海柘榴市(つばいち)は、昔(むかし)から栄(さか)えたまちです。
山の辺(べ)の道、初瀬街道(はせかいどう)・磐余(いわれ)の道・竹ノ内街道(たけのうちかいどう)などの道がここに集(あつ)まりました。
仏教(ぶっきょう)が伝来(でんらい)したところともいわれています。
また、「枕草子(まくらのそうし)」「源氏物語(げんじものがたり)」
「蜻蛉日記(かげろうにっき)」などにも登場(とうじょう)します。
春や秋のころはわかい男女があつまって、たがいに歌を読みかわしあそびました。
紫(むらさき)は灰(はい)さすものぞ海石榴市(つばいち)の
八十(やそ)の街(ちまた)に逢(あ)へる児(こ)や誰(たれ)
〔紫(むらさき)は、灰(はい)をくわえて作るものです。
その灰(はい)を作る椿(つばき)にちなんだ海石榴市(つばいち)の、
道が八方に分かれている広場(ひろば)で出会ったあなたは、どなたですか。〕
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たらちねの母がよぶ名を申(もう)さめど
道行く人を誰(た)れと知(し)りてか
〔お母さんがわたしをよぶ名前を言ってもいいけれど、とおりすがりの人で、
だれかわからないから言えません。〕
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