奈良スケッチNOTE

1.興福寺五重塔(Jan.2022)

奈良スケッチ会では、毎年正月の初スケッチは興福寺五重塔を描くのが恒例となっているのですが、近々、令和の大修理が行われることになっており、我々に この塔をスケッチできる期間はあまり残されていません。そこで、改めてこの五重塔スケッチの魅力について考えてみたいと思います。
五重塔の美しさは、何と言っても大空に突き出した壮大なシルエットでしょう。これをいかに表現するかが、スケッチの楽しみです。
塔を見上げて、背景が空になるのは、上の三階くらいまでですが、その形をみると、軒下の影の部分がその下の屋根にかからない(クッキリとしたくびれが見える)シルエットが理想的です。
このような形に見えるには、塔に対して、ある程度の距離を置くことがが必要です。
又、塔の形はどの方向から見ても同じではありません。正面(例えば南円堂側)から見たとき、塔の形は左右対称で最も気品のある形です。
これに対して、塔の壁面にたいして45度の方向(例えば、猿沢池を隔てて、ベンチが置いてあるあたり)から見ると、塔の形が左右対称であることは同じですが、屋根は正面の場合より広くなり、従って塔は全体的に平たく見えます。 この姿は正面から見た場合と又違った趣があります。
塔は見る方向で微妙に形を変えますが、それぞれ特徴があり、魅力的です。
私が一番好きなのは、正面と斜め45度の中間の方向から見た形で、この場合、屋根の形が左右対称でなく、塔がより聳える感じが 強調されます。
これは、例えば猿沢池東の松林のある広場や采女神社とスターバックスのあたりからの角度です。また両地点共、塔より低いため、塔の雄大さをより感じさせます。

120年ぶりの大修理は、目下事前調査の段階で、本格的には令和5年から行われる。ただし、その前に塔全体を覆う素屋根の工事があり、間もなく塔の姿は我々の視界から消えることとなります。