多発性骨髄腫 Multiple Myeloma(MM)
研究ノート


■8. 臨床試験と効果判定

 臨床試験

前臨床試験
(フェーズ0)
人間で試験する前に、動物モデル等で薬の効果や安全性を評価するための試験。
第1相臨床試験
(フェーズI)
少数の健康な志願者を対象に行われる主に薬の安全性をするための試験。
第2相臨床試験
(フェーズII)
少数の患者を対象に行われる安全性と人体への有効性を確認する。投与量、投与方法などが検討される。患者は 試験目的の薬と偽薬のどちらかを服用する(プラセボ対照)が、医師、患者ともに どちらかは知らされない(二重盲検)。
第3相臨床試験
(フェーズIII)
多数の患者を対象に、薬の既存薬との比較しての長期にわたる効果、さらに副作用などを調べる。通常、第2相同様プラセボ対照、二重盲検で行われる。
臨床試験、治験
(クリニカルトライアル)
臨床試験』が、薬剤、医療用具、治療法の人に適応する評価の試験全般に用いられるのに対し、『治験』は医薬品等の日本の承認申請を目的とした試験。翻訳リファレンスでは、『臨床試験』の訳語で統一しています。
プラセボ・コントロール(対照)
(placebo-controled)  
患者は試験目的の薬と偽薬(プラセボ)のどちらかを割付される。
アクティブ・コントロール(対照)
(active-controled)
実薬対象試験。標準的な治療がある場合、プラセボでなく、標準治療+/-試薬を対照とした試験。その試薬を加えた対照群。
コントロール群(対照群) 臨床試験で試薬を投与しないグループ
二重盲検(ダブルブラインド)
(double-blinded)
患者、医師ともに試験目的の薬か偽薬かを知らされずに行われる。この方法が最も推奨される。
非盲検試験(オープンラベル)
(open-label)
医療側が試験目的の薬か偽薬かを知って投与する試験。バイアスがかかりやすい。
ランダム化 無作為化
RCT
(randamized controled trial)
無作為化比較対照試験
ピボータルスタディー
pivotal study
臨床試験などで、後の治療を変えるような重要な中枢となるスタディ
パイロットスタディー 試験的研究。予備的研究。良いかもしれ ないと思われる治療を、本格的な臨床試験にはいる前に、まずやってみて安全かどうか、 効果があるかどうかを少数例で見てみる試験。
プライマリー・エンドポイント (臨床試験における)主要評価項目、
セカンダリー・エンドポイント (臨床試験における)副次的評価項目
インビボ(in vivo 生体内での
インビトロ(in vitro 生体外での、 試験管内での
ITT (intent to treat) 治療を割り振られたすべての人、(ランダマイズされた後で、たとえ治療を受けなかったり別の群の治療を受けたとしても、ランダマイズされた群の患者)
サブセット(subset) 一部、部分集合、全体の中の小グループ
inter-patient(inter-pt) 複数の患者間で
intra-patient(intra-pt) 一人の患者において
メタアナリシス 過去に発表された研究の中で、ある共通の条件を満たした複数の臨床試験の結果から、統計学的な手法に基づいて研究成果の統合を行い、信頼性の高い結論を求めるための分析方法。

 

 効果判定基準

骨髄腫の治療効果判定基準には様々なものがある。この中で、最も用いられているECOG基準と造血幹細胞移植療法を受けた患者に用いられるIBMTR/EBMTR基準を示す。

ECOGの効果判定基準

Objective response (OR)
有効
下記の項目を満たし、かつその状態が1カ月以上持続する。
  • 血清中M蛋白量が治療前の50%以下に減少する。
  • 血清中M蛋白の検出できない症例では24時間尿中L鎖が90%以下に減少する。
  • 血清、尿中M蛋白がともに検出できない症例では軟部組織の形質細胞の径が50%以上縮小するか、または骨髄中の形質細胞が50%以下に減少する。
  • 新しい骨病変、骨融解病変、高カルシウム血症の再燃、または持続がない。
Complete response(CR)
完全寛解
ORであり、かつ下記の項目のすべてを満たす。
  • M蛋白の完全消失*
  • 骨髄中の形質細胞が3%未満
  • 形態学的に骨髄中に骨髄腫細胞を認めない。

*血清、尿の免疫固定法によるM蛋白の検出を行って判定する。

Nearly complete response(NCR)   ORであり、かつM蛋白の完全消失*がみられ、下記のいずれかの項目を満たす。
  • 骨髄中の形質細胞が3-6%である。
  • 骨髄中の形質細胞が3%未満であるが、形態学的に骨髄腫を示唆する異常がある。
  • 充分な骨髄検査ができない。

*血清、尿の免疫固定法によるM蛋白の検出を行って判定する。

Partial response(PR)
部分寛解
ORであり、上記(CR, NCR)以外。
No response(NR)
無効
OR以外。
No change(NC) NRであり、後述のProgressive disease(PD)以外。
Progressive disease(PD)
進行
NRであり、かつ下記の◆印の項目を2項目異常満たすか、またはM蛋白に関する1項目を満たし、さらに下記の■印のいずれか1項目を満たす。
  • ◆血清M蛋白量が最小の数値より50%以上増加するか、あるいは2g/dl以上となる。
  • ◆尿中L鎖が最小の数値より50%以上増加(少なくとも250mg/24hr以上)、または2g/24hr以上となる。
  • ◆軟部組織の形質細胞腫が50%以上増大する、または骨融解病変の新生あるいは増大が認められる。
  • ■12mg/dl以上の高カルシウム血症
  • ■ヘモグロビンの2g/dl以上の減少
  • ■骨髄中の形質細胞の50%以上の増加。
  • ■全身の骨痛

Oken MM et al. The addition of interferon or high dose cyclophosphamide to standard chemotherapy in the treatment of patients with multiple myeloma. Cancer 86, 957-968, 1999.

IBMTR/ABMTR/EBMTRの効果判定基準

Complete Response (CR) 以下のすべてを満たす:
  1. 免疫固定法にて血清および尿中M成分がすべて消失した状態が最低6週間持続する。 オリゴフロナールな免疫再構築に伴うオリゴクロナールバンドの存在してもよい。
  2. 骨髄穿刺あるいは骨髄生検で形質細胞が5%未満であること。もし、M蛋白消失が6週間持続した場合は再度の骨髄検査は必要なし。ただし、非分泌型骨髄腫の場合は最低6週間間隔で骨髄検査を実施し、CRを確定する。
  3. 溶骨性病変の大きさ、数の増加が見られないこと。(圧迫骨折の出現は判定に入れず)
  4. 軟部組織の形質細胞腫の消失。

CRの基準のいくつかを満たしているが全部ではない症例では、満たしていない基準が下記のPRの基準を満たしていればPRと判定される。また、免疫電気泳動ではM蛋白消失であるが、免疫固定法が実施されていない症例も含む。

Partial Response (PR)  以下の基準をすべて満たす。
  1. 血清M蛋白量が治療前値に比し50%以上減少した状態が6週間以上持続する。2.24時間尿中M蛋白量が90%以上減少するか、200 mg以下となることが、6週間以上持続する。
  2. 非分泌型骨髄腫症例では、骨髄穿刺あるいは骨髄生検で形質細胞が50%以上減少し、これが6週間以上持続する。
  3. 軟部組織の形質細胞腫の大きさが50%以上縮小すること。(レントゲン検査または理学的所見で)
  4. 溶骨性病変の大きさ、数の増加が見られないこと。(圧迫骨折の出現は判定に入れず)

PRの基準のいくつかを満たしているが全部ではない症例では、満たしていない基準が下記のMRの基準を満たしていればPRと判定される。

Minimal Response (MR) 以下の基準をすべて満たす。
  1. 血清M蛋白量が治療前値に比し25-49%減少した状態が6週間以上持続する。
  2. 24時間尿中M蛋白量が50-89%減少したが、200 mg以上である状態が6週間以上持続する。
  3. 非分泌型骨髄腫症例では、骨髄穿刺あるいは骨髄生検で形質細胞が25-49%減少した状態が6週間以上持続する。
  4. 軟部組織の形質細胞腫の大きさが25-49%縮小すること。(レントゲン検査または理学的所見で)
  5. 溶骨性病変の大きさ、数の増加が見られないこと。(圧迫骨折の出現は判定に入れず)
No Change (NC) 1.MRまたはProgressive Disease (PD) の基準に合致しないもの。
Plateau 1.Stable value(治療効果判定時の状態から上下25%以内の変化)が少なくとも3月続くこと。
効果判定基準の時期
  1. 移植療法の効果判定は移植前処置直前の値と比較する。
  2. 移植が修学的治療プログラムの一部である場合は、その全治療プログラムの効果判定は初回治療前と比較する。
CRからの再発 少なくとも以下のひとつを満たす。
  1. 免疫固定法あるいは通常の蛋白電気泳動で血清あるいは尿中M蛋白の再出現を2回以上確認すること。オリゴフロナールな免疫再構築に伴うオリゴクロナールバンドは除外する。
  2. 骨髄穿刺あるいは骨髄生検で形質細胞が5%以上となること。
  3. 新たな溶骨性病変や軟部組織形質細胞の出現、あるいは既存の骨病変の明らかな増大。 (圧迫骨折のみでは再発とか進行とは判断しない)
  4. 他に原因がない高Ca血症(補正Ca値>11.5 mg/dl)の出現。
Progressive Disease (PD) CR以外の症例で以下のひとつ以上を満たす。
  1. 血清M蛋白量が25%以上増加する。この増加の絶対量は5g/l以上であることが2回以上確認されること。
  2. 24時間尿中M蛋白量が25%以上増加する。この増加の絶対量は200 mg以上であることが、2回以上確認されること。
  3. 骨髄穿刺あるいは骨髄生検で形質細胞が25%以上増加する。比率として10%以上であること。
  4. 既存の骨病変や軟部組織形質細胞の明らかな増大。
  5. 新たな溶骨性病変や軟部組織形質細胞の出現。(圧迫骨折のみでは進行とは判断しない)
  6. 他に原因がない高Ca血症(補正Ca値>11.5 mg/dl)の出現。

Blade J et al. Criteria for evaluating disease response and progression in patients with multiple myeloma treated by high-dose therapy and haemopoietic stem cell transplantation. Brit J Haematol 102, 1115-1123, 1998.

 評価項目

DCR(Disease Control Rate) 病勢コントロール率(著効CR、有効PR、不変SD、の患者)
ORR(Objective Response Rate) 奏効率(著効CR、有効PRの患者)
OS(Overall Survival) 全生存期間
TTP(Time to Progression) 増殖抑制期間、非再燃期間、無増悪期間
DFS(desease-free survival 無病生存期間
RFS(Relapse-free survival)  無再発生存期間
PFS(progression-free survival 無増悪生存期間、無進行生存期間
EFS(Event-free survival 無事象生存期間