テレビジョン

昨日  虹を見た
僕は  きみの雰囲気を
奏でていたんだ

また  今日の  とても寒い朝
僕は  きみの姿を描いていた

そんな時  無性にきみに会いたくなる
どんなことをしても
きみの空気を  吸いたくなる

けれども  激しく身を焦がし
燃え尽きそうな  想いとは別に
静かで  醒めた想いが
僕の中に  沸き上がってくる

きみだけが  映し出されている想いが
僕の中で  浮かび上がってくる

優しい気持ちにさせてくれる
きみの風が  柔らかく吹いてくる


1/f

こんな優しい気持ちになれるのは
きみのせいだよ
おれはきみだけのために
夜をたくわえ  昼をかかえている
どんな草にも鳥にも  山にも雲にも
おれは唄いかけることができるよ
きみと住んでいる同じ時代を
愛することができるよ

おれはきみにもぐりこみ
あらゆる角度から味わいつくされる
(甘い蜜の巣になじんだあと)
(温かい泉にゆったりつかったあと)
しめつけられ  振り回され
ぬりたくられ  引っぱり上げられ
めいっぱいになって  たっぷりと放たれる

吸う  しゃぶる  くわえる
なめる  しぼる  飲みこむ

おれはきっちりと  きみの肉となり血となるよ
きみの体はおれの体でできている
噛みつくして  吸いとりつくして
きみはおれの養分で  すぐに再生するんだろう
どんなことをしても  きみはおれを
体じゅう取りこんでしまうんだろう

だから  食べ残しがないように
のみ忘れがないように
おれのうま味を確実に  正確に
きみの一番おいしいところまで  運んでゆくよ

広野をどんどん駆けぬけて
海をざぶざぶ渡りきって
空から真っ逆さまに
きみの中に  飛びこんでゆくよ

星をくるくる訪ねてまわり
出会う生き物ごとに  笑顔を振りまき
おれのどきどきする心臓を  伝えてゆくよ


Imagine You,Imagine Me

どこか遠いところで
花がひらひらと落ちてゆく

その痛いほどの一瞬一瞬に
ぬいこまれてしまう孤独よ

手のひらにそっと受けてみると
たわいない重みを感じさせて

やがて虹色に染まり
灰となって散ってゆく

もう誰も見ていないから
覚めてしまっていいだろうか

昨日の記憶をかすめ
ともっていた部屋の灯りは

目を開けると  既に昼間の顔をして
窓ガラスの向こうに行っている

夕べあんなに探していた蝶も
羽をおりただんだまま  黙ってしまった

聞こえない音が  右耳をすり抜けて
誰にも見えない汗となって  ぬけ出してくる

透明な  いや  確実な色をした
空気をゆさぶり  ただずんでしまう眠りよ

そんな時  世界はすべておまえになる
おまえがすべての世界になる

(恋人よ  こうして  おれは
 おまえのことを思っている)


Sweet 30's

なんてったって近頃じゃ
酸いも甘いもかみ分けたって  噂の女
ほらほら  めんどうくさがらずに
恋も仕事もばりばりだって  とんだ話
全くもう  こんな風だから
通ぶっている連中は
たちどころに一発でパンク
知ってか知らずか
貯めるこつはしっかりつかんで
冷蔵庫もいつだってたっぷり

立ち止まらない  やめられない
振り向かない  あせって倒れない
みだらな調子で  ダンスのおさらい
おっとそこまで
身震いするぜ  現役子猫ちゃん

世間知らずはどこへ行ったか
クレジットカード支払日
ぎっしりのカレンダー
まだまだ我慢が足らないよとは
どこかのるす電で  聞いたようなセリフ
元気いっぱいは
コンビニで買いつなぐとして
問題は肌の手入れのお時間
朝日も夕日も  どちらにしても
ほどほどじゃない  貴重なおつきあい

酔いつぶれない  触られない
おどけてみせない  先輩づらしない
色気もこれから  胸元ちらちら
おっといけない
火あそび注意  現役子猫ちゃん


夜の河

静かな夜に捕らわれる  切ない思いよ
はるかなフラスコに  けだるく身を沈みこませながら
おまえは足をつける  ひざを曲げる  腿をひたす

かすかなリュートの響きに  じっと耳を傾けるひととき
まるで忘れてしまったような  ざわめきが戻ってくる

おまえは腰までつかる  乳房を濡らす
おまえは  長い髪をさらさらとほぐす
それはささやくハープとなって
俺にしか聞こえない  メロディをかなでる

俺はおまえが欲しい  おまえのすべてが欲しい
おまえに溶けこみたい  おまえを溶かしたい

なまめかしい風よ  悩ましい呼び声よ
大いなる河となり  俺のもとへ集まれ
大地を流れ  天空を流れ
星々を落ち着かせ  月を輝かせてくれ

おまえは目を開ける  耳を向ける
口で噛む  鼻でかぐ  舌でなめる

おお  深い夜よ
俺とおまえの河が  はてしなく流れてゆく
お前を泳がせ  俺をとろけさせ  世界を包みこみ
まどろんだ夜を  ゆっくりと動いている
 

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