この話の始まりは、新聞の懸賞広告です。ヤマハオートバイが「週末はバイク人」というテーマでバイクが手に入った時の夢のエッセーを募集していた広告を見て、何となく応募したのが6月でした。
「いつも鮎釣りシーズンになると、奈良の吉野川へ車で何度も行っているが、もしバイクがあれば、釣り具の他に着替えや楽器を積んであちこち行ける。川に着いても、バイクの機動力なら川原のいい場所に自由に降りられるから、釣果もあがる。ついでにそこから、細い山道の奥の町営“やはた温泉”に立ち寄れる。帰途は奈良盆地の東側の山道を走り、柳生の里の林道の見晴らしの良い所で、その昔やっていたトランペットを吹いてみる」、というような内容で応募しました。
しかし、審査員の一人の宇崎竜堂にもトランペットの話がホラに見えたのか?2ヶ月しても何の音沙汰もありません。
物語はこれからです。景品のバイクがあれば、が、景品でなくてもバイクがあれば、に変わってしまったのです。誰か「思っていればいつか手に入る」と言っていましたが、ほんとうにそうなりました。
でも新車はパソコンよりも高いので中古車にしよう、それも バイクの本を見ていて、一番おじさんらしくないオフロード(舗装していない道を走るバイク)にしようと思っていました。でも結局、楽な姿勢で気軽に走れ馬力も強く燃費も良く荷物も積めて2人乗りも出来る、新車のスクーターにしました。125CCのホンダです。 4サイクルエンジンはヤマハよりホンダの方がよく(懸賞にはずれたこことは関係ありません)、あのビービーでなくトントンというリズミカルな音は楽器のパーカッションのようにとても心地がよいのです。
9月16日に新車受取りに行き、西に試走スタート。ゆっくり走って信楽の“陶芸の森美術館”まで30分で着。エンジンを休めている間に芝生の上で愛妻弁当を食べ、芸術鑑賞はこの次にして、そこから50キロ先の「湯の山温泉」に向かいました。スピード違反を犯さない程度に流れていく車となら、このバイクは大丈夫、安全に一緒に走れます。
追い越したがっている車が来たら、ちょっと減速し左によれば喜んで嬉しそうに走り去ってくれます。でもその車は次の交差点で信号待ちしているから、また追い抜くことになりますが、次に同じ場面がくれば今度は早めに追い越してもらいます。私も車の運転暦は長いので、車からみたバイクが目障りであることは確かです。それを知って運転すればバイクはそんなに危険なものではないのです。
湯の山温泉の近くの鈴鹿スカイラインが残念、工事で通行止め。近くに土山町の“道の駅”があり休憩。全国あちこち国道沿の“道の駅”は半官半民で設備もよく、地元の農産物など必ずいいものがあるのに、今回だけは新車のバイク試走のお土産にふさわしいものが見つからず、その代わり大きなイラスト地図の看板から30キロ先の「鈴鹿サーキット」を見つけました。20年ほど前に家族4人で行った記憶があります。
新車をおろした時はならし運転で余りスピードを出さない方がいい、という説と、それは昔の話で最近のメカはそんなヤワではないので不必要、と言う説があります。国道1号線を走る車の列と併走していると、結構スピードがでてしまうのでならし運転説を採って自重しているうちに到着しました。鈴鹿市は全く自動車の町でした。
「鈴鹿サーキット」には懐かしいゴーカートが走っていました。その昔このゴーカートに一緒に乗って遊んだ長男はその頃から車が好きで、それから何年かのプラモデルのミニチュアカーに随分投資させられました。
帰途は伊賀、上野、笠置を通過し、たそがれの宇治川ラインのくねくね道をライトをつけて走り無事帰着しました。
バイクは面白い。真っ直ぐの道より曲がり道や坂道のほうが面白い。何か、スキーによく似ていると思います。
釣りやテニスにも、車で行くよりコストパーフォーマンスにすぐれ手軽で割安です。
雨のときは?、 途中ならレインコートを着るか雨宿りする。 故障したら?、 歩いてガソリンスタンドを探せばよい。
バイクは車と違って、気ままにどこでも寄り道(人生の?)できて、まあ、生活時間のテンポを、人間らしくゆっくりにしてくれそうで、これからいい相棒になりそうです。