北海道ドライブ旅行記

 
    平成10年6月2日(火)〜7日(日)


 6月2日(火)夜19時、車で自宅出発。琵琶湖岸道路を走っていると豪雨になったので北陸高速道に入り敦賀フェリー乗場へ21時半着。フェリーは定刻23時 30分敦賀離岸。暗い窓の外に“蛍の光”が流れると、物悲しい気分にさせられる。あのBGMはやめた方がよい。

 小樽まで21時間の船旅である。北海道へは飛行機で行き、レンタカーやバスなどを利用する人が多いらしいが、別天地に行くには、ゆっくりたっぷり時間をかけて広い海を一昼夜、日の出や夕日を見たり本を読んだりうたた寝したりしていると、あの北海道を満喫する心の準備ができる、というものである。

 実はこの旅行は、去年の秋、妻と2人で10日間北海道のドライブ旅行をした時にすっかり気に入ってしまった、上富良野の“じょう舎”さんという民宿に行く為に5連休で企画したものであるが、5日間の北海道旅行も飛行機はダメ、往復2泊かかってもフェリーでなくてはならない。

 この新日本海フェリーの船は1万7千トン、定員5百人、車2百台のキャパがあり、設備もよい。大浴場の窓ガラスの外はすぐ大海原、まるで海に浮かぶ露天風呂である。しかしこの日は悪天候でさすがの巨艦もゆれて夜中に何度か目が覚めた。
 佐渡が島沖を通過し奥尻島の近くを通って、6月3日(水)夜8時半、小樽港着。小雨のなか車を止めやすそうな寿司屋さんに入ってにぎり寿司を食べ、札樽道を通って札幌駅前のホテルのチェックインが夜10時過ぎ。

 6月4日(木)朝8時、すぐ近くの北海道大学のキャンパスへ。クラーク博士像やポプラ並木もいいが、それより、あの広い敷地にうっそうとした巨大な樹の森、3〜4階建てのずっしりとした校舎。教育学部も理学部も医学部も全部そこにある。キャンパスが気に入って北大受験をめざす学生がいるらしいが、それは全く正しいと思う。付属植物園のライラックは、枝ぶりも花の香りもよし。
 札幌から国道274号線経由、日高からトマムを通ったが、観光案内書と違い、高層リゾートマンション群は山並みに全く不似合いな感じだったので、そのまま通過し金山湖東側の“ 道の駅、南富良野”着。

 今回の旅行の目的の1つ、渓流釣りに挑戦である。
出発前に北海道のメール友達のKさんに教えてもらった情報では、富良野で釣りの出来るポイントは、この時期、金山湖にそそぐ空知川の上流しかない、ということだった。近くで釣り具屋さんを探してルアーを買い川へ向かった。ちょうどその時すぐ前を堤防にそって行く車があり後を走って行くと、それは地元の人で、釣りをしに来たところだった。親切にポイントなど教えてもらい、早速竿をだした。水は冷たい。1時間程あちこちルアーを投げてみたが、天然の渓流魚がそんなに簡単に釣れるはずがない。まあ、北海道の山の中の渓流で竿をだすだけでもいい気分だ。
 もし万一釣れたら、泊まる民宿で料理してもらうことまで想定して道程を決めたことを思い出して一人苦笑していた。と、突然竿の糸が引っ張られだした。ごみがからまったにしてはピクピクする。もしや、と思って慎重にリールをまくと、本物の魚がかかっているではないか。やったー、釣れた。28センチのオショロコマ(北海道にしかいないマスの仲間)だ。すぐ近くの車の中で読書しながら 待っている妻に、魚と一緒に証拠写真をとってもらう。

 上富良野の“じょう舎”に夕方6時過ぎ着。永山さんご夫婦が、半年ぶり、笑顔で迎えてくれた。釣ってきた魚を渡すと、夕食に美味しそうな塩焼きで出てきた。今まで自分で釣った魚は何度も食べたが、これは特別うまい。

6月5日(金)朝食の手造りパンがおいしい。広い丘の上の形のいい木造の大きな家は、外からも内からも気持ちがいい。どっちを向いてもすべてシャッターチャンス、絵になる光景だ。
 8時過ぎ出発、車で10分の“富田ファーム”へ。満開まで一月のラベンダー は、よく耕され手入れされた広い畑の畝に、小さな蕾をつけて行儀よく整列している。花は咲いている時はみんなが愛でる。でも咲く前も、人間でいえば子どもみたいで、かわいいではないか。風にそよぐラベンダー達の無数の若木の行列は、まるで体育祭のマスゲームの小学生みたい。花の満開が人生でいえばどの時期になるのかわからないが、いつだってそれなりに美しい、というほうが自然なように思う。この時期のラベンダー畑を、単なる草と土ばかりでつまらないと言う人がいるが、それは違う。
 富田ファームを歩いていて、テレビで見たことのある富田さんを見かけた。なにか厳しい顔で仕事の指示をしておられた。新設された記念館で富田氏の数十年の足跡ストーリーを知り、すっかり共感してしまった。

 白金温泉に入った後、美瑛の広い丘を車であちこち走った。“拓真館”は団体観光なれしていてちっとも面白くない。それより“渥美顕二写真館”のようにご本人の空気を体感できる方がよっぽど行く値打ちがある。団体客にどやどや入ってほしくない為に有料にした、と苦笑される渥美さんの奥様も素敵。
 昼食は、迷い込んだ所にあった“遊楽部(ユーラップ)”という小さなピザハウス。建物もメニューも良く、次回また行きたい処。その後羊が丘は観光バスもなくとても景観が良かった。

 美瑛は、広大なスケールのうねった畑が、季節や光線や視点を変えればカメラアングルは豊富だと思うが、それ以上の感動はあまりなかった。ただ、山林を開墾した人達のストーリーは感動ものだと思うのだが。今の私には、全く人の手の加わらない大自然がいいのではなく、その中に生きた人の営みや温もりを体感できる処がよい。北海道が好きになったのはそういうことなのかもしれない。まだよ

くわからないが、いまのところ、美瑛より富良野のほうが気に入っている。上富良野の“じょう舎”さんに帰って手作りの夕食をいただくと、また元気がでる。

 6月6日(金)富良野は朝3時半には明るくなっていた。但しこの日は霧が出ていたので散歩を諦めまた布団にもぐる。おいしい朝食をいただいた後、“じょう舎”のご夫妻と記念撮影をすませ、お勧めの十梨別渓谷、ワイン工場に寄ったあと、お昼は美瑛の山の中の“魔女の家”というハーブのレストランへ。ここも次回、必ず来たくなるスポットである。「魔女が乗っている箒は実はハーブであり、魔女の持つカバンにはハーブの種や薬草が入っている。そこから店の名前を採った」と、女主人の話。食事もハーブティーも美味。
  

 美瑛の丘を東に走って終点の旭岳ロープウエー乗場へ午後2時着。野生のキタキツネが歓迎してくれる。ロープウエーは6月下旬まで休業なので、トレッキングシューズに穿き替えて近くの山道を歩くと、水芭蕉やヒカリ苔やそれに、多分ナキウサギの声、そして根雪にも出会った。そして、旭岳温泉のユースホステルで露天風呂へ、450円也。帰路ふもとから旭川まで、真っ直ぐな道。これはひょっとしたら日本一ではなかろうか、20キロ程、ほんとに地図どうりに一直線の広い道。有料道路ではない、ただの国道である。ハンドルをじっと握っていると午後5時に旭川着。

 お目当てのラーメン屋さん“よし乃”。味噌ラーメンと、バター入り味噌ラーメンを注文。麺は固めでグはもやしとタケノコとスライスしたニンニク、スープは濃い目の辛目だがこの味は言葉で表現出来ない。ただ、うまいおいしい、としか言いようがない。美味しいからといって何杯も食べるわけにいかないので、持帰り用を10人前買う。店内のポスターを見ると本店の他に7店あり、ホームページアドレス(www.meshnet.or.jp/yoshino/)も書いてあったので、つい、よし乃さん、あまり商売を広げないでいい味を続けて下さい、なんてよけいなことを思ってしまった。
 メール友達の北海道のKさん、“よし乃”の味噌ラーメンは、教えていただいた通り、うまかったですよ。有り難うございました。

 旭川の地酒“男山記念館”は時間切れで行けなくなり、今度はハイウエー2時間で夕暮れの小樽へ到着、運河サイドの“小樽ビール”で生ビールと生演奏をご馳走になる。土曜の夜でもあり、席は200以上あったが、満席。若いジャズトリオの真面目な演奏もよかった。

そしてフェリーは23時30分小樽港発、翌6月7日(日)20時30分敦賀港着。
 日本海に沈む夕日は、同じものも見る場所でこんなに違っていいのか、と思うほどきれい。そして深夜に無事帰宅。

 5泊の富良野へのドライブ旅行。次はいつ行こうか。    

              (終わり)