟型形質細胞(CD38+++、VLA-5+、MPC-1+)へと成熟していく。

形質細胞の腫瘍化

骨髄腫細胞の起源としては骨髄内の未熟型形質細胞レベルの細胞(未熟骨髄腫細胞)が想定されている。また、骨髄腫細胞の不均一性の存在、つまり未熟型、中間型および成熟型の存在、さらに増殖因子IL-6に反応して増殖しているのは未熟骨髄腫細胞(CD38++,CD19-,CD56+,MPC-1-,CD45+,CD49e-)であることなどが明らかになっている。

骨髄腫細胞は、細胞表面抗原の解析により、未熟、中間型、成熟骨髄腫細胞に分類できる。未熟骨髄腫細胞は、IL-6に反応して増殖し、骨髄腫前駆細胞と考えられる。骨髄腫の癌化にCD19抗原の消失が関与している可能性があり、これを制御しているPax-5遺伝子の発現欠失の機序の解明が注目される。Pax-5遺伝子は、B細胞系の分化段階を通して発現し、転写因子BSAP(B cell-specific activator protein)をコードし、Pax-5は正常のB細胞分化を担う責任遺伝子だと考えられている。B細胞分化に重要な役割を果たしている転写因子BSAP(Pax-5遺伝子産物)が、骨髄腫細胞で特異的に発現が消失していることから、Pax-5遺伝子の発現の変異がヒト形質細胞の腫瘍化に関連する可能性が示唆された。このほかにも多数の因子が関与すると言われている。

腫瘍細胞から遊離される物質(破骨細胞刺激因子OAF)が破骨細胞を活性化することによって、全身的な骨の融解が起こる。造血が行なわれている赤色髄に腫瘍細胞が存在する部位に生じる。RANKLは、骨芽細胞およびストローマ細胞から産生されるTNFファミリーのサイトカインであり、破骨細胞分化因子(ODF)、TRANCEあるいはOPGLとも呼ばれている。分子量は約35kDaで、その細胞外ドメインは、TRAIL,FasLおよびTNFと相同性が高い。ヒトRANKL遺伝子は、染色体13q14に位置する。

骨髄腫細胞の増殖には、IL-6がIL-6受容体に結合してその下流にシグナル伝達(STAT3,MAPK活性化)が起こるだけでは不十分であり、src型チロシン・キナーゼの活性化が必須である。src型チロシン・キナーゼが活性化された状況(cellular context)においてのみ、骨髄腫細胞はIL-6により増殖反応を示す。受容体型チロシン・キナーゼの活性化によっても同じようなcellular contextが誘導できるのかも知れない。

「MMの多段階がん化:その分子的描写」(名古屋市立大学:飯田真介博士)
Iida S, Ueda R.
Multistep tumorigenesis of multiple myeloma: its molecular delineation.
Int J Hematol. 2003 Apr;77(3):207-12. Review. PMID: 12731662 [
PubMed]

MMは最終分化B細胞に影響する不治の悪性新生物である。全MM例のおよそ3分の1が先にMGUSあるいはくすぶり型骨髄腫を経るので、MMは胚中心B細胞後の細胞に由来し、多段階がん化の結果として進展する。MMは最終的に骨髄外浸潤の形、あるいは二次性形質細胞白血病になる。この臨床経験を説明するため研究者達は、複雑な染色体の転座/欠失によって支持される内因性染色体不安定性がMGUSからMMへの進展に重大な役割を果たすことを報告した。代表的な異常には、14q32領域を含む染色体再構成と13番染色体長腕の欠失がある。MM自体の増悪への寄与は、ゲノム不安定性と特定の遺伝子プロモータの変異メチル化である。前者は、RASとFGFR3のような特定の癌遺伝子の活性化、あるいはp53の不活性化の原因となり、後者は、p16を含む癌抑制遺伝子の不活性化の原因となる。これらの分子事象の各々についての正確な理解は、明らかに、全MM患者の細胞中に見られる異常機能シグナル経路の違いに基づいた特定分子標的治療法の開発を助けるはずである。

「正常形質細胞と悪性形質細胞の生存・増殖因子」
Klein B,et al.
Survival and proliferation factors of normal and malignant plasma cells.
Int J Hematol. 2003 Aug;78(2):106-13. PMID: 12953803 [
PubMed]

14年前、Kawano博士Klein博士のグループによる骨髄腫細胞増殖因子としてのIL-6の最初の同定以来、生体内の悪性形質細胞の出現において、また正常な形質細胞の形成において、多くの研究でその主要な役割が強調された。次の4つの転写因子がB細胞の形質細胞への分化をコントロールする。B細胞転写因子pax-5 は、B細胞表現型の主な因子であり、bcl-6 は、形質細胞転写因子blimp-1 および形質細胞分化を抑制する。bcl-6 発現はCD40IL-4活性化によって誘発される。CD40IL-4活性化の欠失は、bcl-6 発現に負の調節を生じる。また、IL-6の刺激は、主にSTAT3の活性化を通してblimp-1 に正の調節を生じる。blimp-1 はさらにbcl-6 およびpax-5 の発現を負に調節し、形質細胞分化を可能にする。IL-10と同様にIL-6XBP-1を正に調節する。XBP-1は形質細胞分化に関係し、その遺伝子発現がpax-5 によってシャット・ダウンされる別の転写因子である。形質細胞転写因子blimp-1 およびXBP-1は正に調節される。また、B細胞転写因子bcl-6 およびpax-5 はB細胞と比べて悪性細胞では負に調節される。最近の同定されたこれらの4つの転写因子の他に、正常形質細胞生成に関係している因子はほとんど不明である。悪性形質細胞に関して、次の3つのカテゴリーの増殖因子が同定された。(1) JAK/STATおよびMAPK経路を活性化するIL-6ファミリー・サイトカイン、IL-10およびIFN-α。;(2)JAK/STAT経路と異なったPI3K/AKTおよびMAPK経路を活性化する増殖因子(IGF-1HGF、シンデカン-1・プロテオグリカンに結合可能なEGFファミリーメンバー)。(3)核因子KBおよびPI3K/AKT経路を活性化する、BAFFB(細胞活性化因子)あるいはAPRIL(増殖誘導リガンド)。BAFFAPRIL、BAFFレセプターとTACIに結合し、主要なB細胞生存因子である。最近のデータは、これらの様々な増殖因子が、ともに局所化され、カベオリン蛋白が結合した膜カベオラ構造における細胞質形質導入要素をもつので、最適なシグナリングの提供に協力するかもしれないことを示している。これらの骨髄腫細胞増殖因子および関連する形質導入経路の同定は、多発性骨髄腫における新しい治療標的を提供する。

「マイクロアレイ発現分析を使用したMGUSからMMへの多段階変異に関する考察」
Davies FE, et al.
Insights into the multistep transformation of MGUS to myeloma using microarray expression analysis.
Blood. 2003 Dec 15;102(13):4504-11. Epub 2003 Aug 28.
PMID: 12947006 [
PubMed]

正常形質細胞(PC)のMGUSとMMへの多段階変異プロセスの中で重要な特定の経路を知るために、我々は、健康ドナー5例(N)、MGUS患者7例(MGUS)、および初診MM患者24例(MM)からのPCにマイクロアレイ分析を適用した。全サンプルに渡って大きな変化があった125個の遺伝子を使用した非管理階層クラスタリングでは、2つのグループ(NとMGUS/MM)を定義した。管理分析では、NとMGUS間で発現が異なる263個の遺伝子、およびNとMM間で発現が異なる380個の遺伝子を識別した。さらにそのうち197個は、NとMGUS間で調節が異なっていた。74個の遺伝子だけが、MGUSとMMのサンプル間で発現が異なっており、MGUSとMM間の違いはNとMM間あるいはNとMGUS間より小さいことを示している。発現が異なる遺伝子には、癌遺伝子/癌抑制遺伝子(LAF4、RB1およびDH2)、細胞シグナル遺伝子(RASファミリーメンバー、B細胞シグナルとNF-kB遺伝子)、DNA結合転写因子遺伝子(XBP1、ジンクフィンガー蛋白、フォークヘッドボックスおよびリングフィンガー蛋白)および増殖遺伝子(WNTとSHH経路)を含んでいた。遺伝子発現プロファイリングによりMMの分子的病因を理解することは、Nから悪性PCへの連続する遺伝子変化を実証し、MGUSからMMへの変異に関係する重要な経路を強調する。

「大量化学療法を受けるCD45陰性MM患者はCD45陽性MM患者よりも生存期間が短い」
Moreau P, et al.
Patients with CD45 negative multiple myeloma receiving high-dose therapy have a shorter survival than those with
CD45 positive multiple myeloma.
Haematologica. 2004 May;89(5):547-51. PMID: 15136217 [
PubMed]

「メイタンシノイド免疫結合剤huN901の生体外および生体内のCD56+MM細胞に対する活性」
Tassone P, et al.
In vitro and in vivo activity of the maytansinoid immunoconjugate huN901-N2'-deacetyl-N2'-(3-mercapto-1-oxopropyl)-maytansine against
CD56+ multiple myeloma cells.
Cancer Res. 2004 Jul 1;64(13):4629-36. PMID: 15231675 [
PubMed]

Mahmoud MS, et al.
Altered expression of Pax-5 gene in human myeloma cells.
Blood. 1996 May 15;87(10):4311-5. PMID: 8639790 [
PubMed]

Lin P, et al.
Flow cytometric immunophenotypic analysis of 306 cases of multiple myeloma.
Am J Clin Pathol. 2004 Apr;121(4):482-8.
PMID: 15080299 [
PubMed]

CD56 (71.7%+6.3%), CD117(17.8%+2.2%), CD20(9.3%+3.7%), CD45(8.8%+2.9%), CD52(5.2%2.6%), CD19-negative(>99%)..

Santonocito AM, et al.
Flow cytometric detection of aneuploid CD38(++) plasmacells and CD19(+) B-lymphocytes in bone marrow, peripheral blood and PBSC harvest in multiple myeloma patients.
Leuk Res. 2004 May;28(5):469-77. PMID: 15068900 [
PubMed]


● 遺伝子異常

染色体転座

MM細胞では、IgH遺伝子座(14q32)又はIgL遺伝子λ座(22q11)に切断点を有する染色転座が多く認められる。なおIgL遺伝子κ座(2p12)の転座は稀である。Bergsagel博士は、ヒト骨髄腫細胞株(HMCL)サンプル39例中にIgH転座36/39(92%)複数のIgH転座17/39(44%)IgL(λ)転座7/30(23%)があったことを報告している[1]特に14q32転座はFITH解析によりMGUS症例で50-60%に、MM症例で75-96%に認められ、複数の14q32転座を有する例も見られる[2,3]

14q32座の切断点がIgH遺伝子のスイッチ領域内に存在しB細胞特異的なメカニズムで転座が生じたと考えられる原発性転座とスイッチ領域外で起こり染色体不安定性の関与がより強い2次性転座がある[4,5]。原発性転座にはCCND1(11q13),FGFR3(4p16),CCND3(6p21)、c-MAF(16q23)との転座があり、2次性転座にはMUM1/IRF4(6p25),MAFB(20q11),IRTA2(1q21),c-MYC(8q24)などとの転座がある。

染色体転座 責任遺伝子 MGUS/SMM 初診MM 進行MM/細胞株 備考
t(11;14)(q13;q32) CCND1 20-35% 20-30% 25-50% 予後良
t(6;14)(p21;q32) CCND3 - 5% 5%  
t(4;14)(p16;q32) FGFR3,MMSET 1.5-9% 15-20% 24% 予後不良
t(14;16)(q32;q23) c-MAF 5% 5% 24% 予後不良
t(14;20)(q32;q11) MAFB Rare 5% 5%  
t(6;14)(p25;q32) MUM1/IRF4 Rare 5-19% 17.6%  
t(8;14)(q24;q32) c-MYC - 15% >50%  
t(1;14)(q21;q32) IRTA2 Rare Rare 12%  

FGFR3, fibroblast growth factor receptor 3; MUM1/IRF4, multiple myeloma oncogene 1/interferon regulatory factor 4; IRTA, immune receptor translocation-associated gene; PAX5, paired box gene; MLL1, mixed lineage leukaemia 1.

14q32転座の種類によって治療の層別化を行うことが考えられ[6] 、t(11;14)(q12;q32)転座を有する症例は比較的緩慢な経過で進行し通常化学療法でも予後が良好であるが大量化学療法の有効性が高いという報告がある[7,8]。一方、t(4;14)(p16;q32)とt(14;16)(q32;q23)転座有する症例は予後不良で大量化学療法の有効性も低いという報告がある[8,9]

[1] William S. Dalton, et al. Multiple myeloma. Hematology, Jan 2001; 2001: 157 - 177.

[2] Nishida K, et al. The Ig heavy chain gene is frequently involved in chromosomal translocations in multiple myeloma and plasma cell leukemia as detected by in situ hybridization. Blood 1997; 90: 526.

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[4] Kuehl WM, Bergsagel PL. Multiple myeloma: evolving genetic events and host interactions. Nat Rev Cancer 2002; 2: 175.

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[6] Avet-Loiseau H, et al. Oncogenesis of multiple myeloma: 14q32 and 13q chromosomal abnormlities are not randomly distributed, but correlate with natural histry, immunological features, and clinical presentation. Blood 2002; 99: 2185.

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[8] Moreau P, et al. Recurrent 14q32 translocations determinthe prognosis of multiple myeloma, especially in patients receiving intensive chemotherapy. Blood 2002; 100: 1579.

[9] Keats JJ, et al. In multiple myeloma, t(4;14)(p16;q32) is an adverse prognostic factor irrespective of FGFR3 expression. Blood 2003; 101: 1520.

一次転座と二次転座

一次転座は腫瘍発生初期に生じるものでおそらく悪性化の要因であるが、二次転座は腫瘍成長の過程で生じる。c-myc 転座は初診MMでは15%に見られるが進行MMの40%、HMCLの90%に見られる二次転座である。

Cyclin D1,D2,D3の異常発現

MMやMGUSのCyclin D1,D2,D3 mRNAの発現量は、正常形質細胞(PC)より多く、正常形質芽球(PB)が発現するCyclin D2と同等であることが報告されている。正常なBリンパ球、形質細胞、形質芽球などの造血細胞は、Cyclin D2 and/or D3 を発現しCyclin D1はほとんど発現していない。

MMの約20%にt(11;14)転座があり、Cyclin D1/D3の異常発現が見られること、t(11;14)転座の無いMMの約40%にCyclin D1の発現が見られること、残りのMMのほとんどにCyclin D2の発現増加が見られることは、すべてのMMがCyclin D 遺伝子の少なくとも1つに異常発現が有ることを示している。

Bergsagel PL, Kuehl WM. Critical roles for immunoglobulin translocations and cyclin D dysregulation in multiple myeloma. Immunol Rev. 2003; 194:96-104.

低倍数体は、高頻度のIgH転座と比較的高頻度の染色体13/13q14欠失に関係している。高倍数体は、染色体3,5,7,9,11,15,19,21を含む多くのトリソミー(3倍数体)に関係しているが、染色体13/13q14欠失やIgH転座の頻度は小さい。

Smadja NV, Bastard C, Brigaudeau C, Leroux D, Fruchart C. Hypodiploidy is a major prognostic factor in multiple myeloma. Blood. 2001;98:2229-2238.

Smadja NV, Leroux D, Soulier J, et al. Further cytogenetic characterization of multiple myeloma confirms that 14q32 translocations are a very rare event in hyperdiploid cases. Genes Chromosomes Cancer. 2003;38:234-239.

Fonseca R, Debes-Marun CS, Picken EB, et al. The recurrent IgH translocations are highly associated with nonhyperdiploid variant multiple myeloma. Blood. 2003;102:2562-2567.

二次転座c-mycは腫瘍増悪に関係している。

Shou Y, Martelli ML, Gabrea A, et al. Diverse karyotypic abnormalities of the c-myc locus associated with c-myc dysregulation and tumor progression in multiple myeloma. Proc Natl Acad Sci U S A. 2000;97:228-233.

t(4;14)転座によるFGFR3変異は進行例で高頻度に見られる。

Chesi M, Bergsagel PL, Kuehl WM. The enigma of ectopic expression of FGFR3 in multiple myeloma: a critical initiating event or just a target for mutational activation during tumor progression. Curr Opin Hematol. 2002;9:288-293.

K-Ras or N-Ras の過剰活性化変異は稀でMGUSには見られないが、初期MMの30-40%にRas変異が見られる。

Bezieau S, Devilder MC, Avet-Loiseau H, et al. High incidence of N and K-Ras activating mutations in multiple myeloma and primary plasma cell leukemia at diagnosis. Hum Mut. 2001;18:212-224.

Liu P, Leong T, Quam L, et al. Activating mutations of N- and K-ras in multiple myeloma show different clinical associations: analysis of the Eastern Cooperative Oncology Group Phase III Trial. Blood. 1996;88:2699-2706.

Fonseaca R, Price-Troska T, Blood E, et al. Implication of N-ras and K-ras mutation in clinical outcome and biology of multiple myeloma [abstract]. Blood. 2003;102:113a.

p53の変異・欠失の頻度は腫瘍増悪過程で高い。

Drach J, Ackermann J, Fritz E, et al. Presence of a p53 gene deletion in patients with multiple myeloma predicts for short survival after conventional-dose chemotherapy. Blood. 1998;92:802-809.

一部のMMではp16INK4aの不活性化(メチル化)によってRb(retinoblastoma)経路が抑制されている。さらに、p18INK4cの不活性化によるRb経路の抑制は低頻度であり、腫瘍増悪に関係している。

Urashima M, Teoh G, Ogata A, et al. Characterization of p16 INK4A expression in multiple myeloma and plasma cell leukemia. Clin Cancer Res. 1997;3:2173-2179.

Guillerm G, Gyan E, Wolowiec D, et al. p16(INK4a) and p15(INK4b) gene methylations in plasma cells from monoclonal gammopathy of undetermined significance. Blood. 2001;98:244-246.

Juge-Morineau N, Harousseau JL, Amiot M, Bataille R. The retinoblastoma susceptibility gene RB-1 in multiple myeloma. Leuk Lymphoma. 1997;24:229-237.

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PTEN(phosphatase and tensin homolog)の不活性化については調査中である。

Hyun T, YamA, Pece S, et al. Loss of PTEN expression leading to high Akt activation in human multiple myelomas. Blood. 2000;96:3560-3568.

Ge NL, Rudikoff S. Expression of PTEN in PTEN-deficient multiple myeloma cells abolishes tumor growth in vivo. Oncogene. 2000;19:4091-4095.


核型不安定性Karyotypic Instability

核型の異常は、MM腫瘍に30-50%の頻度で検知される[1]。核型の異常の頻度と範囲は、病期、予後、および治療に対する反応と関係しており、例えば、病期Iで約20%、病期IIIで約60%、髄外腫瘍で>80%の異常が認められる。

[1] Sawyer JR, et al. Cytogenetic findings in 200 patients with multiple-myeloma. Cancer Genet Cytogenet. 1995;82:41-49

[2] Gutierez NC, et al. Differences in genetic changes between multiple myeloma and plasma cell leukemia demonstrated by comparative genomic hybridization. Leukemia. 2001;15:840-5.

染色体異常 遺伝子 備考
13番染色体長腕欠失 13q- MGUS約20%、診断時MM40-50%
p53の変異(不活化) 17p13 髄内約4%再発例又は髄外20-40%HMCL60%
PTEN変異(不活化)   PI3K/Akt経路抑制蛋白
p16/INK4a不活性化   CDK4,6関連のG1阻害蛋白、プロモータのメチル化による。
N-ras / K-ras変異(活性化)   診断時MM10-20%、再発例49%
MDM2   p53不活化

PTEN: phosphatase and tensin homolog


遺伝子転座の種類とサイクリンD発現を基にしたMM分類(TC分類)

分類 一次転座 原因遺伝子 D型サイクリン 倍数性 初診の頻度
TC1 11q13 CCND1 D1 NH 15%
6p21 CCND3 D2 NH 3%
TC2 None None D1 H 37%
TC3 None None D2 H=NH 22%
TC4 4p16 FGFR3/MMSET D2 NH>H 16%
TC5 16q23 c-maf D2 NH 5%
20q11 mafB D2 NH 2%

H: hyperdiploid; NH: nonhyperdiploid.

t(4;14)転座(TC4)の患者は標準又は大量化学療法でも予後が悪い。(mOS;26/33か月)

t(14;16)転座(TC5)の患者も同様に予後が悪い。(mOS;標準化学療法で16か月)

t(11;14)転座(TC1)の患者は予後が良い。(mOS;標準化学療法で50か月、大量化学療法で80か月OS予想値88%)

TC1患者は大量化学療法が推奨され、TC2患者には骨髄微環境を標的とした治療、TC4患者にはFGFR3阻害剤による治療、TC5患者にはmaf抑制剤による治療が考えられる。

Garand R, Avet-Loiseau H, Accard F, Moreau P, Harousseau JL, Bataille R. t(11;14) and t(4;14) translocations correlated with mature lymphoplasmacytoid and immature morphology, respectively, in multiple myeloma. Leukemia. 2003;17: 2032-2035.

Avet-Loiseau H, Garand R, Lode L, Harousseau JL, Bataille R. Translocation t(11;14)(q13;q32) is the hallmark of IgM, IgE, and nonsecretory multiple myeloma variants. Blood. 2003;101:1570-1571.

Fonseca R, Blood EA, Oken MM, et al. Myeloma and the t(11;14)(q13;q32); evidence for a biologically defined unique subset of patients. Blood.


■ 増殖機序

 多発性骨髄腫は、B細胞の最終分化段階である形質細胞の腫瘍性疾患である。 骨髄に発生することから、形質細胞の分化に骨髄内微小環境が大切であるとされ、骨髄内で分化を遂げた形質細胞が腫瘍化すると考えられている。その分化増殖機構には,(1)骨髄内微小環境、(2)サイトカイン、(3)癌遺伝子異常などが密接に関連していることが報告されている。

(1) 骨髄内微小環境
In vitroにおいて骨髄腫細胞を維持するのに骨髄類似の微小環境を作る必要があり、そのためには骨髄ストローマ細胞(間質細胞)が必須であり、単球やマクロファージの存在も重要であることが判明した。また骨髄内微小環境で、骨髄腫の成熟・分化に、他の細胞群との関連性において接着因子(VLA-4,5,CD40/40L,CD28/CD80,86)の重要性も報告されている。
(2) サイトカイン
IL-6,IL-1,LIF,OSM,GM-CSF,G-CSF等のサイトカイン類の重要性が示唆されている。特にIL-6に関しては骨髄腫細胞より骨髄ストローマ細胞にIL-6mRNAの発現が高いことよりパラクライン説が有力視されている.複数のサイトカインが複雑に関与していると想定される。
(3) 癌遺伝子
古くからC-myc,Bcl-1/2が関与している報告,N-ras,K-rasの点突然変異,IgH遺伝子群の複数遺伝子転座異常などの報告があるが,骨髄腫特有の遺伝子異常は明らかになっていない。

 発症と関連がありそうな要因として加齢・放射線被曝・慢性的抗原刺激・環境曝露などが推測されている。骨髄腫の患者から培養した異形細胞中にカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスが見つかり、その関連性が示唆されている。このウイルスはインターロイキン-6同族体をエンコードする(ヒトインターロイキン-6は、骨髄腫の成長を促進し骨吸収を刺激する。)また、免疫グロブリン遺伝子連鎖と細胞表面マーカーの分析によって"post-germinal center cell"の悪性転化が示唆される。


■ 骨破壊機序

(1)MM細胞がストローマ細胞に接触するとストローマ細胞からIL-1α/β,IL-6,TNFα/βなどのOAFが分泌される。

(2)OAFがストローマ細胞や骨芽細胞に作用しRANKLを誘導する。

(3)骨芽細胞やストローマ細胞はOPGを分泌しRANKLの作用を抑制する。

(4)RANKを有する破骨細胞前駆細胞の分化と活性化を促す。

(5)MM細胞がMIPを分泌し、破骨細胞の分化・成熟、活性化を促す。

(6)活性化破骨細胞は骨吸収作用を行う。

(7)骨基質の破壊によりTGF-α,IL-6,FGF-1/2,IGF-1/2などが放出される。

(8)これらのサイトカインが直接/間接的にMM細胞の増殖やPTHrPの産生を促す。

(9)PTHrPがRANKLの産生を促す。

OAF(osteoclast activating factor), OPG(osteprotegerin), ODF(osteoclast defferentiation factor), RANK(receptor activator of NF-kB), TRANCE(TNF-related activation induced cytokine), MIP(macrophage inflammatory protein), PTHrP(parathyroid hormone-related protein)


■ サイトカインと細胞信号伝達系

サイトカイン

リガンド レセプター 産生細胞 機能
IL-1α
IL-1β
IL-1RA
IL1RI(CD121a)
IL1RII(CD121b)
α:活性化T,血小板,McP,内皮細胞
β:McP,内皮細胞
発熱,T/McP活性化,IL-6産生誘導,内皮細胞Eセレクチン発現誘導
IL-1RA;IL-1拮抗物質
IL-2
(TCGF)
α鎖:CD25
β鎖:CD122
γ鎖:CD132
活性化T T増殖
IL-3 α鎖:CD123
β鎖:CDw131
活性化T,NK,血管,内皮細胞 SC分化・増殖(IL-6と相乗作用)
IL-4
(BCGF-1)
α鎖:CD124(IL13R)
γ鎖:CD132
活性化T,マスト細胞,好塩基球 B活性化,IgE/IgG4産生誘導,Th2への分化誘導
IL-5
(BCGF-2)
α鎖:CD125
β鎖:CDw131
活性化T,マスト細胞 好酸球増殖・分化,IgA産生誘導
IL-6
(BCDF)
α鎖:IL6R(CD126)
gp130(CD130)×2
T,McP,内皮細胞 T,Bの増殖・分化,急性期反応蛋白産生,SC分化・増殖,血小板産生誘導
IL-7 α鎖:CDw127
γ鎖:CD132
BMSC,脾臓,胸腺 プレB/プレT増殖
IL-9 α鎖:CD129
γ鎖:CD132
CD4細胞 マスト細胞活性化,ナイーブCD4増殖
IL-10 α鎖:
β鎖:CRF2-4
Th2,McP,EBV McPのIL-1β/IL-12産生抑制,Th1のIFNγ産生抑制,Th2への分化誘導
IL-11
(AGIF)
α鎖:409アミノ酸
β鎖:gp130(CD130)×2
BMSC IL-3/4によるSC増殖・分化増強,IL-6様作用
IL-12 β1鎖:(p100)
β2鎖:(p130)
B,McP NK活性化,Th1へ分化誘導
IL-13 IL-13Rα鎖:
IL-4Rα鎖:CD124
Th2 B抗体産生増強,IgE産生誘導,McP形態変化
IL-14   T,B B増殖刺激
IL-15 α鎖:
β鎖:CD122(IL2Rβ)
γ鎖:CD132
単球,上皮細胞,筋肉 Il-2様作用,T/B/NK分化・増殖
IL-16 - T,マスト細胞,好酸球 CD4走化性因子,CD4増殖因子,単球/好酸球走化性因子
IL-17
(CTLA-8)
- 記憶CD4 繊維芽細胞/上皮細胞/内皮細胞にIL-6/IL-8/G-CSF/PGE2等の放出誘導,CD34陽性SCの好中球への分化誘導
IL-18
(IGIF)
IL-1Rrp 活性化McP,クッパー細胞 Th1/NKのIFN-γ産生抑制
OSM
(オンコスタチンM)
α鎖:OMR
gp130(CD130)
T,McP 胚性幹細胞の分化抑制,メラノーマ増殖阻害
LIF α鎖:LIFR
gp130(CD130)
McP,T 胚性幹細胞の分化抑制、IL-6/11/OSMと類似作用
GM-CSF α鎖:CD116
β鎖:CDw131
BMSC BM単球系の増殖・分化
G-CSF CD114 血管内皮,McP,BMSC 顆粒球の増殖・分化
M-CSF CD115(c-fms産物) McP,血管内皮 単球,McPの増殖・分化
MIF - T,他 McP遊走阻害,McP活性化
MIP -   破骨細胞の分化・成熟、活性化
IFN-γ CD119 T,NK McP活性化、Th1誘導・活性化、MHC-I/II発現増強
IFN-α CD118 白血球 抗ウィルス作用、MHC-I発現増強
IFN-β CD118 繊維芽細胞 抗ウィルス作用、MHC-I発現増強
TGF-β I型R,II型R,III型R 軟骨細胞,単球,T,血小板,腎 細胞増殖抑制、抗炎症作用、ECM産生
TNF-α TNFRI型:CD120a
TNFRII型:CD120b
McP,NK,他 局所炎症、内皮細胞活性化、アポトーシス誘導、増殖誘導、NF-κB活性化
TNF-β
(LT-α)
TNFRI型:CD120a
TNFRII型:CD120b
T,B,他 細胞傷害,内皮細胞活性化
LT-γ LT-βR T,B リンパ節形成
CD40L
(CD154)
CD40 T,マスト細胞 B活性化,Igクラス変換
FasL CD95(Fas/APO-1) T,ストローマ細胞 アポトーシス,Ca2+非依存性細胞傷害
CD27L
(CD70)
CD27 T T増殖
CD30L
(CD153)
CD30 T T/B増殖
4-1BBL CDw137(4-1BB) T T/B活性化
RANKL
(TRANCE,ODF)
RANK 破骨前駆細胞 前駆細胞の分化・成熟、破骨細胞活性化

TGF(transforming growth factor), FGF(fibroblast growth factor), IGF(insulin-like growth factor),MIP(macrophage inflammatory protein), RANK(receptor activator of NF-kB), TRANCE(TNF-related activation induced cytokine),

■ 接着分子

CD名 通称 接着相手 主な分布
CD11a/CD18 LAF-1 ICAM-1(CD54) リンパ球,顆粒球,単球
CD11b/CD18 Mac-1 ICAM-1(CD54) 単球,NK,骨髄球,腹腔McP
CD49a/CD29 VLA-1 ラミニン,コラーゲン 活性化T,単球,繊維芽細胞,血管内皮細胞,NKなど
CD49b/CD29 VLA-2 ラミニン,コラーゲン B,単球,繊維芽細胞,血管内皮細胞,血小板など
CD49c/CD29 VLA-3 フィブロネクチン,ラミニン,コラーゲン B,繊維芽細胞,ケラチノサイト,上皮細胞,B
CD49d/CD29 VLA-4 フィブロネクチン,VCAM-1(CD106) リンパ球,単球,胸腺細胞,NK
CD49e/CD29 VLA-5 フィブロネクチン 記憶T,単球,繊維芽細胞,上皮細胞,内皮細胞など
CD49f/CD29 VLA-6 ラミニン 記憶T,胸腺細胞,繊維芽細胞,上皮細胞,内皮細胞など
CD44 ECMRIII ヒアルロン酸 胎児胸腺細胞,未熟胸腺細胞,一部の上皮細胞と内皮細胞
CD50 ICAM-3 β1,β2インテグリン 白血球全般
CD54 ICAM-1 LAF-1(CD11a),Mac-1(CD11b) 白血球全般,上皮細胞
CD56 NCAM NCAM(CD56),フィブロネクチン NK,T亜群,神経細胞
CD58 LFA-3 LFA-2(CD2) リンパ造血細胞,上皮細胞
CD102 ICAM-2 LAF-1(CD11a) リンパ球,単球,上皮細胞
CD106 VCAM-1 VLA-4(CD49d) 血管内皮細胞,抗原提示細胞,骨髄ストローマ細胞
CD138 シンデカン-1 ヘパラン硫酸プロテオグリカン、I型コラーゲン 形質細胞,上皮細胞

■ 分化抗原

CD名 通称 機能 主な分布
CD19 B4 CD21,CD81と会合、B細胞補助レセプター B,濾胞樹状細胞(FDC)
CD20 B1 B細胞活性化 B
CD40 gp50 補助膜刺激分子 成熟B,単球,DC,一部の上皮細胞
CD45 LCA チロシンホスファターゼ 血液細胞全般
CD45RA   ナイーブTのマーカー ナイーブT,単球
CD45RB     T亜群,B,単球,顆粒球
CD45RO   記憶Tのマーカー 記憶T
CD38 T10 白血球前駆細胞抗原、ADPリボシルシクラーゼ 未熟T,未熟B,活性化B,形質細胞
CD22 BL-CAM CD45ROとCDw75のリガンド 成熟B亜群
CD117 SCFR(c-kit) 膜型チロシンキナーゼ 造血幹細胞,マスト細胞,メラノサイト

CD40(gp50)

→文献調査

CD40(gp50)は、T細胞のCD40L(gp39)に結合するTNFRファミリーの補助膜刺激分子で、APC-T細胞間の活性化・調節シグナル伝達に関与している。B細胞では抗体のクラスチェンジに必須のシグナルである。

MMにおいては、IL-6のオートクリン分泌を誘導すること(J Immunol 1994; 152, Blood 1995; 85)、p53依存性のVEGF分泌を誘導すること(Blood 2002; 99)、p53依存性の細胞サイクル制御を調節すること(Blood 2000; 95)、PI3K/Akt/NF-kB経路で遊走を誘導すること(Blood 2003; 101)、などが報告されている。

Westendorf JJ, et al; CD40 expression in malignant plasma cells. Role in stimulation of autocrine IL-6 secretion by a human myeloma cell line. J Immunol. 1994 Jan 1;152(1):117-28.

Urashima M, et al; CD40 ligand triggered interleukin-6 secretion in multiple myeloma. Blood. 1995 Apr 1;85(7):1903-12.

Teoh G, et al; CD40 activation mediates p53-dependent cell cycle regulation in human multiple myeloma cell lines. Blood. 2000 Feb 1;95(3):1039-46.

Tai YT, et al; CD40 activation induces p53-dependent vascular endothelial growth factor secretion in human multiple myeloma cells. Blood. 2002 Feb 15;99(4):1419-27.

Tai YT, et al; CD40 induces human multiple myeloma cell migration via phosphatidylinositol 3-kinase/AKT/NF-kappa B signaling. Blood. 2003 Apr 1;101(7):2762-9. Epub 2002 Nov 14.

SGN-40は、ヒト化抗CD40単クローン抗体(Seattle_Geneticshttp://www.seattlegenetics.com/)で、ASH2003で前臨床結果が報告され、2004年初頭から第T相臨床試験が行われている。2004年8月にFDAから希少疾患医薬品の指定をうけた。


CD138(syndecan-1

→文献調査

CD138(シンデカン-1)は、ECMのタイプTコラーゲンと接着する。

CD138の発現は、27/28例(95%)に見られたが、1例ではCD138(-)細胞が50%以上あり、ほとんどの例でCD138弱陽性細胞が見られた。CD138欠失はMM増殖には関係ないようにみえる。またCD138欠失は骨髄外へのMM拡散には必要ない。レチクリン繊維形成領域に集積したCD138弱陽性細胞はMM細胞に見られる線状の強膜発現に比べて、膜発現の崩壊パターンが見られた。繊維性間質細胞はCD138を強発現している。骨髄外間質のCD138集積はMM細胞からの放出に由来していると考えられる。CD138は、ヘパラン結合型増殖因子調節に作用するので、CD138の蓄積はMMの発病を促進したり腫瘍細胞を再生する役割があるかもしれない。

Bayer-Garner IB, et al; Syndecan-1 (CD138) immunoreactivity in bone marrow biopsies of multiple myeloma: shed syndecan-1 accumulates in fibrotic regions. Mod Pathol. 2001 Oct;14(10):1052-8. [PMID: 11598177]

血清シンデカン-1は、予後不良と相関している。

Seidel C, et al; Serum syndecan-1: a new independent prognostic marker in multiple myeloma. Blood. 2000 Jan 15;95(2):388-92. Erratum in: Blood 2000 Apr 1;95(7):2197. [PMID: 10627439]

シンデカン-1発現は、MMP-9のレベルを抑制する。

Kaushal GP, et al; Syndecan-1 expression suppresses the level of myeloma matrix metalloproteinase-9. Br J Haematol. 1999 Feb;104(2):365-73. [PMID: 10050721]

シンデカン-1はMM病因の多機能的な媒介因子で、MM細胞の生存と増殖および骨細胞分化をコントロールしている。

Dhodapkar MV, et al; Syndecan-1 is a multifunctional regulator of myeloma pathobiology: control of tumor cell survival, growth, and bone cell differentiation. Blood. 1998 Apr 15;91(8):2679-88. [PMID: 9531576]

シンデカン-1の血清レベル上昇は、腫瘍量、MMP-9活性減少に相関が見られる。

Dhodapkar MV, et al; Elevated levels of shed syndecan-1 correlate with tumour mass and decreased matrix metalloproteinase-9 activity in the serum of patients with multiple myeloma. Br J Haematol. 1997 Nov;99(2):368-71. Erratum in: Br J Haematol 1998 May;101(2):398. [PMID: 9375756]