・避妊・去勢について
・避妊、去勢のメリット
・避妊、去勢のデメリット
・避妊、去勢手術によって、
予防または緩和できる病気
・手術時期について
・手術について
避妊・去勢手術は
子供をつくらせないため
だけではありません。
避妊・去勢手術によって、
予防できる病気があります。
避妊・去勢について
避妊・去勢はその目的として、不幸な子犬や子猫を増やさないようにするためでもありますが、人間と動物のより良い関係を作ったり、犬猫の健康維持にも関与しています。
人間と供に生活する上で問題行動となりやすい「吠える」「咬む」「放浪する」「尿スプレーする」などの行動は、性ホルモンによる影響が大きく、性成熟前の避妊・去勢手術により、その発生をかなり予防することができます。また手術を受けることで、精神的にも安定した状態になり、人間とのより良い社会生活を営む事が可能となり、将来、発症し得る病気の予防や緩和につながる事にもなります。
避妊、去勢のメリット
1)雄犬の場合
睾丸腫瘍、前立腺肥大などの予防
攻撃性の減少、しつけがしやすくなる
2)雄猫の場合
スプレー、発情期の声の消失
猫エイズ、白血病の感染リスクの減少、喧嘩による外傷の減少、交通事故の減少
3)雌犬の場合
卵巣子宮疾患の予防、乳腺腫瘍発生率の低下、望まない妊娠の減少
4)雌猫の場合
卵巣子宮疾患の予防、乳腺腫瘍発生率の低下、望まない妊娠の減少
発情の消失、猫エイズ、白血病の感染リスクの減少
避妊、去勢のデメリット
1.基礎代謝減少により、肥満に陥りやすくなる。
これは性腺の摘出によるホルモンの変化により、基礎代謝率が減少するため、以前と同じような食事と運動では必然的にカロリーオーバーとなり肥満に陥ってしまいます。そのため食事管理や運動で肥満の予防に努めましょう。
2.麻酔、手術によるリスクが生じる。
手術や麻酔にはリスクが伴います。そのリスクを最小限に抑えるために、当院では、安全な麻酔薬の選択、器械やモニターの整備による術中の監視、術後の経過観察など、できる限り安全な手術が行えるよう努めています。
避妊、去勢手術によって、予防または緩和できる病気
1)雄犬の場合
a)予防できる病気
睾丸腫瘍、セルトリ細胞腫、肛門周囲腺腫、精巣上体腫瘍、
前立腺肥大、伝染性生殖器腫瘍、会陰ヘルニア
2)雄猫の場合
a)予防できる病気
睾丸腫瘍、セルトリ細胞腫、精巣上体腫瘍、前立腺肥大
b)緩和できる病気
ウイルス性疾患(猫エイズ、白血病など)の感染、喧嘩、交通事故などによる外傷、
3)雌犬の場合
a)予防できる病気
卵巣子宮疾患(子宮蓄膿症、子宮内膜炎、子宮癌、卵巣癌)、出産に伴う産科疾患、偽妊娠、膣脱
b)緩和できる病気
アレルギー性皮膚疾患、脂漏性皮膚炎、慢性外耳炎、糖尿病、アレルギー性気管支炎、
クッシング症候群、乳腺腫瘍
4)雌猫の場合
a)予防できる病気
卵巣子宮疾患(子宮蓄膿症、子宮内膜炎、子宮癌、卵巣癌)、出産に伴う産科疾患、持続性発情
b)緩和できる病気
ウイルス性疾患(猫エイズ、白血病など)の感染、アレルギー性皮膚疾患、
アレルギー性気管支炎、乳腺腫瘍
手術時期について
雌犬の場合乳腺腫瘍の発生率の低下を重視すると、初回発情前に行うのが良いと考えられます。乳腺腫瘍の発生率は初回発情前に避妊手術を行った場合0.5%、初回発情後から2回目の発情までの間に行ったものでは8%、2回目から4回目の発情の間のものでは26%といった具合に発情の回数によって発生率が高くなります。そうすると早ければ良いということになるのですが、さすがに体の未発達な子犬や子猫に麻酔をかけて手術をするにはリスクが高くなります。アメリカの施設などでは生後2〜3ヵ月でも手術の影響はないとの報告がありますので、早期の手術は2〜3ヵ月で可能ですが、ある程度、体が成長した時期の方が麻酔のリスクも少なくなると考えられますので、早くても4ヶ月以降であれば問題ないのではないかと思います。平均的には6ヵ月齢くらいが一般的です。
雄の場合も6ヵ月齢ぐらいが一般的です。6ヵ月齢の目安としては全ての歯が生え変わる(通常は犬歯が最後に生え変わる)頃です。意外と知らない人が多いのですが、犬も猫も乳歯から永久歯に歯が生え変わります。
手術について
手術には麻酔が必要です。避妊・去勢手術の場合、健康な時に手術することが多いわけですから、麻酔をかけるにあたってなるべく体調の良い時が良いですので、手術当日、少しでも調子が悪そうなら手術は延期して、体調を整えてから手術を受けるようにしてください。
手術前の注意事項
当日は、麻酔前後の嘔吐による事故をさけるため、絶食、絶水して、できるだけ排便、排尿を済ませて、午前中に、お連れください。前日の食事は、平常の消化のよいものを、与えていただいてかまいませんが、午後9時以降は、何も与えないでおいてください。飲水は、手術当日の朝から飲めないようにしておいてください。
手術後の注意事項
1)当日退院(雄犬、雄猫)の場合
保温に注意し、静かにそっとしておいて、かつ、よく観察し、小さいことでも気になることがあったら、早めに連絡してください。当日は、いつもに比べて眠そうだったり、よだれが多いことがあります。又、興奮気味で落ち着かずにウロウロしたり、吠えたりすることもあります。翌日も普段の状態に戻らない場合は、ご連絡ください。飲水は欲しがるようでしたら、少しだけ(なめる程度)、与えてみてください。吐いたり、むせたりしなければ少しずつ何回かに分けて与えてください。食事は翌日の朝まで何も与えないでおいてください。手術の翌日からは食事も散歩も普段どうりの生活をしていただいてかまいません。
2)翌日退院(雌犬、雌猫)の場合
食事も散歩も普段どうりの生活をしていただいてかまいません。
退院後に手術部位を気にして舐めていたり、掻いているようでしたら、傷口が治りにくくなることがありますので、すぐにやめさせて当院にご連絡ください。