天理市同和教育基本方針
昭和47年10月      
天理市・天理市教育委員会

 日本国憲法においては、すべての国民は、法の下に平等であり、その基本的人権は、なにびとも侵すことのできない権利として保障されている。しかし、今日なお、同和地区においては、基本的人権が侵害され、とくに、近代社会の原理としてなにびとにも保障されるべき市民的権利、および自由が不完全にしか保障されていない現実がある。
 本市においては、市民一般の同和問題の認識についても、まだ不十分であり、市民の間にかなりの誤解や偏見、差別感情が残存しており、部落解放についても、今なお、一部では、ことなかれ主義の意見もあとをたたず、融和的または同情的な考え方が根強く残っている。
 この問題は、国および県、市の責務であるとの認識にたち、市民的課題としてとりあげ、あらゆる力の結集によって解決に努めなければならないが、なかでも教育の果たす役割の大きいことは、いまさらいうまでもない。
 同和教育の中心課題は、すべての市民が人権尊重の精神に徹し、社会のなかにある偏見と差別について正しく認識し、民主主義をより具体的に実現する願いを基調として、社会連帯意識の確立をはかる人間を育てることである。
 本市教育委員会としては、さきに県教育委員会が示した「同和教育の推進についての基本方針」の趣旨に則し、基本的人権を基盤とした同和教育の徹底を期するものである。
 これがため、天理市においては、次の事項に留意し、あらゆる教育の機会と場において同和教育の推進に努める。
 1.日本国憲法・教育基本法ならびに児童憲章の精神を体し、民主主義の中核としての同和教育をすべての幼稚園・学校・地域社会において積極的に実践展開する。
 2.学校教育においては、同和教育を教育計画のなかに位置づけ、児童生徒の発達段階や実態に即した指導目標と実施計画をたて、日常のきめ細かい指導をとおして差別を正しく認識し、差別をなくする意欲と実践力をもった人間の育成をはかる。
 3.教育を受ける諸条件の阻害されている幼児・児童・生徒の可能性を最大限伸ばすように努めるとともに、就学の奨励、学力の向上に努め、進路指導をいっそう充実する。
 4.社会教育においては、市民のひとりひとりが同和問題を正しく認識し、問題の解決のため、地域の実情に即した社会教育を積極的に展開する。これがため、さらに諸条件の整備をはかることに努め、きびしい現実の生活と積極的にとりくむ自主的・組織的活動の育成をはかる。
 5.同和地区については、住民の生活や文化の水準を高めるため、特に、各種の社会教育集団・学級・講座等の充実をはかり、自主的に組織的な教育活動を促進する。
 6.学校教育と社会教育は、つねに密接な連携をはからなければならない。さらに関係機関ならびに諸団体の協力をえて、総合的に同和教育を推進し、部落の完全解放の実をあげることを期する。


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