TOOLGATE
このお話は、哀れなある既婚男性の話である。

彼の腸は弱い。

朝は毎日必ず一度以上はトイレにゆき、万全の体制で通勤に臨んでいるにも係わらず、
途中で腹痛に襲われることもしばしば。
脂汗を流しながら、腹痛に耐える姿は見るに忍びない程の痛々しさである。

ある日、遅れ気味で急ぎ家を出た夫婦は、とんでもない事故渋滞に巻き込まれた。
乗り継ぎの高速の情報啓示版には、『事故渋滞、環状線まで155分』の文字。

普段の約5倍、遅刻は確実。そして悪夢は再び彼を襲った。

青ざめる顔。少しでも圧迫を抑えるために緩められたシートベルト。
・・・そして治まらぬ腹痛。
その時すでに最後の出口を過ぎたところ。最早最終地点まで降りることは出来ない。
ついに彼は妻と運転を代わり、悲痛な顔で倒れたシートに沈んだ。

進まぬ渋滞・・・進行する腹痛。

見かねた妻が思案にくれ、そして向けた絶望の視線の先にあったもの・・・それはっ、

“ToolGATE”(デンデン、デンデーン)

やっとたどりついた料金所で死んでるオットを指差し、妻が交渉すること3分。渋滞中で進まぬことが幸いして交渉成立。彼は料金所のオッサンしか通らないだろう階段を駆けて行った。心配げな妻を振り返りつつ、襲う腹痛をこらえながら・・・。

数分後、料金所を300mほど通り越した車に彼は追いつき、無事生還した。
かろやかな体を躍らせて。
微笑む妻がこの日ばかりは彼の目に女神のように映ったであろう。ありがとう、妻よ。



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これ、本日の実話。