Dwarf Fortressの未来
Dwarf Fortressはどこまで進化するのか?
ドワーフフォートレスには畑があり、井戸があり、仕事場があり、寝室がある。
要塞に住むドワーフには性別があり、結婚し、子供を産み、リーダーを擁立し、王が支配する。
この箱庭に閉じられたドワーフの世界は、いったいどこまでリアルになるのであろうか?
ドワーフフォートレスの未来を、少し想像してみることにしよう。
紙・印刷技術・羅針盤の発明
Master works dwarf fortressといった非公式のエディッションでは、銃が登場する。
銃は暴力的な文明だが、この次に登場するバージョンでは、もっと知的な文明が登場するのではないだろうか?
木材保管庫に置かれた丸太をドワーフが拾い、近くにある工房へ持って行く。
また別のドワーフはバケツにくまれた水を工房に運び込む。
必要な材料はこれだけである。
材料が揃えば、職人ドワーフがやってきて作業を開始する。
職人ドワーフは丸太を小さく刻み、水に溶かして乾燥させる。
この作業所は、紙すき所と呼ばれる。
完成した紙は隣の作業所へ運ばれる。
そこには大量の石版が積まれており、職人ドワーフは石版に塗料を塗って、紙を押し当てる。
紙にはハンコの要領で文字が写される。
この作業所は、印刷所と呼ばれる。
要塞に印刷所が完成すると、ドワーフの経済はより身軽になる。
紙幣が発行されるので、重たい金貨や銀貨を持たなくて済むからである。
この頃になると、海を越えてやってくるキャラバンは、より頻繁に要塞へ訪れるようになる。
キャラバンは絹布でこすった針を藁に刺し、水に浮かべた道具を使って、キャラバンの方角を正確に知る事が出来るようになったからである。
この道具は羅針盤と呼ばれる。
ただ、地下深くの要塞に住むことを好むドワーフにとっては、この道具にあまり興味を示さないかもしれない。
植民地時代
キャラバンの次は、人間の軍隊が何度も包囲戦を挑んでくる。
人間の軍隊は銃で武装している。
この時点でドワーフが銃を生産していなければ、人間に対して勝ち目はない。
要塞の王は人間の傀儡(かいらい)となる。
傀儡となった王は、ドワーフをタダで働かせて、鉄や貴金属、宝石を掘らせる。
鉄や貴金属、宝石はキャラバンによって安価に買い叩かれ、人間の都市に運ばれる。
キャラバンは鉄を人間の都市に運び、銃などに加工して、要塞に高値で販売する。
こうなると、要塞は植民地と呼ばれる。
この頃、輸出できる交易品の一つに「ドワーフ」が加わる。
適当なドワーフを交易所に持って行くと、キャラバンがお金に換えてくれるのである。
交易所に運ばれたドワーフは、無料の労働力としてキャラバンが別の都市で売る。
売られたドワーフは、二度と要塞には帰ってこない。
そのようなドワーフは、奴隷ドワーフと呼ばれる。
大量生産技術が、植民地からの独立を促す
植民地には不平等な交易を課せられるが、「独立宣言」を行い、幾多の包囲戦を勝ち抜くと独立できる。
独立宣言後も奴隷ドワーフ制度は存続する。
しかし、全く新しいワークショップを建築することで、奴隷ドワーフ制度を廃止することができる。
その全く新しいワークショップとは工場である。
工場ワークショップは川に隣接して建築するか、水車・軸・ギアを使って動力を工場へ伝えなければならない。
風車は動力が安定していないため、使用する事が出来ない。
川の流れを動力とした工場は著しく生産性を高め、奴隷ドワーフが不要となる。
また様々な工房は工場に取って代わられる。
内燃機関の登場
ただし、川がないマップでは工場を作ることはできない。
そこで登場するのが蒸気機関である。
蒸気機関を工場に接続し、蒸気機関に丸太を運び込むと、川がなくても工場が稼働する。
蒸気機関と工場との接続には、軸もギアも必要ない。
蒸気機関は電気を生むからである。
蒸気機関が生んだ電気は、電線で伝えられる。
電線は始点と終点を指示するだけで、要塞の奥深くまで簡単に動力を提供する。
蒸気機関は交易所のあり方を大きく変える。
交易所にはマップ外から通じる道が必要であったが、その道はレールとなり、交易所は駅となる。
以降、交易所に家畜が引いたキャラバンが到着することはない。
蒸気機関によって作動する機関車が商品や商人を輸送する。
この頃、要塞は宝石や貴金属だけでなく、石炭も掘り出すことができる。
移動可能な動力源として、やがて内燃機関を使用する事が出来るようになる。
要塞から掘り出した石油を精製所へ運ぶと、ガソリンを生産することができる。
工場からは自動車や飛行機が生産されるようになり、ガソリンを燃料として作動する。
また要塞地上部には自動車や飛行機を運用するための幹線道路や飛行場が作られる。
また自動車や飛行機は包囲戦でも使用される。
この頃のゴブリンは馬ではなく、頑丈な装甲が施された自動車に乗り込んで重火器を発射する。
また、空からは飛行機が要塞へ爆弾を落とす。
斧や槍を持ったドワーフ軍隊は一人も存在せず、全員必ず銃を携帯する。
そして、投石機は砲台へと置き換わる。
内燃機関による環境破壊
蒸気機関や内燃機関といった自然に依存しない動力源は、ドワーフの生活を一変させる。
しかし一方では多くの弊害ももたらす。
その最も大きな弊害とは、気候変動である。
木の伐採と燃焼によりドワーフ世界の二酸化炭素濃度が上昇し、ドワーフ世界は暖かくなる。
永久凍土が存在するマップは、もはや氷を掘る必要は無くなる。
氷を掘らなくて良いが、辺りは溶けた氷により帯水層だらけとなる。
溶けた氷は海面を上昇させ、海の近くに存在する要塞を水没させる。
その様子は、蟻の巣穴にヤカンで水を注ぐ行為と似ているであろう。
森に住むエルフはこの気候変動の影響を最も強く受ける。
蒸気機関は燃料として木を必要とする。
これにより森の伐採が進み、エルフは住む場所を奪われていく。
また石炭やガソリンといった化石燃料の燃焼は、ドワーフ世界に酸性雨をもたらす。
酸性雨は木を枯れさせる。
そして、木が枯れた土地は風雨に浸食され、砂漠が広がるのである。
もはやエルフは包囲戦も交易も行わず、わずかに残された森林の奥深くでひっそりと生きるのみである。
内燃機関は直接的な弊害もドワーフにもたらす。
内燃機関は多量の酸素を必要とし、また多量の二酸化炭素を排出するため、地下での運用が難しいのである。
そこで燃焼を必要としない動力源が運用されるようになる。
これには原料となる重い石を精錬したもの、空のバケツ、そして水の入ったバケツが必要とされる。
水の入ったバケツに空のバケツを入れ、そこに精錬した重い石の粉をどんどん放り込む。
ある程度高い密度に達すると、バケツは途端に莫大なエネルギーを生み出す。
これこそ、ドワーフが原子の光を手にした瞬間である。
ドワーフに最適なエネルギー、原子力
原子力発電の燃料となるウラン鉱石は、要塞の奥深くから掘り出される。
掘り出されたウラン鉱石を精錬所に持って行くと、濃縮され、燃料となる。
後はこの燃料を水辺に設置した原子力発電所に持って行き、お湯を沸かし、タービンを回す。
これによって酸素を必要とせず、また二酸化炭素も排出しない発電が可能になる。
この原子力発電は、地下で暮らすドワーフには最適である。
ただし、原子力発電所は時々事故を起こす。
原子力発電所の重大事故は、一瞬で要塞を全滅させる。
また、廃棄物保管庫にも注意しなければならない。
原子力発電所から発生したゴミを、他のゴミのように地表の廃棄物保管庫に捨てる事は大変危険である。
原子力発電所から発生したゴミは、別の工場で作製したガラスと金属でできた容器に入れなければならない。
その上で要塞奥深くの坑道に核専用廃棄物保管庫を設置し、そこに容器ごと捨てる。
容器がある程度溜まれば坑道に壁を作って、封印する。
ドワーフ世界に地殻変動がプログラミングされていない限り、これで安心である。
もし封印が完全でない場合、放射性物質が瘴気のように漏れ出し、要塞に重大な悪影響を与える。
コンピュータの登場
銃や大砲を使った包囲戦が繰り返されると、使用する銃や大砲の精度を上げる必要が出て来る。
それには弾道の計算が必要である。
その複雑な計算を一瞬でやってのけるコンピュータを、要塞内部に設置する事が出来る。
コンピュータは病院のように要塞内部の特別な場所に一カ所だけ設置される。
そのコンピュータルームは、ドワーフの部屋と電話回線やケーブルテレビ回線を使って結ぶことができる。
コンピュータルームから光ケーブルを使ってマップ外と接続すると、ドワーフ世界に存在する他の要塞や都市のネットワークと接続される。
これがインターネットである。
ある日、自室のPCでネットサーフィンを行っていたドワーフは、とあるコンピュータプログラムをインターネット上で発見する。
それはコンピュータ内部に世界を構築するという、極めて野心的で高度なプログラムである。
そのプログラムはドワーフフォートレスと呼ばれるゲームであり、ドワーフは興味深くプレイするようになる。
これがドワーフフォートレスの進化の最後である。
もしさらに進化するのであれば、ドワーフがプレイするドワーフフォートレス内のドワーフがさらにドワーフフォートレスをプレイし・・・、
と入れ子に進化するのではないだろうか。
Dwarf Fortressの最終進化形
ドワーフフォートレスは、ドワーフフォートレス内部に住むドワーフがドワーフフォートレスを遊ぶところまで進化できると予想する。
それ以上の進化は空想の実現であり、リアルを追求するドワーフフォートレスに採用することは難しいと思われる。
果たしてドワーフフォートレスはどのような未来を描くのであろうか?
これを読んでいるプレイヤーの皆様も、是非想像して欲しい。
2013/09/20
戻る