平群里山クラブ

              第6回  わたり

ストックホルムといえばノーベル賞。授賞式は街の中心にあるコンサートホールで開かれる。年一度の行事だが、世界中が沸きたつ。そのコンサートホール前の広場では、蚤の市が開かれる。こちらは毎日のことで、庶民にとってはこのほうがありがたい。生鮮食品、衣類、書籍から電気製品、家庭用品、楽器までなんでも売っている。威勢のいいお兄さんが「安いよ」と連呼しているのは日本でも見なれた風景である。なかでも陶磁器は見ていてたのしい。不学にして知らなかったのだが、1950年代から1970 年代にかけての北欧では、一世を風靡した名品が多数、製作された。アラビア(フィンランド)、レルストランド、グスタフスベリ(ともにスウェーデン)、フィッギオ(ノルウェー)など、各社が独特の意匠をこらした磁器、陶器を世に送りだした。それも1980 年代以降、衰え、今ではまったく作られていない。北欧ビンテージセラミックと称され、愛好家が随分いるらしい。蚤の市ではそれらが無造作に並べられて、物によってはびっくりするような安値で売られている。デザインはほとんどが手描きで、大きくふたつに分けられる。花などをあしらった文様を楽しむタイプと色彩の多様性で勝負というタイプ。両者の組み合わせも多い。ぶらぶら眺めていたら、色の組み合わせはチョウの翅に似ていることに気づいた。
例えば、水色と濃紺のお皿はルリタテハ、橙色と茶色の紅茶カップはキタテハ、緑と青のコーヒーカップはミドリシジミ、白地に黒い斑点をあしらったケーキ皿はモンシロチョウ、浅黄色に茶色のマグカップはアサギマダラそのもの。
かちかち山にいる蝶や蛾はみんな食器になりそうな気がした。北欧のデザイナーたちがチョウを観察したとは思えないのだが、人の考えつく色の組み合わせなど、数千万年前に自然がすでに作成済み。だから、と話はとぶ、種の多様性の保全は何にもまして大切です。
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アサギマダラはかちかち山にも来ると思う。昨年(2006 年)9月には、対岸(?)の矢田峠で多数がゆったりと、あるいは多少だらしなく、群舞していた。
マダラチョウ科は数百キロから、数千キロも渡りをすることで知られる。北陸で標識した個体が関西で観察されたことがある。この秋、山でみつかれば、最初の北国便りになるだろう。 

    

                 

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