2009年度の主な変更点は次の通り。
<競技規則>
1.セイフティーカー
<技術規則>
2.空力デバイス
3.スリックタイヤの導入
4.エンジンに関する規定
5.テストと風洞に関する制限
注)以下の全記述は、筆者(ps-r)がウェブや雑誌などで調べたことをまとめたものであり、筆者の解釈が間違っていたり、理解不足により正確性を欠いている場合もありえますので、その点ご了承願います。
【1】セイフティーカー
<新規定>
<趣旨>
昨年は、セイフティーカーがコースインすると、その後一定時間のピットインが禁止され(ピットの閉鎖)、違反した場合にはペナルティが科せられていた。これは次のような理由による。
しかし最初からピットインする予定だった周回に、たまたまセイフティーカーが出動した場合には、そのドライバーはピットがオープンになるまでガス欠のリスクを抱えながらコース上に留まるか、もしくは無理矢理ピットインして給油をするしかなく(当然ペナルティの対象となる)、不公平であるとの指摘があった。この新規定はこれを解消するものである。
【2】空力デバイス
<新規定>
・フロントウィング
従来より幅が広くなり、高さが下げられ、中央部分の50cmが共通化された。またコックピット内から1ラップにつき2回まで、6度の範囲内で、フロントウィングの角度を調整できることになった。
・バージボード等の禁止
昨季までフロントウィング後方のボディに付けられていた整流板等は厳しく制限され、事実上禁止された。
・リアウィング
従来より幅が狭められ、かつ設置位置が高くなった。
・デフィーザー
従来より小型化された。
<趣旨>
フロントウィングの変更によりフロントのグリップが大きくなり、またリアウィングの変更により後方の乱気流(タービュランス)が小さくなる。上記の新規定は、全体的なダウンフォースの削減を図ると共に、後方の車が先行車のスリップストリームに入りやすくし、よりオーバーテイクしやすい状況を作る事を目的とするものである。
【3】スリックタイヤの導入
従来のグルーブドタイヤ(溝付きタイヤ)ではなく、スリックタイヤ(溝のないタイヤ)へと変更された(レインタイヤには変更無し)。1997年以来の復活である。空力デバイスへの制限によるダウンフォースの削減を行う一方で、メカニカルグリップを大きくし、オーバーテイクの機会を増やすことを主目的とする。
【4】エンジンに関する規定
<新規定>
・KERSの導入
今季から運動エネルギー回収システム(KERS / Kinetic Energy-Recovery System)の導入が可能となった(導入するかどうかはチームの自由)。従来、ブレーキング時に熱エネルギーとして放出されるだけであった減速エネルギーを回収し、1周につき約6.7秒の間、80馬力のパワーを追加することが許される。使い方にもよるが、ラップタイムにしてコンマ数秒の短縮になり、オーバーテイクを容易にすると期待されている。
・エンジンの台数制限
1人のドライバーにつき、1シーズンで8基までのエンジンが使用できる。9基目のエンジンを使用する場合、ペナルティが科せられる。これによりエンジンコストの削減が期待される。
あくまで「1シーズンで8基まで」という制限のため、例えば昨季のように2レース連続で同一エンジンを使用しなければならないわけではなく、またレースウィーク3日間を通じて、同一のエンジンを使わなければならないわけでは必ずしもない(※)。
昨季の2レース1エンジン規定は、土曜及び日曜についてのみ適用されたが、新規定は金曜から日曜の全セッションについて適用される。
ちなみにテストでは更に4基のエンジンの使用が認められるので、1チームが2009年に使用することの出来るエンジンは、全部で20基ということになる。
※「トラブルが起きない限り、土曜午前のフリー走行開始後はエンジン交換が出来ない」という制限が加えられたとの報道もある。
<その他>
エンジンの開発凍結は引き続き継続される。
【5】テストと風洞に関する制限
<新規定>
・テストの制限と禁止
(シーズン前の)テスト走行距離が30,000kmから15,000kmに縮められ、またシーズン中(開幕戦の7日前から今年の12月31日まで)のテスト走行が禁止されることとなった。コスト削減策の一環である。
※但しこの規定に関しては、(公式にアナウンスされているわけではないが)KERSの安全性確保の為のテストを行う等を理由に、シーズン中に見直される可能性もある。
・風洞実験に対する制限
各チームは、1週間あたり40時間以上風洞を使用してはならない。コスト削減や、風洞を持つチームと持たないチームの格差を縮める目的を有する。