バランスオブパワー
1990エディション

by クリス・クロフォード

Mindscape Inc.
3444 Dundee Road
Northbrook, Illinois 60062

Copyright (c) 1988 Chris Crawford
All rights reserved.

バランスオブパワー : The 1990 Editionならびにバランスオブパワーは Mindscape Inc.の商標です。

1988年8月
敬愛する地政学者の皆様へ。

 私はいくつかのゲームの続編を提案していましたが、バランスオブパワーの新エディションについては却下されていました。 ただ、頂いたアンケート葉書や手紙を読むと、新エディションの製作が求められていることは明らかでした。 プレイヤーからのそのような無言のプレッシャーを受けつつ、二年の時が流れ、私はようやく作業に取りかかることができました。

 バランスオブパワーの新エディションは、様々な新機能を備えています。 最も特徴的なのは多極化です。これは小国間の危機と戦争をもたらします。 新しいアドバイザリ機能は危機に対して助言し、プレイヤーを助けてくれるでしょう。 多くの国と地域を交易政策のために加えました。 各国情報は、1988年前期のものに更新しました。 世界背景メニューにも追加情報を記載しました。 より早く正確に作動させるためコードも書き直し、誰も報告しなかった2つのバグを修正しました。

 最後に、私はゲーム業界からの反響に満足しています。 ゲームは派手なグラフィックスや騒々しいサウンドで若者の興味を引き、一般的に彼らが購入するものと考えられていました。 しかしバランスオブパワーの成功はそういった市場を変化させ、販売店の棚により知的なゲームを並べさせる事となりました。 これはあなたの協力なしには為しえなかったことであり、感謝しています。

クリス・クロフォード

索引

バランスオブパワー 1990エディションの機能
簡単な遊び方 7
初めてのプレイ 11
より高度なビギナーレベル 23
中級者レベル 29
上級者レベル 35
多極化レベル 43
コマンドについて 49

余録

このゲームはどの程度現実的か 75
シミュレーションモデル 79
謝辞 87
参考文献 89

バランスオブパワー1990エディションの機能

 このゲームはバランスオブパワーの第二版であり、多くの改良が施されている。 動作には少なくとも512KのRAMを必要とし、快適なゲーム進行のためにさらに多くのRAMを必要とする。 登場国は62から80に増加し、世界背景メニューに追加情報も記載した。 新しく登場した「危機アドバイザリ」機能は危機におけるプレイヤーの判断を手助けしてくれる。 登場する国の情報と国内アルゴリズムは全て更新している。 中でも、最も重要な更新は「多極化」と呼ばれる4つ目の新しいレベルである。 これは前作のプレイヤーから最も要望が多かった機能だ。 このレベルにおいてはいかなる国の行動であってもゲームの進行に影響を与え、ゲームをより楽しく、かつ、難しくする。 多極化レベルの複雑な世界をプレイするために、各国への援助額と兵員数の増減を画面に表示した。 このレベルにおいては交易を行う事ができ、小国が戦争を仕掛ける事もできる。 また「小国の危機」がプレイヤーを襲う。

 このゲームには不正コピーを防止するためにマニュアルプロテクトがかかっている。 ただし、これによって何の制約もなくゲームのコピーやインストールができるようになっている。
参考:このマニュアルにはマッキントッシュ版の画面が印刷されている。マッキントッシュはアップルコンピュータの商標である。

簡単な遊び方

 コンピュータにディスクを入れ、バランスオブパワーのアイコンをダブルクリックする。 NEW GAMEボタンを押す。OPTIONS画面でSTART GAME(ゲーム開始)を押す。
参考:ゲームの初期のターンでは、マニュアルプロテクトの入力が求められる。 このマニュアルプロテクトはコピープロテクトの代わりとして作用している。 マニュアルを参照して求められている最初の文字を入力し、Proceedボタンを押す事。



 1989年の世界地図が表示される。この時、革命など大きな事件が起こった国は強調表示される。 アメリカをクリックすると選択状態となり、反転表示される。 プルダウンメニューからRelations(国家情報)をクリックする。 このメニューの最初にあるDiplomatic Relationships(外交関係)をクリックすると、アメリカが外交関係を結んでいる国が表示される。 中央アメリカにあるニカラグアをチェックしてみると、アメリカとの関係がcool(冷淡)かhostile(対立的)だと表示される。



 ニカラグアにカーソルを移動させてクリックすると、反転表示されて地図上部に国名が表示される。 これでニカラグアを選択したことになる。Make Policies(政策決定)と表示されているプルダウンメニューをクリックする。



 これによりその国に対する政策を決定する。 さらにAid to Insurgents(反政府勢力への援助)を選ぶと、様々な政策オプションが表示される。 このオプションを使って援助無しから巨額の援助まで選ぶ事が出来る。



 援助できる最高額を選択し、Enact(実施する)ボタンを押す。 これで大統領令によりコントラへ大量の武器が送られることになる。 今する事はこれだけである。画面下のスコアが0点である事を確認し、GameメニューからNext Turn(次のターン)を選ぶ。



 Next Turn(次のターン)を選ぶと、コンピュータがその年に起こった出来事を表示する。 この時、ソ連がコントラへの武器供与について異議を唱えるであろう。 危機の始まりである。

 プレイヤーは危機をエスカレートさせる(ソ連の異議を拒絶する)か引き下がるか、どちらかを選ぶ事が出来る。 危機をエスカレートさせる場合、世界は戦争へと近づく。もしデフコン1(防衛基準態勢 1)を越えた場合、核戦争が始まってゲームは終了する。 引き下がった場合、政策は撤回され、威信値を失う。(後で説明する「超大国による危機」参照。) 決定後しばらくコンビュータが処理を行い、1990年としてゲームが再開する。 画面下のスコアをチェックする事。もし地政学的に有効な行動を取った場合、この値はソ連よりも高くなる。 この値が低い場合、ソ連にリードされていることになる。

 ゲームは8年間続く。核戦争の危機を乗り越え、最終的にスコアの高い国が勝利する。 メニューには他にも沢山のオプションがあり、世界の様々な情報を提供する。 敵国を弱体化させ、友好国をサポートする事。 マニュアルを読みながら、Beginner Level(初心者)で実際にゲームを始めてみる。

初めてのプレイ

 再度ゲームを起動し、NEW GAMEからOPTIONS画面へと進む。 OPTIONS画面ではBeginner Level(初心者)、Single Player(一人)、USA(アメリカ)を選択する。

目的

 ゲームの目的は自国の地政学的威信値を高め、ソ連の地政学的威信値を弱める事である。 地政学的威信値とは「人気」のようなもので、理解することは難しくない。 プレイヤーは他国から気に入られ、世界の人気者にならなくてはならない。 他の言い方をすると、友好国の数を増やすという意味である。 地政学の世界において、友好国の数は軍事力を意味する。 ゲームの目的は自国の強力な友好国を増やす事であり、敵国の友好国を減らして弱体化させる事である。

 威信とは地政学的人気と類似している。 各国には主権があり、プレイヤーの選択に影響されて何をすべきか行動する。これが威信値を直接増減させる。 直接的な征服や軍事力の行使も威信値を高める事になるであろう。 しかし、威信値を高めるに当たって核戦争は避けなければならない。 核戦争が始まれば、今までのいかなる努力も無駄に終わる。

他国への接近

 どうやって他国に好感を持たれるか?それには二つの方法がある。 他国に利益をもたらすか、他国を叩くかである。 他国に対する戦略は、その国との関係に依存する。 その国と良い関係を結んでいる場合、利益をもたらす方が良いであろう。 逆にその国との関係が悪い場合は、叩いた方が良い。

 南アフリカのアフリカ民族会議からジンバブエのZAPU、カナリア諸島解放運動、センデロルミノソなど、各国には反政府勢力が存在する。 これら反政府勢力を支援することによって、自国に反抗的な政府を倒し、自国に友好的で従順な政府を樹立させることができる。 これがビギナーレベルの主要な戦略となる。 反政府勢力への援助には、核武装した二つの大国の意志が複雑に絡み合う。 もしどちらかの陣営が一方の陣営に不満を抱いた場合、核戦争の危機が高まる。 相手の暗黙の了解や黙認がなければ、お互いが破滅するであろう。

攻めの戦略

 このゲームには二つの戦略がある。それは攻めと守りという戦略である。 攻めとは非友好的な国の政府を倒すことである。 ただし、これには二つの障壁がある。一つ目の障壁は、いくつかの国の政府はとても強く、倒すのが難しいという事である。 例えば中国政府はとても強く、反政府勢力によって倒すことは難しい。 ここの反政府勢力に資金を援助しても、無駄に終わるであろう。 二つ目の障壁は、ソ連と緊密な国の政府を倒す事は難しいという事である。 例えばポーランドはソ連にとって価値があり、その政府とはワルシャワ条約で結ばれている。 そこに手を出すことは、ソ連の怒りを買う事になる。

反政府勢力について

 反政府勢力にはテロリスト、ゲリラ、反乱軍という三種類がある。 強力で堅固な政府には、こういった反政府勢力が存在しない。 テロリストは最も弱い反政府勢力である。 テロリストが勢力を拡大するとゲリラとなり、ゲリラ戦が始まる。 ゲリラが勢力を拡大すると反乱軍となり、内戦が始まる。 これらは同じに見えるが、ゲーム上は決定的に異なる。 メニューのCountries(世界情勢)からInsurgency(反政府勢力の動向)を選ぶと、 各国における反政府勢力の活動状況を見る事ができる。



 この地図を見ることによって、反政府勢力の活動がどの程度のレベルにあるのか知ることができる。 危機で異議を唱える時は、その国の反乱勢力の動向、特にゲリラ戦に関しては注視しなければならない。

反政府勢力への援助

 政府の転覆をもくろむ場合、二つの方法がある。それは反政府勢力への援助と反政府勢力への派兵という方法である。 これらはMake Policies(政策決定)メニューから選ぶ事が出来る。 反政府勢力への援助額は、反政府勢力の規模に依存する。 テロリストは数丁の銃や小規模のダイナマイトで満足するため、多くの資金を必要としない。 ゲリラは多くの銃や弾丸、ロケット、地雷などを必要とするため、テロリストより多くの資金を必要とする。 反乱軍は反政府勢力として最大であり、戦車、火砲などの重火器を購入するために、最高額の資金を必要とする。 二つ目の選択肢は、超大国による派兵という、さらに過激な方法である。

 ニカラグアのコントラに大量の武器を援助するには、まずホンジュラス・エルサルバドル・コスタリカに派兵しなければならない。 このような大量の武器は、大量の兵によって搬送されるからだ。 超大国は国境とは無関係に少量の武器をいつでも世界各国へ供与する事が出来る。 しかし大量の武器を搬送するには、まず隣国へ大量の軍隊を派兵し、そこを経由して陸路で搬送しなければならない。 このゲームにおいて、隣国への派兵は大きな関心を引くことであろう。

 反政府勢力への最も直接的な援助とは、武力介入である。 これは政府転覆をもくろむ反政府勢力を援助すべく、自国の軍隊をその国へ送り込む事を意味する。 反政府勢力への派兵には制限がある。 反政府勢力へ派兵する前に、まずその国と隣接する国へと派兵しなければならない。 軍隊は隣国を経由して、陸路で派兵されるためである。 このため、反政府勢力へ派兵できる数は、隣国へ派兵した数と同じかより少ない数だけである。 ただし、超大国が保有する5,000人の海兵隊は、地球上のいかなる紛争地へも上陸することができる。

 アメリカが反政府勢力へ派兵し、ソ連が政府勢力へ派兵した場合、両者は銃火を交えるであろう。 アメリカ兵がソ連兵の銃弾に倒れたり、その逆もおこる。 両陣営による直接的な戦闘は世界の平和にとって好ましくない。 これは世界の崩壊を加速させる事を意味する。海兵隊を派兵する場合、十分注意しなければならない。 一度派兵を決定すると、兵は撤収するまで現地に駐留する。 もしくは、駐留先の国が兵を追い返す場合もある。 軍事援助を行う場合、その援助は毎年自動的に継続される。 どこかの国に10百万ドルの軍事援助を行った場合、政策を変更するまで毎年10百万ドルの軍事援助が行われる事になる。

守りの戦略

 友好勢力を敵対勢力から守る事が、このゲームにおける守りの戦略である。 これには援助と派兵という二つの方法がある。 これは政府だけでなく、反政府勢力にも実施することができる。 反政府勢力が武器を欲しがっている場合、反政府勢力は何の制約もなく武器を受け入れる。 しかし政府は援助に対して、超大国の息がかかっていると判断する。

 政府が超大国の援助をどの程度疑うかは、両国間の友好関係に依存する。 例えば、リビアのカダフィ大佐は異教徒であるアメリカの軍事援助を受け入れない。 一方、西ドイツはアメリカの軍事援助を何の疑いもなく受け入れる。 派兵も援助と同様であるが、各国はより敏感に反応する。 派兵は野心的であると警戒するからである。

 プルダウンメニューに表示されている金額を政府に提供することができるが、灰色で表示されている金額は選ぶ事が出来ない。



 また派兵には他の制限もある。それは予算の不足である。 超大国といえど、世界中に軍隊を送ることができるほどの潤沢な予算はない。 もし一国に多くの兵を送り込みたい場合、他の国から兵を撤収させなければならない。 使うことが出来る予算と兵員は、政策決定ウインドウの下部に表示される。

守りの危機

 守りの戦略は、危機でも用いる事ができる。 例えばソ連が西ドイツに軍隊を送った場合、最優先で阻止しなければならない。 この場合、ソ連に対して強固に異議を唱える事ができる。 ただし、デフコン1を越えると核戦争となってしまう。



 守りの危機に対応するため、各ターンの最初にEvents(出来事)からUSSR actions(ソ連の行動)を選ぶ。 この画面ではアドバイザリが様々なアドバイスをしてくれる。



 もし許容できない行動を見つけた場合、ウインドウ下部にあるQuestion(懸念とする)ボタンを押す。 これにより、ソ連に対して懸念を示す外交文書を送ることになる。 外交文書を受け取ったソ連は討議し、引き下がるか挑戦するかを回答する。 ソ連が挑戦した場合、アメリカは引き下がるか、次のステージへエスカレートさせるかを選ぶ事が出来る。



 もし次のステージへ進んだ場合、外交的な危機が発生する。 ここで引き下がった陣営は威信値を失う。 もし両者が引き下がらなかった場合、危機は軍事危機へと発展する。

 軍事危機はデフコン1を越えての核戦争か、外交的敗北による威信値の大量喪失かをもたらす。 また軍事危機は偶発的な核戦争をも引き起こす。 ソ連を止めるという重大な決心がない場合、危機を起こしてはならない。 引き下がる事は威信値の喪失につながり、エスカレートさせる事は核戦争につながるからだ。

 ソ連もアメリカの行動に対して危機を起こす。 ソ連の危機に対しても、何らかの回答をしなければならい。 政策を曲げずにソ連に立ち向かうのであれば、事態はエスカレートする。 もし引き下がれば威信値を失うし、ソ連が怒ってさらに事態をエスカレートさせれば、核戦争の危険が高まる。 どのように行動するか、慎重に判断しなければならない。

 危機が始まると危機管理アドバイザリが現れて、アドバイスをしてくれる。 アドバイスは危機をエスカレートさせるべきか、引き下がるべきか、判断の手助けになるであろう。

他のメニューオプション

 メニューにはたくさんの項目が並んでいるが、いずれもゲームには直接関係しない。 しかしそれらを知ることでゲームはより楽しくなる。



 Countries(世界情勢)は世界のどこで何が起こったかを表示する。 Major Events(主な出来事)は革命が起こった場所、 Insurgency(反政府勢力の動向)は各国における反政府活動のレベルを表示する。 Spheres of Influence(勢力圏)は各国が超大国のいずれの陣営に所属しているか表示する。 ここではソ連の勢力拡大に注意し、自国の勢力が拡大するよう努めること。

 アメリカ・ソ連どちらかの国をクリックしてRelations(国家情報)を選ぶと、両超大国による政策が表示される。 これにより、両超大国がどの国や反政府勢力に幾らの軍事援助を行っているかを知ることができる。 Events(出来事)は世界で起こった出来事をまとめて知る事ができる。 USSR actions(ソ連の行動)で、ソ連が取った重要な行動を知ることができる。 USSR other(その他のソ連の行動)は、ソ連が取った重要でない行動を知ることができる。 Minor Country News(その他の国のニュース)は、両大国以外の国で起こった出来事を知ることができる。



 Briefing(ブリーフィングノート)には3つのメニューが含まれる。 Closeup(詳しい国家情報)は選択した国の詳細を知ることができる。 ここにはその国に対して行った両超大国の政策も表示される。 また反政府勢力の動向も表示されるので、注視する必要がある。 Closeup(詳しい国家情報)は国をダブルクリックしても表示される。 Background(世界背景)は世界の国々の情報を単に表示するだけであり、ゲームとは直接関係が無い。 世界観を気軽に楽しんで欲しい。

 満足したのならば、Resume Game(ゲーム再開)でゲームに戻る事が出来る。 History(状況の推移)は選択した国の詳細情報が時系列で表示される。 ある程度ゲームを進めた後でチェックしてみると良いだろう。

ゲームの終了

 ゲームは一方の陣営がデフコン1に至ると終了する。 デフコン1とは戦争状態を意味する。 軍事危機により、偶発的核戦争が勃発しても同様である。 核戦争の危機を乗り越えて1997年に到達した時もゲームが終了し、威信値がスコアとなる。 その時点で威信値がソ連より上まわっていれば、上出来である。 GameメニューからScore(スコア)を選ぶと、スコアの経過を見る事ができる。



 危機に対処して威信値を増やす事がスコアを稼ぐ事につながる。 アメリカのスコアは白い四角形で表示され、ソ連のスコアは黒い四角形で表示される。 ソ連のスコアが上回っていれば負けである。 200ポイント以内で上回っていれば辛勝であり、700ポイントを越えて上回っていれば完勝である。

ゲームのヒント

 Countries(世界情勢)メニューからInsurgency(反政府勢力の動向)を選ぶと、 世界で発生した内戦やそれに介入したソ連の動向を知ることができる。 ここに表示される内戦は注意する事。 また、ゲリラ戦は内戦に発展することがある。 Events(出来事)メニューのUSSR Actions(ソ連の行動)はソ連が行った政策であり、危機を起こすことができる。 以上がビギナーレベルのプレイに必要な情報である。 ビギナーレベルである程度良いスコアを出す事が出来たのならば、次の「より高度なビギナーレベル」へ進むこと。

より高度なビギナーレベル

 バランスオブパワーをプレイし、ゲームの仕組みを理解できた事であろう。 ここではビギナーレベルの背景にある理論とヒントを説明する。

ドミノ理論

 ビギナーレベルにおける超大国の中心的な政策とは、古典的なドミノ理論の一種である。 超大国は対象国の隣国に派兵しなければ、対象国の反政府勢力を支援することができない。 したがって、反政府勢力への支援は隣国への派兵から始まる。 これは新しい国や敵対的な国に軍を駐留させるために、とても重要である。 世界各地に軍を点在させず、戦略的に重要な地域にのみ駐留させること。 また、ソ連の覇権から友好国を守らなければならない。

 反政府活動は偶発的に発生したり、成長しない。 反政府勢力は国内情勢に従って成長し、その威力は政府勢力の威力に反比例する。 いくつかの政府はとても強く、また、いくつかの政府はとても弱い。 強い政府が支配する国では、反政府活動は成功しないであろう。 しかしながら、テロといった低いレベルであっても反政府勢力の基礎は残る。 この例は西ドイツが顕著である。 西ドイツ政府は強く反政府勢力は弱いが、テロリストを根絶させるには至らない。 弱い国においては、反政府活動により簡単に内戦が発生する。 そのような国は建国間もなく、小さくて貧しい。 そういった国に対する反政府勢力への援助は、自国に対して敵対的な政府を転覆させるに十分である。 もちろん、ソ連も同様にそれを狙っている。

 どの国を援助し、どの国を弱体化させるか? それはRelation(国家情報)メニューのDiplomatic Relations(外交関係)を見れば判断できる。 ここには援助すべき友好的な国や、弱体化すべき敵対的な国が表示される。 世界は左翼グループと右翼グループとに二極化されている。 多くの国は左翼か右翼の思想を持ち、反政府勢力は逆の思想を持つ。 内戦で反政府勢力が勝利すれば、その反政府勢力が政府となり、倒された政府は反政府勢力となる。 一般的に左翼政府はソ連を支持し、右翼政府はアメリカを支持する。 したがって、左翼政府はアメリカにとって敵対的である。そのような国は反政府勢力を支援しなければならない。 革命が成功すると右翼政府が樹立し、アメリカにとって友好的な国となる。

 右翼でもアメリカにとって敵対的な政府は、革命により奇妙な変質を遂げる。 もし革命が成功すれば、その新政府は左翼となるだろう。 新政府はアメリカに感謝の意を示すが、一方でソ連にも友好的となる。 またアメリカに敵対的な右翼に対しては、注意深く判断しなければならない。

危機

 危機を適切に対応する事は難しく、ほとんどのプレイは危機によって勝敗が左右される。 これはquestion(懸念とする)で得られる威信値よりも多くの威信値が動くからだ。 例えばアフガニスタンのムジャヒディンに大量の武器を供与した場合。 仮に武器供与が成功してアフガニスタンの共産主義政権を転覆させたとしても、威信値は10〜20ポイントしか得られない。 一方、危機は100ポイント近くの威信値を簡単に喪失させる。 超大国による危機への対応は、世界中の注目を集めているからだ。 従って、危機への対応はゲームの勝敗を左右する。 危機をエスカレートさせたり、危機から引き下がる場合、その点に注意しなければならない。

 危機とはポーカーとよく似ている。危機を扱う絶対的な法則は、アメリカもソ連も持ち合わせていない。 たった一つ使用できる手段としては、ブラフ(はったり)がある。 ブラフを効果的に使用するために、まず堅固な外交方針を示さなければならない。 当該国に対してアメリカが懸念とした事項・外交関係・反政府勢力への動向・以前発生した危機に対する対処、 ソ連はこれらを勘案し、アメリカの外交方針を探る。 外交方針を堅固にした上でアメリカが戦争も辞さないという態度を取ることにより、相手をブラフにかけることができる。

 ソ連の危機に対する回答について、注意深く観察する事。 ソ連が回答する文言を読むことにより、その危機への対処がブラフか本気か見抜くことができる。 「遺憾に思う」といった弱い表現だと、ブラフである可能性が高い。

 危機は多くの危険を抱えている。 ソ連を追い込む意志がなく、どこかで引き下がるつもりであっても、戦争の危険は高まる。 危機が軍事的危機にエスカレートした場合、偶発的な核戦争はいつでも始まりうる。 例え核戦争が始まらなくても、高いレベルの危機で引き下がれば、多くの威信値を失う。 危機における一回目や二回目のステップ(Question(懸念とする)やChallenge(挑戦する))では、 威信値は失われない。

 これらの低いレベルを越えるとBackChannel Communication(秘密裏の会談)が始まり、ウインドウタイトルにも表示される。 これも越えるとDiplomatic Crisis(外交危機)となり、この議題は公に公開される。 公に公開されると世界中の注目を集める事となり、その中で引き下がれば多くの威信値を失う事となる。 小さくつまらない問題で多くの威信値を失うことは賢明ではない。

 危機における判断を手助けするために、引き下がった時に失う威信値がウインドウ下に表示されている。 この値を参考にして危機に対処すると良いだろう。 この値は厳密ではないが、参考にはなるはずだ。

 危機は世界の文明度も下げる。 超大国が互いに武力を振りかざせば、他の国も軍事力を強化する。 超大国が好戦的なムードを作れば、世界もその影響を受けるのである。 その上、アメリカとソ連が高いレベルで緊張して対峙すると、軍事的危機における偶発的な核戦争はより起こりやすくなる。

原因と結果

 このゲームにおける原因と結果はわかりづらい。 全てにおいて、なぜそれがそうなったのか知ることは難しい。 もちろん状況を知る方法はある。 マップに表示される革命といった出来事や、Closeup(世界情勢)メニューを見る事である。 問題はこれらの断片的な出来事がいかに全体に影響を及ぼすかという点である。

 何らかの原因が存在するため、結果として危機も存在する。 多くの人々は個々の原因に対して個々の結果があると考える。 しかし現実世界はもっと複雑であり、バランスオブパワーはその複雑さを再現している。 個々の行動は世界に対してさざ波のように多くの影響を与え、個々の出来事は複雑な原因を内包する。 これに対処するために、コンピュータゲームではめったに使用しないスキルが要求される。 それは判断力である。

 自らの行動がいかなるインパクトを与えるかについては、アドバイザリの反応を見ることによってうかがい知ることができる。 その上でBriefings(ブリーフィーングノート)メニューにあるHistory(状況の推移)を適時確認することにより、 ゲームがうまく進行しているか知ることができる。 これらの表は当該国に対する政策(軍事援助など)の進展状況を表示している。 当該国に対する原因の結果は、ここを見る事によって知ることができる。

オプション

 初心者レベルはside to play(受け持ち国)とnumber of players(プレイ人数)という 二つのオプションで遊ぶことができる。 受け持ち国を変更することによって、ソビエト連邦書記局長で遊ぶことができる。 ソ連で遊ぶことにより、世界を別の視点から観察する事ができるであろう。

 プレイ人数を変更すれば、友人と一緒に遊ぶことができる。 このオプションを選択すると一人はアメリカ、もう一人はソ連を担当する。 二人で一つのコンピュータを使用するので、どちらの順番かわからなくなる時がある。 そうなると、アフガニスタン政府に友好的な国が、誤ってその反政府勢力へ派兵してしまう恐れがある。 この問題を解決するために、画面左下隅に現在のプレイヤー名が表示される。 ここに名前が表示されているプレイヤーだけがマウスを使うこと。 ソ連を担当したプレイヤーは、アメリカを担当したプレイヤーがGameメニューのChange Sides(受け持ち国交代)を 選ぶまで待たなければならない。

 交代はいつでも行う事ができ、メッセージとビープ音で誰がマウスを使って良いのか知らせる。 危機の間はコンピュータが自動的にプレイヤーを交代させる。 誤って相手側の行動を行わないよう注意しなければならない。

 二人プレイは一人プレイよりも難しい。 人類の滅亡をめぐる駆け引きは、友達同士には厳しすぎるからだ。 二人プレイによる重要な要素は、両者によるコミュニケーションである。 現実世界では超大国のリーダーがお互いに何を考えているのか知るよしもないが、 二人プレイで遊ぶプレイヤー同士では気心も知れているであろう。 二人プレイでは危機を解決するために、互いに会話する事が重要である。
「ニカラグアから兵を引けば、コントラへの支援をやめる」
といった会話である。

中級者レベル

 中級者レベルには初心者レベルの全てと、新しいコンセプト・より高い現実性が含まれている。 初心者レベルを十分にマスターしていなければ、中級者レベルに挑戦してはならない。

概要

 中級者レベルでは、他国政府の転覆において地政学における相互作用が表現される。 初心者レベルでは反政府勢力を使って敵対的な政府を弱体化させていた。 中級レベルでは友好的な存在を使ったクーデターで政府を転覆させる。 この扱いは難しく、より高度な手腕が必要とされる。 その扱いをサポートするために、さらに詳しい国別内部情報や新しいメニューオプションが与えられる。 ゲーム進行そのものは、中級者レベルも初心者レベルと同じである。 ゲームの目的も同様である。

1)敵対的な存在を弱体化させ、友好的な存在を守る
2)危機を使ってソ連の動きを封じ込める
3)ソ連が始めた危機から自身の政策を守る

クーデターの発生

 中級者レベルの主要な新しいコンセプトはクーデターである。 これは軍隊が起こす政治的要因による政権交代である。 反乱軍は軍事力を用いて革命を勝利に導くが、クーデターは経済状況を起因とする政治的な危機が原因で政権を覆す。 経済状況が良好な場合、政治危機は現政権に有利に働く。 しかし経済状況が悪化している場合、人々の不満が噴出して、現政権はクーデターによって倒される。

 クーデーターの成否は、政権の持っている力によって左右される。 ソ連や東ドイツは市民を統制する力を持っており、クーデターは起こりえない。 強力な政治的統率力を持つ全体主義政府は、他の政府なら転覆する経済状況であっても生き残るのである。 このゲームでは正当な選挙による政権交代もクーデターとして扱う。

不安定化工作

 Destabilization(不安定化工作)を用いてクーデターをおこし、不安定な政権を倒すことができる。 具体的には、CIAを送り込んで反体制派を擁立し、政争を煽るのである。 政権が弱体化していれば、これによって倒すことができる。 ただし政権が強力ならば効果は無いであろう。 不安定化工作にコストは発生しない。争乱はわずかな資金で起こすことができる。 もちろんソ連も同様にコストなしで危機を起こす。 不安定化工作は、対象となった政権の反感を買う。 ただし不安定化工作に成功した場合、反感を買うことはない。

経済援助によるクーデーター予防

 経済援助によって友好的な政権をクーデターから守る事が出来る。 これは国への経済援助ではなく、支配者個人への経済援助である。 この経済援助は軍事費から調達されるので、GNPが減少する。 経済援助を受けた支配者は、カネをばらまいてその支配を確固たるものとするであろう。 これはその国における人々の不満を和らげ、クーデターの危険を減少させる。

 危機の減少幅は支配者への援助額に依存する。 マリは貧しい国であり、そこにGNPの2倍にあたる4,000百万ドルをつぎ込めば莫大な効果があるであろう。 マリ政府の政敵は壊滅するはずである。 しかし、イギリスのように豊かな国に対しての効果は少ない。 従って、豊かな国を経済援助で守る事は難しい。

クーデターの効果

 クーデータが発生すると、政府は反対の思想を持つ政権に交代する。 政府が左翼だった場合右翼が政権を取り、右翼の残党は下野して反体制派となる。 ただし、この一般原則は東側諸国のような共産主義国家には該当しない。 共産主義国家は右翼的思想を持ち得ないからだ。 そのような国におけるクーデターとは、左翼政権が別の左翼政権に交代するだけである。

 新政権はどちらの超大国に所属すべきかを再調整する。 政権が左翼から右翼へ交代した場合、恐らくアメリカを迎合するであろう。 政権が左翼へ交代した場合、通常その政府との関係は悪化する。 また極右や極左は両陣営から嫌われ、関係が悪化する。

 強固な政権の西側諸国は、劇的な政策変更を避ける。 イギリスはマーガレット・サッチャーを追い出して左翼寄りになるかも知れないが、その政策変更はわずかである。 政権交代前と同じく、アメリカと友好的であろうとするだろう。 劇的な政策変更は、政権基盤が脆弱な第三国で発生する。 そのような国でクーデターが起こると、ニュースとして報告され、両超大国のスコアが変動する。

新しいメニューオプション

 Countries(世界情勢)メニュー 世界情勢メニューにCoup d'etat?(クーデターの可能性)という新しいエントリが追加される。 ここを見る事により、どの国でクーデターが発生しそうか知ることができる。

経済援助と不安定化工作

 Relations(国家情報)メニューにEconomic Aid(経済援助)とDestabilization(不安定化工作)が追加される。 ここを見る事によりアメリカ・ソ連がどの国に幾らの金額を援助しているのか、また、 どの国に工作員を派遣しているのか知ることができる。

Make Policies(政策決定)メニュー

 政策決定メニューにEconomic Aid(経済援助)とDestabilize(不安定化工作)が追加される。 これらのメニューを選ぶと、先ほど説明したとおりに機能する。

プレイする上でのヒント

 中級者レベルは初心者レベルと同じようにプレイすることができるが、ソ連が何に対して譲歩できないか見極めなければならない。 また世界で発生する動乱と、それによって弱体化する政府についても注視する事。 そのような弱体化した政府を発見した時、その政府を守るか、弱体化を煽るか決定しなければならない。 友好的な政府は守り、敵対的な政府は弱体化させる事。

 中級者レベルでは間接的行動を導入している。 初心者レベルにおける超大国の行動は直接的行動であった。しかし、中級者レベルにおけるクーデターは間接的行動である。 経済援助と不安定化工作は直接的な要素であるが、当該国に対して間接的に作用する。

 クーデターは貧しい経済状況によっておこされる事を忘れないように。 国を貧しくさせる効果的な方法は、その国に軍隊を派遣することである。 多数の兵を送り込むと、当該国の経済は弱体化する。 当該国の政府は自らの安全のために、経済を弱体化させてでも軍事費への支出を増やすからだ。 したがって、軍隊の駐留とそこに対する軍事援助はクーデターの基盤を作る。 また反体制派に対する援助も、政府の軍事費を増やす事になる。

単発イベントと継続イベント

 ここで単発イベントと継続イベントの区別を明確にする。 継続イベントとは、年をまたいで継続されるイベントである。 例えば、経済援助・軍事援助・政府への介入は、一度設定すると年をまたいで継続される。 単発イベントとは、年内で完結するイベントである。 例えばメキシコに対する経済援助の増額は単発イベントであり、年内で完結する。 単発イベントは年内で完結されるが、その影響は継続される。

 このゲームにおける原因と結果は全てにおいて自然に影響する。 最も大きな影響は、継続イベントによってもたらされる。 例えば、アメリカがホンジュラスへの経済援助を減額させても、 それはホンジュラスにおけるクーデターの直接的な原因とはならない。 ただし経済援助が減額されたまま継続すると、国が貧しくなり、クーデターが引き起こされる。 つまり経済援助の減額は、クーデターの遠因となるのである。 正確に言うと、継続的ではない経済援助がクーデターの原因となる。 それ故に、友好国に対しては単発的ではなく継続的に注意を向けなければならない。 去年何を変更したかは、去年何をやり遂げたかと同じぐらい重要な意味を持つ。

 中級者レベルは初心者レベルのように簡単ではない。 中級者レベルにおけるソ連は友好国により気を使い、加えて、冒険的である。 さらに初心者レベルではゲーム開始時における各国の外交関係はだいたい同じだが、 中級者レベルではプレイするごとにわずかに異なる。

上級者レベル

 上級者レベルは中級者レベルの全てと、より現実的な新しい要素が含まれる。 中級者レベルを十分にマスターしていなければ、上級者レベルに挑戦してはならない。

概要

 上級者レベルはフィンランド化という第三の政変をもたらす。 フィンランド化を理解するには、フィンランドが歩んだ戦後の歴史を理解しなければならない。 フィンランドはナチスドイツと同盟を結び、ソ連と戦っていた。 戦争終了時、多くの枢軸国はソ連の占領を受けたが、フィンランドは占領を受けなかった。 なぜなら、ソ連は他の関心事に没頭していたからだ。 一方、フィンランドはナチスドイツの同盟国であったため、西側諸国による積極的な援助もなかった。 これにより、フィンランドは外交的孤立状態となった。

 フィンランドは友好国もなく、強大な敵の影の中でひっそりと生きていた。 ソ連もフィンランドに対して侵略する必要を見いだせずにいたので、無視していた。 そんな中フィンランドは強力な隣人の興味を引くよう、計算した上で色目を使い始めた。 名目上のフィンランドは中立国であるが、これによってソ連の強い影響下に入った。

 外交力軍事力共に貧弱な場合、フィンランド化はいかなる国においても起こりうる。 被害者が超大国から敵視されて叩き潰されそうになり、かつ外部のサポートも十分でない時、 被害者はフィンランド化する。 フィンランド化した国は危険な超大国にすり寄ることによって敵視を解き、友好的であろうとする。 このような経緯でフィンランド化した国は、両陣営のいずれに属するか決定される。 フィンランドとアメリカは遠い関係にあるが、それは両国関係が不十分だからでは無い。 その裏にいるソ連がアメリカと敵対的なため、両者は遠い関係なのである。

 フィンランド化はヨーロッパで特に重要である。 西ドイツのようなヨーロッパ諸国は、ソ連の強力な影響下にある国と国境を接している。 東欧におけるソ連の軍事力は西欧諸国にとって脅威であり、アメリカの保護がなければソ連になびこうとするであろう。 上級者レベルでは各国におけるフィンランド化の加速、もしくは、抑制を行わなければならない。 その手法として、外交圧力と条約締結という二つの手法がある。

外交圧力

 外交圧力とは言葉や挑発で脅すことであり、Policies(政策決定)メニューから実施する事が出来る。



 外交文書に「重大な関心」と表現されていれば、それは弱い圧力を意味する。 それとは逆に最大限の外交攻勢を仕掛ける場合は、まず当該国の湾港内に海軍を展開させる。 その上で相手を非難したり、敵国として吊し上げて協議を行う。 これらの行動は、当該国に対して拒絶できない武力差があることを気付かせる。 これによって当該国が身の危険を感じたとき、超大国によるフィンランド化が起こりうる。

 さらなる圧力を加えれば、フィンランド化はさらに加速する。 超大国がその残虐性を見せつければ、間接的な圧力となってフィンランド化が強力に加速する。 これは大きな危機の後に現れる。 大きな危機でソ連を脅して引き下がらせれば、各国はアメリカに対して恐怖感を抱き、 アメリカに対するフィンランド化が加速する。

 当該国がフィンランド化した場合、当該国の指導者が超大国を称えるニュースメッセージが現れる。 ただしフィンランド化という直接的な表現は現れないので、ニュースの文言によく注意すること。

条約締結

 外交圧力を緩和させる方法は、条約締結である。 ソ連にフィンランド化しそうな友好国があった場合、当該国が受けている外交圧力をいくつかの方法で緩和させる事ができる。 例えば当該国に対して軍事援助を施して軍備を拡大させたり、アメリカ軍を駐留させる事である。 防衛力を増強させる事により、当該国はアメリカとの絆を確認するであろう。 また国家間の条約にサインさせる事により、外交圧力を緩和させることができる。



 このゲームにおける条約締結は現実世界よりもシンプルである。 このゲームにおける条約締結は、当該国を支援していると表明する事を意味している。 これは当該国が超大国と一定の関係が存在する事を暗喩する。 また条約の種類によっては、当該国が超大国による軍事的保護下に入っていることも意味する。 条約締結は超大国と小国との外交関係を樹立させる。 ただし、核による防衛条約は絶対的な義務であり、調印した当該国への保護は核戦争の危険性を内包する。

注意

 条約締結した国はアメリカにとって重要国として位置づけされる。 確固とした条約締結国に対しては、多くの軍を派遣する価値がある。 条約は費用を掛けずに締結することができる。 しかしながら、これには幾つか注意しなければならない。 まず、一度条約を締結すると当該国が取り消すまで条約は続く。 アメリカが条約を取り消す事はできない。 次に、条約締結は栄誉と共になされなければならない。 当該国政府が反政府勢力によって倒されたりクーデターによって転覆したりすると、 締結していた条約のレベルに応じて、世界各国と締結した全条約の信頼性に傷が付く。

 例えば西ドイツについて。 アメリカは核による防衛条約を西ドイツと締結しており、その防衛は絶対的な義務である。 もし西ドイツ政府が反政府勢力によって倒れたりクーデターで転覆すると、アメリカが締結している全条約の信頼性が崩壊する。 いかに熱心に西ドイツを支えていても、西ドイツ政府が倒れてしまえば条約義務違反となる。

 違反時の各国における信頼性の喪失量は、その理由に依存する。 反政府勢力により政府が倒れると、多くの信頼性を失う。 政治的な理由により政権が交代した場合、信頼性の喪失量はその国が果たす重要度に依存する。 従って西ドイツ政府が選挙の結果により政権交代しても、多くの信頼性は失われない。 一方、ジンバブエでクーデターが発生して大統領の政策が大きく転換された場合、多くの信頼性が失われる。

軍事力

 このゲームにおいて、軍事力は重要なコンセプトである。 軍事力には、軍事費・兵員・距離という三つの要素が存在する。 本質的な軍事力は軍事費・兵員の両者と関係を持つ。 従って、強力な軍隊を構成するために多くの武器と兵士を必要とする。 もしそのどちらか一方が多くてどちらか一方が少ない場合、その軍事力はやや弱くなる。

 本質的な軍事力とは、実際に国境へ派遣することができる軍事力である。 これは国防力を決定する上で重要である。 当該国における侵略者の軍事力は、侵略者の母国と当該国の距離にも依存する。 両者が国境を接している場合、侵略者の軍事力は100%の力で当該国を攻撃することができる。 そうでない場合、侵略者の軍事力は距離に比例して減少する。

 フィンランド化は超大国の近くで最も発生しやすいが、その理由はこれである。 また軍隊を移動させれば、軍事力によるフィンランド化を意図的に発生させる事ができる。 超大国がある国に軍隊を駐留させれば、国境を接する他の国に軍隊を展開することが可能になる。 例えばソ連が軍隊をリビアに駐留させた場合。 リビアと国境を接するチュニジア・アルジェリア・スーダン・エジプトは、 駐留するソ連の軍事力によりフィンランド化しやすくなる。

戦略

 遠い国と良い関係を築いて軍隊を駐留させた場合、その国と国境を接する国々はフィンランド化しやすくなる。 その国が周辺国に対するフィンランド化の足場となるからだ。 もちろんソ連も同様の戦略を用いてくる。

新しいメニュー項目

 メニューにいくつかの新しいメニュー項目が追加される。 Countries(世界情勢)メニューには二つの項目が追加され、各国におけるフィンランド化傾向を知る事ができる。 ここに表示される地図は、各ターン開始時における世界の様子である。 地図は年の間に発生した報告されない小さな出来事を反映しているが、完全に正確ではない。 フィンランド化傾向には締結した条約・駐留軍・外交圧力やソ連の取った行動などが影響する。 この地図は便利であるが、絶対的ではない。

 条約締結と外交圧力に関するメニューがMake Policy(政策決定)メニューに追加される。 またRelations(国家情報)メニューから、アメリカ・ソ連が条約締結をした国と外交圧力をかけている国を見る事が出来る。 Closeup(世界情勢)メニューからは、アメリカ・ソ連へのフィンランド化傾向を見る事が出来る。


ヒント

 上級者レベルをクリアするには、より注意深く政策決定を行わなければならない。 初心者レベルと中級者レベルにおいては場当たり的な戦略が通用した。 それは友好国に対しては援助し、敵国に対しては弱体化させるという戦略がはっきりしていたからだ。 上級者レベルにおいては、原因と結果を考慮して行動しなければならない。 条約締結は友好国を強力に保護するが、使用を誤ると危険である。

 例えばアフガニスタンにおける内戦でムジャヒディンが勝利した場合を考える。 新しいムジャヒディン政府をソ連のフィンランド化から守るために、 アメリカが軍事援助と共に時期尚早な防衛条約までも締結したとする。 これに対して、ソ連は安価で大量の武器と、多くの兵員を反政府勢力に送り込むであろう。 ここで新しいムジャヒディン政府がソ連の息がかかった反政府勢力に倒されれば一大事である。 これを見た各国は、アメリカとの防衛条約を疑う事であろう。 さらにソ連の力を目の当たりにすることによって、ソ連へのフィンランド化も進む。 そうなればアメリカの威信も地に落ちる。 アフガニスタンへの安易な条約締結のために、多くを失うことになるのである。

間接的要素の重要性

 間接的な働きをする要素についても考慮しなければならない。 このゲームにおける条約締結と外交圧力は、多くの間接的要素を持つ。 上級者レベルと下位レベルにおける最も重要な相違点は、この間接的要素が重要な役割を果たしている点である。

・軍事力における心理的影響。軍隊の駐留は当該国のフィンランド化を抑制する。 また敵対している周辺国は不安定要素を増加することになり、フィンランド化しやすくなる。 上級者レベルにおける軍事力がもたらす結果は、単純ではないのである。

・条約の価値。条約の価値は締結した条約レベルに比例する。 もし条約締結国が革命やクーデターで倒れた場合、当該国と締結していた条約は全て失われる。 その上、条約レベルに比例して信頼性も傷つく。

残虐性

 世界各国を軍隊で蹂躙する、何のためらいもなく危機をエスカレートさせる、好戦的なイメージを与える。 これらの行動は、世界に力の支配を意識させる。 小国は超大国の軍事力を恐れ、フィンランド化が加速するであろう。 これには問題がある。対抗するソ連も、アメリカと同じように力による支配を強めるからだ。

多極化レベル

 多極化レベルはバランスオブパワーにおける最も高度で難しいレベルである。 多極化レベルにおける世界は、受動的ではなく能動的である。 初心者レベルにおける行動は、武器と兵員の輸送に限定されていた。 また第三世界におけるいくつかの国は他の国と衝突するに十分な軍事力を持っていたが、行使しなかった。 このレベルにおいて、そのような国は独自に戦争を開始する。

理論

 国際関係には、二極化と他極化という二つの競合する視点がある。 二極化された世界は、二つの超大国と多くの小国という視点で捉えられる。 超大国の行動は世界に大きな影響を与えるが、小国の行動は世界に小さな影響しか与えない。 小国の主要な役割は、超大国のいずれの陣営に入るかというだけである。

 多極化された世界でも、アメリカとソ連という二つの超大国は存在する しかし各国はそれよりも重要な個別問題を抱えている。 多極化は二極化よりも複雑で、理解することは難しい。 バランスオブパワーにおける多極化レベルはこれらをシンプルに表現しているが、それでもなお難しいはずである。

貿易

 政策決定メニューに貿易政策項目が追加され、各国に対する貿易政策を決定する事が出来る。 この政策は当該国との外交方針に対して影響を与え、経済に対しては何ら影響を与えない。

新しいメニュー項目

 Relations(国家情報)メニューに新しい項目が追加される。



 対象国をクリックして選択する。 その後政策決定メニューを選ぶとgoing out(この国から)とgoing in(この国へ)という項目が追加されている。 going out(この国から)とは、他の国からこの国への政策決定を意味する。 going in(この国へ)とは、この国から他の国への政策決定を意味する。 なお、アメリカへの不安定活動といった実際に行われていない活動は画面上に表示されない。

合計値の表示

 Briefing(ブリーフィングノート)メニューのCloseup(詳しい国家情報)に、 軍事援助と反政府勢力への派兵の合計値が表示される。 この合計値には、第三国からの軍事援助額ならびに反政府勢力への派兵数も含まれる。

小国の危機

 Events(出来事)メニューのMinor Country News(その他の国のニュース)から、超大国以外の国の政策変更を知ることができる。



 当該国に対して十分な影響力を持っている場合、この政策決定に介入することができる。 当該国への影響力には、次の要素が勘案される。

・良好な外交関係
・強力な条約締結
・多数の駐留軍
・政府への多額の軍事援助

 当該国がアメリカの介入を拒否する事もあるため、政策介入は常に成功するとは限らない。 その場合超大国間の危機のように、小国との危機をエスカレートさせる事ができる。 ただし小国との危機は純粋に外交的な危機であり、軍事的な攻撃・核攻撃・征服は行われない。 小国との危機をエスカレートさせた場合、外交圧力が高くなり、当該国から敵視される。 また小国との危機で引き下がっても、威信値は失われない。

小国間戦争

 小国間戦争は特別な危険をもたらす。 小国は外交関係が特に悪化した場合に戦争を始め、どちらかの国が降伏するまで継続する。 戦争が終了すると、敗戦国の外交方針は戦勝国の外交方針に変更される。 小国間の戦争は二つのメニューを使って知ることができる。

ヒント

 多極化レベルは上級者レベルより根気強いプレイが求められる。 アメリカは移り変わる世界情勢を把握し、友好国の野心をコントロールしなければならない。 小国に対する強大な外交攻勢は、小国を戦争へ走らせる事を覚えておく事。 戦争が起これば、当該国への戦争支援を強いられるか、降伏によって友好国を失うかとなる。 したがって、最初から戦争をさせないことが最良の手段となる。 小国と核による全面戦争は発生しないが、その対応をおろそかにしてはならない。 小国に対する間接的な影響は、超大国間の全面戦争を誘発する。

 小国の戦争をいかに防ぐか? 最適な方法は超大国が自重することである。 超大国が国際社会で愚かに振る舞うと、小国もその真似をする。 超大国は常に冷静であり、小国の見本とならなければならない。 友好国が勇んで野心的な振る舞いをしようとした場合、それを制止すること。 そのような国への軍事援助や派兵は、戦争を誘発する。 これにより、小さな問題が大きな問題へと発展してしまう。 戦争回避のためにいくらかの威信値を失うことになっても、背に腹は代えられない。

 例えばイスラエルがシリアの反政府勢力へ軍事援助を始めた場合。 この軍事援助はシリアのテロリストに渡り、シリア国内でのテロ活動を激化させる。 これにより、シリアとアラブ世界はイスラエルへの反感を高めるであろう。 こうなれば遠くない未来にどこかの国がイスラエル国内にあるパレスチナへ派兵し、戦争が始まる事となる。

 戦争が始まればイスラエルは派兵されたアラブ諸国をたたき出し、シリア・エジプト・ヨルダンを蹂躙する。 だがソ連はイスラエルのシリアへの進入を看過せず、シリアへ派兵するであろう。 イスラエルとソ連が正面衝突する事になり、イスラエルは叩きのめされる。 そうなった場合、アメリカはどうするか? アメリカはソ連との危機を起こさざるを得なくなり、世界は核の炎に包まれる。 こうならない為にも、最初の時点でイスラエルを制止する事が最善である。

コマンドについて

 バランスオブパワーのコマンドとオプションについて説明する。 以下の説明は主に多極化レベル向けであり、他のレベルは無理に読む必要は無い。

タイトル画面

 この画面にはnew game(新規ゲームの開始)とload an old game(ゲーム再開)という二つのオプションがある。 new game(新規ゲームの開始)を選ぶと、OPTIONS画面が現れる。 load an old game(ゲーム再開)を選ぶと、セーブデータをロードし、中断したゲームを再開する。

オプション画面

 この画面は新規にゲームを開始した場合にのみ表示され、ゲームの種類を選ぶ事が出来る。 選ぶ事が出来る種類とは、難易度・受け持ち国・プレイ人数の三種類である。

難易度

 このオプションでゲームの難易度を調整することができる。 初心者レベルはシンプルであり、ゲームに慣れるのにちょうど良い。 中級者レベルは初心者レベルより複雑で現実的であり、上級者レベルへのステップとなる。 上級者レベルはさらに複雑になる。 多極化レベルはこのゲームにおける最上級のレベルである。

受け持ち国

 このオプションにより、アメリカ合衆国大統領かソビエト連邦書記局長のどちらを担当するか決定する。 一人プレイでソ連を選んだ場合、コンピュータがアメリカを担当する。

プレイ人数

 このオプションにより、一人で遊ぶか二人で遊ぶかを決定する。 一人プレイを選ぶと、コンピュータが対戦相手となる。 二人プレイを選ぶと、人間が対戦相手となって交互にプレイする。

マニュアルプロテクト



 このダイアログボックスはゲームの初期に表示され、マニュアルのページ・行・単語ナンバーを指定して入力を求められる。 下記のサンプルを参考にして正しく入力する事。

・ページ番号とは、マニュアル下部に印刷されているページの事である。
・行番号とは、見出しを含むページの先頭行から数えたテキスト行の事である。 最初の行が1、次の行が2・・・と続く。これには「マニュアルプロテクト」といった見出しも含める。 ただしページ上部に印刷されている、四角に入ったタイトルは数えない。
・単語ナンバーとはページ左から数えた単語の数である。 この時文字や記号の集合体を一つの単語としてカウントする。 「anti-piracy」は一つの単語であり、「Line #2」は二つの単語である。 マニュアルプロテクトの質問に誤って回答した場合、再入力を求められる。 ここでGive Upボタンを押せば、ゲームを終了する。

Game(ゲーム)メニュー



 ゲームメニューを使ってゲームを管理する。 メニューにはscore(スコア)、 next turn(次のターン)、 undo last turn(前のターンをやり直す)、 change sides(受け持ち国交代)、quit game(ゲームの中断)という項目がある。

Score(スコア)

 この項目を選択すると、スコア表示ウインドウが現れる。 ウインドウには、両大国における地政学的威信値が表示される。 スコア表示ウインドウには、ターン毎に獲得した威信値とターン開始時の威信値が表示される。 グラフは両大国が獲得した威信値を時系列で表示する。 ソ連のスコアは黒い四角、アメリカのスコアは白い四角で表現される。 ESCキーを押すと、ウインドウが消える。

Next Turn(次のターン)

 全ての行動を終えてこの項目を選択すると、次のターンへ進む。 次のターンへ進むと、まずソ連がアメリカの行動に対して反応する。 ソ連がアメリカの行動を危惧した場合、Crisis(危機)ウインドウが現れる。 その後コンピュータが各国の内部処理を行う。 この内部処理により経済について計算され、GNPと人口が変化する。 また世界情勢の変化による影響・反政府勢力の動向・クーデターの可能性・フィンランド化も計算される。 処理が終了すると年が明け、プレイが再開する。 これらの処理には約20秒を要する。 Change Sides(受け持ち国交代)は、二人プレイ時のみ有効である。

Undo Last Turn(前のターンをやり直す)

 この項目を選択すると、Next Turn(次のターン)で処理した内容をやり直す事ができる。 1年以上戻る事は出来ないが、この機能は判断を誤った場合に便利である。 「前のターンをやり直す」そのものをやり直すことはできない。 またやり直しは最後にNext Turn(次のターン)を選んだ状態にしかやり直すことができない。

Change Sides(受け持ち国交代)

 二人プレイ時にこの項目を選んでプレイヤーを交代する。マウスをもう一人のプレイヤーに渡す事。 もしプレイヤーがマウスを渡さなかった場合、ソ連プレイヤーがニカラグアへ1,000百万ドルの援助をしたつもりでも、 コンピュータはアメリカが援助したと誤解してしまう。 この交代ミスをなくすために、二つの機能が追加される。 一つは現在どちらの番なのか、画面下部に表示する機能である。 ここにUSAと表示されている場合、アメリカプレイヤーがマウスを握る事。 二つ目の機能は、「受け持ち国交代」項目を選んだときにコンピュータが発生させるビープ音である。 二人プレイ時における「次のターン」項目は、「受け持ち国交代」を実行しないと有効化されない。 この機能により、受け持ち国を交代せずに次のターンへ進んでしまうミスを防ぐ事ができる。

Quit Game(ゲームの中断)

 この項目を選択すると、デスクトップ画面に戻る事が出来る。 現在の状況はセーブされ、次回Load Old Game(ゲーム再開)を選んだときにロードされる。

Countries(世界情勢)

 このメニューから超大国に関連する世界情勢を知ることができる。

Spheres of Influence(勢力圏)

 この項目を選択すると、両超大国と世界各国との関係を表示する。 言い換えると、どの国がどの超大国の勢力圏にあるかを表示する。 例えば東ヨーロッパはソ連の勢力下にあり、ラテンアメリカはアメリカの勢力圏にある。 相手超大国の勢力圏にある国に対して介入することは危険である。 とはいえ、どちらの超大国の勢力に入っているか、はっきりしない国も多い。 そのようなの国はweak(弱い)と表示される。 自分の勢力圏が弱くなることに関しては、十分警戒しなければならない。

 勢力圏はゲームの進行によって変化する。 当該国に関する危機に勝つと、当該国への勢力が増す。

Major Events(主な出来事)

 この項目を選択すると、昨年起こった主要な出来事を表示する。 主要な出来事には、反政府勢力・クーデター・フィンランド化が関係する。 したがって、革命・クーデター・フィンランド化が主要な出来事の三本柱となる。 これらが発生した場合、当該国は薄い色で表示される。 一つの国に対して同時に複数の出来事が発生する場合もあり、より下位の出来事は画面に表示されない。 優先度は革命が最も高く、クーデター、フィンランド化が続く。 どちらの陣営へフィンランド化したかについては表示されない。 このような出来事はゲームにおける最も重要な表示であり、ターン開始時に必ず表示される。

Prestige Value(威信値)

 この項目を選択すると、各国が持つ威信値を表示する。威信値とは国の価値であり、スコアに影響する。

Insurgency(反政府勢力の動向)

 この項目を選択すると、各国における反政府勢力の動向を表示する。

Coup D'Etat?(クーデターの可能性)

 この項目を選択すると、各国におけるクーデターの可能性を表示する。

Finland-USA?(アメリカへのフィンランド化傾向)

 この項目を選択すると、各国におけるアメリカへのフィンランド化傾向を表示する。 なお、この情報は各ターン開始時にのみ更新される。 両超大国における現ターンの行動により、逐一変化するわけではない。

Finland-USSR?(ソ連へのフィンランド化傾向)

 この項目を選択すると、各国におけるソ連へのフィンランド化傾向を表示する。 詳細は前述と同じである。

Countries at War(戦争中)

 この項目を選択すると、戦争中や戦争の危険性がある国を表示する。

Relations(国家情報)

 このメニューから政策や国家間の関係を知ることができる。 初心者レベル・中級者レベル・上級者レベルは超大国の情報しか表示されない。 このため、下位3つのレベルで両超大国以外を選択しても、このメニューは無効化されたままである。 ただし、多極化レベルではどの国の情報でも表示する事ができる。

 メニューには当該国に対する政策項目が表示され、選択国に対する政策を選択する事ができる。 例えばソ連を選択してInterventions for Govt(政府への派兵)を選ぶと、ソ連が各国へ派遣している兵員数が表示される。 Diplomatic Relationships(外交関係)項目を選択すると、選択国と各国との外交関係を表示する。 選択国は濃い色で表示されている国と敵対的であり、薄い色で表示されている国と友好的である。 Going Out(この国から)とGoing In(この国へ)は多極化レベルでのみ使用される。 軍事援助と派兵に関して、この国から他国へどの程度送られているか、または、 他国からこの国へどの程度送られているか、の表示を切り替える。

Make Policies(政策決定)



 このメニューを使って、当該国に対する政策を決定する。このメニューはゲームの勝敗を左右する唯一のメニューである。 他の全てのメニューは、このメニューで決定するための情報を収集するだけである。 政策決定メニュー内の項目は、どれも同じように使用する。 当該国に対する政策を決定するとダイアログウインドウが表示される。 表示されるウインドウには、現在の政策状況がすでに反映されている。 このウインドウ上でマウスクリックをする事により、政策を変更することができる。 政策を決定したのならば、ウインドウ下のEnact(実施する)ボタンを押す事。 これによってウインドウが閉じ、ゲームが再開する。

 政策ウインドウが表示されても、いくつかのオプション項目が無効化されている時がある。 オプション項目は、外交・予算・物理的問題という三つの理由により無効化される。

 外交的理由としては、当該国との友好度があげられる。 例えばアメリカはベトナムへ多額の軍事援助を行うことができない。 ベトナムは資本主義者からの援助に疑惑を持っているからだ。 このような外交的理由により、友好的でない国に対して援助を行う事が出来ない。

 二番目の理由は予算的理由である。 軍事援助として使用する事が出来る予算は、ウインドウ下部に表示される。

 三番目の理由は物理的理由である。1,000百万ドル相当の武器とは、極めて多くの武器・弾丸・装備である。 これらを当該国へ搬入するには、兵100,000人による大規模な搬入作戦が必要となる。 当該国が友好国政府なら湾港設備を使用出来るが、当該国の反政府勢力へ搬入する場合、政府が許さないであろう。 それ故武器を一旦近隣国へ搬送し、そこから国境を越えて再度当該国へ搬送させる必要がある。 このゲームにおいても、当該国への武器搬入能力は、隣国に駐留する兵員数に依存する。 このルールは計算上単純であるが、運用上厄介な存在である。

 全ての政策オプションは0(なし)から5(最高レベル)までの六段階のレベルを持つ。 反政府勢力へ軍事援助を行いたい場合、隣国に駐留している兵員レベル+1の軍事援助を行う事が出来る。 隣国に軍隊が駐留していなくても、レベル1(20百万ドル)の軍事援助ならば、いかなる国に対しても行う事ができる。 反政府勢力への派兵限度レベルは、隣国に駐留している兵員レベルと同じである。 例えば、20,000人の兵員(レベル3)をホンジュラスに駐留させている場合、 ニカラグアのコントラへは兵員レベル+1に当たる1,000百万ドル(レベル4)の軍事援助と、 20,000人(レベル3)の兵員を最大送り込む事ができる。

 一度設定した政策オプションは、変更するまで継続される。 例えば1,000百万ドルを援助した場合、当該国は毎年1,000百万ドルを受け取る。 この援助は政策オプションを変更するか当該国が拒否するまで続く。

Military Aid(軍事援助)

 この項目を選択すると、友好国に武器を送ることができる。ただし兵員は送らない。 軍事援助は当該国政府の軍事力を拡大し、内部の反政府勢力や外部の軍事圧力に対抗できるようになる。 当該国が軍事的危機を迎えている場合大きな助けとなるが、平時における効果は少ない。 これは、当該国が軍事的危機を迎えている時に軍事援助を行って状況を改善させれば、当該国からの友好度が増す事を意味する。 また当該国に対する継続的な軍事援助は累積されることとなり、両国間関係を徐々に改善させる。

Aid to Insurgents(反政府勢力への援助)

 この項目を選択すると、反政府勢力に武器を送ることができる。 ただしソ連のように国内に反政府勢力を抱えていない国に対しては、武器を送ることができない。 反政府勢力は軍事援助額に比例して政府を追い詰めていく。

 反政府勢力が保持する武器は政府軍よりも少ない。 このため、反政府勢力は政府軍に比べて血より弾丸を重視する。 反政府勢力にとって武器は命よりも重いのだ。故に反政府勢力を援助する価値がある。

 反政府勢力への援助は物理的・予算的要因によって制限される。 強力な反政府勢力を構築するには、多額の軍事援助と隣国への派兵を行う必要がある。 遠地からカネだけで政府転覆を果たすことはできない。 もちろん、隣国への派兵は当該国政府を怒らせる。

Intervene for Government(政府への派兵)

 この項目を選択すると、当該国政府を強力に援護するための軍隊を派遣する。 派遣された軍隊は、当該国政府軍と共に反政府勢力と戦う。 これはアメリカによる明らかな軍事介入であり、ソ連を強く警戒させる。 軍事介入は両者の感情を激高させ、偶発的核戦争の危機を高めるだろう。 相手の指が核兵器の引き金にかかった時、全てを冷静に制御する事は難しいのである。

 平和裏かつ礼儀正しく派兵することも可能である。 現在アメリカ軍は西ドイツを安定化させるために駐留している。 もしアメリカ軍がいなければ、ソ連が西ドイツに侵攻する可能性が高い。 これは当該国にとって抑止力として重要である。 当該国に駐留する軍隊は、アメリカによる保護がある事を敵対的国家に対してアピールしている。 その上、多数の兵士は実戦力にもなり得る。

 派遣された兵士は当該国内の基地で暮らす事になる。 何人かは休暇で国に帰っても、非常時においてはすぐに収集されるだろう。 この軍事的保護は、当該国政府が実際に包囲下に置かれていない状況であっても、高い効果を持つ。 もちろん、派兵は当該国政府に反対する存在を怒らせることになる。

Intervene for Rebels(反政府勢力への派兵)

 この項目を選択すると、「自由の戦士」を助けるために軍隊を派遣する。 ただし、その自由の戦士は当該国政府から「血に飢えたテロリスト」と呼ばれており、 そこへの派兵は一般的に軍事介入と見なされる。

 過去において軍事介入は戦争を意味したが、現代においては仲裁として正当化されている。 自由の戦士が内戦に勝利した時、新たな政府となった自由の戦士は我々に感謝し、友好的になる。 これが反政府勢力への派兵の目的である。

 派兵は物理的要因によって制限される。反政府への援助と同様に、最初に隣国へ派兵しなければならない。 反政府勢力への派兵はソ連をさらに激怒させる。注意して使用する事。

Economic Aid(経済援助)

 この項目を選択すると、他国に経済援助を行う事ができる。 経済援助とは、GNPを削って当該国に資金を直接送る事を意味する。 これは当該国の軍事力に対して直接的な効果は無いが、両国に対して別の影響を及ぼす。

 経済援助によってアメリカの経済は減速し、当該国の経済は加速する。 経済援助は友好国を支援する良き手段であり、頻繁に使用される。 これは両国間関係を改善させ、当該国におけるクーデターの発生もある程度予防する。

 クーデターの発生が予見される友好国に対しては、経済援助を惜しんではならない。 クーデターによる損失はカネの損失を上回るからである。 経済援助はよくある活動なので、ソ連の注意を引きにくい。 ただし、ソ連の勢力圏にある国に対する援助は別である。

Destabilize(不安定化工作)

 この項目を選択すると、他国に工作員を送る事ができる。 アメリカでプレイしている場合、工作員はCIAであり、ソ連でプレイしている場合はKGBである。 どちらであっても、当該国の不安定化を拡大し、クーデターの引き金を作るという目的は同じである。 より大きな不安定化は、より高いクーデターの可能性となる。

 不安定化は単発イベントであり、他の政策のように年をまたいで継続されない。 もし長期にわたる不安定化を望む場合、毎年選択しなければならない。

Treaty(条約締結)

 この項目を選択すると、当該国の保護を保証する事ができる。 条約締結は国交協定から核による防衛条約までレベル分けされており、当該国の重要度に依存する。 もし核による防衛条約にサインした場合、当該国に対する全ての脅威を保証しなければならない。

 条約締結は理由に関わらず当該国を保護する必要がある。 もし当該国政府が反政府勢力やクーデターにより倒された場合、 条約のレベルに応じてアメリカの国際的信頼度が失墜する。

 条約締結は他国の外交圧力から当該国を保護するための安価な手段である。 当該国はコストを支払うことはなく、かつ友好的であり続けるであろう。 条約締結による唯一の危険は、アメリカが条約にふさわしい振る舞いを行わないことである。 これはソ連も同様である。

 ソ連も強い条約を締結している国に対して注意深く扱い、保護している。 ただ、ソ連はアメリカほどの余裕を持っていない。 一度条約締結にサインすると、アメリカは条約を解消することができない。 条約は当該国政府がクーデターや内戦によって倒されるまで生き続ける。 条約を解消させる唯一の方法は、ソ連が条約に対して危機を起こし、アメリカが引き下がる事である。 これによって条約は解消されるが、そうでなければ条約は永遠に生き続ける。

Diplomatic Pressure(外交圧力)

 この項目を選択すると、敵対的国家に外交圧力をかける事ができる。 外交圧力は当該国に対する脅しであり、その目的は当該国をフィンランド化させる事である。 加えて、外交圧力は当該国の軍事費も増加させる。 軍事費の増加は国庫を圧迫し、人々の不満を増幅させてクーデターや政権交代を促す。 また外交圧力は単発イベントとして作用する。

Trade(貿易政策)

 この項目を選択すると、当該国との貿易を禁止する事ができる。 この外交戦略は当該国経済に影響を与えない。 しかし当該国政府への姿勢を示すという意味で、いくらかの価値はある。

Events(出来事)



 このメニューにより、今年発生した出来事をヘッドライン形式で知る事ができる。 出来事はグループ毎に分類されてメニューに表示される。

Newspaper(ニュースペーパー)



 この項目は国を選択した時のみ有効化される。 この項目を選択すると、選択した国のニュースがヘッドライン形式で表示される。 ニュースは価値ある情報を与えてくれるだろう。 例えば反乱軍がどこで戦っているのか?田舎の村なのか、首都なのか? もし反乱軍が首都で戦っているのならば、その勢力は非常に強力だと言える。 ニュースにはたくさんのページがあり、Next(次へ)とPrevious(前へ)でページをめくる事ができる。

 ニュースの内容がソ連の挑発行為である場合、ウインドウ下にQuestion(懸念とする)ボタンが現れる。 このボタンは危機と同様に作用する。 ニュースペーパーを読み終えたのならば、左上の閉じるボタンを押すかESCキーを押す。

USSR Actions(ソ連の行動)

 この項目を選択すると、ソ連が起こした危機に対して異議を唱える事ができる。 ソ連の行動を知る事ができるので、この項目は各ターンの最初に選択すると良い。

USSR Other(その他のソ連の行動)

 この項目を選択すると、駐留軍が引き上げた、といった危機には至らないソ連の行動を知る事ができる。 駐留軍の引き上げといった情報は、チャンスとなる時もある。

USA Actions(アメリカの行動)

 この項目を選択すると、アメリカが起こした危機に対して異議を唱える事ができる。 この項目はソ連を担当するプレイヤー向けの項目である。

USA Other(その他のアメリカの行動)

 この項目はその他のソ連の行動と同じように作用する。

Minor Country News(その他の国のニュース)

 この項目を選択すると、超大国以外の国のニュースを知る事ができる。 その他の国のニュースとは、革命・暫定政府の樹立・クーデター・フィンランド化といったニュースである。 多極化レベルにおいて、当該国が勢力圏内はいっている場合、これらのニュースに対して危機を起こす事ができる。

Briefing(ブリーフィングノート)

 このメニューから多くの詳細な情報を知る事ができる。

Closeup(詳しい国家情報)

 この項目を選択すると、選択した国の詳細な情報が表示される。 当該国に対する両超大国の政策も、要約されてここに表示される。 カッコで表示された数値は当該国が持つ最大威信値である。 これは当該国の外交力と国家予算から算出される。 政策数値の横に表示される矢印は、直近における増減を意味している。 ウインドウ下部には当該国の政治状況が表示される。 政治状況とは反政府勢力・クーデター・フィンランド化の動向である。 このウインドウは当該国をダブルクリックしても表示される。

History(状況の推移)

 この項目を選択すると、選択した国における状況推移が表示される。 このウインドウには役立つ情報がコンパクトに詰まっている。 この項目はゲーム開始直後は役に立たないが、何ターンか経過した後に確認すると、真の価値を知る事が出来る。

 情報は3つのルールを持った9つのグラフで表現される。 一つ目のルールは、アメリカに関する項目は白か明るい灰色で表示され、ソ連に関する項目は黒か暗い灰色で表示されるというルールである。 二つ目のルールは、ハッキリした色(白か黒)の棒グラフは軍事援助など当該国政府にとってプラスの政策を意味し、 淡い色(明るい灰色か暗い灰色)の棒グラフは反政府勢力への援助など当該国政府にとってマイナスの政策を意味するというルールである。 三つ目のルールは、二本の垂直平行線は革命・クーデター・フィンランド化といった大きな出来事を意味するというルールである。



 左列上段にあるグラフは、反政府勢力の動向を表現している。 高い値は内戦を意味し、低い値は平和を意味する。 革命は二本の垂直平行線で表示される。 政府の政策方針は、この表に表示された四角形の色から知る事ができる。 表の四角形が黒ならば左翼政権であり、白ならば右翼政権である。

 左列中段の棒グラフは、政府・反政府勢力両者に対する武器供給量を表現している。 政府に対する政策はハッキリした色(白か黒)の棒グラフで表現され、 反政府勢力に対する政策は淡い色(明るい灰色か暗い灰色)の棒グラフで表現される事に注意する事。 したがって、明るい灰色の棒グラフは反政府勢力に対するアメリカの武器供給量を意味し、 黒い棒グラフは政府に対するソ連の武器供給量を意味する。

 左列下段のグラフは派兵を表現しており、中段のグラフと同じように使用される。

 中列上段にあるグラフは政権安定度の推移を表現している。 高い値は安定した政権を意味し、低い値は不安定な政権を意味する。 二本の垂直平行線はクーデターを意味する。

 中列中段のグラフは超大国による経済援助額と不安定化工作費用の推移を表現する。 政府への経済援助額はハッキリした色(白か黒)の棒グラフで表現され、 不安定化工作費用は淡い色(明るい灰色か暗い灰色)の棒グラフで表現される。

 中列下段のグラフは、両超大国との外交関係の推移を表現する。 高い値は友好的である事を意味し、低い値は敵対的である事を意味する。

 右列上段の表はフィンランド化傾向を表現している。 フィンランド化は二本の線で表現されており、一本はアメリカへのフィンランド化傾向、 もう一本はソ連へのフィンランド化傾向である。 二本の垂直平行線はフィンランド化の発生を意味する。

 右列中段の表は、条約締結と外交圧力を使った、超大国によるフィンランド化への影響度を表現している。 この表からアメリカ・ソ連による条約締結と外交圧力の推移を知る事ができる。

 右列下段の表は、不安定要因の推移を表現している。 不安定要因には両超大国の介入など様々な要素が含まれており、軍事費を増大させる原因となる。

Background(世界背景)

 このメニューは情報収集用の新しいメニューを表示する。 このメニューはゲームに直接関係が無いが、世界各国における様々な興味深い情報を表示する。 この項目を選択すると、ゲームは一時中断し、新しいメニューバーが表示される。

Resume Game(ゲームに戻る)

 このメニューはResume Game(ゲームに戻る)という項目を持つだけである。 この項目を選ぶとメニューバーが元に戻り、ゲームが再開する。

Resources(資源)

 このメニューから、各国が持つ様々な資源を知る事ができる。 国を選択してからこのメニューを選ぶと、当該国に関連するデータが表示される。 データは高い値の場合暗い灰色で表示され、低い値の場合明るい灰色で表示される。

 どこの国も選択していない場合、選択項目の絶対値ランキングが表示される。 絶対値ランキングとは、選択項目の値に応じて各国を並び替え、ランク毎に四段階で色分けしたものである。 上位25%に該当する最も高いランクは暗い灰色で表示される。 二番目のランクは灰色であり、三番目は明るい灰色、四番目は白色である。 このメニューでランク分けをすることができる項目は、次の通りである。

GNP(国民総生産)

 この項目を選択すると、各国が生産する物やサービスの総価格を知ることができる。 一般的にGNPは国の価値を意味しており、軍事・消費・投資の三部門に分けられる。

Military Spending(軍事費)

 軍事費とは主に軍事力を意味しており、副次的に兵員数も意味する。

Consumer Spending(消費者支出)

 消費者支出とは人々が暮らしに費やす資金の事であり、食糧・衣類・教育・娯楽など全ての支出が含まれる。 年ごとの消費者支出量は、政府の支持率と関係がある。 消費者支出が減少すると政府の支持率も減少し、それが継続すると政権交代・革命・クーデターの要因となる。 軍事的圧力を受けると政府は軍事費を増大させ、消費者支出と自らの支持率を減少させる。 外国政府による軍事的圧力は、このようにして政府を倒すのである。

Investment Spending(公共投資)

 公共投資とは、GNPを成長させるために道路・ダム・学校・工場などに支出された資金である。 政府が公共投資を削りすぎると、投資資金が金利によって失われる。 軍事・消費・公共投資をゲームの画面で直接見る事はできないが、結果は反映される。

Population(人口)

 国に住んでいる人の数を表示する。

Military Personnel(兵数)

 主に陸軍の軍人として雇用されている人の数を表示する。 軍事力は軍事費とこの兵数を元にして計算される。

Per Capita(一人当たり)

 このオプションのチェックを入れると、各項目に対して一人当たりの情報を知る事が出来る。 一人当たりの情報は極めて重要である。 例えばインドは高いGNPを誇るが、人口もまた多く、一人当たりのGNPは少ない。 これにより、インドはGNP画面では裕福を意味する高いランクで表示されるが、 一人当たりのGNP画面では貧困を意味する低いランクで表示される。 リビアの場合、国としてのGNPは低いものの一人当たりのGNPは高い。

 一人当たりの情報は、「一人当たりの兵数」を知る上でも便利である。 これは人口一人に対して何人の軍人を雇用しているかを意味している。 この値はイスラエルが突出して高く、イスラエルにおける軍人の比率がいかに高いかを知ることができる。

Per GNP(GNP当たり)

 このオプションのチェックを入れると、各項目がGNPに占める割合を知る事が出来る。 例えば「GNP当たりの消費者支出」は総GNPに対して消費者が支払うパーセンテージを意味し、 「GNP当たりの軍事費」は総GNPに対して軍隊が支払うパーセンテージを意味する。

Per Nothing(絶対値)

 このオプションのチェックを入れると、各国は選択項目の絶対値によりランク分けされる。 またPer Capita(一人当たり)・Per GNP(GNP当たり)をキャンセルする時にも使用できる。

Well-Being(福祉)

 このメニューから各国における生活水準に関する様々な情報を知ることができる。 知ることができる情報は、Literacy(識字率)・ Energy Consumption(消費エネルギー)・ Caloric Intake(消費カロリー)・ Physicians per Million(医者の数)、Infant Mortality(乳児死亡率)、School Enrollment(就学率)、 Televisions per capita(テレビ普及率)、Telephones per capita(電話普及率)である。 このメニューにおいて、前のメニューで使用したPer Capita(一人当たり)・Per GNP(GNP当たり)は反映されない。

Violence(暴力事件)

 このメニューから、各国における政治活動への暴力を知ることができる。 この情報は一人当たりの暴力数から求めている。 したがって、国が抱える人口の多少に関わらず、各国間で情報を比較することができる。

 この情報は1948年から1977年までの調査に基づいて作られている。 この期間における最初の10年間は驚くほど暴力が多発していた。 例えば中国における政治犯の処刑数は莫大な数である。 技術的な理由のため処刑数は一部しか表現する事ができなかったが、 著者の調査によると中国では1,633,319人の政治犯が処刑されている。 これにより、中国は血に飢えた国として表現される。 しかも1,631,497人の処刑数は1948年から1952年の間であり、そのすぐ後に中国共産党と国民党との間に内戦が勃発している。 内戦はさらに多くの処刑を生む事になる。 またナイジェリアでは政治的な暴力により二百万人が死亡した。 1968年から1970年にかけて発生した内戦(ビアフラ戦争)を知らない人は、この事実に衝撃を受けるであろう。

 いくつかの最近の出来事はゲームに反映されていない。 イランのシャー(皇帝)は1979年の革命によって倒されたが、ゲームには反映されておらず、イランは平穏である。 また1977年当時カンボジアの大虐殺も知られていなかったため、ゲームには反映されていない。

Political(政治的状況)

 このメニューから各国の政治的権利と国民的権利について知ることができる。 この値はWorld Handbook of Political and Social Indicators (Taylor and Jodice)から提供され、 Freedom Houseから発行されたRaymond DとGastilによる年次索引値を使用している。

GNP %-ages(GNP消費割合)

 このメニューから経済活動で消費される資源の使い道を知ることができる。 表示される値はGNPにおけるパーセンテージである。 これはGNPが経済活動におけるどの分野に消費されるかを意味する。 ややこしいのはTaxes(税金)であるが、これはGNPにおける政府の消費を意味する。 Trade(貿易)はGNPにおける国際貿易量をパーセンテージで表現している。

超大国による危機

 これはメニュー項目にはないが、超大国による危機は両超大国の行動によって発生される。 危機は一方の超大国による政治的案件に対して、もう一方が反応することにより起こる。 アメリカはUSSR Actions(ソ連の行動)やニュースペーパーウインドウにおけるQuestion(懸念とする)ボタンを押す事で、 危機を起こすことができる。 これはソ連も同様である。 したがって、危機には開始側と応答側がある。

 アメリカが開始側の時、イベントは次のような順序で執り行われる。 イランの共産主義反政府勢力であるツデー党にソ連が武器を供与するといった、アメリカにとって好ましくない行動を発見する。 アメリカがQuestion(懸念とする)ボタンを押す。 これはソ連に対して不満を表明する行動である。 これに対して、ソ連は銃を突きつけるか引き下がるか、どちらかの行動を取ることが出来る。 この時どちらの行動を取るか、政策の重要性やアメリカへの影響を考慮するであろう。

 イランのケースは判りやすい。 イランの不安定化はソ連の安全保障上致命的ではない。 またイランとアメリカの関係も疎遠であり、アメリカはイラン政府に手を出さない可能性が高い。 この場合、ソ連が引き下がって危機に勝てるであろう。 引き下がった時にソ連が表明する不満は、ウインドウ下部に表示される。 また危機が起こるとウインドウに危機アドバイザリが現れて、有用な助言してくれる。

 ソ連が拒絶した場合、今度はアメリカがどのように行動するか判断しなければならない。 早い段階で引き下がれば、両者とも多くを失わないで済む。 引き下がらないのであれば、Question(懸念とする)ボタンはChallenge(挑戦する)ボタンに置き換わる。 Challenge(挑戦する)ボタンを押すと問題を公にした事になり、危機がエスカレートする。 危機が公開されると、世界中の注目を浴びる。 ここで引き下がると、ウインドウ下部に表示されている威信値を失う。 これはソ連が引き下がった場合も同様である。

 危機がエスカレートすると数値も増えていき、三桁に達する。 理由もなく危機をエスカレートさせることは愚かであり、より多くの威信値を失う事になりかねない。 この威信値の喪失は、他国がソ連の影響圏に入った時よりも大きい。

 危機が起こってChallenge(挑戦する)ボタンを押すと、 ウインドウタイトルがDiplomatic Crisis(外交危機)に変わり、ソ連の対応を待つ事になる。 ソ連が引き下がらない場合、危機がエスカレートした上で、再度アメリカが対応する。 ここでアメリカが引き下がると、多量の威信値を失って危機が終了する。 これを見た世界各国は、アメリカが大風呂敷を広げたと噂するだろう。 アメリカの友好国も失望し、アメリカは恥辱にまみれる。

 ソ連は引き下がったアメリカを見てより政治攻勢を強め、アメリカをさらに弱体化させるようとする。 危機のエスカレートはさらなる危機を生むのである。 外交的解決が徒労に終わると、危機はデフコン4にエスカレートする。 デフコンとは超大国における戦争準備態勢である。

デフコン 5: 平和状態。最小限の警戒。
デフコン 4: 低レベルの警戒。
デフコン 3: 警戒。軍隊は戦闘準備態勢に入る。
デフコン 2: 最大限の警戒。軍隊は臨戦態勢に入る。
デフコン 1: 戦争。

 ソ連がエスカレートさせたデフコン4は、「必要ならば戦う準備が出来ている」というメッセージを受け取ったのと同じ事である。 デフコン4へのエスカレートは危機を劇的に変質させる。 これは単なる外交的危機ではなく、偶発的核戦争を伴う軍事的危機であるからだ。 アメリカは外交的敗北を認めて撤退するか、戦争に向けて危機をエスカレートさせるか選ばなければならない。 もしエスカレートさせるのならば、危機はデフコン3へと移行する。 デフコン3によってソ連がアメリカの挑戦に震え上がれば、ソ連は引き下がる事になる。 そうでない場合、危機はデフコン2へ移行する。 デフコン2では核兵器を搭載した戦略爆撃機が空中待機し、核発射ボタンに指がかかる。 この場における選択肢も、引き下がるかエスカレートさせるかのみである。

 ここで危機をエスカレートさせると、第三次世界大戦が勃発してゲームは終了する。 引き下がれば当然の報いとして多量の威信値を失う。 ソ連が開始した危機であっても、最終的にデフコン2へとエスカレートする。 その場合世界の命運はソ連が握る事になり、核ミサイルを発射するか引き下がるかを決定する。

 危機の敗北による威信値の喪失量は危機のレベルに比例する。 もしChallenge(挑戦)後デフコン2で引き下がった場合、多量の威信値を失う。 不必要な危機のエスカレートは、賢いとは言えない。

小国の危機

 この危機は多極化レベルでのみ発生する。 小国の危機は超大国による危機と同じように機能するが、核戦争には至らず、引き下がっても威信値を失わない。 小国の危機は当該国に外交的圧力をかけるだけである。 ただし、危機をエスカレートさせると当該国への外交的圧力もエスカレートし、当該国との友好が失われる。

ゲームの終了

 核戦争が始まると、ゲームは終了する。核戦争は超大国による危機でのみ引き起こされる。 核戦争が開始されると全ての苦労は水泡に帰す。 核戦争は両陣営にとって完全な敗北となるのだ。 核戦争を起こさずに1997年に到達した場合、ウインドウに威信値が表示されてゲームは終了する。 この時に相手陣営より高い威信値を持っていれば勝ちである。 プログラムを終了させる前に、グラフや情報を見て歴史を振り返ることができる。

このゲームはどの程度現実的か

 バランスオブパワーは地球規模の政治力を扱った教育的シミュレーションである。 このゲームがどの程度現実的なのか、説明するのは少々難しい。 多くの人々はよりリアルなゲームや、シミュレーションを価値あるものと考える。 そのような人々はシミュレーションを写真の品質と同じように判断してしまいがちだが、実際はもっと複雑である。

 いくつかのゲームは、世界を強調させるために、現実性を抽象化させて表現する。 ゲームは写真よりも絵画的である。 画家は対象を単にコピーするのではなく、自らの目を通して描写する。 これにより対象の不必要な部分を削除し、重要な部分を強調するのである。 このゲームもその例外ではない。 このゲームをデザインするに当たって、国際関係における重要な要素をあえて削除した。 それはプレイヤーの注意をさらに重要な要素に向けるためである。 貿易が完全に削除されているのもそのためであり、これによってプレイヤーは地政学的ゲームに集中できるようになる。

 また反政府勢力は強調して表現している。 なぜなら、反政府勢力は超大国における競争相手の一つと位置づけているからである。 貿易の削除はゲームの現実性を失わせているだろうか? 反政府勢力の強調はゲームの現実性を高めているだろうか? これらは現実性を解明するための広義的な主題として議論されている。 例えばゲームに使用されている数値の精度を知れば、驚くであろう。 このゲームは客観的に立証できる多くの数値を扱っている。 それらは本当に信頼できるであろうか? このゲームで使用している多くの数値は調査に基づく数値であり、信頼できる。 GNPは簡単に調査できるし、資料によって多少異なるが軍事費も一般的な値である。

 最も役に立った資料は World Handbook of Political and Social Indicators, Third Edition, by Taylor and Jodice (Yale University Press, 1983) であった。 この偉大な資料は、GNPに占める公衆衛生支出や、1,000人当たりのテレビ台数といった、 世界各国における莫大なデータを提供してくれた。 この説明書に記載されている多くの数値は、世界背景を計算する値として実際に使用されている。

 いくつかの重要な情報については見つける事ができず、独自に創作された。 本の著者が簡単に表現する情報であっても、ゲームで表現する事が難しい情報もある。 ゲームはいくつかの作動パーツによって構成される。 その一つを構成するパーツに情報が不足している場合、情報を創作するか、単にゲームで使用されない。 したがって、いくつかの主要なパーツにおいて情報を創作した。

 各国政府が持つ右翼・左翼といった政治哲学はゲームデザイナーの創作である。 反政府勢力に対する政府の抵抗力・各国が持つ伝統的民主主義力・様々な小さな要素も創作である。 また世界には170を越える国が存在するが、ゲームに登場する国は80だけである。 半分以上の国は、取るに足らない勢力としてゲームに登場しない。 多くの人はセーシェル共和国・レソト王国・アンドラ公国・シエラレオネ共和国といった国々の名を聞いたことがないであろう。 エルサルバドル・カンボジア・レバノン・バングラディッシュといった国々は、マップ上小さすぎるという理由により登場しない。

 まれなケースだが、小国を他の国に置き換える場合もある。 また国を削除することにより、国際関係における紛争も表現しようと試みている。 現実性における最も重要な問題は再現性である。 例えば年間GNPをどのように計算するか? 反政府勢力への弾圧進捗・政権交代・政策転換の影響は? 危機におけるソ連の振る舞いは? ゲームではそれら全てをシンプルな一次方程式で表現しているため、個々の問いへの回答はない。 こういった漠然とした存在を、明確な値としてコンピュータプログラムに表現できないからだ。

 画家は現実をそのまま受け入れない。プログラムもまた同じである。 このゲームがどの程度現実的なのか、ご理解頂けただろうか? このゲームの価値は、プレイヤー自身における国際関係の理解度に依存する。 このゲームが現実的であるかと他人に尋ねている間は、 ゲームはプレイヤーに様々なことを教えてくれるであろう。 それはゲームからプレイヤーへの挑戦であり、世界の動向や超大国による死の競争について考えて欲しいという作者の願いである。 そうしてこのゲームの現実性を判断できるようになった時、このゲームの価値を知る事になる。

 このゲームで多くのことに気付く日が来るであろう。 その日が来た時、このゲームは意図した目的に達することができるのだ。

シミュレーションモデル

 このゲームは国の行動を決定するために、巨大で複雑なモデルを使用している。 目に見える要素も複雑だが、目に見えない要素はさらに複雑であり、 プログラム上多くのコード・リソース・メモリを消費している。 プレイヤーはゲームをより理解するため、プログラムがどのように動作するのか興味がある事であろう。 ただ、プログラムコードを単純に公開すると、ゲームの神秘性が失われてしまう。 映画ファンは恐ろしいモンスターが単なる粘土人形を撮影した物にすぎないということを、知りたがってはいない。 ゲームファンも同様である。

 この問題を解決するため、使用したモデルの概要を説明する。 これはある要素に何が含まれ、また、ある要素に何が含まれていないのか、知るには十分である。 なお、この説明は順不同で行う。

軍事力

 軍事力は軍事費と兵員数という二つの要素から計算される。 アメリカ軍といったいくつかの軍隊は、軍事費は高いが兵員数は少ない。 これは他の西側諸国も同様である。 貧しい国の場合、軍事費は少ないが兵員数は多い。 軍事力はこの両方を元にして計算されているため、多くの軍事費と多くの兵員数を持つ国はより強い軍事力を持つに至る。 兵員数は人口と徴兵召集を元にしているが、一般的な徴兵は過去の物であり、その割合は少ない。

 軍事力は超大国の軍事援助により加算される。 超大国による軍事援助は、当該国の軍事予算に直接加えられるからである。 これは貧しい国への援助がより効果的である事を意味する。

 派兵は超大国の兵士が政府軍に組み込まれるという意味ではない。 当該国政府に超大国が持つ強力な軍事力の一部が加わるという意味である。 この軍事力は、当該国の軍事力として直接加えられる。 反政府勢力との戦闘は政府軍に死傷者をもたらし、時と共に政府の軍事力を減少させる。 この効果はHistory charts(状況の推移)における反政府勢力表にて確認することができる。

反政府勢力

 反政府勢力も自身の軍事力を保有しているが、その根源は完全に異なる。 反政府勢力の兵員数は、人口・政治問題に対する暴力的解決を求める文化傾向・過去における反政府勢力の成功例、 という三つの要素から計算される。 これにより、西ドイツやカナダといったいくつかの国々は反政府勢力への傾向を持たない。 一方、建国間もない国は多くの人々がゲリラに加わる傾向を持つ。 また過去における反政府勢力の成功例を見た人は、勝ち馬に乗ろうとして反政府勢力に加わる可能性が高い。 このような要素に何らかのきっかけが加われば、反政府勢力は急激に拡大する。

 反政府勢力の兵員数は、反政府勢力が保有する武器よりも多い。 そのため、反政府勢力は少ない軍事費と多くの兵員数で戦う。 これは反政府勢力に対する少額の援助が、大きな効果を持つことを意味する。 反政府勢力への派兵なら、効果はさらに大きい。 反政府勢力の軍事力が政府の軍事力を上まわった時、革命が起こりうる。

経済成長

 各国はGNP(国民総生産)を持つ。 GNPは軍事費・公共投資・消費者支出という三つの分野に分類される。 軍事費は武器の購入、公共投資は道路・学校・工場などに支出され、経済を成長させる。 消費者支出は食糧・衣類・住宅など、消費者が支払う全てである。

 各国政府はGNPをこれら三つの分野に割り当て、国の成長を促す。 反政府勢力や超大国からの軍事的圧力がかかると、他のエリアの予算が軍事費に回される。 しかしながら、消費者はGNPが毎年2%増加することを期待し、それが達成できないと政府の人気は落ちる。 政府の人気がゼロを下回れば、クーデターの出番である。 したがって、政府は消費者支出が増えるよう努力する。 公共投資については、GNPが成長するよう少額でも支出し続ける必要がある。 国はGNPをこれら三つの分野にバランス良く割り当てなければならない。

危機AI

 コンピュータは「エスカレート」や「引き下がる」をどうやって決定しているのか? この質問は重要であり、その回答は質問者を驚かせるであろう。 何人かのテストプレイヤーは、取るに足らない問題でコンピュータが危機を起こした事に驚いた。 この仕組みを理解するためには、重要性というコンセプトを理解しなければならない。 このゲームにおける重要性とは、超大国が取りうる行動をひっくり返す、特別な度合いである。 重要性はポジティブとネガティブという二つの要素から成り立っている。

 ネガティブとは対象をどの程度傷つけるかを意味する。 当該国に不安定化工作を行うと、その国は傷つく。 どの程度傷つくかは、重要性を用いた計算とプログラムから算出される。

 二つ目の要素はポジティブである。ポジティブとは危機にさらされた当該国に対する超大国によるケアを意味する。 超大国が当該国にケアを与えないとネガティブが増加し、重要性は減少する。 ポジティブは当該国との友好関係・条約・影響圏の度合い・駐留軍という四つの要素から構成される。 中でも駐留軍は最もデリケートな問題である。

 重要性はこのようにして計算される。 コンピュータは自身の重要性とプレイヤーの計算された重要性とを比較する。 コンピュータの重要性が大きく上まわっている場合、コンピュータは引き下がる事を断固拒絶する。 コンピュータの重要性が少ない場合、コンピュータは引き下がる。 両者の重要性が同程度の場合、コンピュータの振る舞いは運任せである。

 このシステムによるコンピュータの振る舞いは、プレイヤーを驚かせるであろう。 例えばアメリカがナイジェリアへ経済援助を行った場合、ソ連は反応し、危機を起こす。 アメリカがこの危機をエスカレートさせればソ連もエスカレートさせ、やがて核戦争に至る。

 なぜナイジェリアへの経済援助が人類を絶滅させるのか? それはコンピュータがアメリカの優先度を予想するためである。 優先度は、ナイジェリアとの友好関係・条約・条約の信頼性・影響圏といった様々な要素を評価して算出される。 優先度が高いと評価した場合、危機における振る舞いは真剣なものと判断する。 優先度が低いと評価した場合、危機における振る舞いはブラフ(ハッタリ)であると判断する。 ナイジェリアへの振る舞いが真剣であると世界が判断し、相手を引き下がらせるには、 優先度を高めるという事前の根回しをしなければならないのだ。

 この点に関して、バランスオブパワーの最初のエディションよりも重きを置いている。 多くのプレイヤーからの意見を聞いたり紹介記事を読んだが、核戦争を引き起こす多くのプレイヤーは、 この重要性を高める行為を理解できていない。
「これは取るに足らない問題なので、パスする」
理由なきアルゴリズムを仕込み、このようにコンピュータに言わせる事は簡単である。 こうなると、取るに足らない問題に対する理由なき振る舞いがゲームを勝つ手段となり、 プレイヤー・コンピュータ双方共に取るに足らない戦争を世界中で繰り広げることになる。 そのような不合理が、地政学を考えるゲームをより良くするとは考えられない。

フィンランド化

 フィンランド化は、両超大国の当該国へ対する影響力、および、それを行使する可能性から計算され決定する。 カナダがアメリカと良好な関係を持っている場合、カナダはフィンランド化を起こさない。 なぜなら、カナダはアメリカに攻撃されないと考えるからである。 ただカナダがアメリカに攻撃されると考えた場合、フィンランド化が起こりえる。 このような超大国による攻撃の可能性は、「好戦度」として表現される。

 好戦度は超大国が武力行使で問題を解決する割合を意味する。 派兵・反政府勢力への軍事援助・危機のエスカレート、このような行動を常に行うと、小国はアメリカが好戦的であると判断する。 アメリカが好戦的な場合、ソ連もまた好戦的となる。 これによってアメリカへのフィンランド化だけでなく、ソ連へのフィンランド化も起こるようになる。

 フィンランド化は隣接国からの軍事的脅威によっても起こる。 たとえばメキシコやカナダといった友好国へ派兵すると、その隣接国は軍事的脅威を受ける。 この軍事的脅威は派兵した兵員数に比例し、フィンランド化の加速もそれに比例する。

クーデター

 消費者支出の増加が見込めないと国民の不満が高まり、クーデターの要因となる。 それだけでなく、クーデターの要因には各国の性質も関係する。 例えば東側諸国やラテンアメリカの独裁政権は武力で人々を黙らせるため、クーデターは発生しにくい。 西側の民主主義国家ではそのような武力弾圧が行われないため、クーデターは発生しやすい。 ただし、西側諸国のクーデターは選挙による政権交代であり、暴力を伴わない。

友好関係

 当該国に対して軍事的影響力を強めることが出来なくても、当該国と外交的友好関係を築いて威信値を上げる事ができる。 その方法は革命・クーデター・フィンランド化・危機への対応・政策への対応という5つの方法である

 革命が起こると、当該国政府の外交方針は大きく変わる。 この時アメリカが政府を支援していると、新しい政府はアメリカに対して冷たくなる。 逆にアメリカが反政府勢力を支援していると、新しい政府はアメリカに対して友好的になる。 加えて、新しい政府の政治方針は政治思想によっても影響される。 左翼政府はソ連に傾倒する傾向があり、右翼政府はアメリカに傾倒する傾向がある。 ただし、これらは傾向だけであり、決定的な要素ではない。

 クーデター後の政府の振る舞いは、革命後の政府の振る舞いと類似しているが、革命ほど極端ではない。 新政府の外交方針は政治的傾向に傾倒するが、旧政府を支援していた超大国を遠ざけるものではない。 超大国が不安定化を用いてクーデターを支援していた場合、新政府との関係は良好なものとなる。

 フィンランド化については前述の通りである。 フィンランド化した政府はフィンランド化させた超大国と緊密な関係となり、その相手国とは疎遠になる。

 危機への対応によっても友好関係は変化する。 危機に勝てば世界各国は勝った国に少しだけ友好的となり、負ければ少しだけ非友好的となる。

 他国に対するポジティブな行動・ネガティブな行動も友好関係に影響する。 したがってアメリカがどこかの国に友好的な態度を示すと、他の国はアメリカに良い感情を持って友好的になる。 逆にアメリカがどこかの国に敵対的な態度を示すと、他の国はアメリカに悪い感情を持って非友好的になる。 小国自身の行動は、他の国や超大国の友好度に影響しない。

 当該国に対する政策の反応は、当該国の規模と政策に費やした金額に依存する。 例えば貧しい国に対する経済援助は、友好度を大きく向上させる。 しかし裕福な国に対して同じ額の経済援助を行っても、あまり友好度は向上しない。 軍事援助も同様である。 ただし、この法則はネガティブな要素に対して当てはまらない。 反政府勢力への支援は、どのような状況であっても政府を激怒させる。 反政府勢力がどれほど弱くても、政府は監視をやめない。

謝辞

 私はこのゲームの構想・デザイン・プログラミング・拡張・テストを行った。 もちろん一人で全てをこなしたわけではなく、多くの人達の手助けと助言を得た。 多くの著者のように、私も妻のKathyに感謝する。 妻の助言がなければ、このような大きな決断をすることはできなかった。 妻はプログラムに対して多角的な価値あるアドバイスを多く与えてくれた。 タイトル画面の写真やプログラムアイコンの図柄についても同様である。 それにも増して重要な事は、このゲームによって破産と家庭崩壊の可能性があったにも関わらず、妻が応援してくれたことである。

 Dave Menconiもゲームを繰り返しプレイして多くのバグや欠点を見つけてくれた。 私はプログラムに自信があったのだが、彼は30分以内に二つの深刻なバグを発見した。 このゲームを磨き上げるために彼が何時間の忍耐強い時間を費やしたかわからないが、 彼はいかなるテストプレイヤーよりもゲームに貢献した。

 他にもDale Yocum、Eric Goldberg、Gregg Williams、George Rosato、Steve Axelrod、Jim Warren、 Steve Jasik、Scott Knaster、Joe Miller、Tom Maremaaといった人達がゲーム開発が難航していた時に貢献してくれた。 このような人達の貢献がなければ、バランスオブパワー1990エディションが日の目を見ることはなかったであろう。

参考文献

 このゲームは、これらの文献を参考にして作られた。

 ヘンリー・キッシンジャー『キッシンジャー秘録(1-5)』(斎藤彌三郎ほか訳、小学館、1979-1980年)、 『キッシンジャー激動の時代(1-3)』(読売新聞調査研究本部訳、小学館、1982年)
この二冊から、超大国による外交がいかに機能するか簡単に知ることができるであろう。

 How to Make War, by James F. Dunnigan, Morrow, New York, 1982.
この本には戦争がいかに世界に広がるかを記述している。 最初のバランスオブパワー開発時に出版されていれば良かったのだが。

 World Handbook of Political and Social Indicators, by Charles Lewis Taylor and David A. Jodice, Yale University Press, New Haven, 1983.
この二巻には世界の国々に関する情報が記載されている。 一般的な読者には向いていないが、素晴らしい著作である。

 The War Atlas, by Michael Kidron and Dan Smith, Simon and Schuster, New York, 1983.
この本には、1980年代の地球上における戦争と平和に関する要素を、40に色分けした地図がある。 優れた図解は難解な要素の理解を進める。 この本はバランスオブパワーの地図描写に対してインスピレーションを与えた。 この地図のように、ゲームでも多くの色を使用したかった。

 What About the Russians-and Nuclear War?, by Ground Zero, Pocket Books, New York, 1983.
この本は国民・政府・歴史・心理がいかなる要因となってソ連の核政策に影響を与えるか記述している。

 The Causes of Wars, by Michael Howard, Harvard University Press, Cambridge, 1984.
これらのエッセイは歴史家であるThoughtprovokingによって記述されている。 ただし、一般的な読書にとってはやや難解である。

 The East-West Strategic Balance, by T B. Millar. George Allen & Unwin, London, 1981.
この本は地政学における地域間の分析と超大国の影響について記述している。

 The War Trap, by Bruce Bueno de Mesquita, Yale University Press, New Haven, 1981.
この本は、理性的な国家が危険な国家によっていかに戦争に巻き込まれるかについて、理論的かつ数学的に記述している。 このような計算式を組み込みたかったが、かなわなかった。

 An Atlas of World Affairs, Seventh Edition, by Andrew Boyd, Methuen, London and New York, 1983.
この本は、政治的問題についての議論とそれがいかに国際社会に影響するかについて、各地域毎に記述している。 Dunniganの著作ほどではないが、備考になる。

 An Atlas of African Affairs, by leuan ILL. Griffiths, Methuen, 1984.
この本はアフリカとその問題について記述している。

 Nuclear War in the 1980's, by Christopher Chant and Ian Hogg, Harper and Row, New York, 1983.
この本にはロケット・銃・航空機に関する多くの写真が掲載されており、核戦争の基本的なメカニズムも説明されている。 テキストも一ページにまとめられているため、青少年に最適である。

 World View 1982, South End Press, Boston, 1982.
この本は経済と地政学に関するイヤーブックであり、ヨーロッパにおける左翼について記述している。 アメリカの政治家はこの本を読み、傍らに置いて、騙されないようにしなければならない。

 The Global 2000 Report to the President, Penguin Books, New York, 1982.
この本には、減少していく資源に関するデータがたくさん掲載されている。

 The Soviet Estimate, by John Prados, The Dial Press, New York, 1982. A history of American
この本はロシア軍の軍事力を評価している。これによると、アメリカはロシア軍を過大評価している。

 ヴィクトル・スヴォーロフ『ザ・ソ連軍』(吉本晋一郎訳、原書房、1983年)
この本には亡命者によって語られたソ連陸軍について記述されている。

 The Nuclear Delusion, by George F. Kennan, Pantheon, 1982.
いくつかの理由により、この本はあまり参考にしていない。

 The Wizards of Armageddon, by Fred Kaplan, Simon and Schuster, New York, 1983.
この本は核戦争における戦略を考えた、シンクタンクについて記述している。

 Nuclear Proliferation Today by Leonard S. Spector, Vintage Books, New York, 1984.
この本には核戦争がいかに始まるかを記述している。

 America's War Machine, by Tom Gervasi, Grove Press, New York, 1984.
この本は地球規模の武器システムカタログであるが、強い反戦の意が込められている。


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