天理市同和保育基本方針
平成 2年 4月13日
天理市・天理市教育委員会

 1.同和問題についての基本的な考え方
 日本国憲法は、民主主義を基調とし、すべての国民に侵すことができない永久の権利として、基本的人権を保障している。
 しかし、同和地区においては、現代社会の矛盾と相俟って、今なお市民的権利と自由が十分に保障されていない状況にある。
 この問題の解決は、国及び地方公共団体の責務であり、市民的課題である。従って、市民一人一人の理解と協力のもと、あらゆる力の結集によってその解決に努めなければならない。以上の観点により、市は、国・県と連携をはかりながら、同和行政、同和教育(保育)の推進、市民の人権意識の高揚に努めるものである。
2.同和保育の意義
 すべての子どもは、「児童憲章」「児童福祉法」「教育基本法」に基づき、適切な環境のもとで、生命や身体の安全がまもられ、心身の能力が開発されながら、全面的に成長発達し、豊かな人間性をもった子どもに育成されなければならない。
 しかし、このような権利が今なお十分に保障されるまでに至っておらず、とりわけ同和地区の乳幼児の成長発達は、永年の部落差別によりさまざまな制約を受けている。それが、基本的な生活習慣、耐性、創造力や感性等に影響を与え、その結果として乳幼児のもっている能力を十分に発揮させることができないでいる。
 同和保育は、このような部落差別の実態を受けとめ、人間形成の基礎づくりを基底にもつ保育の場において、養護と教育の両面からの条件整備と保育内容の創造をし、乳幼児の身体的、精神的な基礎的能力の全面発達を保障するとともに、差別を許さず差別に立ち向かう資質を培うものでなければならない。従って、同和保育は、すべての乳幼児の保育を向上させるということにおいて、その意味は大きい。
3.同和保育の目的と内容
 同和保育は、人間形成の重要な過程にあるすべての乳幼児に対し、その心身の調和的な成長発達を促すとともに、基本的人権を尊重し、差別を許さない資質を培うものである。
 従って、保育者は部落差別の実態を受けとめて、乳幼児の生育歴や、生活実態に根差し、一人一人の保育課題を明確にした保育内容の創造に努める必要がある。このことをふまえ、集団生活の中で、環境をとおして行う保育を推進し、からだやことばを育て、なかまへの連帯感を培うとともに、基本的な生活習慣や態度を養い、豊かな感性や社会性、及び、科学的なものの見方考え方の芽生えを育てるなど、乳幼児の全面的な発達をめざすものでなければならない。
4.同和保育の推進
 実践にあたっては、幼稚園・保育所が就学前教育の統一した方向にたって、下記事項に留意し、同和保育の推進に努める。(1) 乳幼児をとりまく環境は、心身の発達や人間形成に与える影響が大きい。したがって、望ましい環境の整備を図り、それを生かすよう努める。
(2) 保育をすすめるにあたっては、部落差別の現実に学び、乳幼児の実態を的確に把握するとともに、自らの課題として、同和保育の基本的な考え方に基づいて指導計画を作成し、計画的、系統的な指導に努める。
(3) 保育に携わるすべての職員は、乳幼児に強い感化を及ぼすことを自覚し、保育者としての資質を高め、具体的実践をとおして研修の充実に努める。
(4) 家庭、地域、関係機関及び団体との連携を更に深め、同和保育の目的を達成するための活動をより一層推進する。


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