九死に一生スペシャル・1
以前住んでいた賃貸マンションのお風呂は換気が最悪だった。
当然中はカビだらけで、ユニットでもないお風呂は壁や天井がベロベロと剥がれ、幽霊屋敷のよう。最後には扉のノブもサビてカギが中から半がかりの状態で開けにくくなり、閉じ込められる危険があるのでノブだけ交換する為取ることにした。
ただラッチボルト(ドアノブを回すと引っ込むアレ)は残ってるので、ガチャンと閉まっちゃうと開けられなくなるということで、ラッチボルトをドアに押し込んでガムテープで固定するという一時処置をして放置していた。

そんなある夏のお昼・・・

私はお風呂の本格的な掃除をしていた。
さっきも言ったけどユニットじゃないタイルの土間のようなお風呂だったのでカビだらけである。そこをゴシゴシ。暑いので服も脱ぎさらしてほぼ裸状態で作業をしていた。扉のカビもきれいにして、ガムテープの周りの汚れもキレイにして・・あー、このガムテープジャマだなぁ、貼り替えよう、と剥がしてきれいにして後ろ向きになって壁をきれいにしていていたら、背後で

『ガッチャン』

と音がした(いや、正確には『していた』)

・・・掃除に夢中で気づかないサザエさん・・・。。

はぁ〜、これで多少はきれいになったかなぁとシャワーでザーザー流し、もうちょっとしたらオットから『駅まで迎えに来て』コールが来る時間だったので切り上げるかぁ、と扉を見て

ガーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!

・・・・・・・・
あのですね、人間ホントに『ガーン』と思った時は、まじで『ガーン』と言っちゃいますね。
私は思ったんじゃなく、ほんとに言ったもの。「ガーン」て。

ギョエー!!!!!!!(←ココで我に返る)

閉まってんじゃん〜!!開けられないんじゃん〜!!!(もちろん外したドアノブは浴室には置いてない)
その時に頭に浮かんだのは、TV番組「九死に一生スペシャル」で古いドアノブが壊れてお風呂に閉じ込められたOLの話。
まさに私はその状態・・ほぼ裸・・・夏なので寒くはないが助けを呼べない状況・・・。。

・・・10秒放心・・・

ハッと我に返り、頭を使え!とドアノブがあった穴に入りそうな部品を探してみる・・・。古い歯ブラシ・・いかん、デカイ・・。リンスを詰め替えた後のビニール袋・・を丸めて・・やわらかい!えと・・えと、、、他になにかないの!?
が、使えそうなものは残念ながらナニもなく、小さな穴を恨めしそうに眺めるワタシ。その間うめき声は発しているのでガラス越しにあたふたと集まるネコズが見える・・・。

私:「シータッ!」
シ:「うにゃぁ〜ん?」
私:「ココ!ココ!(とノブを指す)ココにジャンプして!ジャンプ!ほらっ!」
シ:「グルグルグルグルニャン・・・」

・・・だめだコリャ。

その後も色々やってみようとしてみたけれど、もうどうしようもないと分かり暑さで頭に血が上って脱力・・・・閉じ込められて20分程が経過・・・イライラも最高潮。

狭い密室って出れない・・とわかると結構精神的に追い詰められる状態になり、タイルにへたり込んでとほーにくれていた頃、電話が・・・
あ。。きっとオット!!!
暫くして切れ、また1コール。

「ダーリン、私はココよー!ココなのだー」と念じてみる。
--
5分後
続いて携帯の軽薄なメロディが鳴るのが聞こえる。

「だからココなのよー」

3分後また鳴る携帯。
--
ヨシヨシ・・・・こんだけ鳴ってて出なかったら、朝「迎えに行くから電話して」と言ってたのにおかしいと思うはず。
一度目の電話は一つ前の乗り換えの駅で、次はいよいよ着いたから電話してきたから、あと20分ほどで帰ってくるはず!と思い、もう大丈夫かも〜と気持ちも復活。
どうせなら裸なんだし、汗もかいたからシャワー浴びちゃえ・・と思い、フンフンフーンと体を洗ってシャンプー&リンス。

はぁ・・さっぱりした〜、、まだかなぁ・・・と思っていた頃、カンカンとマンションの螺旋階段を上がる音。お・・・オットかも!!!

案の定、それはオットで、窓からご対面。

『閉じ込められちゃった・・・出して(テヘッ)』

オットはさすがに電話に出ないのがおかしいと思ったらしく、『閉じ込められてるのかも』と気づき急いで帰って来たのだとか。よくぞ気づいてくれました。
すごいパニックに陥って半泣きだと思ってたようですが、体と頭を洗ってた・・・と言うと、唖然としてました。
いえいえ・・・あの、アナタが戻ってくる・・とわかったから自分を取り戻したのレスよ〜・・・と弁解したんだけど、「守ってあげないと」と前程は思わなくなった・・らしいです。