同和教育推進についての基本方針
奈良県教育委員会
昭和41年 3月24日

 同和教育は、これを民主教育の中核としてとらえ、その推進につとめなければならない。しかるに、現状においては、この基本的認識や実践について、なおじゅうぶんとはいえない。この際、われわれは、同和教育にとりくむ基本的態度を明らかにして、よりいっそうの拡充推進につとめたい。
 日本国憲法においては、すべての国民は基本的人権において平等であると保障されながらも、今日なお、このことは確立していない。特に部落では、就職や結婚にさいし、また、生活環境において差別をうけ、教育の面においても、機会均等が完全に保障されていないなど、社会的・経済的・文化的に低位性をよぎなくされ現代社会の不合理・矛盾を集中的にうけている。
 部落問題は、封建的支配によってつくりだされた身分的差別にはじまるものであって、今日なお封建的身分の残さいとしてとらえられているが、この問題の根因は、わが国における民主主義の不徹底にあると考えられる。
 これが解決には、基本的人権の内容である生活権や自由・平等の精神に立脚して、その具体策を強力に実施できるよう、あらゆる機関がとりくまなければならない。
 ここにおいて関係諸機関は、国民の生活を直視し、同和対策をそれぞれの施策のなかに明確に位置づけて、環境改善、産業および職業、ならびに教育などの各面にわたり具体的に計画を樹立して、憲法で保障された社会の実現につとめなければならない。
 このことは、すべての国民が民主主義をより具体的に実現する願いを基調として、部落の解放をめざしてとりくむことである。
 特に学校教育・社会教育においては、部落問題の解決をはかるため、すべての学校・地域で、また、すべての関係機関・団体および関係者が、同和教育に積極的に不断の努力をはらうべきである。
 同和教育とは、人権尊重の精神に徹し、差別を正しく認識し、差別をなくす意欲と実践力をもった人間を育てることである。
 これがため、下記事項に留意して同和教育を推進すること。
1.日本国憲法・教育基本法の精神を体し、人権意識の高揚と、その実践をはかるための具体的な目的と方法を明確にして、その指導につとめること。
2.教育の機会均等の先進にもとづき、すべての児童・生徒がもつ可能性を最大限に伸ばすとともに、就学奨励や進路保障につとめること。
3.日々の教育実践をとおして、不就学・長期欠席児童生徒の解消、基礎学力の向上、進路指導などに関する教育上の諸条件を改善し、その充実をはかること。
4.人権や差別を、科学的・実証的にとらえ、これに対する正しい見方や考え方、感じ方を育てる指導を徹底すること。
5.地域の生活課題に創造的にとりくむことのできる自発的・自主的な人間の育成につとめること。
6.青年・成人・婦人等を対象とした学級、講座・諸集会などにおいて、人権尊重の精神、科学的な精神、社会的連帯意識などを育てる内容をとりあげること。
7.つねに、児童、生徒や地域の実態をはあくして、その問題点をあきらかにし、これが解決にみんなでとりくむとともに、関係機関・団体と密接な連けいをはかること。


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