カンボジアスタディーツアー記

2003年12月19日〜25日,カンボジア・ポイペットにある「C.C.HOME」に滞在し,様々な体験をすることができました。
   
 2003年の8月7日と11月12日,栗本英世さん(カンボジアこどもの家代表)に天理市にお越しいただき,カンボジアの子どもたちがおかれている現状と人権について講演をしていただきました。そして,私たちは,「真の支援とは何か」ということを深く考えさせられました。
 そこで,実際にカンボジアに赴き,その現状を直接確かめたい,さらには自らの生き方を振り返ってみたいという思いで,市人教役員,事務局員あわせて4人でカンボジアスタディーツアーに参加することにしました。

タイとカンボジアの国境付近
国境付近 19日,関空を発ちタイのバンコクを経て,その夜アランヤプラテートに宿泊しました。翌日,朝から国境を越え,カンボジアに入国しました。
 アランヤプラテートからオートバイタクシーに乗って,国境手前に到着すると,多くのカンボジア人に取り囲まれ,荷物運びを求められました。また,多くの子どもたちから物乞いをされました。カンボジアの置かれている厳しい現状を目の当たりにし,大きなショックを受けました。さらには,カンボジアから多くの物資がタイに運ばれている現状にも驚きました。
 タイを出国すると,そこにはいくつものカジノが建ち並んでいました。かつてカンボジア難民が住んでいた土地を安く買い上げて造られたそうです。富める人たちとカンボジアの人たちとの経済格差に何とも言えない不合理を感じました。

「C.C.HOME」
C.C.HOME 国境を越えると,車でポイペットにある「C.C.HOME」に向かいました。車に揺られていた道中,村の人たちの暮らしを垣間見ることができました。ほとんどが茅葺きの屋根や壁でできた高床式の家で,必ず水を蓄える大きな瓶(かめ)が置いてありました。多くの家で烏骨鶏が飼われていました。約20分で到着すると,スタッフのカンボジアの人たちが笑顔で迎えてくれました。
 C.C.HOMEにもガチョウや烏骨鶏が飼われていました。日本の昔の生活を彷彿させるような,時が止まったような生活を,私たちも体験することができました。
 C.C.HOMEは,孤児を引き取って育てる営みもしています。そうした孤児たちとも楽しい時間を過ごすことができました。なお,栗本さんの講演の際,ビデオで紹介されていた瀕死の状態の赤ちゃんは,“スレイリアップ”と名付けられ,現在3歳,とても元気にしていました。

寺子屋巡り
寺子屋 20日の午後,22日の午前・午後,23日の午前,そして24日の午前に,「カンボジアこどもの家」が運営をしているいくつかの学校をスタッフの方に案内していただき,授業の様子などを見学させてもらいました。授業は,午前の部と午後の部に分かれており,授業が終了すると給食が出るシステムになっていました。
 子どもたちは大変熱心に授業を受けていました。また,先生たちも独自に教材や教具を工夫されているようでした。しかし,全員に教科書がなく,学校に置いてある教科書をその都度借りて学習していたり,小さな黒板を手にしてそこに字を書いて学んでいたりしており,ノートをもち板書を写している学級はわずかでした。

地雷原
地雷原 ある学校の裏側の草原に「地雷注意」の標識が立てられていました。スタッフの方に聞くと,ここはまだ地雷原のままになっているとのことでした。こうした地雷原はタイとの国境付近に,まだまだ残っているとのことでした。また,カンボジアはほとんどが平野なのですが,その多くが荒れ地となっていました。30年にわたる内戦によって森林がなくなってしまったとのことです。カンボジアには,戦争の傷跡が至る所に残っていたのでした。

ポイペットの市場
ポイペットの市場 21日の午前,ポイペットにある市場に行きました。非常に活気があり,人々のエネルギーを感じました。野菜や果物,肉,魚などの食料品,服やカバン,文房具,日用品,薬などなど実に様々なものが売られていました。教科書も売っていました。店の数は何百軒もありそうでしたが,誰も正確に何軒あるか知らないようでした。いったん市場にはいると中は迷路のようにいりくんでおり,スタッフの人の案内がないとすぐに迷ってしまいそうでした。

カンボジアの子どもたち
子どもたち 学校巡りをしているとき,ある学校で,ひょんなことでけん玉を披露することになりました。そして,子どもたちに遊んでもらおうと声をかけると,恥ずかしがって,なかなか誰も出てきません。しかし,一旦やり始めると熱中して大変楽しんでくれました。
 また,プレイコップ校という学校では,栗本さんと相談したうえで,授業の合間に糸電話やゾートロープなどを子どもたちに見てもらいました。最初は,大変恥ずかしそうにしていましたが,しばらく見ているうちに興味を持ち出し,非常に楽しんで遊んでくれました。また,メンバーの一人が腰を下ろしてスケッチブックに絵を描き出すと,一人二人と子どもたちが集まってきて,絵をのぞき込むようになりました。そして,とても多くの子どもたちに取り囲まれ,絵を通してコミュニケーションすることができました。

天体観察
天体観察 栗本さんと相談して,22日の夜,プレイコップ校に天体望遠鏡を持って行き,高学年の子どもたちと先生方に天体を観察してもらうことにしました。予想を超えて,何十人も子どもたちが集まりました。土星とペルセウス座にある二重星団を見てもらいましたが,特に土星を見ると,子どもたちも先生も大変感動していました。カンボジア語で何度も「輪」と言って喜んでいる子どももいました。先生方も熱心に星のことをいろいろと質問されました。中には,星座に興味をもっている子どももいて,スタッフの方にいろいろと質問していたようです。
 それにしても,カンボジアの夜空は星の雫が落ちてきそうなくらい綺麗でした。カジノのある西の空を除いては・・。

スタディーツアーを終えて
子どもたち カンボジアの子どもたちは一見,無邪気に,そして純朴に学んでいるように見えました。しかし,こうしたことが現実のものになっているのは,栗本さんやC.C.HOMEのスタッフが,学校をつくり,先生を受け入れる準備をするという営みがあってこそだと,スタディーツアーを終えて改めて強く感じます。C.C.HOMEのトラックに乗せてもらって移動しているとき,村の大人も子どもも笑顔で手を振ってくれました。それだけ,C.C.HOMEの取り組みがポイペットの村人たちに受け入れられているからだと感じました。
 もし,栗本さんたちの営みがなかったら,子どもたちは,どうなっていくのでしょうか,そしてカンボジアの将来はどうなっていくのでしょうか。
 今,私たちに何ができるのか,簡単には分からないと思います。しかし,できることはいくつもあるようにも思います。カンボジアが自立することは一朝一夕に実現するとは考えられませんが,未来を担う子どもたちを教育することが重要であることは確かです。「よかれ」と思って行う自己満足だけの支援や,こちらの都合で行う支援は慎まなければなりませんが,子どもたちの教育のための支援を何か一つでもできたらと思わずにはいられません。
12月24日撮影

スタディーツアーの案内
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