サラリーマンと交際費

昔、社用族という言葉があった。会社の金を、公私のケジメをつけず使う特権を持っていると勘違いしたサラリーマンのことである。しかし、自腹を切らないでもよいという誘惑にまけることは、結局は公私共にコストパフォーマンスの効率はよくない時代になった。

交際費は麻薬になる?

サラリーマンの出世の楽しみの一つは、交際費などの経費が使えることである。交際費は、取引先からよい条件を引き出すという目的を達成する為の経費のはずである。上級管理職になれば、誘う相手を自由に選んで接待をし、会社宛に請求書を送らせることができる。ところが、初めは「業務を円滑に進める為に」のはずが、「自分の業務を円滑に」になり、遂に、会社と自分の区別がつかなくなる場合がある。公私の区別は本人次第だから歯止めが利きにくいようである。

経費をうまく使いながら、部下のめんどうみもよく取引先からも評判の良い人は、幸せである。ところが、自分の金では出来ないほどの多すぎる飲食や饗応は、時に心身の健全さを損なうことになる。会社の業績を上げる代わりに自分の体調を悪くしてしまう。まるで麻薬になる危険性が大である。

交際費の課税が高いのは?

 会社の規模によって税率が違うが、交際費に対する税金は異常に高い。業績を高めるための必要な経費なら他の営業経費と同じように控除されるはずである。ところが税務署は交際費のワクをゆるめる代わりに高い課税にした。税金を払えば内容は問われなくなった。使途不明金とほとんど同じ高税率である。つまり、会社の業績に直結することを期待できない経費ということになる。直結する経費なら堂々と税務署に申告すればよさそうなものだが、そんな話は聞いたことが無い。

交際費は、そういう性格をもった曖昧な経費のようである。

公務員なら贈収賄?

ほんの儀礼的な贈答・接待でも、公務員にたいしては増収賄罪になる。私立大学の先生が企業から増収賄を受けても罪にはならないが、国立大学の先生は罪になる。同じ行為でも、自由競争の民間企業では贈収賄は罪とされていない。

接待はつらい?

見込み客に物品を渡すのも、お世話になった人に渡すのも自然であるよい。これは儀礼としてもなりたつ経済行為である。ところが好ましからざるサラリーマンが会社の経費で接待するときは、その目的は必ずしも明確でない。接待される方も同じである。今までのお礼なのか今後の先行投資なのか、それとも単なる遊興なのかはっきりしないのが接待である。

接待はつらい、と言う人がいる。それは勝手な言い分だと思う。役に立たないことはやめればいい。会社の業績に直結しない経費は削減すればよい。まして、自分の健康にもまた家庭生活にもプラスにならないとしたら、なるべく麻薬には近寄らないに越したことは無いと思う。ホドホドの線を自分で守るのは難しいからである。